弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人都築政則ほかの上告受理申立て理由について
1本件は,広島市に投下された原子爆弾により被爆し,原子爆弾被爆者に対す
る援護に関する法律(以下「被爆者援護法」という。)に基づき被爆者健康手帳の
交付を受けた被爆者ら3名につき,その居住国である大韓民国で受けた医療に関し
て同法18条1項に定める一般疾病医療費の支給の申請がされたところ,大阪府知
事により,在外被爆者(同法1条所定の被爆者であって日本国内に居住地及び現在
地を有しないものをいう。以下同じ。)に対して同項の規定を適用することができ
ない旨の理由でそれぞれ却下処分がされた(以下,これらを「本件各却下処分」と
いう。)ことから,上記の被爆者又はその相続人である被上告人らが,上告人を相
手に,本件各却下処分の取消し等を求める事案である。
2(1)被爆者援護法は,原子爆弾の放射能に起因する健康被害の特異性及び重
大性に鑑み,被爆者の置かれている特別の健康状態に着目してこれを救済するとい
う目的から被爆者の援護について定めたものであって(同法前文,最高裁昭和50
年(行ツ)第98号同53年3月30日第一小法廷判決・民集32巻2号435頁
参照),日本国内に居住地又は現在地を有する者であるか否かによって区別するこ
平成26年(行ヒ)第406号一般疾病医療費支給申請却下処分取消等請求事件
平成27年9月8日第三小法廷判決
となく同法による援護の対象としている。そのため,日本国内に居住地及び現在地
を有していない者であっても,同法1条各号に規定する事由のいずれかに該当し被
爆者健康手帳の交付を受けることによって被爆者に該当するものとなるところ,一
般疾病医療費の支給について定める同法18条1項は,その支給対象者として被爆
者と規定するにとどまり,被爆者が日本国内に居住地若しくは現在地を有すること
又は日本国内で医療を受けたことをその支給の要件として定めていない。また,同
項は,同法19条1項の規定により都道府県知事が指定する医療機関(以下「一般
疾病医療機関」という。)以外の者から被爆者が医療を受けた場合の一般疾病医療
費の支給を定めるところ,同法18条1項にいう一般疾病医療機関以外の者につ
き,日本国内で医療を行う者に限定する旨の規定はない。そして,在外被爆者が医
療を受けるため日本に渡航することには相応の困難を伴うのが通常であると考えら
れるところ,在外被爆者が日本国外で医療を受けた場合に一般疾病医療費の支給を
一切受けられないとすれば,被爆者の置かれている特別の健康状態に着目してこれ
を救済するために被爆者の援護について定めた同法の趣旨に反することとなるもの
といわざるを得ない。
(2)所論は,被爆者援護法は医療の安全を確保するための医療法等による各種
の規制を前提として一般疾病医療費の支給を定めており,また,その支給の適正を
確保するため,一般疾病医療機関以外の者を厚生労働大臣による医療に関する報告
や診療録の提示の命令等の対象としている(被爆者援護法21条,17条3項)と
ころ,これらの各規制は日本国外で医療を行う者に及ばず,同法18条1項にいう
一般疾病医療機関以外の者も日本国内で医療を行う者に限定されると解すべきであ
る旨をいう。しかし,上記(1)のような同項の定めや同法の趣旨に照らせば,上記
の各規制が日本国外で医療を行う者に及ばないからといって,在外被爆者が日本国
外で医療を受けた場合に同項の規定の適用を除外する旨の規定がないにもかかわら
ず上記の解釈を採ることは,同法の趣旨に反するものであって相当でないものとい
うべきであり,所論は採用することができない。
なお,被爆者援護法18条1項は,一般疾病医療費が支給される場合について,
被爆者が一般疾病医療機関から医療を受けた場合を原則とし,一般疾病医療機関以
外の者から医療を受けた場合については,緊急その他やむを得ない理由により一般
疾病医療機関以外の者から医療を受けたことをその支給の要件として定めていると
ころ,被爆者の居住地又は現在地の付近に一般疾病医療機関がないため近隣に所在
する一般疾病医療機関以外の者から医療を受けることとなった場合には,上記の要
件が満たされるものと解され,在外被爆者が日本国外で医療を受けた場合にも,こ
れと同様に解することができるというべきである。
(3)以上によれば,被爆者援護法18条1項の規定は,在外被爆者が日本国外
で医療を受けた場合にも適用されるものと解するのが相当である。したがって,在
外被爆者が日本国外で医療を受けた場合につき,同項所定の要件に該当するか否か
について判断することなく同項の規定を適用する余地がないことを理由としてされ
た本件各却下処分は,違法である。
3以上のとおりであるから,本件各却下処分が違法であるとして被上告人らの
同処分の取消請求を認容すべきものとした原審の判断は,是認することができる。
論旨は採用することができない。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官岡部喜代子裁判官大谷剛彦裁判官大橋正春裁判官
木内道祥裁判官山崎敏充)

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