弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中被告人Aに関する部分の控訴を棄却し、その他の各被告人に関
する部分の原判決を破棄する。
     被告人B組合、同B組合C支部は無罪。
     被告人Dを罰金壱万円に、被告人Eを罰金五万円に処する。
     右罰金を完納しないときは金五百円を一日に換算した期間その被告人を
労役場に留置する。
     訴訟費用中原審において証人F同G同Hに支給したものは被告人D同E
の負担とする。
         理    由
 第一 被告人B組合及び同B組合C支部関係
 職権を以つて、公訴事実中の政治資金規正法(法と略記する)違反団体としての
B組合(旧B組と略記する)及び旧B組C支部と、本件で被告人とされているB組
合(新B組と略記する)及び新B組C支部とが同一かどうかについて判断する。
 (一) 新旧両B組の改変経過について。
 原審第十回公判調書中の証人I、同J、被告人Aの各供述記載、記録編綴の「B
組第十一回中央委員会決定事項竝議事録」と題する書面(第四二六丁乃至第四二八
丁)、旧B組登記簿謄本(第四四二丁乃至第四四四丁)登録通知関係書類(第五七
八丁乃至第五九二丁)を綜合すると、旧B組は北海道内の公立学校の教職員を主体
とし、これに官私立の教職員の或る者を加えて構成し、執行機関、議決機関を有
し、組合員の「経済的、社会的、政治的地位の向上を図ると共に教育の民主的革新
を期すること」を目的とする労働組合法(労組法と略記する)上の労働組合であつ
て昭和二十二年十一月二十一日登記をなして法人格を取得し、存続して来たものが
あるが、昭和二十五年十二月十三日地方公務員法(地公法と略記下る)が公布さ
れ、その内の一部規定を除く規定が昭和二十六年二月十三日から施行され、同日以
後は同法第五十八条第一項により同法にいわゆる職員たる地方公務員については労
組法は適用されないことになつたので同年三月二十八日の中央委員会の決議に基き
従来のB組を解散し、官私立学校の教職員を除外して、同年四月十一日に新B組と
いう地公法上の職員団体としての登録を申請し、同年五月十二日北海道知事から登
録をした旨の通知があつたので、職員団体として法人格を取得するにいたつたこと
が認められる。
 それ故公訴事実中の本法違反行為主体の団体としての旧B組は労組法上の労働組
合であり、昭和二十六年五月十二日北海道知事から登録通知を受けて以来(それま
では、地公法附則第十四条によりなお従前の例によるとされている)現在に至る新
B組は地力公務員の組織する職員団体であるといわねばならない。
 (二) 労働組合こしての旧B組と職員団体としての新B組の実質的差異につい
て。
 新B組が前叙のように労働組合法の下こおける労働組合であつたとは謂え同組合
の主たる構成員である公立学校教職員については、すでに昭和二十三年政令第二百
一号が適用されていたのであるから右職員に関する限り旧B組は臨時的ではあつた
が争議権を伝家の宝刀とする「拘束的性質を帯びたいわゆる団体交渉権」は否認さ
れ、又争議行為ないし「怠業的行為」は刑罰権を以て禁止されていたのである。従
つてこれを地公法適用下の新B組の職員に比較すると労働基本権の制限については
地公法が適用されるようになつたからと謂つて特に著るしい変動が行われたとする
ことはできない。しかしながら、職員の政治的活動について検討すると両者の間に
は著るしい差異を生じたことを見逃すことはできない。すなわち、地公法第三十六
条によれば職員は、政党その他の政治的団体の結成に関与したりこれら団体の役員
にもなれず又他人に対しこれらの団体の構成員となるように、若しくはならないよ
うに勧誘運動をしてはならない(第一項)。とされる外、同条第二項乃至第五項に
おいて広く詳細な、政治的行為の制限を規定して所謂「職員の政治的中立性」を強
く要求しているのである。
 この地公法による職員の政治的中立性の堅持の要求は国民の政治活動の自由に対
して大きな制限を加えるものであり、かかる制限の妥当性が認められる唯一の根拠
