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裁判例


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○ 主文
一 原告A、同B及び同Cの訴えをいずれも却下する。
二 その余の原告らの請求をいずれも棄却する。
三 訴訟費用は原告らの負担とする。
○ 事実
第一 当事者の求めた裁判
一 原告ら
1 被告が平成三年八月二八日付けで長野県に対してした長野県営松本空港の飛行
場施設の変更許可を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
二 被告
1 本案前の答弁
原告らの訴えをいずれも却下する。
2 本案の答弁
原告らの請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は原告らの負担とする。
第二 当事者の主張
一 請求原因
1 長野県松本市<地名略>に所在する長野県営松本空港へ以下「本件飛行場」と
いう。)は、二〇〇〇メートルないし三〇〇〇メートルの山々に囲まれた盆地(松
本平)の中に位置し、長野県が設置し管理する空港整備法二条一項三号所定の第三
種空港であって、昭和四〇年に供用が開始され、YS11型旅客機(プロペラ機)
の定期便が一日二往復就航していた。
本件飛行場の施設の概要等は別紙1の「旧(現状)」欄記載のとおりであったが、
長野県は、本件飛行場の滑走路の長さを従前の一五〇〇メートルから二〇〇〇メー
トルに拡張してMD87型旅客機の規模のジェット機の離着陸を可能なものとする
ため、平成二年九月一七日、被告に対し、航空法(以下「法」という。)四三条一
項の規定に従い、本件飛行場の施設を別紙1の「新(変更後)」欄記載のとおりと
する旨の飛行場施設の変更(以下「本件施設変更」という。)の許可を申請した
(以下「本件申請」という。)。
2 本件施設変更後の本件飛行場の着陸帯は、従前の着陸帯の北側三〇〇メート
ル、南側二〇〇メートルの範囲で拡張され、その長さが一六二〇メートルから二一
二〇メートルとなり、航空法施行規則(以下「規則」という。)七五条所定の等級
が「D」から「C」となることから、法二条七項及び規則二条二号の進入表面、法
二条九項の転移表面に大きな変更はないものの、法二条八項及び規則三条一号の水
平表面は、その半径が二五〇〇メートルから三〇〇〇メートルとなり五〇〇メート
ルの範囲で拡張されることになる。
本件施設変更後の本件飛行場の進入表面、転移表面及び水平表面(以下、これらを
総称して「制限表面」という。)の状況は別紙2に図示したとおりであり、法四九
条一項によれば、法四〇条(四三条二項において準用する場合を含む。)の告示が
あった後においては、何人も右制限表面の上に出る高さの建造物、植物その他の物
件を設置し、植栽し、又は留置してはならないこととされている。
3 ところが、本件飛行場周辺は北東側から南西側に向けて緩やかな上り勾配の傾
斜地となっているため、別紙3のとおり、本件施設変更後の水平表面の南西部分に
おいて地盤が一〇三・五ヘクタールの範囲で水平表面の上に突出し、その突出地盤
(水平表面の上に出る高さの最大値は一二・六メートル)の上には、東京電力株式
会社所有の高圧送電線用(東京電力甲信幹線)の鉄塔一〇基及び昭和電工株式会社
所有の高圧送電線用(昭和電工赤松線)の鉄塔一九基などが存在しているほか(そ
れらの鉄塔の高さは一一・一メートルないし二七・九メートルであり、最高で水平
表面の上方二九・六メートルまで突出している。)、右突出地盤に隣接する地域に
も、東京電力甲信幹線の鉄塔六基及び昭和電工赤松線の鉄塔九基などが存在してお
り、そのうち別紙3の63と表示された東京電力甲信幹線の鉄塔は、水平表面の上
方二五・三メートルまで突出している(以下、本件施設変更後の水平表面の上に突
出する右地盤、鉄塔及び高圧送電線を「本件鉄塔等」という。)。
4 被告は、本件鉄塔等は本件飛行場への航空機の離着陸に支障がないものと判断
して、平成三年八月二八日付けで本件申請を許可し(以下「本件処分」とい
う。)、同年九月一一日、本件施設変更後の制限表面の範囲等を告示(法四三条二
項、四〇条)した。
5 しかしながら、法は、飛行場に離着陸する航空機の航行の安全を確保するた
め、制限表面の上方を無障害物空間として確保すべきことを義務付けているのであ
り、水平表面の上に本件鉄塔等の障害物が突出することになる本件施設変更は、本
件飛行場に離着陸する航空機の航行に支障を来す施設変更であり、法三九条一項一
号及び規則七九条一項一号の要件を充足しないし、また、本件施設変更は、その後
に就航が予定されているジェット機の騒音・振動によって近隣住民の権利利益に対
する著しい侵害をもたらすものであるから、法三九条一項二号の要件も充足してい
ないというべきであって、本件処分は違法である。
6 原告A、同B及び同Cを除く原告ら(以下「原告Dら一六名」という。)は、
本件施設変更によって拡張された水平表面の投影面内に土地を所有する者であり、
原告B及び同Cは、右拡張された水平表面の投影面内に土地を所有する者の妻であ
り、また、原告Aは、本件施設変更前の水平表面の投影面内に土地を所有する者で
あって、いずれも本件施設変更後の本件飛行場の水平表面の投影面内の土地に居住
し、違法な本件処分によって航空機の墜落の危険や航空機の騒音・振動にさらされ
る者であり、本件処分の取消しを求める法律上の利益を有する。
7 よって、原告らは、本件処分の取消しを求める。
