弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
一、第一七号事件について
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
二、第一八号事件について
原判決中控訴人らの各請求を棄却した部分を左のとおり変更する。
被控訴人は、別紙目録(三)第二審請求追加認容一覧表記載の各控訴人らに対し、
それぞれ同表認容額欄記載の各金員およびこれに対する昭和三九年二月六日以降右
各完済に至るまで年五分の割合による各金員を支払え。
右同表記載の控訴人らのうち、同表備考欄に全部認容と記載してある控訴人ら(以
下「甲グループの控訴人ら」と称する。)を除くその余の控訴人ら(以下「乙グル
ープの控訴人らと称する。)のその余の各請求および右同表記載の控訴人らを除く
その余の控訴人ら(以下「丙グループの控訴人ら」と称する。)の各請求はいずれ
もこれを棄却する。
訴訟費用は、第一、二審を通じ(ただし、第一七号事件の控訴費用を除く。)、甲
グループの控訴人らと被控訴人との間に生じた分は被控訴人の、乙グループの控訴
人らと被控訴人との間に生じた分はこれを二分し、その一を乙グループの控訴人ら
の、その一を被控訴人の、丙グループの控訴人らと被控訴人との間に生じた分は丙
グループの控訴人らの各負担とする。
       事   実
 第一七号事件控訴代理人は、第一次的に「原判決を取り消す。被控訴人らの訴を
却下する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決、予備
的に「原判決中控訴人敗訴の部分を取り消す。被控訴人らの各請求を棄却する。訴
訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決を求め、同事件被控
訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。
 第一八号事件控訴代理人は、「原判決中控訴人ら敗訴の部分を取り消す。被控訴
人は控訴人らに対し、別紙目録(二)の「原審不認容債権額」欄記載の各金員およ
びこれに対する昭和三九年二月六日以降完済に至るまで年五分の割合による各金員
を支払え。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、
同事件被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。
 当事者双方の主張ならびに証拠関係は、左記のとおり訂正・付加するほか、原判
決事実欄の記載と同一であるから、これを引用する。
一、原判決原本四枚目表一〇行目の「第一九条第一項第一号」を「第一九条第一項
第四号」と、同六枚目表一行目の「第二〇三条第一項」を「第二〇四条第一項」
と、同九枚目裏二行目の「同条例第二条第一項」を「同条例第二条第一項参照」
と、同四行目の「同規則第二条」を「同規則第二条参照」とそれぞれ訂正し、同一
〇枚目裏一二行目の「同法第五八条第二項」の次に「(現行法第五八条第三項)」
と挿入し、同一一枚目裏四行目の「学校教育法第五一条」を「学校教育法第四〇
条」と、同一二枚目表末行目の「第三項」を「第四項」とそれぞれ訂正し、また、
原判決添付別紙明細表のうち、左のとおり訂正する。
(1) 原告番号一二三の六月三〇日の終了時刻「二一・一五」を「二一・五〇」
とする。
(2) 原告番号一三三の六月三〇日の終了時刻「二一・〇〇」を「二一・五〇」
とする。
(3) 原告番号二八二の九月一日~三〇日の開始および終了時刻を「八・一五~
八・三〇(以下同じ)」と記入する。
(4) 原告番号五一二、五一七、五二八の七月五日の各開始時刻「一七・〇〇」
を「一七・一五」とする。
(5) 原告番号五八〇の年月日欄二行目に「五月二四日」と記入する。
(6) 原告番号七六七の六月一日の終了時刻「二一・〇〇」を「二一・四五」と
する。
(7) 原告番号八七〇の九月七日の終了時刻「八、〇〇」を「八・三〇」とす
る。
(8) 原告番号一二一八の九月一五日の開始および終了時刻「一七・五〇~二
二・三〇」を「一七・一五~二一・〇〇」とし、九月一六日の終了時刻「二一・〇
