弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人矢野茂郎の上告趣意について。
 しかしその判決をした当該裁判所の公判廷の自白が憲法第三八条第三項にいわゆ
る「本人の自白」に該らないことは当裁判所の判例とするところである(昭和二三
年(れ)第一六八号、同年七月二九日大法廷判決)。ところで新刑訴第三一九条第
二項は「被告人は公判廷における自白であると否とを問わずその自白が自己に不利
益な唯一の証拠である場合には有罪とされない」と新に規定したのであるから新刑
訴の適用される事件において公判廷の自白だけで有罪とした判決があればそれは新
刑訴の規定に違反するものとして当然破毀さるべきである。しかし、本件は新刑訴
施行前に起訴された事件であるから刑訴施行法第二条によつて旧刑訴及び刑訴応急
措置法が適用され、新刑訴は適用されないのである。而して当裁判所の解釈すると
ころによれば憲法第三八条第三項は判決裁判所の公判廷外の自白について規定した
ものであり、前記新刑訴の規定はさらに憲法の趣旨を一歩前進せしめて前記公判廷
外の自白の外に公判廷の自白についても補強証拠を要する旨を規定したものであつ
てその間何等牴触するところはない。それ故当裁判所の見解を是認しても前記新刑
訴法の規定を憲法に違反するものと言うことはできない。
 然らば当裁判所の前掲判例は新刑訴施行の今日でも毫もこれを変更する必要を見
ないのであつて、論旨は理由がない。
 よつて旧刑訴第四四六条により主文の通り判決する。
 この判決は裁判官真野毅、同斎藤悠輔の補足意見、裁判官塚崎直義、同沢田竹治
郎、同井上登、同栗山茂、同小谷勝重、同穂積重遠の各少数意見がある外裁判官全
員一致した意見によるものである。斎藤裁判官の補足意見及び塚崎、沢田、井上、
栗山、小谷、各裁判官の少数意見は前掲大法廷判決に、真野裁判官の補足意見及び
穂積裁判官の少数意見は昭和二三年(れ)第一五四四号、昭和二四年四月二〇日大
法廷判決に示された通りである。
 検察官 岡本梅次郎関与
  昭和二四年六月二九日
     最高裁判所大法廷
         裁判長裁判官    塚   崎   直   義
            裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    沢   田   竹 治 郎
            裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    井   上       登
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    島           保
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    穂   積   重   遠

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