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平成30年3月14日判決言渡
平成28年(行ウ)第125号更正処分等取消請求事件
主文
1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。5
事実及び理由
第1請求
神戸税務署長が平成26年7月29日付けで原告に対して行った,原告の平
成21年3月1日から平成22年2月28日までの事業年度(以下「平成22
年2月期」という。),同年3月1日から平成23年2月28日までの事業年度10
(以下「平成23年2月期」という。),同年3月1日から平成24年2月29
日までの事業年度(以下「平成24年2月期」という。)及び同年3月1日から
平成25年2月28日までの事業年度(以下「平成25年2月期」という。)に
係る法人税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分(平成26年1
0月31日付け異議決定並びに平成28年12月22日付け更正処分及び過少15
申告加算税の変更決定処分によりその一部が取り消された後のもの)のうち,
以下の部分を取り消す。
⑴平成22年2月期に係る更正処分のうち所得金額11億0661万042
2円,差引納付すべき税額55万9200円を超える部分及び過少申告加算
税の賦課決定処分のうち加算税の基礎となる税額55万円,加算税額5万520
000円を超える部分
⑵平成23年2月期に係る更正処分のうち所得金額9億6007万8269
円,差引納付すべき税額33万1500円を超える部分及び過少申告加算税
の賦課決定処分のうち加算税の基礎となる税額33万円,加算税額3万30
00円を超える部分25
⑶平成24年2月期に係る更正処分のうち所得金額13億9421万717
8円,差引納付すべき税額26万8500円を超える部分及び過少申告加算
税の賦課決定処分のうち加算税の基礎となる税額26万円,加算税額2万6
000円を超える部分
⑷平成25年2月期に係る更正処分のうち所得金額16億4662万245
5円,差引納付すべき税額20万5800円を超える部分及び過少申告加算5
税の賦課決定処分のうち加算税の基礎となる税額20万円,加算税額2万円
を超える部分
第2事案の概要
本件は,菓子及びパン(以下「パン等」という。)の製造,販売等を目的とす
る株式会社である原告が,パン等の製造に使用している別表1「パン等製造機10
器一覧表」(以下「別表1」という。)記載の各機器(以下「本件各機器」とい
う。)のうち番号2,5,7,9,10,13,14及び16の各機器(以下「本
件各資産」という。)について,法人税法施行令(以下「施行令」という。)1
3条7号の「器具及び備品」(以下,単に「器具及び備品」という。)に該当す
るとして減価償却費を計算し,これを前提に平成22年2月期,平成23年215
月期,平成24年2月期及び平成25年2月期の4事業年度(以下「本件各事
業年度」という。)の法人税について確定申告をしたところ,神戸税務署長から,
本件各資産はいずれも施行令13条3号の「機械及び装置」(以下,単に「機械
及び装置」という。)に該当するとして,これを前提とする内容の各更正処分及
び過少申告加算税の各賦課決定処分(ただし,平成26年10月31日付け異20
議決定並びに平成28年12月22付け更正処分及び過少申告加算税の変更決
定処分によりその一部が取り消された後のもの。以下,各更正処分を「本件各
更正処分」と,過少申告加算税の各賦課決定処分を「本件各賦課決定処分」と
いい,本件各更正処分と本件各賦課決定処分を併せて「本件各処分」という。)
を受けたことから,本件各処分の一部の取消しを求める事案である。25
1関係法令の定め
⑴法人税法
ア法人税法21条は,内国法人に対して課する各事業年度の所得に対する
法人税の課税標準は,各事業年度の所得の金額とする旨規定し,同法22
条1項は,内国法人の各事業年度の所得の金額は,当該事業年度の益金の
額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする旨規定する。そして,5
同条3項は,内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上,当該事業年度
の損金の額に算入すべき金額は,別段の定めがあるものを除き,次の各号
に掲げる額とする旨規定する。
(ア)1号当該事業年度の収益に係る売上原価,完成工事原価その他こ
れらに準ずる原価の額10