は、職員は全体の奉仕者として公共の利益のために勤務すべき職責を担いそれ故に
地方公共団体の行政の公正な運営を確保する義務があるとされる一方、政治的中立
性の確保によつて職員自身の利益が保護されるという点に見出されるのである。
 このような地方公務員の地位は、地公法適用前の旧B組組合員たる公立学校の教
職員に比して法律上は勿論、政治、経済、社会上も全く異つた取扱待遇がなされる
こととなつたのであつて新旧B組の構成員は単に官私立教職員を除外したという点
の外その性格において重大な変更を生ずることとなつたのである。
 而して右構成員の変動は、地公法の適用によつて現実に旧B組が新B組となつた
時において実質的に生じたこととなるので次に新旧両団体の改変についての地公法
の経過規定を検討する。
 (三) 新旧両団体の改変に関する地公法の経過規定について。
 地公法附則第十五項は「第五十八条第一項の規定施行の際現に存する法人である
労働組合でその主たる構成員が職員であるものが第五十三条第一項の規定により登
録されたときは第五十四条第一項の法人である職員団体として設立されたものとみ
なす」と規定し、第十六項で「第五十八条第一項の規定施行の際現に存する労働組
合で、附則第十三項の規定による登録の申請をしないものは、この法律公布の日か
ら起算して四月を経過した日において、同項の規定による登録の申請をしたものの
うち登録をしない旨の通知を受けたものは、この法律公布の日から起算して五月を
経過した日において、それぞれ解散するものとする。」と定めているのである。
 すなわち第十五項は「職員団体として設立されたものとみなす」と規定している
のであるかり、旧組合がそのまま職員団体とみなされるものでないことは一点疑を
存しない。而して第十六項ては職員団体としての登録不申請のもの、又は不登録の
ものについては一定の期間の経過と共に当然解散されるものとしている点を考慮に
容れると、第十五預の解釈としては労働組合がそのまま職員組合になるのではなく
て本来労働組合としては解散手続を採つてこれを消滅せしめ新しく職員団体の設立
手続を採らしむべきものであるのを特に手続の簡易化を期する意味でこれを省略す
ることを得せしめるために同項のような規定が設けられたとするのが適当である。
 右の次第であるから両団体の間には、その綱領、規約等による組合の目的、組織
等についての考察をするまでもなく団体としての実質に重大な変動を生じ、旧B組
は、地公法の下で新B組として登録されその旨の通知を受けた昭和二十六年五月十
二日において名実共に消滅したものであるし、新B組C支部も右同様の理由の外旧
B組の消滅という理由とによつて旧B組の一支部としては(法第十八条による団体
としても)右日時において存立を失つたものとしなければならない。
 従つて、本件公訴を提起された被告人たる新B組及び新B組C支部と公訴事実中
において本法違反主体であるとされている旧B組及び旧B組C支部とは全く別個の
団体であることか明瞭である。しかるに法原判決はこの点についての判断を誤り新
旧両団体間にそれぞれ同一性を認めたのは事実の誤認があり、その誤が判決に影響
を及ぼすことが明らかであるから、原判決中被告人B組合及び同B組合C支部に関
する部分は他の控訴趣意についての判断をなすまでもなく、刑事訴訟法第三百九十
七条、第三百八十二条により破棄を免れない。而して右は当審において直ちに判決
をすることができるので同法第四百条但し書に従つて判決をすることとする。
 被告人B組合に対する本件公訴事実は
 「被告B組合は昭和二十六年二月三日頃同組合臨時大会において、同年四月施行
せらるべき北海道知事選挙に候補者としてKを推薦することを決議し、右目的を達
成する一手段としてその選挙運動等の政治活動を行うため政治団体を結成すること
を定め、右選挙運動等の政治活動資金に充てるため臨時斗争資金名下に同組合員一
人につき百円宛を徴収することを決定して、その頃から逐次右資金を徴収すると共
に同年二月十二日前記の政治団体として実質的には同組合員を以て主体とするL会
なる政治団体の結成を遂げ、政治資金規正法第六条に基くその届出をなし、その後
