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平成16年(ワ)第6516号商標権侵害差止等請求事件
口頭弁論終結日 平成16年4月28日
           判       決
     原      告      セコム株式会社
     訴訟代理人弁護士      石田省三郎
     同             鎮西俊一
     被      告      A
 主       文
1 被告は,別紙商標目録記載の標章を付したステッカーを販売し,販売の
ために展示してはならない。
2 被告は,その占有に係る別紙商標目録記載の標章を付したステッカーを
廃棄せよ。
3 被告は,原告に対し,金422万3925円及びこれに対する平成16
年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 原告のその余の請求を棄却する。
5 訴訟費用は,これを10分し,その1を原告の負担とし,その余を被告
の負担とする。
6 この判決の3項及び5項は,仮に執行することができる。
           事実及び理由
第1 請求
1 主文1,2項と同旨
2 被告は,原告に対し,金1172万5905円及びこれに対する平成16年
4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
 本件は,原告が被告に対し,被告が製造・販売するステッカーが原告の商標
権を侵害するとして,被告の上記行為の差止等と損害賠償を求めた事案である。
1 争いのない事実
(1) 原告の有する商標権
 原告は,警備業法に基づく警備業等を営む株式会社であり,別紙商標権目
録(1)及び(2)記載の商標権(以下,順に「本件商標権1」,「本件商標権2」とい
い,これらを併せて「本件商標権」という。また,本件商標権2の登録商標を「本
件商標」という。)を有している。
(2) 被告の行為
 被告は,別紙被告ステッカー目録記載のステッカー(以下「被告ステッカ
ー」という。)を製造し,インターネットのヤフーオークションにおいて販売し,
販売のために展示している。
 2 当事者の主張
(1) 原告の主張
ア 商標権の侵害
 被告は,本件商標と同一の又は類似した標章を付して被告ステッカーを
インターネットを通じて販売している。被告ステッカーは,本件商標権2の指定商
品である第16類の商品と同一である。したがって,被告が被告ステッカーを販売
し,販売のために展示することは本件商標権の侵害となる。
イ 損害額
 原告は,被告の本件商標権侵害行為により,以下のとおり,合計117
2万5905円の損害を被った。
(ア) 財産的損害
 被告は,被告ステッカーを796枚販売し,これにより以下のとおり
合計72万5905円の利益を得た。
① 売上額   合計75万9040円
YahooJAPANID(以下「ID」という。)「piano_763」での販売
  販売件数  128件(128枚)
  1件の価格 920円
  売上額11万7760円(=128×920)
ID 「h841dtm」での販売
  販売件数  334件(1件2枚で668枚)
  1件の価格 1920円
  売上額   64万1280円
② 販売経費    合計3万3135円
ヤフーオークション出品費用
  参加費 294円×6か月分=1764円
  出品システム利用料
     10円/1件×462件=4620円
  落札システム利用料
     75万9040円×0.03=2万2771円
ステッカー製造費用
     5円/1枚×(128+668)=3980円
③ 利益
   75万9040円-3万3135円=72万5905円
 したがって,原告の被った損害額は72万5905円と推定される
(商標法38条2項)。
(イ) 信用毀損による損害
 原告の別紙原告ステッカー目録記載のステッカー(以下「原告ステッ
カー」という。)は,原告が多大の費用と時間をかけて開発し,広告宣伝及び営業
活動を行うことによって築き上げた防犯サービス等の信用力を表象するものであ
り,世間では同ステッカーの表示をもって,これが貼付された建物等を原告の提供
する防犯サービス等の契約建物等であると認識する。
