弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件公訴を棄却する。
         理    由
 弁護人水戸野百治の控訴趣意は同弁護人提出の控訴趣意書記載のとおりであり、
被告人の控訴趣意は同人提出の控訴趣意書及び控訴追加趣意書記載のとおりであ
る。
 弁護人の控訴趣意第一点及び被告人の控訴趣意(いずれも不法に公訴を受理した
違法)について、 国税犯則取締法(法と略記する)第十四条第一項は「国税局長
又ハ税務署長ハ間接国税ニ関スル犯則事件ノ調査ニ依り犯則ノ心証ヲ得タルトキハ
其ノ理由ヲ明示シ罰金又ハ科料ニ相当スル金額、没収品ニ該当スル物品、徴収金ニ
相当スル金額及書類送達竝差押物件ノ運搬、保管ニ要シタル費用ヲ指定ノ場所ニ納
付スヘキ旨ヲ通告スヘシ」と定め国税犯則取締法施行規則第九条は「国税犯則取締
法第十四条ノ通告ハ通告書ヲ送達シテ之ヲ為スヘシ」と定めている。また去第十七
条は「犯則者通告ヲ受ケタル日ヨリ二十日以内ニ之ヲ履行セサルトキハ国税局長又
は税務著長ハ告発ノ手続を為スヘシ但シ二十日ヲ過クルモ告発前ニ履行シタルトキ
ハ此ノ限ニ在ラス」と定めるとともに、法第十六条第一項において「犯則者通告ノ
旨ヲ履行シタルトキハ同一事件ニ付訴ヲ受クルコトナシ」と定め、しかして法第十
三条第十四条第二項において収税官吏国税局長又は税務署長が直ちに告発を為すべ
き場合を規定している。それ故に間接国税犯則者に対しては法第十三条第十四条第
二項の場合を除くの外は、先ず法第十四条第一項の通告を為し、犯則者が其の通告
の旨を履行しないときにおいて初めて告発を為し、検察官もここにおいて公訴を提
起し得べく、犯則者が其の旨を履行したときは刑事訴追を免れることができるもの
といわねばならぬ。かくの如く、通告処分は犯則者を訴追する条件たるものである
から、一犯則事犯につき数人の犯則者がある場合には犯則者の個別に通告がなさる
ることを要するものと解するのが相当である。
 ところで本件公訴事実は、被告人はA共同販売所の所長として業務全般を統括す
る地位にあつたものであるところ、同販売所の使用人であるB及びC等が同販売所
の業務に関し発行した領収書に印紙税法所定の印紙を貼用しなかつたと云うのであ
るが、原審で取調べたB、D、E及び被告<要旨>人の検察官事務取扱検察事務官に
対する各供述調書によると、A共同販売所は被告人、D、EE、及びFの四
名が民法上の組合契約に基き経営している共同事業なることが明らかであるから、
前記使用人の違反行為については被告人等四名が夫々印紙税法第十四条の二の責任
を負うべきものであり、四名がそれぞれ反則者と云われるわけである。この場合四
名全部にそれぞれ通告すべきか否かはしばらくおき、被告人を告発するがために
は、法第十三条第十四条第二項所定の事由のない限り被告人に対し法第十四条第一
項の通告処分が為さるることを要するものといわねばならぬ。しかるに、本件にお
いて被告人に法第十三条第十四条第二項所定の事由ありと認めるべき資料はなく、
また前記被告人の供述調書によれば被告人に対して叙上の通告が為されていないこ
とが明らかである。尤も本件記録を調査すると、昭和二十六年三月二十日附を以て
留萌税務署長GからA販売所を名宛人とし、右共同事業の営業所に配達された配達
証明郵便を以て前記犯則事犯につき通告が為されていることが認められるが、A共
同販売所と云うのは、前記のとおり共同事業の称呼であつて、被告人個人の商号で
はないから、これを以て被告人に対する通告と見ることはできない。
 しからば、本件犯則事犯については被告人に対し適法なる通告処分がないから、
被告人に対し更めて通告を為し、その不履行の場合税務署長の告発をまつて公訴を
提起すべきものであつて、本件公訴提起手続は法律に違背し無効であるから、これ
を棄却すべきものである。しかるに原判決がこれを看過し被告人に対し有罪の判決
をしたのは不法に公訴を受理した違法あるものであつて破棄を免れない。論旨は理
由がある。
 よつて弁護人及び被告人の爾余の論旨に対する判断はこれを省略し、刑事訴訟法
第三百九十七条第三百七十八条第二号により原判決を破棄し同法第四百条但書によ
り更に判決することとし、本件公訴提起の手続は叙上説示のとおり無効であるか
ら、同法第四百四条第三百三十八条第四号により本件公訴を棄却すべきものとし、
主文のとおり判決する。
 (裁判長判事 熊谷直之助 判事 笠井寅雄 判事 松永信和)

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