同年四月三日B組合としても亦北海道選挙管理委員会に対して政治資金規正法第六
条の規定による届出をなしたものであるところ、被告B組合は政治資金規正法第六
条又は第七条による届出がなされた後でなければ政治活動のために如何なる名義を
以てするを問はず支出することができないのに拘らず、その届出前である同年三月
十五日頃から同年四月二日頃迄の間に別表(一)記載の通り五回にわたりいづれも
札幌市ab丁目B組合本部において、右L会に対し、政治活動のため合計百万円を
寄附してこれを支出したものである。」
 というのであり、被告人B組合C支部に対する本件公訴事実は、
 「被告B組合C支部は昭和二十六年二月二十四日同支部年次大会において、同年
四月に施行せらるべき地方公共団体の議会の議員及び長の選挙に際し、北海道知事
選挙の候補者として同年二月三日のB組合臨時大会おいて推薦を決定したKを、北
海道議会議員選挙の候補者として同年一月二十九日の前記C支部臨時支部委員会に
おいて推薦を決定したFを、小樽市議会議員選挙の候補者として同年二月十日の前
記C支部臨時支部委員会において推薦を決定したH及びGをそれぞれ推薦支持する
ことを確認し、右H及びGに対しその選挙のための経済的援助をなすことを決議し
たものであるところ、被告B組合C支部は政治資金規正法第六条又は第七条の規定
による届出がなされた後でなければ政治活動のためにいかなる名義を以てするを問
わず支出することができないのに拘らず、前記届出をなさないで同年同月十日頃か
ら同月二十六日頃迄の間に別表(二)記載の通り三回に亘りいづれも小樽市c町d
丁目e番地前記C支部事務所において、B組合が前記Kをはじめ同組合が推薦を決
定した各候補者のための選挙運動等の政治活動を行うために結成した政治団体であ
るL会に対し政治活動のため合計金十九万六千八百円を寄附してこれを支出したも
のである。」
 というにあるが、前記被告人B組合及び同B組合C支部に対する被告事件につい
てはいづれも犯罪の証明がないのであるから刑事訴訟法第三百三十六条に則りそれ
ぞれ無罪の言渡をすることとする。
 第二 被告人A、同D、同E関係。
 被告人Aは旧B組の責任者として、被告人Dは旧B組C支部の代表者、同Eは同
支部の責任者としてそれぞれ記載されていることは本件公訴事実によつて明かであ
るから、被告人B組(すなわち新B組)及同B組C支部(すなわち新B組C支部)
が前記第一記載のとおり無罪であること<要旨第一>とは関係なく、別にそれぞれの
控訴趣意について判断しなければならない。法第二十三条第二項の罰則は、前 旨第一>項の場合には、併せてその田体又はその支部の代表者若しくは主幹者その他
の責任者を処罰することができる旨を定めているが、右規定の趣意は代表者等を処
罰するには必ずその前提要件として団体等が現実に処罰されることを要するという
意味ではなく、団体等に違反があつた場合にはその代表者等の責任者をも罰するこ
とができるものとしてこれ等のものの特段の注意を期待し本法の取締目的に万全を
期したものと解するのを相当とする。このことは、本法の規正対象となる団体等に
は、特定選挙に際し全く一時的に結成される場合が多いことが法第三条の規定に徴
しても明であるが、斯かる団体に本法違反行為があつた場合、当該団体が解散等の
理由で消滅してもその当時の代表者等に対し団体の違反行為の故にその責任を追求
し得るとするのでなければ本法の規正は殆んど下可能に近いことから考えても容易
に肯かれるのである。
 検察官高木一の控訴趣意は同人提出の控訴趣意書記載のとおりであるから、ここ
にこれを引用し、以下これについて判断する。
 (甲) 被告人Aに対する分。
 控訴趣意第一点(法令適用の誤)について。
 <要旨第二>政治資金規正法第四条は「この法律において公職の候補者とは、第二
条の規定による選挙において、公職選挙法の定めるところにより、候補
者としての届出をし、又は推薦届出をされた者をいう」。と規定しているのである
から、法第三条、第八条等に所謂「候補者」とはすべて届出後の候補者を指称する
ものであつて、未だ立候補の届出を完了していない者すなわち「候補者たらんとす