(イ)2号同項1号に掲げるもののほか,当該事業年度の販売費,一般
管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日
までに債務の確定しないものを除く。)の額
(ウ)3号当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの
イ法人税法2条23号は,同法において,減価償却資産とは,建物,構築15
物,機械及び装置,船舶,車両及び運搬具,工具,器具及び備品,鉱業権
その他の資産で償却すべきものとして政令で定めるものをいう旨規定し,
同法31条1項は,内国法人の各事業年度終了の時において有する減価償
却資産につきその償却費として同法22条3項(各事業年度の損金の額に
算入する金額)の規定により当該事業年度の所得の金額の計算上損金の額20
に算入する金額は,その内国法人が当該事業年度においてその償却費とし
て損金経理をした金額のうち,その取得をした日及びその種類の区分に応
じ政令で定める償却の方法の中からその内国法人が当該資産について選定
した償却の方法(償却の方法を選定しなかった場合には,償却の方法のう
ち政令で定める方法)に基づき政令で定めるところにより計算した金額に25
達するまでの金額とする旨規定する。
⑵施行令
ア施行令13条(平成23年政令第181号,同年政令第191号,平成
28年政令第43号による各改正前のもの。以下,同条について同じ。)は,
法人税法2条23号に規定する政令で定める資産は,棚卸資産,有価証券
及び繰延資産以外の資産のうち次の各号に掲げるもの(事業の用に供して5
いないもの及び時の経過によりその価値の減少しないものを除く。)とする
旨規定する。
(ア)1号建物及びその附属設備(暖冷房設備,照明設備,通風設備,
昇降機その他建物に附属する設備をいう。)
(イ)2号構築物(ドック,橋,岸壁,桟橋,軌道,貯水池,坑道,煙10
突その他土地に定着する土木設備又は工作物をいう。)
(ウ)3号機械及び装置
(エ)4号船舶
(オ)5号航空機
(カ)6号車両及び運搬具15
(キ)7号工具,器具及び備品(観賞用,興行用その他これらに準ずる
用に供する生物を含む。)
(ク)8号鉱業権等の無形固定資産
(ケ)9号牛等の生物(7号に掲げるものに該当するものを除く。)
イ施行令48条1項(平成23年政令第196号による改正前,同第3720
9号による改正前及び同号による改正後のもの。以下,同項について同じ。)
は,平成19年3月31日以前に取得をされた減価償却資産の償却限度額
(法人税法31条1項〔減価償却資産の償却費の計算及びその償却の方法〕
の規定による減価償却資産の償却費として損金の額に算入する金額の限度
額をいう。)の計算上選定をすることができる同項に規定する政令で定め25
る償却の方法は,次の各号に掲げる資産の区分に応じ当該各号に定める方
法とする旨規定する。
(ア)1号省略
(イ)2号施行令13条1号(減価償却資産の範囲)に掲げる建物の附
属設備及び同条2号から7号までに掲げる減価償却資産(略)次
に掲げる方法5
a旧定額法(当該減価償却資産の取得価額からその残存価額を控除し
た金額にその償却費が毎年同一となるように当該資産の耐用年数に応
じた償却率を乗じて計算した金額を各事業年度の償却限度額として償
却する方法)
b旧定率法(当該減価償却資産の取得価額にその償却費が毎年一定の10
割合で逓減するように当該資産の耐用年数に応じた償却率を乗じて計
算した金額を各事業年度の償却限度額として償却する方法)
(ウ)3号から6号まで省略
ウ施行令48条の2(平成22年政令第51号,平成23年政令第379
号,平成28年政令第146号による各改正前のもの。以下,同条につい15
て同じ。)は,平成19年4月1日以後に取得をされた減価償却資産の償却
限度額の計算上選定をすることができる法人税法31条1項(減価償却資
産の償却費の計算及びその償却の方法)に規定する政令で定める償却の方
法は,次の各号に掲げる資産の区分に応じ当該各号に定める方法とする旨
規定する。20
(ア)1号省略
(イ)2号施行令13条1号(減価償却資産の範囲)に掲げる建物の附
属設備及び同条2号から7号までに掲げる減価償却資産(略)次に掲
げる方法
a定額法(当該減価償却資産の取得価額にその償却費が毎年同一とな25
るように当該資産の耐用年数に応じた償却率を乗じて計算した金額を
各事業年度の償却限度額として償却する方法)
b定率法(当該減価償却資産の取得価額にその償却費が所定の償却率
を乗じて計算した金額を各事業年度の償却限度額として償却する方法)