〇」を「二二・三〇」とする。
二、第一審原告らの追加主張
 第一審原告らは「朝の職員打合せ」ということで、午前八時三〇分以前の時間外
勤務についての請求をしているところ、原判決は右部分の請求をいずれも棄却し、
その理由の一として、第一時限の授業が開始されるまでに登校すれば遅刻としない
取扱いであつたことを挙げているが、この判断は誤つている。
 第一審原告らが勤務していた学校の日課表を仔細に検討すれば、次のことが明ら
かである。
(1) 第一時限の授業が午前八時三〇分以前に開始されている学校として、伝馬
町小学校は土曜日のみ八時一〇分、城内小学校は毎日八時二〇分、安東小学校は土
曜日のみ八時二〇分、青葉小学校は土曜日のみ八時一〇分、千代田小学校は土曜日
のみ八時二〇分、賤機北小・中学校は昭和三七・三八年とも毎日八時二〇分、井宮
小学校は毎日八時二五分、中島小学校は毎日八時二五分、服織中学校は毎日八時二
五分、南藁科中学校は土曜日のみ八時五分、美和中学校は土曜日八時一〇分、月・
火・水・木・金曜日八時二五分がいずれも開始時刻である。
(2) ホームルーム等特別教育活動が午前八時三〇分以前に開始されている学校
として、横内小学校は毎日八時二五分、伝馬町小学校は月・火曜日八時一〇分、水
曜日八時、木・金曜日八時一〇分、長田南小学校は毎日八時二五分、足久保小学校
は毎日八時二〇分、森下小学校は毎日八時二五分、千代田小学校は火曜日八時五
分、月・水・木・金曜日八時二五分、青葉小学校は土曜日を除き八時二〇分、服織
小学校は毎日八時二五分、安東小学校は月・火・水・木・金曜日八時二〇分、長田
南中学校は月・火・水・木・金曜日八時二〇分、土曜日八時二五分、南藁科小学校
は毎日八時二五分、城内小学校は毎日八時一〇分、井宮小学校は毎日八時二〇分、
城内中学校は毎日八時二〇分、大里中学校は毎日八時二五分、東豊田中学校は毎日
八時二〇分、安倍川中学校は毎日八時二〇分、賤機中学校は毎日八時二〇分、籠上
中学校は月・火・水・木・金曜日八時二〇分、土曜日八時二五分、末広中学校は毎
日八時二五分、安東中学校は毎日八時二五分、西奈中学校は毎日八時二五分、高松
中学校は毎日八時二五分、長田西中学校は毎日八時一五分、美和中学校は月・火・
水・木・金曜日八時一〇分、中藁科中学校は毎日八時二五分、南藁科中学校は月・
火・水・木・金曜日八時一五分がいずれも開始時刻である。
三、第一審被告の追加主張
(一) 修学旅行および遠足について
 労働基準法施行規則第二二条は、労働基準法第三七条所定の時間外割増賃金の計
算の基礎となるべき労働時間の計算について、「労働者が出張、記事の取材その他
事業所外で労働時間の全部又は一部を労働する場合で、労働時間を算定し難い場合
には、通常の労働時間労働したものとみなす。但し、使用者が予め別段の指示をし
た場合は、この限りでない。」と規定している。この規定は、要するに、出張その
他事業場外で労働時間の全部または一部を労働した場合には、時間外割増賃金は支
払わないという原則を表明したものである。
 本件において、第一審原告らの修学旅行または遠足の児童生徒引率はまさしく右
の原則に該当するものである。原判決の説示は、修学旅行の実態については優れた
判断を示しているけれども、法律的には必ずしも厳格とはいえない点があるが、前
記の規定に思いを致すならば疑問は氷解する。
 さらに加えて、修学旅行にあたつては、出張命令が出され、旅費が支給される。
旅費には鉄道賃、船賃、航空賃、車賃、日当、宿泊料、食卓料等が含まれており、
いわゆる運賃のほかに日当、宿泊料等の実質的には割増賃金に該当し、あるいはそ
れ以上のものが含まれている。このことも第一審原告らの主張が失当であることを
裏づける一の事情である。
(二) 朝の職員打合せについて
(1) 朝の職員打合せについては、原判決が認定したとおり、「各学校とも朝の
職員打合せの時刻までに登校することを建前とはしていても、実際には始業時刻の
後に定められている第一時限の授業が開始される迄に登校すれば遅刻(時間休暇)
としない取扱いであつた」。
 そもそも、時間外労働とは、労働者の諾否に関係なく使用者が一方的に労働力の