 被告が被告ステッカーを販売したことにより,原告ステッカーの有す
る世間の評価と信頼は傷つけられ,原告の信用は毀損された。
 原告が被った信用毀損による損害は,1000万円を下らない。
(ウ) 弁護士費用
 被告の本件商標権侵害に対し,原告は,本件訴訟を提起することを余
儀なくされ,弁護士費用として100万円の損害を被った。
(2) 被告の反論
ア 被告が被告ステッカーをインターネットのヤフーオークションにおいて
販売していたことは認める。被告は,被告ステッカーの販売行為が商標権を侵害す
るとの認識を有していなかった。
イ 被告は,原告から2度,警告を受け,その都度原告に対して謝罪し,販
売した商品を添付して,以下のとおり質問したが,原告から回答を得られなかっ
た。
(ア) 被告は,原告と同様のサービスを偽ってセキュリティサービスを販
売しているのではなく,原告が加入者に無料配布しているステッカーを真似たパロ
ディ品を純正品でないことを明記して紹介していた。具体的な違法性を知りたい。
(イ) 被告が製造販売したステッカーは,ロゴタイプとコメントが異なる
が,どのような基準で商標権の侵害品と判断されるのか。
(ウ) 被告が製造販売したステッカーは,原告のものとロゴタイプと指定
色が異なるが,どのような基準で商標権の侵害品と判断されるのか。
(エ) 被告が製造販売したステッカーは,市販ラミネートフィルムでの市
販インクジェットプリンターによる簡易印刷物であるが,全く仕様が異なる品質の
物がどの範囲で商標権の侵害品と判断されるのか。
 被告は,以上の点を原告に質問したが,原告から回答がなかったので,
違法性がないものと理解し,販売を続けた。
第3 当裁判所の判断
 1 商標権侵害の有無
(1) 証拠(甲1の2,甲3)によれば,被告ステッカーは,本件商標権2の指
定商品である印刷物又は文房具類に該当すること,被告ステッカーには,別紙被告
ステッカー目録記載のとおり,表面の下段約3分の1程度の幅で大きく本件商標と
実質的に同一の標章が付されていること,以上の事実が認められる。したがって,
被告ステッカーを販売し,又は販売のために展示する被告の行為は,原告の有する
本件商標権2を侵害する行為である。
(なお,原告は,被告の上記行為が,本件商標権1を侵害する行為であると
も主張する。本件商標権1に基づく請求と本件商標権2に基づく請求とは,選択的
な請求と解されるので,本件商標権1の侵害の有無については判断しない。)
(2) 被告は,前記第2の2(2)のとおり,被告ステッカーが商標権の侵害品で
あるとの認識がなかったこと,被告ステッカーを販売する行為について違法性がな
いと理解したなどと主張する。しかし,被告の主張する事情はいずれも商標権の侵
害の成否を左右する事情にはなり得ず,被告の主張は,主張自体失当である。
 2 原告の損害額
 そこで,被告の本件商標権2の侵害行為により原告が被った損害額について
判断する。
(1) 財産的損害
 証拠(甲7の1,2)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,平成15年8
月22日から平成16年2月11日までの間,「piano_763」及び「h841dtm」の
IDでインターネットのヤフーオークションに被告ステッカーを出品し,総数796
枚を合計75万7060円で販売したことが認められる。
 また,弁論の全趣旨によれば,被告は,被告ステッカーを製造販売するた
めに,前記第2の2(1)イ(ア)②(販売経費)記載のとおり,合計3万3135円の
費用を支出したことを認めることができる。本件全証拠によるも,上記経費額の他
に被告が被告ステッカーを製造販売するために経費を支出したことを認めることは
できない。
 したがって,被告は被告ステッカーの製造販売により,72万3925円
の利益を得たものと認められるから,同額が本件商標権2の侵害により原告が被っ
た損害額と推定される(商標法38条2項)。
   75万7060円-3万3135円=72万3925円
(2) 信用毀損による損害
ア 証拠(甲2ないし7)及び弁論の全趣旨によれば,以下のとおりの事実
が認められ,これに反する証拠はない。
(ア) 被告は,平成15年8月下旬ころから,インターネットのヤフーオ