(ウ)3号から6号まで省略
エ施行令56条(平成28年政令第146号による改正前のもの。以下,5
同条について同じ。)は,減価償却資産の48条1項1号及び3号並びに
48条の2第1項1号から3号まで(減価償却資産の償却の方法)に規定
する耐用年数,48条1項1号並びに48条の2第1項1号及び2号に規
定する耐用年数に応じた償却率については,財務省令で定めるところによ
る旨規定する。10
⑶減価償却資産の耐用年数等に関する省令(平成23年財務省令第81号に
よる改正前及び同号による改正後のもの。以下「耐用年数省令」という。)
ア耐用年数省令1条1項は,法人税法2条23号に規定する減価償却資産
のうち鉱業権,坑道等所定の資産以外のものの耐用年数につき,1号にお
いて,施行令13条1号,2号及び4号から7号までに掲げる資産(坑道15
を除く。)は別表第一(機械及び装置以外の有形減価償却資産の耐用年数
表。以下「別表第一」という。)の定めるところによる旨を,2号におい
て,施行令13条3号に掲げる資産は別表第二(機械及び装置の耐用年数
表。以下「別表第二」という。)の定めるところによる旨をそれぞれ規定
する。20
イ別表第一は,種類「器具及び備品」のうち,構造又は用途「1家具,
電気機器,ガス機器及び家庭用品(他の項に掲げるものを除く。)」,細
目「電気冷蔵庫,電気洗濯機その他これらに類する電気又はガス機器」の
耐用年数を6年とする旨規定する。
ウ別表第二は,設備の種類「食料品製造業用設備」の耐用年数を10年と25
し,設備の種類「飲食料品小売業用設備」の耐用年数を9年とする旨規定
する。
2前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨
により容易に認められる事実)
⑴原告の業務内容等
ア原告は,パン等の製造,販売等を目的とする株式会社であり,「A」,5
「B」,「C」,「D」等のブランドで店舗を全国各地に展開し,同店舗
においてパン等の販売を行っている。(乙2の1)
イ原告は,店舗で販売するパン等について,小麦粉から生地を仕込み,成
形して焼き上げるまでの全工程を一貫して行うという製造方式(省略)を
採用しており,原告の店舗で販売されるパン等は,基本的に,全国6箇所10
(地名省略)にある製造工場(以下「本件各工場」という。),又は店舗
に併設された工房(以下「本件各インストア工房」といい,本件各インス
トア工房と本件各工場を併せて「本件各パン製造場」という。)において
前記の製造方式により製造されている。(乙1,2の1・2,4~7)
ウ本件各パン製造場においてパン等を製造する場合の製造工程は,おおむ15
ね,①原料の受入れ及び保管,②生地の生成,③生地の一次発酵,④生地
の小分け,⑤生地の寝かし,⑥生地の成形,⑦生地の二次発酵,⑧生地の
焼成,⑨スライス及び包装によって構成されているが,本件各工場の1つ
であるE工場では,別紙図面1-1~3に記載されている作業がその記載
場所で行われており,本件各インストア工房の1つであるF店では,別紙20
図面2-1~5に記載されている作業がその記載場所で行われている(前
記各別紙図面上の記載のうち,「仕込」は前記②に,「分割成型」が前記
④・⑥に,「発酵」が③・⑦に,「包装」が前記⑨に対応するものと認め
られる。)。(乙4,5)
エ前記ウの製造工程においては,別表1記載の資産(本件各機器)が使用25
されている。本件各機器の用途ないし機能は,同別表のそれぞれの機器に
対応する「機能等」欄に記載のとおりであり,本件各工場にはその全部が
設置されているが,本件各インストア工房には同別表の番号1~12の各
機器が設置されている。(乙3~6)
E工場では,本件各機器のうち,別紙図面1-1~3に記載されている
作業に使用するものがその記載場所に設置されるとともに,別紙図面1-5
1~3の緑色・黄色・赤色部分に冷蔵庫及び冷凍庫が設置されている。ま
た,F店では,本件各機器のうち,別紙図面2-1~5に記載されている
作業に使用するものがその記載場所に設置されるとともに,別紙図面2-
1~5の緑色・黄色部分に冷蔵庫及び冷凍庫が設置されている。
オ本件各パン製造場における本件各機器の設置及び使用の状況は,本件各10
工場についてはE工場と,本件各インストア工房についてはF店とおおむ
ね同様である。
⑵本件各処分の経緯
ア原告は,本件各事業年度の法人税につき,別表2-1~4の各「確定申
告」欄記載のとおり,確定申告を行った。原告は,平成22年2月期の法15
人税につき,平成23年2月2日,別表2-1の「修正申告」欄記載のと
