弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
一 本件控訴をいずれも棄却する。
二 控訴費用は控訴人らの負担とする。
       事   実
一 控訴人らは、「原判決を取り消す。被控訴人が、控訴人Aに対し昭和四八年七
月二二日付をもつて、控訴人Bに対し昭和五〇年九月五日付をもつて、控訴人Cに
対し昭和四九年一二月九日付をもつて、控訴人Dに対し昭和四五年四月九日付をも
つて、控訴人Eに対し昭和四八年三月一日付をもつて、控訴人Fに対し同年三月六
日付をもつて、控訴人Gに対し昭和四六年七月三一日付をもつて、控訴人Hに対し
昭和五一年三月二九日付をもつて、それぞれなした労働者災害補償保険法による遺
族補償給付及び葬祭料を支給しないとの各処分を取り消す。訴訟費用は第一、二審
とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は主文と同旨の判決を求
めた。
二 当事者の主張及び証拠の関係は、次のとおり訂正するほかは、原判決の事実摘
示の記載と同一であるからこれを引用する。
1 原判決五枚目表二行目、同裏五行目、同六枚目表八行目、同裏一一行目、同七
枚目表末行、同八枚目表三行目の「特別措置法」をいずれも「特別保護法」と改
め、同六枚目裏三行目の「肺核結症」を「肺結核症」と訂正する。
2 同一〇枚目表四行目の「同法」を「特別保護法」と、同裏二行目の「同法」を
「臨時措置法」と、同一一枚目表六行目及び同一二枚目表九行目の「同法」をいず
れも「昭和三五年改正法」とそれぞれ改め、同裏三行目の「一率に」を「一律に」
と訂正し、同一三枚目表七行目の「同法」を「昭和四〇年改正法」と改め、同一七
枚目表九行目の「構じ」を「講じ」と、同二〇枚目表七行目の「遂次」を「逐次」
とそれぞれ訂正する。
       理   由
一 当裁判所は、控訴人らの本訴請求はいずれも失当であるものと判断するとこ
ろ、その理由は、次のとおり附加、訂正、削除するほかは原判決の理由説示と同一
であるからこれを引用する。
1 原判決二一枚目裏二行目の「先ず」を「まず」と、同行目の「昭和三五年」か
ら同四行目の「附則五項」までを「本件規定」とそれぞれ改め、同行目の「、二七
条二項」を削る。
2 同二一枚目裏六行目から同二二枚目表四行目までを「1 憲法二五条一項の規
定は、いわゆる福祉国家の理念に基づき、すべての国民が健康で文化的な最低限度
の生活を営みうるよう国政を運営すべきことを国の責務として宣言したものであ
り、また、同条二項の規定は、同じく福祉国家の理念に基づき、社会的立法及び社
会的施設の創造拡充に努力すべきことを国の責務として宣言したものであるとこ
ろ、同条一項は、国が個々の国民に対して具体的、現実的に右のような義務を有す
ることを規定したものではなく、同条二項によって国の責務であるとされている社
会的立法及び社会的施設の創造拡充により個々の国民の具体的、現実的な生活権が
設定充実されてゆくことを期待するものであると解すべきである(最高裁昭和二三
年(れ)第二〇五号同年九月二九日大法廷判決・刑集二巻一〇号一二三五頁)。そ
して、右の規定にいう「健康で文化的な最低限度の生活」の概念は極めて抽象的か
つ相対的なものであつて、その具体的内容は、その時々における文化の発達の程
度、経済的、社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決
定されるべきものであるとともに、右規定を現実の立法として具体化するに当たつ
ては、国の財政事情を無視することができず、また、多方面にわたる複雑多様な、
しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものであ
る。したがつて、憲法二五条の規定の趣旨にこたえて具体的にどのような立法措置
を講ずるかの選択決定は、立法府の広い裁量にゆだねられているものというべきで
あるから、憲法二五条の趣旨を実現する目的をもつて制定された法律の規定が同条
の規定に違反するかどうかを判断するに当たつては、その規定が著しく合理性を欠
き、その立法について明らかに立法府の裁量の逸脱又は濫用があるものと認められ
る場合を除き、裁判所は、これを違憲無効と判断することはできないものといわな
ければならない。」と、同五行目の「四」を「2」と、同九行目の「労災保険上」