提供を命令し、労働者がこれに服従する義務を負う関係をいうのであつて、命令を
受けた労働者がこれに従わないときは就業規則違反の制裁を受けるべき立場に立つ
のである。本件事案において、職員会議についての労資関係もこれと全然同様であ
るにもかかわらず、原判決が職員会議について第一審原告の請求を認容したことは
違法であるが、それはさておき、朝の職員打合せに関する関係は右認定のとおりで
あつて、これをもつて時間外勤務であるとする余地は絶無である。
(2) 第一審原告らの給料は月給で定められているから、労働基準法施行規則第
一九条第一項第四号の規定により時間外割増賃金の計算の基礎となるべき賃金とし
て一時間当りの金額を算出することになる。ところで、朝の職員打合せは五分ない
し一〇分というような極めて短時間で行われるものであるから、かりにそれが時間
外勤務であるとしても、このような一時間未満の時間外勤務の行われた場合の計算
については労働基準法および同法施行規則にはなんらの定めもない。一方、「静岡
市職員の給与に関する条例」第一七条は時間外勤務手当の支給について規定し、同
第一九条は勤務時間一時間あたりの給与額の算定について「勤務一時間当りの給与
額は、給料の月額(中略)に一二を乗じ、その額を一週間の勤務時間に五二を乗じ
たもので除して得た額」とする旨を規定している。しかして、同第二五条の「この
条例施行について必要な事項は、市規則で定める」旨の規定に基づいて「静岡市職
員の給与に関する条例施行規則」が制定されているが、同規則第九条第二項は、
「時間外勤務手当の支給の基礎となる勤務時間数は、その月分をそれぞれ支給率の
異なる部分ごとに通算し、それぞれ一時間に満たない端数があるときは、三〇分以
上を一時間とし、三〇分未満を切り捨てる。」と規定している。静岡県の給与条例
および規則にも全く同様の規定が設けられているが、これらの各規定は静岡県およ
び静岡市の全職員に適用されているのであり、したがつて、第一審原告の主張が失
当であることは明らかである。
四、証拠関係(省略)
       理   由
一、当裁判所の判断として、まず、左記に訂正ならびに付加するほか、原判決理由
一から六までおよび同七のうち冒頭から原判決原本二九枚目表一行目の「認容し」
までを引用する(ただし、同二八枚目裏七行から八行目の括弧内を削除する。)。
すなわち、修学旅行および遠足の引率・付添の勤務についての時間外勤務手当請求
に関するものを除いては、概ね原審とその見解を同じくするものである。
(1) 原判決原本一五枚目表一一行目の「考えるのに、」の次に「かりに、第一
審被告主張のごとく、時間外勤務手当の負担者が静岡県であつて第一審被告ではな
いとしても、そのことは、本訴請求を実体上理由なからしめる根拠とはなつても、
第一審被告の本訴における当事者適格を失わせる理由となるものでないことは明ら
かであるから、第一審被告の右本案前の主張はそれ自体理由がなく、また、」と挿
入する。同裏七行から八行目の「被告の被告適格を欠く旨の主張は」を「第一審被
告の右時間外勤務手当の支払義務者が静岡県である旨の主張も」と変更する。
(2) 原判決原本一六枚目表七行目の「尋問の結果」の次に「当審証人A、同
B、同C、同D、同Eの各証言ならびに当審における第一審原告F、同G、同H、
同I、同Jの各尋問の結果」と挿入し、同八行目の「認められる。」の次に「そし
て、この認定を動かしうる証拠はない。」と付加する。
(3) 原判決原本一九枚目表末行の「一、」を「二、」に改め、同二〇枚目裏一
行から二行目の「地方公務員法第五八条第三項」の次に「(現行法第五八条第四
項)」と挿入し、同二行目の「受けて行う」の次に「か、もしくは労働基準法第三
六条の規定による」と挿入し、同二一枚目裏一一行から一二行目の「服従しなけれ
ばならないものと」を「服従せざるを得ないような立場に置かれているものと」と
変更する。
(4) 原判決原本二三枚目裏六行目と七行目の間に、次のことを挿入する。
 「なお、義務教育費国庫負担法第二条および市町村立学校職員給与負担法第一条
は、給与の種類を限定列挙し、ことに後者の第一条は、時間外勤務手当に限つてと
くに括弧書を付して『事務職員に係るものとする。』と明記しているけれども、こ
