弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人を懲役六月及び罰金千円に処する。
     右罰金を完納することができないときは、金弐百五拾円を壱日に換算し
た期間被告人を労役場に留置する。
     第一、二審の訴訟費用は全部被告人の負担とする。
         理    由
 弁護人塩谷栄一の控訴趣意は、同弁護人提出の控訴趣意書記載のとおりである。
 右控訴趣意第一点について
 所論の要旨は、控訴審が原判決を破棄し、直ちに判決することができないものと
認めて事件を原審に差戻したる以上、原審は須らく更に事件につき審理を尽したる
上判決をなすべきであるに拘らず、原審は事茲に出でず弁護人のなしたる証人A、
B、Cの取調べ請求を全部却下したのは、憲法第三十七条第二項に違反するという
のである。しかし憲法第三十七条第二項は裁判所がその必要を認めて尋問を許した
証人について規定しているのであつて、この規定を根拠として裁判所は被告人側の
申請にかかる証人のすべてを取調べなければならないということはできない。しか
して原裁判所が論旨にいう証人を取調べなかつたのは次段に記明するとおり、理由
の存するところであるから、論旨は理由がない。
 同第二点(事実の誤認)について
 記録によれば、当裁判所はさきの控訴審において「原審公判廷に於ける被告人の
供述、Dの盗難届謄本、原審に於ける証人B、同Eの各尋問調書当審に於ける証人
A、同Bの各尋問調書の記載によると被告人がBに依頼し原判決判示の衣料品でA
の為金策した際右物件はAが他から窃取してきたものであることを知つていたこと
は明かである」と判示し、「これを知つていたと認められないとし、被告人に対し
無罪の言渡をした原判決は結局判決に影響を及ぼすことが明かな事実の誤認をなし
たも<要旨第一>の」であるとして、原判決を破棄し、事件を原裁判所に差戻す旨の
判決をしたのである。かくのごとく上級審において下級審判決が破棄さ
れ、事件の差戻があつた場合には、下級審はその事件を処理するに当り、判決破棄
の理由となつた上級審の事実上及び法律上の意見に拘束され(裁判所法第四条)、
必ずその意見に従いこれに基ずいて事件の裁判をしなければならない。この理は既
に上告審の判断については最高裁判所の判決(昭和二十五年十月二十五日大法廷判
決)の存するところであるが、控訴審の判断についてもその理は異ならない。
 それ故本件において前記のごとき理由により事件の差戻を受けた原審は、新な反
証のあらわれない限り、被告人は問題の衣料品が賍物であることを知つてしたもの
と認定するの外はないのである。そうして原審の公判調書によると、差戻後の原審
では差戻前の第一審で取調べられた証拠及び前回の控訴審で尋問された証人の調書
について証拠調をなしたのみで新な証拠の取調はなかつたことが明白である。尤
も、差戻後の原審で弁護人は証人A、B、Cの取調を請求しているが右A及びB
は、すでに差戻前の第一審及び前回の公訴審で取調べられて居り、証人Cは前回の
控訴審で弁護人から取調べの請求があつたが却下されているから、差戻後の原審が
これを取調べなかつたのは、前記のとおり上級審の意見に拘束されるものとして、
適法な処置といわねばならない。
 以上の次第であるから、原審が被告人に賍物たるの認識があつたものとし、賍物
罪の成立を認めたのは、上級審の意見に従つてなしたものであつて、これに対して
事実の誤認を云々するの余地はなく、論旨は採用するに由がない。
 職権を以て調査するに、原判決は被告人が昭和二十三年四月二十七日銚子簡易裁
判所において窃盗罪により懲役十月に処せられ当時右刑の執行を受け終つたもので
あるとして、原判示の罪の刑に累犯の加重をしている。しかるに、札幌高等検察庁
の当裁判所に対する被告人に関する刑の執行状況についての回答書に添附してある
豊多摩刑務所から札幌高等検察庁鷲田検事宛電信回答によると、被告人は前記のご
とく、一、昭和二十三年四月二十七日銚子簡易裁判所において窃盗罪により懲役十
月に処せられ(同年五月二十五日確定)、次で、二、同年五月二十五日同裁判所に
おいて同罪により懲役一年に処せられ(同日確定)先ず第二刑につき刑の執行を受
け、昭和二十三年十一月十二日刑の執行順序変更により同日以降第一刑の執行を受
け、昭和二十四年四<要旨第二>月一日仮出獄を許され、右仮出獄の処分を取消され
ることなくして、右第一、二刑の残刑期に相当する期間を経過したこと
が認められる。二つの懲役刑について仮出獄を許された者の仮出獄期間の算出につ
いては、明文はないが、先ず仮出獄を許された当時執行を受けていた刑の残刑期が
仮出獄のときから進行し、その刑期の満了の翌日から他の刑の残刑期が進行するも
のと解するのが相当である。しからば被告人に対し先ず前記仮出獄を許された当時
執行を受けていた第一刑につき仮出獄期間が進行し、該刑は昭和二十四年九月十一
日経過と同時にその執行を終り、次で第二刑の残刑期に相当する期間を経過すると
ともに、該刑の執行を終つたことになるものといわねばならぬ。しかるに、原判決
の認めるところによれば、被告人の原判示の犯行は昭和二十四年九月十日頃のこと
であるから、右は第一刑の仮出獄中の犯罪にかかり従つて原判決が前記のごとく当
時すでに第一刑の刑の執行が受け終つたものとして累犯の加重したのは、受刑の事
実を誤認し、ひいて法律の適用を誤つたものであつて、右誤りは判決に影響を及ぼ
すことが明らかであり、原判決は破棄を免れない。
 よつて弁護人の量刑不当の論旨に対する判断を省略し、刑事訴訟法第三百八十二
条第三百八十条第三百九十七条により原判決を破棄し、同法第四百条但書により更
に判決することとする。
 原判決の確定した罪となる事実に法令を適用すると、被告人の原判示の所為は刑
法第二百五十六条第二項罰金等臨時措置法第二条第三条に該当するから、所定刑期
及び罰金額の範囲内で主文の刑を量定し、換刑処分につき刑法第十八条を、訴訟費
用の負担につき刑事訴訟法第百八十一条を適用して主文のとおり判決する。
 (裁判長判事 熊谷直之助 判事 成智寿朗 判事 笠井寅雄)

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