二 被告の本案前の主張
1 法が飛行場について重要な変更を行う場合には被告の許可を受けなければなら
ないとしているのは、飛行場施設のあり方が航空機の航行の安全を確保する上で極
めて重要であることなどから、右安全等について被告による審査を行う必要がある
ことによるものであり、その審査の対象は、飛行場の位置、構造等の変更計画が所
定の基準に適合しているか否か、飛行場施設の変更によって土地所有者等の利益を
著しく害することとなるか否か、変更後の飛行場の管理計画が所定の保安上の基準
に適合しているか否か等であって、飛行場の周辺住民が航空機の墜落や騒音等によ
り平穏で安全な生活を営む利益を害されるかどうかという事項は審査の対象に含ま
れていないのである。
したがって、原告らが主張する航空機の墜落による危険にさらされない利益や騒音
等の被害を受けないという利益は、本件処分の根拠法規が個々人の個別的利益とし
て保護すべきものとしている利益ではなく、法律上保護された利益ということはで
きないから、原告らは、右利益の侵害を理由に本件処分の取消しを求める原告適格
を有しない。
2 仮に、本件処分によって、水平表面が拡大したことにより従前以上に私権制限
を受けることになる者につき、本件処分の取消しを求める法律上の利益が認められ
るとしても、原告A、同B及び同Cについては、本件処分によって、自己の財産権
につき従前以上の制約を受けることになる者とはいえないから、本件処分の取消し
を求める法律上の利益はない。
三 被告の本案前の主張に対する原告らの反論
1 定期航空運送事業免許に係る路線を航行する航空機の騒音によって社会通念上
著しい障害を受けることになる飛行場周辺住民は、当該免許の取消しを求める法律
上の利益を有するとされているが(最高裁第二小法廷平成元年二月一七日判決・民
集四三巻二号五六頁)、これは、走期航空運送事業免許の付与の審査においては、
飛行場周辺の環境利益を一般的公益として考慮するだけでなく、周辺住民が航空機
の騒音によって著しい障害を受けないという利益を個別的具体的に考慮すべきであ
ると解されているからであり、右最高裁判決の趣旨は、飛行場施設の変更許可の取
消しを求める原告適格についても当てはまる。
法は、航空機の航行の安全を図り、もって航空の発達を図ることを目的としており
(法一条)、飛行場施設の変更についての許否の審査は、飛行場に離着陸する航空
機の航行の安全が確保されているかどうか、これが確保されていることにより飛行
場周辺の個々の住民の安全が確保されるかどうかという観点から行われるべきであ
って、法四三条二項によって準用される法三九条一項二号所定の「他人の利益を著
しく害することとならない」という要件も、飛行場に離着陸する航空機の墜落の危
険や騒音等による被害を受けないで平穏・安全な生活を営むという飛行場周辺の住
民の利益に対する障害がないことを含むものと解される。
したがって、本件飛行場がジェット機の離着陸する飛行場に変更されることによ
り、航空機の墜落の危険にきられたり、航空機の騒音・振動被害にさらされること
になる原告らは、右変更を許可する本件処分の取消しを求める法律上の利益を有す
るというべきである。
2 仮にそうでないとしても、本件処分により水平表面が拡大される結果、原告D
ら一六名は、本件処分の法的効果によって、その所有地について水平表面による私
権制限を受忍させられる者であり、また、原告B及び同Cも、夫の所有地について
生じる私権制限により潜在的に自己の財産権の制限を受忍させられる者であるか
ら、本件処分の取消しを求める法律上の利益を有するというべきである。
四 請求原因に対する認否
1 請求原因1ないし4の事実は認める。
2 同5は争う。
3 同6のうち、原告らの土地の所有関係は不知、その余は争う。
なお、原告らが水平表面による私権制限を受ける者として原告適格が認められると
した場合であっても、航空機の墜落の危険や航空機による騒音・振動被害を主張し
て法三九条一項一号及び規則七九条一項一号並びに法三九条一項二号の各要件の充
足を争うことは、本件処分の取消しを求めるにつき原告らに認められる法律上の利
益(私権制限)とは何ら関係のない違法事由の主張であって、このような主張は行
政事件訴訟法一〇条一項に照らし許されないというべきである。
五 被告の抗弁
1 本件施設変更後の本件飛行場の位置、構造等の設置の計画は、以下のとおり、
運輸省令で定める基準に適合するものであり、本件申請は、法四三条二項によって
準用される法三九条一項一号の要件を充足している。
(一) 規則七九条一項一号適合性
本件申請時には、本件施設変更後の本件飛行場の進入表面及び転移表面の上に突出
する物件が存在していたが、それらの全ては、本件施設変更の工事完成予定期日ま
でに確実に除去できるものであった(実際にも工事完成予定期日までに除去され
た。)。
また、本件申請においては、水平表面の上に突出する本件鉄塔等は除去されずに本
件施設変更後も存続することとされていたが、長野県は、定期航空機の原則的な飛
行方式である計器飛行方式の飛行経路を東側に限定するという前提で本件申請を行
っており、その内容のとおり、周回進入区域及び旋回離陸上昇区域を本件飛行場の
東側に限定することによって、本件鉄塔等は計器飛行方式をとる航空機の離着陸の
支障とはならないと認められ、また、有視界飛行方式による飛行が許容されるのは
気象条件が極めて良好な場合に限られるから、有視界飛行方式をとる航空機との関
係でも、本件鉄塔等はその離着陸の支障となるものではないということができる。