れらの法律は、公立の義務教育諸学校の経費負担者をいずれにするかについて規定
しているものにすぎず、これによつて教職員の給与を規定したものではないから、
右法案の規定を根拠として教職員の時間外勤務手当請求権を否定することはできな
い。また、地方交付税法において、教育費のうちの時間外勤務手当が事務職員につ
いてのみ計上されていることについても、同様のことがいえるのであつて、同法も
その第一条に掲げる目的のために制定されているにすぎず、教職員の給与を規定し
たものではないのである。」
(5) 原判決原本二四枚目表二行目から同二五枚目裏末行まで(同所(一)の説
示全部)を削除し、その部分に対する判断説示を後記三のとおりに改める。
(6) 原判決原本二六枚目表四行目の「本人尋問の結果」の次に「当審証人A、
同B、同C、同D、同Eの各証言ならびに当審における第一審原告F、同Gの各本
人尋問の結果」と挿入する。
(7) 原判決原本二六枚目裏八行目の「法規は見当らず」の次に「(もつとも、
静岡県においては、昭和四一年七月八日『学校職員の勤務時間等の特例に関する規
則―昭和四一年静岡県教育委員会規則第五号』を制定して、以後変形八時間労働制
をとることになつたが、本件には適用されないことはいうまでもない。)」と挿入
し、同二六枚目裏八行目および同二七枚目表二行目の各「一、」をいずれも
「二、」と、「時間規則」を「勤務時間規則」と、同四行から五行目の「時間条
例」を「勤務時間条例」とそれぞれ改める。
(8) 原判決原本二八枚目裏一行目の「理由がない。」の次に「以上の法理は、
修学旅行ないし遠足の引率・付添の勤務についての時間外勤務手当請求に関しても
同様にあてはまるものである。」と付加する。
(9) 原判決原本二八枚目裏七行から八行目の括弧内を全部削除する。
(10) 原判決添付別紙明細表を左のとおり訂正する。
(イ) 原告番号五七八、五七九、五八〇の各備考欄の×印をすべて削除する。
(ロ) 原告番号六一三の一〇月一八日および一九日の備考欄にいずれも×印をす
る。
(ハ) 原告番号七八一、七八二、七八四、七八七、七八八、七九〇の各四月二七
日の備考欄の×印をいずれも削除する。
(ニ) 原告番号八五五、八六〇、八六二の各五月四日の備考欄の×印をいずれも
削除する。
(ホ) 原告番号一一五三の一〇月七日の備考欄に○印をする。
(ヘ) 原告番号一二一八、一二二四の各九月一六日の備考欄にいずれも×印をす
る。
二、第一審原告らの当審における追加主張について
 第一審原告らは、本訴において「朝の職員の打合せ」の時間としてそれぞれ午前
八時三〇分まで勤務したことを理由として時間外勤務手当を請求しているが、実際
には第一時限の授業が午前八時三〇分以前に開始された十数校、ホームルーム等特
別教育活動が午前八時三〇分以前に開始された二十数校がそれぞれ存在するとし
て、その各開始時刻を列挙しているが、かりに、右第一審原告らの主張するとおり
の各時刻にその主張の各小・中学校の第一時限ないしホームルーム等がそれぞれ開
始された事実があるとしても、第一審原告らは本訴において原審以来一貫して右の
時間につきいずれも「朝の職員打合せ」の時間として勤務したことを理由として時
間外勤務手当を請求しているのであるから、右の時間について時間外勤務手当を求
める本訴請求が失当であることは原判示のとおりであるというほかなく、所論は採
用できない。
三、修学旅行および遠足における引率・付添の勤務について(第一審被告の当審に
おける追加主張(一)の判断を含む。)
 学校行事のうち、修学旅行および遠足等のごとく第一審原告らがそれぞれその勤
務する所属学校を離れて勤務に服する場合には、職員が公務のため一時その在勤官
署を離れて旅行することになり、いわゆる出張として旅費が支給されるが、その支
給方法は条例で定めなければならないこととされているところ(地方自治法第二〇
三条、第二〇四条、地方公務員法第二四条第六項、地方教育行政の組織および運営
に関する法律第四二条、市町村立学校職員給与負担法第一条、第三条)、第一審原
告ら教職員については静岡県において右条例が未制定であるため、なお従前の例に
よることとされ(地方公務員法附則第六項)、結局、国立学校の教育公務員の例に
