弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     上告人の敗訴部分中、金六〇万円及びこれに対する昭和五三年九月二〇
日から支払ずみに至るまで年五分の割合による金員の支払を求める請求を棄却した
部分につき、原判決を破棄する。
     右破棄部分につき本件を大阪高等裁判所に差し戻す。
     上告人の被上告人B1に対するその余の上告及び被上告人B2に対する
上告を棄却する。
     前項の上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人江谷英男、同藤村睦美の上告理由第一点について
 原審の適法に確定した事実関係のもとにおいて、他に特段の主張・立証のない本
件においては、被上告人B2が上告人から原判示の五〇〇万円を受領し被上告人B
1名義で預金した行為をもつて被上告人らの不法行為であるとすることはできない
とした原審の判断は、正当として是認するに足り、原判決に所論の違法はない。論
旨は、原判決を正解しないでその判断を論難するものにすぎず、採用することがで
きない。
 同第二点について
 原審は、上告人の被上告人B1に対する予備的請求につき同被上告人から提出さ
れた相殺の抗弁の当否を判断するにあたり、同被上告人が上告人に対し昭和四四年
九月一一日に成立した準消費貸借契約に基づく貸金三〇〇万円の債権を有すること
を認定し、右債権を自働債権とする限度で右抗弁は理由があるものとの判断を示し
ている。
 しかしながら、原審が適法に確定したところによると、右の準消費貸借契約の目
的となつた旧債務は、上告人側が被上告人B1から借り受けた元本八〇〇万円に対
する月五分の割合による昭和四四年六月分及び七月分の利息合計八〇万円を含む総
計三三八万九一〇〇円にのぼる上告人側の被上告人B1に対する債務のうちの三〇
〇万円であるというのであるが、右に挙げた元本八〇〇万円の消費貸借上の債務に
対する利息制限法所定の利息の最高限度額は一か月につき一〇万円であることが計
数上明らかであるから、右八〇万円のうち昭和四四年六月分及び七月分の利息合計
二〇万円を超える六〇万円については利息制限法一条に違反する約定によるものと
して利息債権は存在しないといわなければならず、したがつて、準消費貸借上の債
権も右の限度で存在しないこととなるから、右準消費貸借上の債権を自働債権とす
る相殺の抗弁を認容した原判決は不存在の右債権額の限度で違法であり、右違法は
判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるから、論旨は理由がある。もつとも、
右六〇万円が含まれている三三八万九一〇〇円の債務は、三〇〇万円と三八万九一
〇〇円とに二分され、前者のみが消費貸借の目的とされたというのであり、不存在
の債権である右六〇万円の部分がどの限度で前者に含まれているかは明らかでない
が、右六〇万円の全額が原審の認容にかかる相殺の自働債権である三〇〇万円の債
権に含まれている可能性がある以上、その全額が含まれているものとしてその限度
で原判決を破棄し、右部分につきさらに審理を尽くさせるため本件を原審に差し戻
すべきである。
 次に、論旨は、相殺の自働債権となつた右三〇〇万円の債権の旧債権の中に被上
告人B1の有する仲介人報酬債権が含まれていたことを前提とし、宅地建物取引業
法所定の制限を超える報酬約定が無効であることを理由として、原審のした相殺の
抗弁に対する判断に違法があるというが、所論仲介人報酬債権が自働債権となつた
右三〇〇万円の債権の旧債権に含まれていないことは、原判決の判文に照らして明
らかであるから、所論は前提を欠くものであり、原判決に所論の違法はない。論旨
は、採用することができない。
 同第三点について
 原審の確定した事実関係のもとにおいては、上告人が被上告人B1に対し五〇〇
万円を寄託した行為は、民法六六六条所定の寄託に該当するものと解するのが相当
であり、原審もまたその趣旨を判示したものと解されるから、利息の約定について
その立証がない旨の判断を示して利息金請求部分を棄却した原判決に所論の違法は
ない。論旨は、採用することができない。
 よつて、民訴法四〇七条、三九六条、三八四条、九五条、八九条に従い、裁判官
全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    戸   田       弘
            裁判官    団   藤   重   光
            裁判官    藤   崎   萬   里
            裁判官    本   山       亭
            裁判官    中   村   治   朗

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