なお、原告らは、法が制限表面の上方を無障害物空間として確保すべきことを義務
付けていると主張する。確かに、制限表面のうち、進入表面の上方は航空機の離着
陸の安全を確保するため、転移表面の上方は緊急時や進入復行の際の航空機の安全
を確保するため、いずれも無障害物空間として確保する必要があり、進入表面及び
転移表面の上方空間の確保はいわば絶対的なものということができるが、水平表面
は、航空機が離着陸に際して飛行場周辺を旋回飛行する場合の安全を図るために設
けられたものであり、旋回飛行に支障のない場合には、必ずしもその円の上空全体
を無障害物空間として確保する必要は乏しいということができ、規則七九条一項一
号もそのことを前提とする規定であって、原告らの右主張は、水平表面の性質を正
解するものとはいい難い。
(二) 規則七九条一項二号ないし五号の二、九号適合性
本件施設変更後の本件飛行場の滞空旋回圏、滑走路、着陸帯及び誘導路、エプロ
ン、飛行場標識施設はいずれも規則七九条一項二号ないし五号の二、九号の各基準
に適合している。
2 本件においては、制限表面の拡大に伴う建造物等の高さ制限について関係者か
らの苦情はなく、本件施設変更は、これによって他人の利益を著しく害することに
はならないものであり、本件申請は、法四三条二項によって準用される法三九条一
項二号の要件を充足している。
3 本件施設変更後の本件飛行場の管理計画は法四七条一項の基準に適合し、ま
た、長野県には本件施設変更後の本件飛行場を管理する能力があるなど、本件申請
は、法四三条二項によって準用される法三九条一項三号ないし五号の要件を充足し
ている。
4 右のとおりであり、本件申請は法四三条二項によって準用される法三九条一項
所定の要件をすべて充足しており、法三九条二項所定の公聴会も開催されているか
ら、本件処分は、実体的にも手続的にも何ら違法ではない。
六 抗弁に対する原告らの認否及び反論
(認否)
抗弁1ないし4は争う。
(反論)
1 本件飛行場に離着陸する航空機の飛行経路を水平表面の東側に常に限定するこ
とは不可能であり、水平表面の西側を旋回して離着陸する航空機の出現を防止する
ことはできない。すなわち、ジェット機の定期便が就航する本件飛行場において
は、パイロットが計器飛行方式を選択した場合にその飛行経路が水平表面の東側に
限定されるだけであり、しかも、被告がその飛行経路を東側に限定できるのは進入
限界高度(地上約三〇〇メートル)までであって、それ以下の高度では飛行経路を
水平表面の東側に限定することはできないのであるから、航空機の飛行経路を本件
飛行場の東側に限定することを前提に本件申請がされたからといって、そのような
限定を前提にして離着陸に支障があるかどうかという規則七九条一項一号の要件を
審査することは許されない。
したがって、本件処分は、採り得ない前提に立って規則七九条一項一号にいう離着
陸の支障の有無を審査し、その判断を誤ったものであって、違法である。
2 そもそも、航空機の墜落事故の大部分が離着陸のため低空飛行を行っている際
に発生しているとの過去の事例に照らしても明らかなとおり、円周で囲まれた水平
表面の上方を無障害物空間として確保することは、飛行場に離着陸する航空機の航
行の安全上必要不可欠なものであり、法は、場合によっては水平表面の一部分の上
方空間を無障害物空間として確保しないでよいとの恣意的な取扱いを許してはいな
いのである。
もっとも、法四九条一項ただし書及び規則九二条の二は、「仮設物」、「避雷設
備」、「地形又は既存物件との関係から航空機の飛行の安全を特に害しない物件」
が例外的に水平表面の上に突出することを許容しているが、この例外的取扱いを受
ける物件は、その上を航空機が飛行しても安全上問題がないものを意味するのであ
って、広範囲(一〇〇ヘクタール以上)でその最高の高さも水平表面の上方約三〇
メートルにまで達する本件鉄塔等のように、航空機がその上を避けて飛行するとの
前提で安全性の審査をしなければならないような物件は、右の例外的取扱いを受け
得る物件に該当しないことが明らかであり、本件鉄塔等が存在する以上、本件施設
変更後の本件飛行場は、水平表面の上方を無障害物空間として確保しておらず、航
空機の離着陸に支障があるというべきであって、その支障がないとの認定を前提と
する本件処分は違法である。
3 しかも、本件飛行場は、二〇〇〇メートル以上もの高い山脈に囲まれた狭隘な
盆地に位置し、山岳地帯特有の厳しい気象条件にあり、その地形から計器着陸誘導
装置ILSも設置できず、また、本件鉄塔等以外にも、滑走路南端から南方約三・
五キロメートル直進した付近に高圧送電線用の鉄塔が林立しているという危険な立
地条件にあるものであるから、本件鉄塔等が航空機の離着陸に支障がないとは到底
認定できないというべきであり、本件処分は違法である。
4 また、原告らが居住する松本市<地名略>は、一〇〇〇戸以上の住宅に約五〇
〇〇人の人々が暮らす集落であって、近年は松本市の住宅地として人家の密集度が
高くなっている地域であるが、本件飛行場の滑走路の北側約二キロメートルの付近
に位置しており、本件施設変更により、集落の家屋の直近上空を飛行するジェット
機による著しい騒音・振動被害を受けることになるのであって、本件申請は、法三
九条一項二号の要件を充足するものでもない。
第三 証拠(省略)
○ 理由
第一 本件処分の取消しを求める原告適格について
一 行政事件訴訟法九条にいう処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有す
