弁護士法人ITJ法律事務所

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         主    文
     承継参加人の請求を棄却する。
     承継参加人と控訴人との間に生じた訴訟費用は承継参加人の負担とす
る。
         事    実
 第一 当事者の求めた裁判
 一 承継参加人(以下参加人という)
 控訴人は原判決別紙物件目録記載の土地を通行することを妨害してはならない。
 訴訟費用は控訴人の負担とする。
 二 控訴人
 主文同旨
 第二 当事者双方の主張は、次のとおり附加訂正するほか原判決事実摘示と同一
であるからこれを引用する。
 一 参加人
 1 参加人は脱退被控訴人(以下被控訴人という)より昭和五八年一〇月一四日
本件要役地から、本件承役地に接着する部分を分筆した大阪市a区bc丁目de、
同番fの土地(以下e、fの土地という)を本件通行地役権とともに買い受けた。
 よつて、参加人は控訴人に対し、本件通行地役権に基づき本件土地の通行妨害禁
止を求める。
 2 参加人は本件土地を通行することはその営業活動上不可欠のものであつて、
本件訴訟が決着すれば、同所に出入口を設けるべく現在においてその壁に切り込み
を設けているのである。
 即ち参加人は現在やむを得ず営業社員は裏出入口(職員通用口)からわざわざ路
地を迂回して御幸通(商店街)に出ることになつているが、その通路(路地)は幅
約一・四メートルしかなく物の持ち運びに非常に不便であるうえに、特に現金を持
ち運ぶうえでは防犯上この上もなく危険が伴つている。本件土地はこれにひきかえ
通路幅も広く直ちに一条通に出られるため防犯上も非常に優れているのである。
 また表出入口(顧客専用口)が定時で閉められた後、急用な顧客の必要性に答え
るうえでも非常に便利であつて、路地を迂回して裏出入口に至るような現状ではと
うていこれに答えられないものである。更に一条通は北行一方通行であるため、南
側より来た顧客に対しては本件土地を通行して銀行内に入ることができることは非
常に便利である。
 二 控訴人
 1 参加人が被控訴人から昭和五八年一〇月一四日その主張にかかる被控訴人所
有土地を買い受けたことは認めるが、その余の事実は否認する。
 2 (一) 仮に参加人が被控訴人から本件通行地役権を譲り受けたとしても、
e、fの土地を要役地とする通行地役権設定契約は、左記控訴審後の事情の変更も
考慮すれば、参加人においてその通行の必要性が全く消滅するとともに、他方控訴
人において本件土地を使用する必要性は依然として高いので、事情変更の原則によ
り控訴人に右契約の解除が認められるべきである。
 (二) (控訴審後の事情変更)参加人は被控訴人から買い受けたe、fの土地
及びその南側のgのh、同i、同j、同kの土地上に鉄筋コンクリート造の店舗
(以下参加人の店舗という)を建築し、本件土地から東にのびる旧通路を塞いでし
まつたばかりか、本件土地の東側に出入口のない鉄筋コンクリート壁を築造し、も
はやe、fの本件土地へ通行する必要性は全くなくなつたものである。
 参加人は現在においても本件土地の通行の必要性を主張するが理由がない。即
ち、「イ」同店舗の内部構造は本件土地に接する付近に金庫室があつて、今更かか
る場所に出入口を設けるなどということは危険盗難防止を最優先に考えるはずの金
融機関としてありうべからざることである。「ロ」参加人は本件土地が係争中にそ
の東隣のe、fの土地を買い入れたが、その際控訴人に何らの意向打診(買取り又
は賃借の継続等)をしなかつたし、その後本件訴訟中の和解にも利害関係人として
の関与もせず、訴訟承継参加の申立も控訴人が参加人に訴訟引受の申立をするに及
んでやつとなしたものである。「ハ」参加人の店舗の本件土地付近の外壁タイル貼
りに切り込みがあるが、本件土地とは著しくずれた位置にあつて、出入口設置意図
の表れではない。
 第三 証拠(省略)
         理    由
 一 請求原因1、2についての認定判断は次のとおり改めるほか原判決理由一な
いし三の説示部分と同一であるから、これをここに引用する。
 1 原判決三枚目裏五、六行目「本件要役地が原告の所有であること」とあるを
「本件要役地が被控訴人の所有であつたところ、そのうち本件承役地に接着する一
部を分筆したe、fの土地が昭和五八年一〇月一四日参加人の所有となつたこと」
と改める。
 2 同一〇行目「甲第二号証」以下同一二行目「各本人尋問の結果によれば」ま
でを「甲第二号証、第五、六号証、乙第一号証、第三号証、第五号証(原本の存在
も争いない)、検乙第一ないし第一六号証、当審証人Aの証言(その一部)、原審
の被控訴人代表者及び原・当審の控訴本人(その一部)の各尋問の結果、並びに当
審の検証の結果によれば」と改める。
 3 原判決四枚目裏三行目以下に「ことや、所轄の消防署から非常時に消防車が
入れないのて通路を確保しておくように指導を受けていた」を加える。
 4 同八行目「約七〇センチメートル」とあるを「六五センチメートル」と改め
る。
 5 原判決五枚目表「現在に至るまで」とあるを「昭和五八年一〇月被控訴人が
参加人に本件要役地を分筆してe、fの土地を譲り渡した頃まで」と改める。
 6 同六行目「被告本人尋問の結果中」とあるを「当審証人A及び原・当審の控
訴本人の供述中」と改める。
 7 同裏三行目「合意されたものではないこと、」に続けて「被控訴人は右通行