おり,修正申告を行い,同月25日,同別表の「賦課決定処分」欄記載の
とおり,過少申告加算税の賦課決定処分を受けた。
イ原告は,前記アの確定申告ないし修正申告において,本件各パン製造場
で使用されている冷蔵庫等を「器具及び備品」に該当するとして減価償却20
費を計算していたところ,神戸税務署長は,平成26年7月29日付けで,
本件各事業年度の法人税につき,原告が「器具及び備品」に該当するとし
ていた冷蔵庫等は「機械及び装置」に該当し,その耐用年数は10年であ
るなどと判断して,別表2-1~4の各「更正処分等」欄記載のとおり,
各更正処分及び各賦課決定処分をした。(甲1の1~4)25
ウ原告は,平成26年8月11日,前記イの各更正処分及び各賦課決定処
分について,大阪国税局長に対し,異議の申立てをしたところ,大阪国税
局長は,同年10月31日,本件各パン製造場で使用されている冷蔵庫等
は「機械及び装置」に該当するが,その耐用年数は本件各工場で使用され
ているものは10年,本件各インストア工房で使用されているものは9年
とすべきであるなどとして,別表2-1~4の各「異議決定」欄記載のと5
おり,前記イの各更正処分及び各賦課決定処分の一部を取り消す旨の決定
をした。(甲2)
エ原告は,平成26年12月5日,国税不服審判所長に対し,前記ウの異
議決定を経た後の前記イの各更正処分及び各賦課決定処分について,本件
各資産は「器具及び備品」に該当する旨主張して審査請求を行ったところ,10
国税不服審判所長は,平成27年10月21日,同審査請求を棄却する旨
の裁決をした。(甲3)
オ神戸税務署長は,平成28年12月22日,別表2-3・4の各「減額
更正処分等」欄記載のとおり,前記ウの異議決定を経た後の前記イの各更
正処分及び各賦課決定処分のうち平成24年2月期及び平成25年2月期15
に係るものについて,法人税の減額更正処分及び過少申告加算税の減額変
更決定処分をした(前記ウ及びオによりその一部が取り消された後の前記
イの各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分が本件各処分であ
る。)。(乙23の1・2)
⑶本件訴えの提起20
原告は,平成28年4月19日,本件訴えを提起した。(顕著な事実)
3本件各処分の根拠及び適法性に関する被告の主張
被告が本件訴訟において主張する本件各処分の根拠等は,別紙2「本件各処
分の根拠及び適法性」記載のとおりであるところ,原告は,後記4の争点に関
する部分を除き,その計算の基礎となる金額及び計算方法を明らかに争わない。25
4争点
⑴本件各資産が「機械及び装置」と「器具及び備品」のいずれに該当するか。
(争点1)
⑵本件各事業年度の法人税の申告が過少申告となったことについて国税通則
法65条4項(平成28年法律第15号による改正前のもの。以下,同項に
ついて同じ。)の「正当な理由」があるか。(争点2)5
5争点に関する当事者の主張
⑴争点1(本件各資産が「機械及び装置」と「器具及び備品」のいずれに該
当するか。)
(被告の主張)
ア「機械及び装置」と「器具及び備品」の区別の基準10
(ア)「機械及び装置」と「器具及び備品」の意義に関しては,法人税法
及び他の法令において,これを明確に定義づけた規定はなく,その言葉
の通常の用法からもその意義を一義的に決することはできないが,これ
らはいずれも法令上の用語であるから,その範囲については,その用語
が使用され,その適用が問題となっている法規の立法趣旨及びその法規15
に関連する他の法規上の用例・意義並びにそれらとの整合性を考慮して
解釈すべきである。
(イ)法人税法2条23号は,減価償却資産の範囲を政令に委任し,同号
の委任を受けた施行令13条は,減価償却資産として,3号において「機
械及び装置」を,7号において「器具及び備品」を規定している。そし20
て,施行令56条は,「機械及び装置」,「器具及び備品」等の耐用年数等
を財務省令の定めるところによるものとし,同条の委任を受けた耐用年
数省令1条1項は,1号において,「器具及び備品」の耐用年数は,別表
第一に定めるところによるものとする一方,2号において,「機械及び装
置」の耐用年数は,別表第二に定めるところによるものとしている。以25
上のような法人税法,施行令及び耐用年数省令の定めからすると,ある
減価償却資産が「機械及び装置」と「器具及び備品」のいずれに該当す
るかを判断するに当たっては,それが別表第二の「機械及び装置」と別
表第一の「器具及び備品」のいずれに該当するかを検討するのが相当で