る者」とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され
又は必然的に侵害されるおそれのある者をいい、当該処分を定めた行政法規が個人
の具体的利益を個別的に保護することを目的として行政権の行使に制約を課してい
ることにより保障されることになる利益も右にいう法律上保護された利益に当たる
ということができる。
二 飛行場施設の変更許可は、飛行場の設置者に対し、その施設を変更する権限を
付与することを目的とする処分であるが、飛行場の範囲あるいは制限表面に変更を
生ずる施設変更を許可したときは、被告は、許可に係る制限表面等について告示す
ることとされており(法四三条二項によって準用される法四〇条)、公共の用に供
する飛行場にあっては、右告示後は、何人も、制限表面の上に出る高さの建造物、
植物その他の物件を設置し、植栽し、又は留置してはならないものとされている
(法四九条一項)。
したがって、制限表面の範囲の変更を生じることとなる本件処分は、取りも直さず
制限表面による私権制限の範囲を変更する法的効果をも有するものであり、これに
よって、新たにあるいは従前以上に、制限表面による私権制限を受けることとなる
者は、本件処分により自己の権利を侵害される者として、本件処分の取消しを求め
るにつき法律上の利益を有するということができる。
三 これを本件についてみるに、成立に争いがない乙第一〇号証及び弁論の全趣旨
によれば、原告Dら一六名は、水平表面の拡大により従前なかった私権制限が生じ
る範囲に土地を所有するか、あるいは進入表面が三〇〇メートル北側に移動しその
表面の高さが従前より低下したため、従前から存在した私権制限が強化された範囲
に土地を所有する者であることが認められるから、原告Dら一六名は、本件処分に
よって、新たにあるいは従前以上に、制限表面による私権制限を受けることになっ
た者として、本件処分の取消しを求める法律上の利益を有するものである。
これに対し、前掲乙第一〇号証及び弁論の全趣旨によれば、原告Aは本件飛行場の
従前の水平表面の投影面内に土地を所有する者であること、原告B及び同Cは本件
施設変更の前後を通じて本件飛行場の制限表面の投影面内に土地建物等の財産権を
有する者ではないことが認められるから、これら原告三名については、本件処分に
より、新たにあるいは従前以上に、制限表面による私権制限を受けることになった
者ということができず、本件処分の取消しを求める原告適格を肯定することはでき
ない(原告B及び同Cは、夫の所有地について私権制限を受ける旨主張するが、夫
の有する土地所有権が侵害されるからといって同原告らの権利利益が侵害されるこ
とになるものでないことはいうまでもない。)。
四 ところで、原告らは、本件飛行場に離着陸する航空機の墜落による危険や騒
音・振動被害を受けることを理由に本件処分の取消しを求める法律上の利益がある
と主張するので、原告A、同B及び同Cについて、右の見地から原告適格を肯定し
得るかどうかについて検討する。
前示のとおり、飛行場施設の変更許可は、飛行場の設置者に対し、その施設を変更
する権限を付与することを目的とする処分であり、施設変更後の飛行場が航空機の
離着陸並びに航空の利用に供する施設として法令所定の基準に適合しているかどう
かを審査して許否を判断することとされているが(法四三条二項によって準用され
る法三九条一項、規則七九条)、法及び規則を検討しても、飛行場施設の変更の許
否を審査する段階で、飛行場に離着陸が予定される航空機による騒音・振動被害の
有無・程度を具体的に審査すべきことを義務付ける趣旨の規定は見当たらず、ま
た、特に飛行場の周辺住民を対象に航空機の墜落による危険にさらされない利益を
個別的具体的に保護しているとみられる規定も見当たらない(規則七九条一項一号
は、当該飛行場における航空機の離着陸の安全を確保するためのものであるが、こ
れは、離着陸時の事故の発生を防止し、人や物の安全を確保するという航空交通一
般の安全のための規制を定めたものであって、この規定をもって、原告らが主張す
るように、特定地域(飛行場周辺)の住民の航空機の墜落による危険にさらされな
いという利益を個別的具体的に保護している規定とまで解することは困難であ
る。)。
また、法四三条二項によって準用される法三九条一項二号によれば、飛行場施設の
変更によって「他人の利益を著しく害することとならない」ことが要件とされてい
るが、飛行場の範囲あるいは制限表面の変更を伴わない施設変更の場合には、利害
関係人に意見を述べる機会を与えるべき旨を定めた法三九条二項の規定の準用が除
外されていること(法四三条二項ただし書)を考えると、右「他人の利益を著しく
害することとならない」との規定は、主として、制限表面等による私権制限の対象
となる私人の財産権に対し配慮すべきことを定めたものであって、これをもって、
直ちに原告らが主張するような飛行場周辺の個々の住民の安全・平穏な生活を営む
利益を個別的具体的に保護する趣旨の規定と解することはできない。
もっとも、飛行場施設の変更により当該飛行場に離着陸する航空機の運航状況の著
しい変更が予想され、これに伴って航空機による騒音・振動被害が著しく拡大さ
れ、飛行場周辺地域の環境が明らかに激変することが見込まれる状況があるような
場合には、その被害の拡大の程度やこれに対する対策という点をも考慮して、当該
施設の変更が「他人の利益を著しく害することとならない」かどうかを判断する必
要があると解する余地もないではないが、そのような場合であっても、施設変更の