より、国家公務員等の旅費に関する法律(昭和二五年度法律第一一四号)によるこ
ととなる。
 ところで、第一審原告らが出張して公務に従事する場合は、一応正規の勤務時間
内公務に従事したとみられるけれども、「給与規則」第二七条第二項によれば、
「公務により出張中、出張目的地において正規の勤務時間をこえて勤務すべきこと
を任命権者があらかじめ命じた場合においてその勤務時間につき明確に証明できる
ものについては、時間外勤務手当を支給する。」と定められているところ、本件の
場合は、前記当審の事実認定(原判決引用)に供した各証拠によれば、第一審原告
らの所属する各学校においては、修学旅行や遠足を実施するにあたつては、その目
的、日程、引率者もしくは費用等について計画案を作成し、これを学校長の名をも
つて静岡市教育委員会に承認を求め、その認可を得てから実行しているものであつ
て、右計画によれば、第一審原告らの主張する原判決添付別紙明細表に各記載のご
とき時刻がその行事の集合時刻、乗車、出発時刻あるいは就寝時刻、起床時刻、さ
らには静岡駅着時刻、解散時刻等と定められていること(もつとも、これらの時刻
のうちの若干につき明記されていない計画表もあるが、その場合でもその記載事項
の前後の関係から右の点はおのずから明らかとなる。)、右旅行や遠足が計画どお
り実施され、第一審原告らがその主張のとおり各所属学校長のあらかじめなした命
令によつてこれに参加し、その主張の各時間外勤務をしたことが明確に証明できる
こと(ただし、原判決添付別紙明細表備考欄に×印を付したもの―当審において前
示一(10)(イ)(ロ)(ニ)(ヘ)で右同欄を訂正した後のものによる―を除
く。)がいずれも認められ、そして、この場合右各学校長が右規則第二七条第二項
にいう任命権者にはあたらないけれどもこのような学校長の命令により現実になし
た時間外勤務に対し第一審原告らがその主張の各時間外勤務手当請求権を取得する
と解すべきことは、原判決理由三(当審引用)に記するところと同様である。
 第一審被告は、本件修学旅行または遠足の引率・付添の勤務については、労働基
準法施行規則第二二条の規定が適用されるから、第一審原告らがかりに現実に勤務
時間外に勤務した事実が認められるとしても、これに対して時間外勤務手当の支払
請求権は発生しない旨主張する。思うに、同条が設けられた趣旨は、出張等同条に
規定する場合は本来の勤務場所を離れて勤務するので、一般的にどのような勤務が
現実になされたのか必らずしも明らかに把握できないため労働時間の算定が困難で
あるから、争いを避けるために規定されたものであり、したがつて、使用者が予め
明示的または黙示的に別段の指示をした場合、この指示内容によつて労働時間の算
定が可能となるかぎりその例外を設けることとし、同条にはその但書として「但
し、使用者が予め別段の指示をした場合は、この限りでない。」と規定したものと
理解すべきである。そして、前示「給与規則」第二七条第二項の規定も、右労働基
準法施行規則第二二条本文に規定するような趣旨を当然の前提において、右但書と
ほぼ同じ趣旨のことを定めたものと解される。本件における修学旅行ないし遠足に
おける第一審原告らの時間外勤務については、右「給与規則」第二七条第二項のほ
かに労働基準法施行規則第二二条の適用される余地があるとしても、前認定の事実
関係からすれば、まさに同条但書が適用されるべき場合に該当するものと認められ
るから、同条本文の規定がそのまま適用される場合であることを前提とする第一審
被告の主張は採用できない。
 また、第一審被告は、修学旅行の引率・付添にあたつては旅費の支給があり、そ
のうちとくに日当、宿泊料等実質的には割増賃金に該当するものが含まれているこ
とも、修学旅行については時間外勤務手当の支給を請求できない理由の一であると
主張する。しかしながら、旅費は本来公務のために旅行する者に対してその旅行に
必要な経費として時間外勤務の有無に関係なく支給されるものであつて、その本質
は実費の支弁であり役務の提供に対する対価たる給与とは性質を異にするから、日
当ないし宿泊料といえども実質的にも第一審被告のいうような割増賃金と理解すべ