ークションにおいて,IDを「piano_763」と表示して,被告ステッカーを出品した。
原告は,直ちに,オークションを運営するヤフーに対して,出品の削除を申し入
れ,削除されたが,被告は,その後も,出品を繰り返した。原告は,平成15年9
月19日付けの内容証明郵便により,被告に対して,被告ステッカーの販売の中
止,販売先の開示等を求める警告書を発し,同警告書は,翌日被告に到達した。こ
れに対して,被告は,同年10月2日,「大変ご迷惑をおかけした事をお詫び申し
上げます」「貴社にこのようなご迷惑がかかる事を想定せず,大変軽率な行動であ
った事を反省しております。」「現在このような警告を受けましたので販売してお
りません。」などと記載した書面を送付し,翌日原告に到達した。
(イ) ところが,被告は,その直後の同年10月11日,IDを「h841dtm」
に変更して,夜間,土日を選んで,被告ステッカーの出品を継続した。原告は,平
成16年1月29日付けの内容証明郵便により,被告に対して,被告ステッカーの
販売の中止,販売先の開示等を求める警告書を発し,同警告書は,翌日被告に到達
した。しかし,被告は,その後も,被告ステッカーの出品を続けていた。
 被告が被告ステッカーを販売した数量は,「piano_763」を使用したも
のが128枚であるのに対して,「h841dtm」を使用したものが668枚に及ぶ。
(ウ) 原告は,長年にわたり,警備業法に基づいた防犯サービスを営んで
いる。原告は,顧客との間で防犯サービス,火災監視サービス等の提供契約を締結
した場合に,契約者であることを表示し,防犯上の抑止力とすることを目的とし
て,契約者に対し原告ステッカーを貸与している。原告ステッカーは,防犯サービ
ス等の対象となった建物等に貼付され,これにより原告が同サービスを行っている
建物等であることが,部外者から一見して分かるものである。このように,原告ス
テッカーは,広告宣伝及び営業活動を行うことによって築き上げた防犯サービス等
の信用力を表象するものであり,同ステッカーの貼付された建物等は原告の提供す
る防犯サービス等の契約建物等であると認識されている。
イ 以上認定した事実,すなわち,①被告の販売に係る被告ステッカーは,
原告ステッカーと同一又は極めて酷似したものであって,被告ステッカーの外観か
らその出所を判別することは困難であること,②被告ステッカーの販売数量は,合
計約800枚であって,極めて多数に及ぶこと,③被告は,原告から警告状を受け
取って,詫び状を送付し,販売の中止を約束しながら,IDを変更して,販売を継続
していること,警告書を受け取った後の販売数量が,警告書を受ける前より多数に
及ぶこと,④原告ステッカーは,原告が多大の費用と時間をかけて,営業活動及び
宣伝活動をすることによって形成した原告の防犯サービス等の信用力を表象するも
のと評価でき,原告ステッカーの掲示をもって,原告の提供する防犯サービスの契
約者であると,一般に認識されていること等の事実に照らすならば,被告による被
告ステッカーの販売行為は,原告が形成してきた防犯サービスに対する評価及び信
用を著しく低下させる行為であり,その販売態様も悪質であるといえる。そうする
と,被告の販売行為により原告が被った信用毀損による損害は300万円と認める
のが相当である。
(3) 弁護士費用
 原告が本件訴訟の提起・追行を原告訴訟代理人に委任したことは記録上明
らかであるところ,本件訴訟の内容,認容額,難易度その他一切の事情を考慮すれ
ば,被告の行為と相当因果関係のある弁護士費用は50万円が相当である。
(4) 小括
 以上のとおり,原告が被告の本件商標権2の侵害行為により被った損害額
は,合計422万3925円となる。
 4 結語
 よって,原告の請求は主文掲記の限度で理由があるから,主文のとおり判決
する。
    東京地方裁判所民事第29部
           裁判長裁判官    飯  村  敏  明
              裁判官榎  戸  道  也
              裁判官山  田  真  紀
(別紙)
商標目録商標権目録(1)商標権目録(2)被告ステッカー目録原告ステッカー目

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