拒否の審査の段階においては、施設変更後の航空機の具体的な運航状況が確定され
ているわけではないのであるから(この点において、本件は、原告ら引用の最高裁
判決と事案を異にしているものである。)、専ら一般的公益の確保の見地から、飛
行場周辺地域一般の生活環境の変化の有無・程度、被害対策の規模といった事項を
概括的に斟酌するにとどまらざるを得ないのであって、結局のところ、法は、飛行
場施設の変更の拒否を審査する際に、飛行場の周辺住民が受ける騒音・振動被害の
有無・程度を個別的具体的に斟酌すべきであるとまではしていないと解するほかな
い。
したがって、航空機の墜落による危険や騒音・振動被害を受けることを理由に本件
処分の取消しを求める法律上の利益があるとする原告らの主張は採用することがで
きず、原告A、同B及び同Cについては、この点からみても原告適格を肯認するこ
とができない。
五 なお、被告は、原告Dら一六名が本件処分について法三九条一項一号及び二号
の要件の適合性を争うことは行政事件訴訟法一〇条一項に抵触する旨主張するが、
原告Dら一六名は、前記認定したとおり、いずれも本件処分によって、新たにある
いは従前以上に、制限表面による私権制限を受けることになった者であるところ、
右原告らは、本来、本件処分が法令所定の要件を充足する適法な処分であって初め
てそのような自己の権利に対する実体法上の制限を受忍しなければならないことと
なるのであるから、同原告らは、本件処分の違法事由として法三九条一項一号及び
二号の要件を欠くことを争うことができるというべきであり、被告の右主張は失当
である。
第二 本件処分の適否について
一 請求原因1ないし4の各事実はいずれも当事者間に争いがない。
二 法三九条一項一号に基づく規則七九条一項一号適合性について
本件施設変更後の本件飛行場が、法三九条一項一号により適合することが要求され
ている規則七九条一項一号の基準、すなわち、飛行場の周辺にある建造物、植物そ
の他の物件であって、運輸大臣が航空機の離陸又は着陸に支障があると認めるもの
(以下「離着陸支障物件」という。)がないとの基準を充足しているかどうかにつ
いて判断する。
1 右にいう離着陸支障物件とは、航空機が安全に離着陸できるために一般に必要
とされる空間、すなわち制限表面及びこれに極めて近接する範囲にあってその離着
陸の妨げとなる可能性があると認められる物件をいうものと解される。
ところで、制限表面のうち、進入表面は、飛行場に離着陸する航空機が滑走路に正
対して下降・上昇して飛行する空間を確保するために定められた平面であり、転移
表面は、離着陸の際に滑走路の中心線から逸脱した航空機が進入復行する場合など
緊急時に対応するための空間を確保するために定められた平面であり、水平表面
は、航空機が離着陸に際し飛行場周辺の上空を旋回飛行する場合に備えてその空間
を確保するために定められた平面であって、法は、それらの制限表面の上に出る高
さの建造物等の設置等を原則として禁止し、同表面の上方の空間を確保することと
しているが、進入表面及び転移表面は、航空機が常時あるいは緊急時にその上空を
航行することが予定されている空間であって、法は、それらの表面の上に出る物件
が存在することを許容していないと解すべきであるのに対し、水平表面について
は、その表面に出るものであっても、運輸省令の定める一定の物件(仮設物、建築
基準法三三条の規定により設けなければならない避雷設備、地形又は既存物件との
関係から航空機の飛行の安全を特に害しない物件)で、飛行場設置者の承認を受け
た場合には、これを設置・留置することが許容されている(法四九条一項ただし
書、規則九二条の二)。これは、水平表面が、離着陸の際の旋回飛行のために、飛
行場の標点を中心とする固として設けられるもので、航空機が常に必ずその円内全
部を飛行するという空間ではなく、自然の地形や航空援助施設の配置状況などか
ら、航空機が飛行することの比較的少ない区域では、水平表面の上に突出する程
度、規模などに照らし、その物件の設置を認めても航行の支障とならない場合があ
ることによるものと解される(なお、昭和三五年法律第九〇号による法の改正前
は、進入表面及び転移表面と異なり、水平表面の上に出る物件の設置が禁止されて
いたわけでなく、ただ航空障害灯の設置が義務付けられていたにすぎない。)。
したがって、進入表面及び転移表面の上に出る物件は常に離着陸支障物件に該当す
るというべきであるが、水平表面の上に出る物件については、その存在が絶対に許
されないというわけではないのであるから、本件のように飛行場施設の変更により
水平表面の範囲が拡大することに伴い、新たに水平表面の上に出ることとなる物件
が存在する場合でも、これをもって直ちに離着陸支障物件に当たるということはで
きないのであって、その位置や突出の程度、その規模、飛行の態様などに照らし、
離着陸する航空機の航行の安全を特に害するものといえないときは、離着陸支障物
件に当たらないと解すべきである。
2 成立に争いのない乙第二号証及び弁論の全趣旨によれば、本件申請当時、本件
施設変更後の本件飛行場の進入表面及び転移表面の上に突出する電柱、樹木、建物
などが存在し、その水平表面の東側には同表面の上に突出することになる東京電力
株式会社所有の高圧送電線用の鉄塔二基(東京電力大町線)が存在していたこと、
本件申請においては、それらの物件はすべて除去されることが予定されており、工
事完成予定期日とされた平成六年三月二〇日までに確実に除去されるものと判断さ