ある。
(ウ)上記の観点から「機械及び装置」と「器具及び備品」の区別につい5
てみると,別表第二は,「機械及び装置」を総合償却資産として,個別の
設備細目1つ1つについて個別の耐用年数を定めるのではなく,産業用
設備の種類ごとに一括りで耐用年数を定めているところ,耐用年数省令
が「機械及び装置」について前記のような総合償却方式を採用している
のは,機械設備は最初の工程より最後の工程に至るまで有機的に牽連結10
合して活動し,資産の内容についてみても細目ごとの区分は必ずしも明
瞭でないことから,一括して耐用年数を算定することでその簡易化を図
るとともに,固定資産は企業において長期間にわたって収益を生み出す
源泉であり,その減価償却は投下資本の回収及び減価償却資産の更新の
ための資金準備の意味を持つことから,産業用設備については,これを15
構成する個別の資産に細分化するのではなく,一括りにした上で,当該
産業用設備全体により生み出される収益による投下資本の回収期間を考
慮し,当該設備全体に一の耐用年数を適用するのが相当と考えられるか
らである。また,別表第二の「機械及び装置」は,日本標準産業分類の
中分類に従って「○○業用設備」として55に区分されているところ,20
その字句を文理解釈すれば,「○○業のために用いられている機器」が「機
械及び装置」に該当するものというべきであり,製造業であれば,製品
製造のための原料の受入れから製造した製品の完成前の間における全部
又は一部の工程において,その製造のために用いることが必要な又は用
いられている機器の集合体をいうものと解釈することが自然である。こ25
のような別表第二の規定の仕方等からすると,各機器が製品製造等の一
連の生産工程の中で供用され,それぞれの果たす機能により製造設備等
の一部を構成している場合の当該各機器は,別表第二の「機械及び装置」
に該当するというべきである。これに対して,別表第一は,別表第二と
異なり,個別の資産ごとに耐用年数を規定しており,このような別表第
一の規定の仕方からすると,それ自体で固有の機能を果たし,独立して5
使用される機器が,別表第一の「器具及び備品」に該当するというべき
である。
イ本件各資産が「機械及び装置」に該当すること
(ア)本件各資産を含む本件各機器は,本件各工場にはその全部が,本件
各インストア工房には本件各機器のうち別表1の番号1~12の各機器10
が,それぞれ設置され,パン等の製造工程で使用されるものであり,パ
ン等の製造工程において別表1の各機器に対応する「機能等」欄記載の
機能を果たすものであって,本件各パン製造場においてパン等を製造す
る設備の一部を構成しているということができる。
すなわち,パン等の製造においては,その工程を通じて,生地の温度,15
発酵状態,湿度等の管理調整が非常に重要であり,生成した生地を焼成
するまでの工程において,冷蔵庫,冷凍庫,生地保管庫,プレハブ冷蔵
庫,パイルーム等が別表1の各機器に対応する「機能等」欄記載の機能
を果たしている。なお,冷蔵庫及び冷凍庫の中には原材料又は完成品の
保管のみを行うものも存在するが,①別表第二では「機械及び装置」に20
該当する資産を「〇〇業用設備」として区分しており,〇〇業のために
用いられている機器が別表第二の「機械及び装置」に該当すると解され
ること,②製造業は,原材料から製品を製造するために,製品開発,原
材料の調達,在庫管理等を行い,製品を製造し,これを顧客に供給する
業種であるから,原材料又は完成品の保管を行う機器も製造業のために25
用いられているものということができることからすれば,原材料又は完
成品の保管のみを行う冷蔵庫及び冷凍庫も「機械及び装置」に該当する
というべきである。
また,焼き上げたパン等の顧客への提供及び工場から店舗への移送,
各機器やパン箱の洗浄等においては,本件各機器のうち,ブレッドスラ
イサー,真空包装機並びに洗浄機及び乾燥機(以下,洗浄機と乾燥機を5
併せて「洗浄乾燥機」という。)が別表1の各機器に対応する「機能等」
欄記載の機能を果たしているのである(なお,洗浄乾燥機は,パン等の
製造機能自体は有しないものの,本件各工場のパン等の製造工程に沿っ
てその機能を果たせるよう,本件各機器の他のものと近接する位置に設
置され,パン等の製造工程の中で供用されているミキサーのボウル,パ10
ン箱,包あん機等の機械部品を洗浄するために使用されていることなど
からすれば,洗浄乾燥機もパン等製造の一連の生産工程の中で供用され,
その果たす機能によってパン等の製造設備の一部を構成しているという
ことができる。)。
