弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     上告人の被上告人B1に対する上告を棄却する。
     右上告費用は上告人の負担とする。
     原判決中上告人と被上告人B2間に関する部分を破棄する。
     前項事件を福岡高等裁判所へ差戻す。
         理    由
 職権をもつて審査するに、第一審における被告Dは、右訴訟の進行中、昭和二三
年四月一四日死亡したけれども、当時同人には訴訟代理人があつたので、訴訟の中
断を生じなかつたのであるが、右訴訟代理人は第一審かぎり訴訟代理人であつたた
め、右訴訟の被告Dに関する部分は第一審判決が昭和二五年一月二七日同人の訴訟
代理人に送達せられたことによつて中絶したのである。しかるに、上告人(原告)
は、右中断につき適法な承継の手続を採ることなく即ち、右訴訟の中断中に右Dの
共同相続人の一人たるB1を相手方として(即ち共同相続人の他の一人たるEを相
手方とすることなく)本件控訴の申立をしたことは記録上明らかであるから、原判
決が右の理由により、右B1に対する本件控訴を不適法として却下したことは正当
であり、従つて、原判決の右の部分に関する本件上告は理由がない。
 次に被控訴人B2(被告、被上告人)の関係について、審査するに、原判決は本
訴請求の趣旨を要約して、控訴人(原告、上告人は)昭和六年五月五日株式会社F
銀行と債権極度額金四千五百円日歩三銭四厘の定で当座借越契約を結び、右債務に
付控訴人所有の本訴物件に根抵当権を設定し之に基き金四千五百円を借用したけれ
ども昭和八年四月頃右債務を半額に打切りを受け弁済を了した。
 然るに右銀行を合併した株式会社G銀行は既に弁済によつて消滅している前記債
権を昭和八年五月一日Eに譲渡し、右Eから本訴物件に対し競売の申立をなし其の
妻Dが之を競落し、次で之を被控訴人B2に売渡し、夫々登記を経ているけれども
右の理由で競落売買共に無効であるから、上告人(原告)は一審被告D及びB2を
相手方として右各登記の抹消を求むるものであるとした、そうして、原判決は本件
は訴訟の目的が共同訴訟人たるD及びB2の両人に付き合一にのみ確定すべき場合
に該当するところ、前段説示のごとくDの承継人B1に対する本件控訴は不適法で
あるから、右B2に対する本件控訴も結局、不適法に帰するものであるとしてこれ
を却下したのである。
 しかしながら、本件において、Dに対する訴は前示のごとく競落を無効として、
これを原因とする同人の本件家屋に対する所有権取得登記の抹消を求むるものであ
り、B2に対する本訴請求は同人が右Dとの間にした売買の無効なることを原因と
して同人の所有権取得登記の抹消を請求するものであつて、その原因並びに請求は
各独立であつて、(たゞ右売買の無効は、競落の無効なることから生ずる当然の結
果であるという関係があるに過ぎない)その間に「訴訟ノ目的ヵ共同訴訟人ノ全員
ニ付合一ニノミ確定スヘキ」関係に立つものでないことは明らかである。であるか
ら、上告人(原告)は、上告人の被告B2に対する請求を棄却した第一審判決に対
しては、上告人の被告Dに対する請求に関する第一審判決にかかわりなく、各別に
控訴の申立をすることができるのであつて、両者の請求を必要的共同訴訟の関係に
立つものとして、上告人のB2に対する本件控訴を不適法として却下した原判決に
は法令の解釈を誤つた違法あるものというの外なく、この点に関する上告人の上告
は理由あり、この部分に関する原判決は破棄を免れないものである。
 よつて、民訴三九六条、三八四条、九五条、八九条、四〇七条を適用して主文の
とおり判決する。
 この判決は、裁判官全員一致の意見である。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    谷   村   唯 一 郎

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