れたこと、実際にも右期日までにそれらの物件はすべて除去されたことが認められ
るから、規則七九条一項一号ただし書により、本件施設変更後の本件飛行場は、そ
の進入表面、転移表面、水平表面の東側に関しては、離着陸に支障があると認めら
れる物件はなく、同号の基準に抵触するところはなかったということができる。
3 次に、前記争いのない事実によれば、本件施設変更後の本件飛行場の水平表面
の西側に同表面の上に突出する本件鉄塔等が存在しているところ、前記争いのない
事実に、前掲乙第二号証、第一〇号証、成立に争いがない乙第三号証、第二二、第
二三号証、原本の存在及び成立に争いがない乙第二一号証、証人Eの証言によって
真正に成立したものと認められる乙第一三号証、第一七号証、弁論の全趣旨によっ
て真正に成立したものと認められる乙第一一、第一二号証、証人E、同Fの各証言
を総合すれば、以下の事実が認められ、その認定を左右するに足りる証拠はない。
(一) 本件施設変更後に本件飛行場に離着陸することが予定されていた航空機
は、国内の空港との間の定期航空便として就航する株式会社日本エアシステムの小
型ジェット機(MD87型機又はこれと同程度の性能を有するジェット機)が主な
ものであるが、そのほかに、測量などを目的として従前から不定期に本件飛行場を
使用していたプロペラ機などの小型機もあった。
本件申請は、本件鉄塔等が存在するため、本件飛行場に離着陸する航空機の周回進
入区域を東側に限定することを前提としてされたものであり、本件申請時には、航
空機に対して周回経路を表示するための地標航空灯台四基を本件飛行場の南東側に
設置し、本件鉄塔等などに昼一間障害標識(法五一条の二)を設置することが予定
されていた(なお、水平表面の西側には、本件鉄塔等のほかにも、水平表面の上に
突出する建物や電柱等が存在しているが、その位置は本件鉄塔等と同じく水平表面
の南西部であり、その中には、本件施設変更前の水平表面の範囲内にあるものも少
なくなく、その突出する高さはいずれも本件鉄塔等の最も高いところを超えること
はない。)。
(二) 本件鉄塔等の位置は別紙3に図示されたとおりで、水平表面から突出する
程度は、最も高いところで二九・六メートルであり(別紙3のC13)、また、本
件飛行場の南側進入表面に最も近接している別紙3の63の鉄塔は、水平表面の上
に出る高さは二五・三メートルで、着陸帯縦方向の中心線の南西二二度の方向にあ
り、南側進入表面の中心線から約八〇〇メートル、同進入表面の西側の端から約五
〇〇メートル離れている。本件鉄塔等のうち、別紙3のC7ないしC11、C31
ないしC36の鉄塔部分は、もともと本件施設変更前の水平表面の範囲内にあった
ものであるが、その余の鉄塔部分は、いずれも本件施設変更により水平表面が拡大
した結果、水平表面の上に突出することとなったものである。
(三) 本件飛行場周辺の空域には、飛行場の管制塔によって離着陸の管制業務が
行われる「航空交通管制圏」(法二条一二項)に指定された空域はないが、本件飛
行場の滑走路南端付近に設置された松本VOR(超短波全方向式無線標識)を中心
とする半径三六キロメートルの範囲では地表から二〇〇メートル以上の空域が、そ
の外側においては地表から四五〇メートル以上の空域が、「航空交通管制区」(法
二条一一項。以下「管制区」という。)に指定されており、管制区においては埼玉
県所沢市所在の東京航空交通管制部(及び東京航空局松本空港出張所)との無線通
信による航空路の航空交通管制が実施されている。
管制区においては、計器気象状態(有視界飛行方式が禁止される気象状態)であっ
ても飛行することが許されるが、その場合には、必ず計器飛行方式によって飛行し
なければならず(法九四条。なお、法一五四条一項六号の二は、その違反に対する
罰則を規定している。)、計器飛行方式によって管制区を飛行する場合には、飛行
経路その他の飛行方法について常時被告の指示に従うものとされ(法二条一五項二
号、法九六条一項。なお、法一五四条一項八号は、その違反に対する罰則を規定し
ている。)、飛行する際には飛行計画を被告に通報しその承認を受けなければなら
ないとされている(法九七条。なお、法一五四条一項九号は、その違反に対する罰
則を規定している。)。
本件飛行場に離着陸する航空機の場合には、地上視程が五〇〇〇メートル以上、雲
高が地表から三〇〇メートル以上という良好な気象状態でなければ、計器飛行方式
によらない飛行方式(有視界飛行方式)をとってはならないとされているが(法九
四条、法二条一三項、規則五条四号、昭和五〇年一一月二九日運輸省告示五五八
号)、本件飛行場に離着陸する小型ジェット機の殆どは、株式会社日本エアシステ
ムの定期航空便として就航するものであり、通常、定期航空運送事業者が運行する
航空機の場合には、被告が認可する運航規程(法一〇四条)により、有視界気象状
態においても、原則として計器飛行方式による飛行を行うこととされている。
(四) 航空機は、飛行場への離着陸の安全確保のため、飛行場及びその周辺にお
ける航行方法として被告が各飛行場ごとに規則一八九条二項に基づいて定めた飛行
の方式や進入限界高度を始め、同条一項各号所定の飛行方法を遵守して航行しなけ
ればならず(法八三条。なお、法一五四条一項二号は、その違反に対する罰則を規
定している。)、また、被告は、航空機乗組員に対し、各飛行場ごとに定めた飛行
の方式、進入限界高度、飛行場における航空機の運航についての障害に関する事項
など航空機の運航のために必要な航空情報を提供しなければならないものとされて
いる(法九九条、規則二〇九条の二)。