このように,本件各資産は,原告のパン等製造の生産工程の中で供用15
され,それぞれの果たす機能により,他の機器とともに,パン等製造設
備の一部を構成するものと認められるのであり,本件各資産は,「機械及
び装置」に該当するというべきである。
(イ)また,平成20年財務省令第32号による改正前の耐用年数省令別
表第二(以下「旧別表第二」という。)においては,「機械及び装置」に20
ついて,具体的な個別の設備が390区分に細分化されて掲げられてお
り,それぞれの設備ごとにそのモデルプラント(標準設備)を想定し,
それを構成する個々の資産の個別耐用年数を総合した年数により,その
全体に適用される1つの総合耐用年数が算定されていたところ,同号に
よる改正によって,旧別表第二の「機械及び装置」の区分は,産業用設25
備の種類ごとに大括り化されて55区分となったが,前記改正は,日本
標準産業分類の中分類に従って「機械及び装置」の区分の整理を行うも
のにすぎず,前記のモデルプラントの考え方は,耐用年数算定のベース
として現在の別表第二の解釈においても妥当するものというべきである。
そうすると,旧別表第二に掲げられていた設備のモデルプラントに含ま
れる機器については,現在の別表第二の産業用設備に含まれ,「機械及び5
装置」に該当するものといえる。そして,旧別表第二では,「23パン
又は菓子類製造設備」の細目の「生パン類製造設備」のモデルプラント
として,「発酵機」,「切断機」,「包装機」等が掲げられており,本件各資
産のうち,ドゥコンディショナーは前記の「発酵機」に,ブレッドスラ
イサーは前記の「切断機」に,真空包装機は前記の「包装機」にそれぞ10
れ該当する。したがって,本件各資産のうち,少なくとも,ドゥコンデ
ィショナー,ブレッドスライサー及び真空包装機が「機械及び装置」に
該当することは明らかである。
(ウ)以上によれば,本件各資産は,「機械及び装置」に該当するというこ
とができる。15
ウ原告の主張に対する反論
(ア)原告は,別表第一の「器具及び備品」に具体的に例示されている減
価償却資産に該当するものは,「器具及び備品」に該当し,「機械及び装
置」に当たらないと主張するが,施行令13条は,「機械及び装置」と「器
具及び備品」を並列的に規定しており,別表第一と別表第二の間に優先20
関係がある旨の規定もない。
(イ)原告は,最高裁平成18年(行ヒ)第234号同20年9月16日
第三小法廷判決・民集62巻8号2089頁(以下「平成20年判決」
という。)を引用して本件各資産がそれぞれ別個の減価償却資産となるこ
とから,本件各資産が「器具及び備品」に該当すると主張するが,減価25
償却資産の単位の問題は,減価償却資産の取得価額という課税要件をい
かなる基準をもって認定すべきかという問題であり,その減価償却資産
が「器具及び備品」又は「機械及び装置」のいずれに該当するかという
問題とは別の問題である。
(ウ)原告は,ある減価償却資産が「器具及び備品」と「機械及び装置」
のいずれにも該当し得る場合には,いずれによって減価償却を行うかは5
納税者において選択し得ると主張するが,耐用年数省令は,別表第一の
表題を「機械及び装置以外の有形減価償却資産の耐用年数表」とし,別
表第二の表題を「機械及び装置の耐用年数表」として,「器具及び備品」
に該当する減価償却資産と「機械及び装置」に該当する減価償却資産が
重複しないことを明文で定めている上,減価償却について納税者に選択10
を認める規定も置いていない。
(原告の主張)
ア本件各資産が「器具及び備品」に該当すること
(ア)「機械及び装置」と「器具及び備品」については,法令上明確な定
義がないため,その意義及び区分は解釈による必要があるところ,その15
解釈は,法的安定性,明確性,納税者の予見可能性という見地からなさ
れなければならない。そして,別表第一においては「器具及び備品」に
該当する具体的な資産が個別に例示され,別表第二においては「機械及
び装置」として設備の種類が抽象的に挙げられているにすぎないから,
納税者としては,別表第一の「器具及び備品」に該当するとして例示さ20
れている資産については,「機械及び装置」ではなく「器具及び備品」に
該当するものと判断するのは当然であり,そのような資産については,
「器具及び備品」に該当するというべきである。そうであるところ,本
件各資産は,別表第一の「器具及び備品」として掲げられている「1家
具,電気機器,ガス機器及び家庭用品(他の項に掲げるものを除く。)」25
のうち「電気冷蔵庫,電気洗濯機その他これに類する電気又はガス機器」