る者」は右の候補者の中には含まれないことは明である。
 所論中、「候補者」を届出完了者に限ると立候補届出前の候補者を中心とする悪
質な脱法行為を取締ることが不可能となり、同法が第八条を設けた効果は失われ、
法第一条の立法精神が没却されるという論旨は、取締目的の点を殊更に重要視して
候補者の概念を定義規定の明文を超えて解釈するものであつて、反つて法の立法趣
旨に合致しないといわねばならぬ。けだし、本法は候補者を中心とする団体等の諸
政治活動についてはその候補者は届出完了の者に限つて資金上の規正を行う程度で
政治活動の公明、選挙の公正は十分期し得られるものとする一方、候補者の概念を
明確にし候補者たらんとする者をも含むと解釈する余地を一掃することによつて法
運用上不当に政治活動の抑制が行われない為、特に法第四条の規定を設けたもので
あると解するのを正当とするからである。
 斯く解することによつて、初めて政党その他の団体等の政治活動の範囲が明確と
なり、これに参劃する者の明朗な活動が期待され、延いて民主政治の健全な発達に
寄与するという本法の立法目的が達成されることになるのである。
 又所論中、法第四条の規定が「届出」を云々しているのは、候補者たらんとした
者の中、その後遂に当該選挙に立候補することを断念し結局立候補届出をしなかつ
た者は公職の候補者の概念から除外する趣旨を明かにしたに過ぎないもので、候補
者たるの地位が立候補届出を論理的前提とすることに言及しただけであるとの点
は、若しかかる見解に立てば届出未了の候補者を中心とする団体の規正は立候補届
出という偶然的事実(届出という行為は一見、時日の経過と共に当然実現すべきも
ののように考えられるが、現実には必ずしもそうでなく、これをめぐる政治的事情
又は候補者たらんとする者の一身的事情等によつてしかく既定の事実ではなく寧ろ
偶発的事情に因つて多分に影響を受ける行為である)の成否に繋ることとなつて規
正自体甚だ不安定たることを免れないし、又これを法第八条の場合に当て篏めてそ
の違反罪の成立乃至処罰と関連させて考えて見ると、候補者たらんとした者を推薦
するため寄附を受け、又は支出をした場合にはその時において違反罪としては完成
するわけであるが、処罰をするにはその候補者が現実に届出をするのを俟たなけれ
ばならないこととなるのであろう。従つて届出完了という事実が本罪の処罰条件と
たると解する外はないのであるが処罰条件を規定した他の法規の規定例えば破産法
中の諸規定又び刑法第百九十七条第二項の涜職の罪の規定と対比し本法第四条の規
定がかかる場合の為の規定であるとすることは到底不可能である。
 更に「推薦」なる用語が、所論のように一般には立候補届出前の候補予定者につ
いての推薦活動(推薦届出を中心と下る)をも含むものであることはそのとおりで
あるが、その届出以後のみの推薦活動と雖も重要な政治活動であることは、その行
為の性質上明かであるのみならず、例えば公職選挙法第百四十六条が選挙運動期間
中のみの推薦活動についての脱法行為を禁止する規定を設けている点等からも疑な
いところである。このように、推薦という政治活動は本来、推薦される候補者の立
候補届出の有無ということとは直接関連のないものである。従つて「推薦」という
活動の面から「候補者」の定義を引出そうとすることは寧ろ逆であつて、「候補
者」の意義を定めた後において初めてこれを中心とする「推薦」活動が如何なる範
囲となるべきかを定めなければならない筋合である。所論は、「推薦」には立候補
居出前における行為が含まれねばならないという見解を前提として、これに基いて
第四条に所謂「候補者」の意義を定めようとするもので所論には賛同できない。
 又所論の、第四条の立法目的は「公選による公職」の範囲を明文を以て規定する
にあるもので同条は、「届出を……した」という過去時称的の立言の仕方に重点を
置いたものではないとの点についてであるが本法は第二条において」この法律にお
いて選挙とは、公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)の規定を適用する公職の選