なお、本件飛行場の場合、本件処分後に計器飛行方式で本件飛行場の離着陸する場
合の飛行方式が四つ(進入方式二つ及び出発方式二つ)定められているが、そのう
ち進入の方式として定められた「滑走路18進入方式」及び「松本VOR/DM
E・A進入方式」は、一旦、本件飛行場滑走路南端付近に設置された松本VORの
上空を南から北に通過した後一八〇度旋回したうえ高度を序々に下げて飛行場に近
づくという飛行方式で、その際、滑走路南側から進入するために旋回する場合の飛
行経路が滑走路の東側に限定されており、また、出発の方式として定められた「松
本リバーサル1出発方式」及び「八方1出発方式」は、滑走路南側から出発する場
合、滑走路の針路により高度約七七〇メートル以上に上昇し、距離約五・五キロメ
ートル以内において左旋回を完了するものとされており、やはり飛行経路として滑
走路の東側を旋回する飛行方式がとられている。
また、本件飛行場の場合には、計器飛行方式の場合の進入限界高度が飛行場の標点
の高度(以下「標点高度」という。)の上方約三〇〇メートルと定められており、
降下中の航空機が右高度に達した際にパイロットが地表面を視認できない場合に
は、それ以上着陸のための進入(降下)を継続することが禁止されている(規則一
八九条一項三号)。
(五) 小型ジェット機が計器飛行方式によって本件飛行場の滑走路南側から着陸
しようとする場合には、旋回のための飛行経路が東側に強制されるため、標点高度
の上方四五〇メートル程度の高度で水平表面の東側の同表面やや外側を滑走路と並
行に南下し、滑走路南端を通過する付近で右側に旋回を開始し、旋回及び進入経路
を指示する地標航空灯台で航空機の位置を確かめながら徐々に降下し、標点高度の
上方二〇〇メートル程度の高度で滑走路と正対し、南側の進入表面の中心線(着陸
帯中心線の延長線)の上を進入角指示灯により三度の角度を保ちながら降下を続
け、滑走路に着陸するという飛行を行うのが通常である。
本件鉄塔等のうち右南側進入表面に最も近接している別紙3の63の鉄塔の位置、
同表面との距離からすると、右のような旋回飛行の際に多少通常の飛行経路を逸れ
たとしても、計器飛行方式で飛行中の小型ジェット機が右鉄塔付近の上空を通過す
るという事態が生じることは殆ど想定することができない。
(六) 定期航空便として就航が予定されている小型ジェット機は、原則として計
器飛行方式により右のような飛行方式を遵守して飛行するが、有視界気象状態の場
合には、パイロットの判断によって有視界飛行方式を選択したうえ飛行場西側を旋
回して本件飛行場に着陸する余地が残されており、この場合の通常の飛行経路は、
東側を旋回する場合の右の飛行経路と対称のものとなり、殆どの場合は本件鉄塔等
の上空を通過することはないが、同機の旋回半径に照らし最も内回りで旋回した場
合を考えると、本件鉄塔等のうち別紙3のCiないしC5の鉄塔付近の上空を通過
することもありえないわけではない(なお、C12、C13、61、62、63の
鉄塔付近の上空を通過することは想定できない。)。しかし、その場合であって
も、右鉄塔等の上空を通過する際の高度は、標点高度の上方約四五〇メートル程度
であって、その高度は、本件鉄塔等の最も高い部分(標点高度の上方約七五メート
ル)から三〇〇メートル以上も上空であることになる。
(七) 本件飛行場に離着陸が予定されていた航空機のうち、プロペラ機などの小
型機については、計器飛行方式をとらずに有視界飛行方式によって本件飛行場の水
平表面の西側を飛行することが考えられるが、本件鉄塔等が本件施設変更前から存
在していたにもかかわらず(なお、前記のとおり、鉄塔等の一部は本件施設変更前
の水平表面の範囲内に存在していた。)、そのような小型機は、本件施設変更前
も、本件鉄塔等が特に支障とならずに本件飛行場に離着陸していたものであり、右
小型機にとっては、本件飛行場の滑走路が南側に二〇〇メートル、北側に三〇〇メ
ートル延長されたとしても、本件飛行場への離着陸の条件に大きな変化はないとい
える。
(八) なお、本件飛行場のほかにも、水平表面の上に突出する物件が存在してい
るため、飛行の方法を障害物のない片側周回に限定することとしている飛行場とし
て、岡山空港(第三種空港)、庄内空港(第三種空港)がある。
4 右認定したところからすれば、本件鉄塔等は、本件飛行場の滑走路南側から出
発する航空機の離陸直後の飛行の安全に支障があるとは考え難いし、また、本件施
設変更前から本件飛行場に安全に着陸していたプロペラ機などの小型機について
は、本件施設変更後もその着陸のための条件が大きく変化したとはいえないのであ
るから、本件鉄塔等が右小型機の着陸のための飛行の安全を脅かすものとも考えら
れない。
また、小型ジェット機については、殆どのものが計器飛行方式で進入のための飛行
を行う結果、飛行経路が本件飛行場の東側に限定されており、その場合には、仮に
小さい旋回半径により南側の進入表面の横(東側)から同進入表面上方に周り込ん
で進入又は進入復行のための飛行をすることがあるとしても、本件鉄塔等付近の上
空を通過するとは考え難く、したがって、本件鉄塔等が本件飛行場の東側を旋回す
る小型ジェット機の着陸のための飛行の安全に支障があるとはいえない。
次に、有視界飛行方式により本件飛行場の西側を旋回して本件飛行場に着陸しよう
とする小型ジェット機の場合には、通常想定される飛行経路をとって水平表面の西
側を南進し左旋回して滑走路と正対するという飛行方法による限り、本件鉄塔等が
