弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人等の負担とする。
         理    由
 上告人等代理人大家国夫の上告理由第一点、第四点及び第五点、同森長英三郎の
上告理由第一点、第二点、第三点及び第四点並びに同青柳盛雄の上告理由第二点及
び第三点について。
 論旨はいずれも原判決が憲法、民法又は労働基準法等に違反することを非難する
ものである。しかし連合国最高司令官から共産主義者及びその支持者を公共の報道
機関から排除することを要請する指示があつたこと、そうしてかような場合には日
本の憲法その他の法令は該指示に牴触する限りにおいて適用を排除せられるもので
あることは、当裁判所の判例(昭和二六年(ク)第一一四号同二七年四月二日大法
廷決定)の示すとおりであり、本件相手方Bがなした解雇もこの指示に基いてなさ
れたものであること記録上明らかであるから、原判決が日本の法令に違反すること
を非難する論旨はいずれの点もその理由がない。原判決が本件解雇を有効としたこ
とはその理由の説明において異なるところがあるにしても、結局において正当であ
る。
 なお原判決に「同調者」というのは、右の「支持者」と同じ意味であるから、原
判決が同調者と認める者の解雇を有効としたのは当然のことである。それ故この点
を非難する森長代理人の上告理由第三点の論旨もまた理由がない。
 上告人等代理人大家国夫の上告理由第二点、第三点及び第六点について。
 連合国最高司令官が共産主義者又はその同調者を公共の報道機関から排除するこ
とを指示したからには、共産主義者又はその同調者は、共産主義者又はその同調者
たることそれ自体によつて解雇せられるのであつて、日本共産党が暴力を以て憲法
を破壊するものであることが公知の事実であるか否か、(第二点)、日本共産党員
たること自体が憲法破壊の行動であるか否か(第三点)、日本共産党の行動につい
て平党員に責任を負わせるか否か(第六点)というが如きことは解雇の効力には影
響なきことである。それ故に解雇を有効とした原判決は、以上の諸点に関する個々
の説明が仮りに完全でなかつたとしても、結局において正当であり、論旨はすべて
理由なきに帰する。
 同第七点について。
 申請人中、Aが福岡地方裁判所小倉支部昭和二三年(ヨ)第三五五号仮処分判決
によつて相手方Bの従業員たる仮の地位を認められたものであることは所論のとお
りであるが、右の仮処分は昭和二三年一〇月二一日被申請会社によつて為された解
雇の効力を停止したものに過ぎないから、その後に生じた別箇の理由によつて同一
人を解雇するのは、何等前記仮処分の効力に牴触するものではない。故にこの点に
関する論旨も採用できない。
 上告代理人森長英三郎の上告理由第五点について。
 論旨は民訴三九一条が違憲規定であるというだけで、憲法の如何なる条項に違反
するかを明示していないから、適法な違憲の主張とは認めがたい。
 同第六点について。
 訴訟記録に判決原本が添附されていなかつたからとて、所論のように裁判官によ
る裁判がなかつたことにはならない。論旨は憲法違反の主張をするかの如くである
が、実は単なる訴訟手続の違反を主張するに外ならない。そして訴訟記録に判決原
本が添附されていないということだけでは、上告適法の理由となるべき法令違反が
あると云い得ないこと、当裁判所の判例(昭和二四年(オ)第七四号同二五年一月
二六日第一小法廷判決)の示すとおりである。それ故論旨は採用できない。
 上告代理人青柳盛雄の上告理由第一点について。
 論旨は第一審判決及びこれを引用した原判決における日本共産党の綱領と活動と
に対する判断を非難するものであるが、この点の判断の如何にかかわらず、本件仮
処分の申請を却下した第一審判決を維持した原判決は前に説明したとおり結局にお
いて正当であるから論旨は理由なきに帰する。
 以上の理由により民訴四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い主文のとおり判
決する。
 この判決は裁判官全員一致の意見によるものである。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    本   村   善 太 郎

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