弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人青柳孝夫外一七〇名(別紙記載のとおり)の上告理由第一点ないし第
三点および同青柳孝夫外二二名(別紙記載のとおり)の上告理由第一点ないし第三
点について。
 論旨は、本件選挙を無効と認めなかつた原判決は、公職選挙法二〇五条の解釈を
誤り、かつ憲法一五条、九三条、二一条の各条項による保障を空文化するものとい
う。
 公職選挙法二〇五条一項にいう選挙の規定に違反するとは、主として選挙の管理
の任にあたる機関の選挙の管理執行手続に関する規定違背を指すものと解するのを
相当とし、選挙人、候補者、選挙運動者等の選挙の取締りないし罰則規定違反の行
為のごときは、これにあたるものとは認められない。それは、かかる違法行為も多
かれ少なかれ選挙の結果に影響する場合が多いであろうが、法はその違反者を処罰
することによつてこれら規定事項の遵守を期待しているのであつて、その違法行為
のために選挙を無効とし再選挙を行なうことを趣旨とするものではないと解される
からである。もつとも、かような違法行為でも、そのために選挙地域内の選挙人全
般がその自由な判断によつて投票することを妨げられたような場合には、選挙の自
由公正は失われたものとして、あるいは選挙を無効としなければならないことも考
えられないではない(最高裁判所昭和三〇年(オ)第四四五号、同三〇年八月九日
第三小法廷判決、民集九巻九号一一八一頁参照)。
 しかし、原判決によれば、本件選挙においては、違法な選挙活動とみられる諸行
為に関連して選挙の管理執行に関する規定の違反はなく、それら行為のそれぞれに
も、またそれら一切を総合しても、それにより選挙の自由公正を失わしめ、あるい
は選挙の結果に異動をきたすおそれのあるほどの影響は認めがたいというのであつ
て、それら各事実についての原審の認定判断に違法と目すべきものは存しない。し
てみれば、本件選挙を無効と解しなかつた原判決に法令の解釈適用の過誤のないこ
とは、前叙したととろからも明らかといわなければならない。論旨は、なお被上告
人に違法な選挙活動を抑止すべき一般義務あるものとし、被上告人の義務違反を主
張するが、関係法令に徴し肯認しがたく、また違憲というが、ひつきよう公職選挙
法の規定の解釈を争うものにすぎない。論旨は採用しがたい。
 つぎに論旨は、原判決は本件選挙において違法な選挙活動とみられる諸行為がす
べて重畳的に結合し、全般的、組織的に行なわれたことを看過し、大審院および当
裁判所の判例に違反する過誤をおかし、またそれら諸行為を政府、自由民主党、候
補者D派が一体となつて組織的、計画的に遂行した事実を否定した採証法則違反が
あるものと非難する。
 しかし、本件においては、原判決は、違法な選挙活動と認められる諸行為のそれ
ぞれにつき、その影響の範囲および程度を判断しただけではなく、それら事実一切
を総合した場合における影響力についても、本件選挙における諸事情、各事実の程
度、投票数、各候補者の得票数等から推して選挙の結果に異動をきたすおそれの考
えられない旨を判示しているのである。その判断は是認できるものであつて、これ
に所論の判例違反および判断遺脱の違法はない。また、所論の採証法則違反は、原
審の専権に属する証拠の採否ないし事実の認定を非難するに帰する。論旨はいずれ
も理由がない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、
主文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外
            裁判官    色   川   幸 太 郎

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