権設定の代償として被控訴人所有のd一五の土地の南側〇・六五メートル幅の部分
を控訴人の納屋の敷地として提供したこと、右通行権の確保は消防署からも本件要
役地のアパート住民の非常用通路として確保することを指導されていたこと、」を
加える。
 二 参加人と被控訴人間の本件通行地役権の譲渡契約書の提出はないが、当審証
人Bの証言によれば、参加人はe、fの土地とともに本件通行地役権を譲り受けた
と推認することができ、これに反する証拠はない。
 三 控訴人主張の本件通行地役権設定契約の事情変更による解除について検討す
る。
 事情変更による解除は、契約成立時とその履行時との間に当事者の前提とした事
情が変つたとき、契約を履行させることが信義則に反する結果を生じる場合に適用
されるものであるところ、本件通行地役権はその発生に向けられた当事者の合意
(物権契約)により履行を要することなく設定されたもので、もはやその履行とい
う観念を容れる余地はないから、本件通行地役権設定契約を解除して右地役権を消
滅させることはできない。
 <要旨>ところで、地役権はその目的の消滅により消滅すると解されるところ、控
訴人の右主張中には本件通行地役権の通行目的が消滅したので本件通行地役
権も消滅した旨の主張を包含していると解されるので以下検討する。
 1 前記甲第五号証及び検証の結果、成立に争いのない乙第六号証の一ないし
六、当審証人Bの証言、当審の控訴本人尋問の結果によれば次の事実を認めること
ができ、これに反する証拠はない。
 参加人はその有力理事を代表者とする被控訴人から昭和五八年一〇月一四日e、
fの土地と同時に同所dj、同番k、同番h、同番iの各土地を買い受け(その関
係位置は別紙図面(一)のとおり)、昭和五九年三月右土地上に鉄筋コンクリート
造の店舗を建築完成し、同じ頃営業活動(銀行業務)を始めた。参加人の店舗の本
件土地に接する部分は出入口のないコンクリート壁がほぼその敷地一杯に建てら
れ、またその壁の店舗内部付近には金庫室があつて、同壁の内側は同店舗内で、機
密、防犯上の観点から内部構造を厳に秘匿しなければならない筋合の場所となつて
いる。同店舗は別紙図面(二)のとおりその南側が御幸通りに面して正面入口とな
り、職員通用口はその反対側(同店舗の北東部分)にある。参加人の職員は現在右
通用口から同図面のとおり幅約一・四メートルの店舗に沿つた南行通路から東行通
路を経て参加人の賃借している駐車場に至り、そこから御幸通に出ている。右通用
口の北側は大阪市所有の公園予定地が、その東側は被控訴人所有地がそれぞれ更地
として残つている。参加人はe、fの土地を買い入れた際本件通行地役権をめぐる
訴訟があることを知つていたので、本件通行地役権を利用しない右店舗を設計し、
建築したものである。
 なお御幸通は西行一方通行、一条通は北行一方通行で、いずれも駐車禁止の交通
規制がなされている。
 2 右認定事実によれば、e、fの土地上には本件土地に面して出入口のない堅
固な建物が建築完成し、もはやそこには金融機関の機密上、防犯上から出入口を設
けることはないと解せられるので、e、fの土地から本件土地を通行して一条通に
出ることは社会通念上あり得なくなつたというべきである。
 参加人は防犯上の観点から、またその職員ないし営業終了後の顧客の便利さから
して、本件土地を通行する方が現在の職員通用口を通行するよりも勝つているの
で、本件訴訟決着後本件土地の東側の壁の切り込み部分に出入口を設ける旨主張
し、これに沿う当審証人B、同Aの供述があるが右認定事実に照らし採用できず、
他にこれを認めるに足りる証拠はない。
 即ち、仮に職員通用口を利用することに参加人主張の防犯上の難点があるとして
も、その解決策として金融機関が金庫室の隣に外部へ通ずる出入口を店舗完成後に
設けることは、機密の保持、防犯上の観点からたやすく考えられないし、便利さの
観点からしても、本件土地の面する一条通は駐車禁止となつているから、車による
顧客及び行員は、結局参加人の駐車場を利用するほかなく、そうすると現在の職員
通用口からの通路に比べ本件土地の方が通行に便利だとはいえない。
 また前記検証の結果によれば、本件土地の東側附近の参加人店舗壁面タイルの目
地に沿つて、幅九四センチメートル・高さ二メートルに亘つて出入口の輪郭ようの
浅い切り込み部分が設けであるが、その位置は本件土地と接する部分はわずかに三
八センチメートルでその大半が北側にずれている(そのずれの説明はない)ことが
認められること及び前認定の諸事情に照らすと、右切り込み部分の存在も参加人が
本件土地の東側に出入口を設ける意思及び必要性があることの証左と解することが
できない。
 以上のとおり、本件土地は今後その要役地(参加人所有土地)の通行の便益に供
することがなくなつたから、本件通行地役権は通行目的消滅により消滅した。
 四 そうすると、参加人の本件請求は理由がないのでこれを棄却することとし、
訴訟費用の負担につき民訴法八九条に則り主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 乾達彦 裁判官 東條敬 裁判官 馬渕勉)
別 紙 図 面 (一)
<記載内容は末尾1添付>
別 紙 図 面 (二)
<記載内容は末尾2添付>

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