挙をいう。」と規定して本法に所謂「選挙」の定義を明かにしており、而して公職
選挙法では第二条で同法の適用範囲を明文を以て「この法律は、衆議院議員、参議
院議員、地方公共団体の議会の議員及び長竝びに教育委員会の委員(地方公共団体
の議会において選挙する委員を除く。以下同じ。)の選挙について、適用する。」
と定め、更に公職の定義についての第三条で「この法律において「公職」とは、衆
議院議員、参議院議員、地方公共団体の議会の議員及び長竝びに教育委員会の委員
の職をいう。」と明規しているのである。従つて仮に本法第四条の規定が存在しな
いとしても、本法の適用を受ける公職の範囲は、公職選挙法と本法第二条との関連
解釈によつて明瞭である。然らば法第四条の重点は、所論の如く公職の範囲を限定
するのではなく、候補者の範囲を限定する点に存すると言わねばならない。これを
公職選挙法上は無関係の国家公務員法及同法規則における「公選による公職」に関
する人事院規則一四―五の規定の場合と同様に論ずることはできない。論旨に引用
された札幌高等裁判所判決(昭和二十六年九月二十六日言渡、昭和二十六年(う)
第三六五号乃至第三六七号国家公務員法違反被告事件)は人事院規則中の「候補
者」に関するものであるから、本件に適切な判例ではない。
 これを要するに、原判決が、法第三条、第八条にいう「公職の候補者」とは、第
四条との関連解釈上届出を完了した後り候補者のみに限ると解したのは正当であつ
て、所論のような法令の通用に誤りはないのであるから、論旨は理由がない。
 控訴趣意第二点(理由のくいちがい)について
 所論の要旨は、被告人Aにに対する公訴事実は、B組合は昭和二十六年二月三日
頃に、北海道知事選挙の候補者Kを推薦すること、及び右Kの主唱する政治上の主
義及び施策を支持すること、即ち法第三条第二項所定の事項全部を目的とするに至
り、よつて同条所定の協会その他の団体となつた、と言う事実を包含しているので
あつて、以上の事実は本件の起訴状に訴因を明示して記載されてをるに拘らず、原
判決は前記組合か公職の候補者の推薦を目的とする点のみを判断し、政治上の主義
若しくは施策の支持を目的とした点を判断していない。この点において原判決は理
由のくいちがいがあると言うのである。
 しかし法第三条に政治上の主義若しくは施策を支持すると言うのは個々の候補者
の政見とは無関係に一定の政治上の主義若しくは施策を支持することを言うものと
解されるから、これに該当する事実を訴因とするのであれば、起訴状に、当該団体
がその支持を目的とする政冶上の主義若しくは施策の内容を具体的に記載しなけれ
ばならない。然るに被告人に対する起訴状にはかかる記載がないのみならず、Kの
主唱する主義施策を支持する旨の記載すらなく、単に北海道知事選挙に候補者とし
てKを推薦することを決議し、右目的を達成する一手段として云々」と記載されて
いるのであるから、右組合は候補者Kの推薦を目的とすると言うのが訴因であつ
て、主義施策の支持を目的とすることは訴因になつていないものとするの外はな
い。然らば原判次がこの点を判断しなかつたのは当外であつて、原判伏には理田の
くいちがいはない。
 以上の次第であるから、被告人A関係についての論旨はいずれも理由がないとい
わなければならない。
 よつて刑事訴訟法第三百九十六条に従い被告人Aに対する本件控訴は棄すること
とする。
 (乙) 被告人D、同Eに対する分。
 控訴趣意第三点(法令適用の誤)について。
 原判決はB組は元来単一組合で同組合C支部は全て同組合の決定指示に基き、同
組合関係の事務を処理する関係にあるに過ぎないので、たとえ公訴事実中こ記載さ
れているようた確認ないし決議がなされたとしても、政治資金も規正法の適用をう
ける政治団体となつたB組に対する同法上の支部として、自らも一個の政治団体た
るの資格を有するに至つたものとは認めることができない。として右C支部か本法
第十八条の支部であるとする公訴事実を否定しているのである
 <要旨第三>しかしながら、単一組含の一支部であるという一事を以てして直立ち