飛行の安全の支障となるとは考えられない。しかも、小型ジェット機が西側旋回の
飛行経路をとるのは有視界気象状態という気象条件が非常に良好な場合に限られて
いるのであり、しかも、パイロットは予め航空情報の提供を受けて本件鉄塔等の存
在を承知しているのであるから、パイロットとしては、昼面障害標識が施された本
件鉄塔等を容易に視認しながら航行することができ、本件鉄塔等との接触を避ける
ことが可能な状況下で飛行するものであることからすれば、仮に通常想定される西
側旋回の飛行経路から外れ、本件鉄塔等の上を飛行する場合があるとしても、本件
鉄塔等は、有視界飛行方式により西側旋回の飛行経路をとる小型ジェット機の着陸
のための飛行の安全に特に障害となるとはいえない。
5 そうすると、原告Dら一六名が主張するように、本件飛行場が二〇〇〇メート
ル以上の山々に囲まれた盆地の中に位置しているという立地条件を考慮しても、本
件鉄塔等は、本件飛行場に離着陸する航空機の航行の安全を特に害するものとは認
められないから、それが離着陸支障物件に当たらないとした被告の判断は相当であ
って(なお、本件鉄塔等のほかに水平表面の上に突出する建物、電柱等もまた、以
上と同様の理由により離着陸支障物件に当たらないということができる。)、本件
飛行場の施設等は、規則七九条一項一号の基準を充たすものということができ、右
基準に適合しない旨の原告Dら一六名の主張は採用することができない。
三 法三九条一項一号に基づく規則七九条一項二号ないし五号の二、九号適合性及
び法三九条一項三号ないし五号の要件の充足について
前掲乙第二号証、成立に争いがない乙二四号証の一ないし三一、第二五号証及び弁
論の全趣旨によれば、本件施設変更後の本件飛行場の施設が、法三九条一項一号所
定の運輸省令で定める基準のうち規則七九条一項二号ないし五号の二、九号の各基
準に適合すること、本件施設変更については法三九条三号ないし五号の要件を充足
することが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。
四 法三九条一項二号、二項の要件の充足について
l 前掲乙第二号証、第一〇号証、原本の存在及び成立に争いのない甲第一一号
証、証人Eの証言並びに検証の結果によれば、本件飛行場の制限表面の投影面内に
は、人口・建物が密集し土地が高度に利用されている市街地はなく、民家が集まっ
て集落を形成している地域の建物も概ね木造の低層建築物であり、集落以外の地域
は、運動施設など公共施設の敷地、公園、工場団地、畑や果樹園などとして利用さ
れていること、平成二年一二月一九日に開催された公聴会においても、拡大される
制限表面によって建築物等の高さが制限されることについて特段異論を述べる利害
関係人もなかったことが認められ、本件施設変更に伴う制限表面の拡大によって、
飛行場周辺の土地建物の所有者等に酷となるような重大な私権制限が生じるとはい
えないのであって、本件施設変更は法三九条一項二号にいう「他人の利益を著しく
害することとならない」ものということができ、かつ、本件処分は、法三九条二項
所定の公聴会を経て行われたもので、手続的に欠けるところもない。
2 原告Dら一六名は、本件施設変更は航空機による騒音・振動被害を拡大するも
のであって法三九条一項二号の要件を充足していない旨主張する。
前示のとおり、法三九条一項二号にいう「他人の利益」は、主として、制限表面等
による私権制限の対象となる私人の財産権を意味するものであるが、飛行場施設の
変更に伴い航空機による騒音・振動被害が著しく拡大され、飛行場周辺地域の環境
が明らかに激変することが見込まれるような場合には、当該施設変更の必要性や被
害対策の内容なども考慮して、同号の要件を充足しているかどうかを判断すべきで
あると解する余地もないではない。
しかしながら、前掲乙第二号証、甲第一一号証によれば、本件飛行場は、従前、Y
S11型プロペラ機が大阪国際空港との間の定期便として一日二往復の割合で就航
していたが、本件施設変更後は、株式会社日本エアシステムの小型ジェット機(M
D87型機又はこれと同程度の性能を有するジェット機)が国内のいくつかの空港
との間の定期便として就航することを予定して本件施設変更が計画されたことが認
められるところ、前記認定したとおり、本件飛行場周辺には人口・建物が密集した
市街地はなく、民家が集まって集落を形成している地域のほかは、運動施設や工場
団地、畑や果樹園などとして利用されているという状況に照らせば、本件において
は、本件施設変更に伴い航空機による騒音・振動被害が著しく拡大され、飛行場周
辺地域の環境が明らかに激変することが見込まれるとまでいうことはできないので
あって、本件施設変更が法三九条一項二号の要件に欠けるということはなく、原告
Dら一六名の前記主張は失当である。
五 以上のとおり、本件処分は、実体的にも手続的にも適法であって、その違法を
いう原告Dら一六名の主張は理由がない。
第三 詰論
以上の次第で、原告A、同B及び同Cの訴えは、いずれも原告適格を有しない者が
提起した不適法な訴えであるからこれを却下することとし、原告Dら一六名の請求
は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法
七条、民事訴訟法八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 佐藤久夫 橋詰 均 徳岡 治)
別紙1、2(省略)

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