きものではないし、まして、時間外勤務手当をもカバーする意味をもつものではな
いから、右主張も採りえない。
 さらに、原審証人K、同L、原審および当審証人A、同D、当審証人B、同C、
同Eの各証言および原審における第一審原告M、当審における第一審原告I、同J
の各本人尋問の結果によれば、修学旅行は大体二日ないし四日で終るが、出発の前
日および帰着の翌日には参加教職員の勤務が軽減されることを通例としていること
が認められるが、このことは、旅行に際しての教職員ならびに生徒の事前準備や疲
労回復のための考慮によるものであることは公知の事実であり、そのことをもつ
て、修学旅行中に行われた時間外勤務時間の埋合せがなされたものである等と理解
すべきでないことも、すでに前認定(原判示理由五の説示引用)のとおりである。
 なお、原判決は修学旅行ないし遠足における引率ないし付添の勤務は、その実質
において労働基準法第四一条第三号にいう監視または断続的労働にあたり、客観的
にみて同号の許可基準に該当するとしている。しかしながら、前段に挙示の各証拠
ならびに当審における第一審原告Hの本人尋問の結果によれば、右引率・付添の勤
務は、児童生徒に対する教育的効果の達成や危険の予防ないし発生した危険に対す
る善後措置の施行等極めて重大な責任を負担し、心神ともに不断の緊張およびその
結果としての疲労を伴うものであつて、その労働の密度において決して右原判示の
ごとき性質のものでないことが認められ(とくに、観光ないしレクリエーシヨン的
色彩を多分に帯びるものとする原判示は論外である。)、これに反する証拠はない
(原審および当審における証人Dの各証言中には、修学旅行にあたつて引率・付添
を希望する教職員が多い旨の供述があるが、かりにそのような事実があつたからと
いつて右認定の妨げとなるものではない。)。のみならず、かりに引率・付添の勤
務が原判示のような実質をもつ労働であるとしても、本件において労働基準法第四
一条第三号に規定する行政官庁の許可を受けたことについてなんらの主張・立証が
ないから、第一審被告は同法を適用することによつて時間外勤務手当の支払義務を
免れることはできないものというべきである。この点についても、「労働の性質に
おいてそのように解せられる以上行政官庁の許可を受けた者ではなくてもその違法
性とはかかわりなく、かかる労働に対する対価としては、時間外勤務の割増賃金支
払義務は発生しないものと解するのが妥当である。」とする原判示は、法律の解釈
を誤つた不当の判断といわざるを得ない。
四、以上のとおりであるから、第一審原告らの本訴請求中、原告番号七八一、七八
二、七八四、七八七、七八八、七九〇の各第一審原告らの昭和三七年四月二七日の
職員会議出席による各時間外勤務手当の支払を求める部分ならびに第一審原告らの
修学旅行および遠足の引率・付添の勤務による時間外勤務手当の支払を求める部分
(ただし、当審において前示時間外勤務の事実があるものと認めた範囲に限る。)
は、いずれも正当であるから、右各時間外勤務に対し、その勤務時間数ならびに勤
務手当額の計算につき当審引用の原判決理由七に記載の方法と同一の方法によつて
算出した別紙目録(三)第二審請求追加認容一覧表記載の各金員とこれに対する支
払期到来後の昭和三九年二月六日以降右各完済に至るまで民法所定の年五分の割合
による遅延損害金の支払を求める本訴請求部分を認容すべきであり、右部分を棄却
した原判決は不当であるから、その限度において取消を免れない。そして、原判決
は、右部分を除くその余の請求について認容しまたは棄却した限度においては結局
相当というべきであるから、第一七号事件の控訴人の本件控訴はすべて理由がな
く、第一八号事件の控訴人らの本件控訴は一部理由があり一部理由がないことに帰
する。
 よつて、訴訟費用の負担につき民訴法第九五条、第八九条、第九六条、第九二
条、第九三条に従い、主文のとおり判決する。
(裁判官 桑原正憲 高津環 濱秀和)
別紙目録(一)~(三)(省略)

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勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