に該当することは明らかであるから,「器具及び備品」に該当するという
べきである。
(イ)耐用年数省令は,「器具及び備品」については具体的な資産を個別に
例示しているのに対し,「機械及び装置」については設備全体を構成する
資産について一律の耐用年数を定めているところ,これは,「器具及び備5
品」は,物理的にも機能的にも独立したものであるのに対し,「機械及び
装置」は,工程の最初から最後に至るまで有機的に牽連結合して活動し,
個々の資産の内容をみても細目ごとの区分が必ずしも明瞭でなく,区分
が不可能ないし困難なものであることによるものである。そうであると
ころ,本件各資産は,その内容から細目ごとの区分が明瞭で,区分は容10
易に可能である上,本件各資産は,物理的にも機能的に他の資産から独
立している。また,減価償却資産の単位は,本来の機能を発揮し得る取
引単位ごとに判定すべきであり(平成20年判決),本件各資産が物理的
にも機能的にも他の資産から独立し,実際上も現実の損耗状態等を考慮
して個別に買換えが行われていることからすれば,本件各資産は,減価15
償却資産の単位としても別個のものである。
以上のことからすると,本件各資産は,それぞれが物理的にも機能的
にも独立したものであり,「器具及び備品」に該当するというべきである。
(ウ)以上のとおり,本件各資産は,「器具及び備品」に該当するというべ
きである。もっとも,仮に,本件各資産が「機械及び装置」にも該当し20
得るものであるとしても,①租税法規が侵害規範であり,その解釈適用
は予見可能性が担保されたものである必要性が極めて高いこと,②申告
納税制度の下,納税者が第一次的に上記解釈をする責任を負担している
ことを考慮すれば,原告は,本件各資産につき,「器具及び備品」と「機
械及び装置」のいずれで減価償却を行うかを任意に選択できると解する25
のが相当である。
イ被告の主張に対する反論
(ア)冷蔵庫,冷凍庫及び生地保管庫について
a冷蔵庫,冷凍庫及び生地保管庫では生地の保管が行われているとこ
ろ,冷蔵庫,冷凍庫及び生地保管庫による生地の保管を経なくてもパ
ン等は製造できるのであるから,冷蔵庫,冷凍庫及び生地保管庫によ5
る生地の保管はパン等の製造に不可欠なものではない。また,冷蔵庫,
冷凍庫及び生地保管庫による生地の保管は生地を貯蔵しているにすぎ
ず,生地に直接変化を与える機能を有するものではない。したがって,
冷蔵庫,冷凍庫及び生地保管庫による生地の保管をもってこれらの機
器がパン等製造の生産工程の中で供用されているということはできず,10
冷蔵庫,冷凍庫及び生地保管庫が「機械及び装置」に該当するという
ことはできない。
b冷蔵庫及び冷凍庫は,原材料又は完成品の保管のみを行うか,又は
原材料又は完成品の保管を主目的とするものであるところ,①パン等
の製造工程は,小麦粉から生地を仕込み,成形して焼き上げるまでの15
工程をいうものであり,原材料又は完成品の保管は製造工程ではない
上,冷蔵庫及び冷凍庫における原材料又は完成品の保管はそれらに直
接変化を与えるものではない。また,②本件各工場の冷蔵庫及び冷凍
庫は,製造活動が行われている場所とは別の場所に配置されており,
物理的に生産工程から分離されている。さらに,③冷蔵庫及び冷凍庫20
の温度設定等については,機器の納入時に納入業者が設定を行ってお
り,製造部門が積極的に管理していない。しかも,④原告の店舗では,
カフェスペースで用いられ「器具及び備品」に該当するとされている
冷蔵庫と同一又は同様の様式の冷蔵庫が店舗に併設された工房で使用
されているものがあり,このような場合に工房で使用されている冷蔵25
庫を「機械及び装置」に該当するとすることは,設置場所によって減
価償却の取扱いに差異を設けることとなり,資産の損耗の程度に着目
して耐用年数を決する減価償却資産制度の本旨に反するものである。
加えて,⑤原告では,同一の冷蔵庫が店舗の工房で原材料の保管等に
使用された後,カフェスペースで利用されることも十分にあり得るの
であり,そのような場合において,同一の資産であるにもかかわらず,5
工房で使用されているときには「機械及び装置」に該当し,カフェス
ペースで利用されているときは「器具及び備品」に該当するとするの
では,用途によって「機械及び装置」に該当するか否かが異なること
となり,納税者の予測可能性が著しく損なわれる。これらの事情に照
らすと,冷蔵庫及び冷凍庫は,「機械及び装置」には当たらないという10
べきである。
(イ)洗浄乾燥機について
本件各工場の洗浄乾燥機は,本件各機器の他のものとは全く別の場所