を「労災保険法上」とそれぞれ改め、同一一行目の「、二七条二項」を削り、同一
二行目の「生ずるものである。」を「生ずる余地があるものというべきである。」
と改める。
3 同二二枚目表一三行目の「五」を「3」と改め、同行目の「本件規定の」の次
に「内容、立法趣旨及び」を、同末行の「乙第一号証」の前に「原本の存在及び成
立に争いのない」をそれぞれ加え、同裏四行目の「1」を「(一)」と、同一二行
目の「2」を「(二)」と、同二三枚目裏九行目及び同二五枚目裏一行目の「原
告」をいずれも「控訴人ら」と、同二四枚目表四行目の「3」を「(三)」と、同
五行目の「減額する日数」を「減ずる額」と、同七行目の「4」を「(四)」とそ
れぞれ改める。
4 同二四枚目裏二行目の「六」を「4」と、同六行目の「さきに」を「先に」
と、同二五枚目表一行目の「国会における審議経過からみて」を「本件規定の内
容、立法趣旨及び前認定の立法経過に照らし」と、同二行目の「明らかな」を「立
法府の」と、同一一行目の「のであるから」を「のであり、旧受給者は、法律上当
然に新受給者への補償額を下らない額の補償請求権を有するわけではないことはい
うまでもないから」と、同一二行目の「ただちに」を「本件規定が」とそれぞれ改
め、同末行の「、二七条二項」を削る。
5 同二五枚目裏一行目末尾の次に改行して
「三 次に本件規定が憲法二七条二項に違反するかどうかについて判断する。
1 憲法二七条二項の規定は、国が、経済的弱者である労働者の保護及びその生存
の確保のために、賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する最低限度の基準
(労働基準)を法律で定めるべきことを定めたものであつて、勤労条件の基準を法
律で定めるべきことを国の責務として規定したものである。したがつて、法律で定
める勤労条件の基準は、右の趣旨を実現するものでなければならないが、勤労条件
の基準を立法化するに当たつては、労使関係の実情、社会的、経済的条件、国民生
活の状況、その他にわたり複雑多様な、しかも高度の専門技術的考察とそれに基づ
いた政策的判断を必要とするものというべきである。したがつて、憲法二七条二項
の規定の趣旨を実現するために具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定
は、立法府の広い裁量にゆだねられているものというべきであるから、憲法二七条
二項の趣旨を実現する目的をもつて制定された法律の規定が同項の規定に違反する
かどうかを判断するに当たつては、その規定が著しく合理性を欠き、その立法につ
いて明らかに立法府の裁量の逸脱又は濫用があるものと認められる場合を除き、裁
判所は、これを違憲無効と判断することはできないものといわなければならない。
2 本件規定の内容、立法趣旨及び立法経過は、前示のとおりであつて、これらに
照らすと、すでに説示したとおり、本件規定が合理性を欠き、その立法について立
法府の裁量の逸脱又は濫用があるものということはできない。
よつて、本件規定が憲法二七条二項に違反するという控訴人らの主張は採用するこ
とができない。」を加える。
6 同二五枚目裏二行目の「七」を「四」と改め、同三行目の冒頭に「1」を加
え、同九行目の「八」を「2」と改め、同二六枚目表二行目の「結果、」の次に
「旧受給者が」を加え、同六行目の「給付しない旨」を「給付せず、かつ給付年金
額から平均賃金の四〇日分の減額を行う旨」と、同一二行目の「やむを得ないもの
であり、」を「立法技術上やむを得ないものであるばかりでなく、前示のとおり、
旧受給者に対する労災保険法上の補償は終了しているものであつて、旧受給者が法
律上当然に新受給者への補償額を下回らない額の補償請求権を有するわけではない
から、これをもつて」とそれぞれ改め、同裏一行目の「ただちに」を削り、同二行
目の「九」を「五」と改める。
二 以上によれば、控訴人らの本訴請求はいずれも失当であり、これを棄却した原
判決は相当であつて本件控訴はいずれも理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の
負担について行政事件訴訟法七条、民訴法九五条、八九条、九三条を適用して主文
のとおり判決する。
(裁判官 奈良次郎 松原直幹 柳田幸三)

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