に法第十八条の適用を除外することは誤であつて、結局単一組合の支部
が具体的こ如何なる社団的組織体をなし如何なる範囲の活動能力を有しているかと
いう点を明瞭にして、これを決定する外はないのである法第十八条は、政党その他
の団体の支部と雖もその本部に対して或る程度独立した社団性を有するものについ
ては、これを同法の政党その他の団体に準じて資金に関する政冶活動規正の対象と
すべきことを規定したと解すべきである。すなわら、同法は団体の組織として支部
独自の代表者又は主幹者及び会計責任者の定めがあり現実に或る程度本部とは別に
独自の意思決定に基いて政冶活動をなす能力を有するものは、その団体としての実
体に着目して本法の取締をなすべきものとしたのである。しかして、本件旧B組C
支部が同支部独自の代表者又は主幹者及び会計責任者を置き或る程度本部に対して
独立しに活動能力を有していたことは、原審の適法に取調べた検察察作成の被告人
Dの第一、二回供述調書の各記載によつて認められるので、同支部は正に法第十八
条に所謂支部に該当するものといわなければならない。然るに原判決は前記のとお
り、これを消極に解し因つて被告人D及び同Eに対する公訴事実について無罪の言
度をなしたのは法律の適用に誤があつて、その誤が判決に影響を及ぼすことが明ら
かであり論旨は理由がある、よつて刑事訴訟法第三百九十七条第三百八十条により
原判決中被告人D、及び同Eに関する部分を破棄し、尚本訴訴訟記録竝びに原裁判
所で取調べた証拠によつて直ちに判決することができるものと認めるので、同法第
四百条但し書に従つて更に判決することとする。
 (罪となるべき事実)
 B組合C支部はB組の一支部として支部独自のの規約を有し、右規約の定めると
ころに基いて、決議機関として支部年次大会を設け支部長、副支部長、書記長及び
会計責任者等の執行機関を置き支部のみに関する組合業務は或程度本部から独立し
て独自の組合活動をなしていたものであるが、昭和二十六年二月二十四日小樽市M
小学校におけるC支部年次大会で、同年四月行われる地方選挙には知事候補K、道
議会議員候補F、小樽市議会議員候補H、同Gをそれぞれ正式に推薦することを決
議して、B組支部とは別個の政治活動をなすに至つたところ、同年四月三日に前記
K外三名はそれぞれ立候補の届出をなしたので、C支部としても右四名を推薦する
目的を有する政治団体となつた。
 従つて、同支部として政治資金規正法第六条による届出がなされた後でなければ
右候補者の推薦等の政治活動のために何等の支出をすることができないに拘らず、
右届出をなさないで同年四月十日から同月二十六日迄の間に別表(三)のとおり三
回に亘りいづれも小樽市c町d丁目e番地C支部事務所において前記候補者を推薦
しこれに対し経済的援助をなしていたL会に対し合計金十九万六千八百円を寄附し
て支出したものである。
 而して被告人DはC支部の支部長として同支部を代表し支部の業務全般を統括す
る者、被告人Eは同支部書記長として業務全般を処理し実質的な責任者であつたも
のである。
 (証拠)
 一、 被告人Dの検察官に対する第一、二回供述調書
 一、 被告人Eの検察官に対する第一、二、五回供述調書
 一、 Nの検察官に対する第二、三回供述調書
 一、 Hの検祭官に対する第一、二回供述調書
 一、 Gの検察官に対する第一回供述調書
 一、 Fの検察官に対する第一回供述調書
 (法令の適用)
 法律によれば、被告人両名の各所為は政治資金規正法第八条第二十三条第二項、
第十八条に該当するから、所定刑中罰金刑を選択し、その範囲内で被告人Dを罰金
一万円、被告人Eを罰金五万円に処すべく、右罰金を完納しない場合には金五百円
を一日に換算した期間その被告人を労役場に留置することとし、訴訟費用の負担に
つき刑事訴訟法第百八十一条を適用し、よつて主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 熊谷直之助 裁判官 成智寿朗 裁判官 宇野茂夫)
 (別表省略)

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