に配置され,パン等の製造工程から外れて製造部品の洗浄乾燥のために
稼働しているにすぎないし,パン等製造において原材料に直接変化を与15
える機能を有するものでもない。また,洗浄乾燥機のうち箱洗浄機は,
外注先の業者が洗浄作業を行い,点検管理も当該業者が行っている。こ
れらの事情に照らせば,本件各工場の洗浄乾燥機がパン等製造の生産工
程の中で供用されているとはいえず,「機械及び装置」には該当しないと
いうべきである。20
⑵争点2(本件各事業年度の法人税の申告が過少申告となったことについて
国税通則法65条4項の「正当な理由」があるか。)
(原告の主張)
本件各処分がされる以前に,本件各資産が「器具及び備品」に該当すると
の原告の判断に対し,神戸税務署長から異議を述べられることはなく,神戸25
税務署長において本件各資産が「器具及び備品」に該当することを是認して
きたといえる。また,耐用年数の短縮の申請の場面においては,旧別表第二
において採用されていたモデルプラントの考え方(具体的な設備ごとにモデ
ルプラントを想定し,それを構成する個々の資産の個別耐用年数を総合した
年数により,全体に適用される1つの総合耐用年数を算定する考え方)が生
きているなどとする耐用年数の適用等に関する取扱通達(以下「耐用年数通5
達」という。)の解説(乙16,18)が公開されている以上,納税者とし
ては,モデルプラントに掲げられていない冷蔵庫等の資産については,別表
第二の適用においても「機械及び装置」に該当しないと考えてもやむを得な
いといえる。さらに,耐用年数通達は,「構築物」と「機械及び装置」との
区分については「生産工程の一部としての機能を有するものを機械及び装置10
とする」旨の定めを置きながら,「機械及び装置」と「器具及び備品」との
区分については何らの定めを置いていないのであり,そうであるにもかかわ
らず,「各資産が生産工程の一部として機能を有するか否か」との基準によ
って「機械及び装置」と「器具及び備品」を区別することを納税者に要求す
ることは酷である。15
以上の諸点に照らせば,仮に,本件各資産が「器具及び備品」に該当する
との原告の判断が誤っていたとしても,原告が本件各資産を「器具及び備品」
に該当すると判断したことにより本件各事業年度の法人税の申告が過少申告
となったことについては,国税通則法65条4項の「正当な理由」があると
いうべきである。20
(被告の主張)
納税者間の不公平を制度的に是正し,これにより申告納税制度に対する信
用を維持し,適正な期限内申告の実現を図ることを目的として設けられたと
いう過少申告加算税の趣旨からすれば,その例外としての「正当な理由」は
限定的に解釈すべきであり,これが認められる場合は,納税者において,申25
告時に過少申告とならない申告をする契機が客観的に与えられていなかった
ような場合に限られると解すべきである。
原告が,過去の税務調査において,本件各資産が「機械及び装置」に該当
する旨の指摘を受けたことがなかったとしても,そのことから,直ちに,課
税庁において,本件各資産が「器具及び備品」に該当するものとして是認し
てきたということはできないし,ましてやその旨の公的見解を示したことに5
なるわけでもない。また,旧別表第二にモデルプラントとして掲げられた機
器の名称は,「設備の種類」ごとに,その区分に属する個々の機器のうち,主
要なものを掲げたにすぎず,このことは,旧別表第二の細目欄に「その他」
と掲げられていることからも明らかである。そうすると,冷蔵庫等の具体的
名称が旧別表第二の細目欄に具体的に掲げられていないからといって,これ10
らの機器が「機械及び装置」に該当しないと考えてもやむを得ないなどとは
到底いえない。さらに,申告納税制度の下,どのように資産を区分し,減価
償却費として計上するかについては,一義的に納税者の責任において行われ
るのであり,仮に税法の解釈について疑義があるのであれば,税務官庁に対
して照会を行う等の方法も取り得るのであるから,単に通達がないとの理由15
で,「機械及び装置」と「器具及び備品」との区分を納税者に要求することが
酷に過ぎるとは到底いえない。
以上によれば,原告が本件各資産が「器具及び備品」に該当すると判断し
て本件各事業年度の法人税の申告をしたことにつき,真に納税者の責に帰す
ることのできない客観的な事情があるとはいえず,納税者に過少申告加算税20
を賦課することが不当又は酷になるともいえないから,本件各資産を「器具
及び備品」に該当すると判断したことにより本件各事業年度の法人税の申告
が過少申告となったことについて,国税通則法65条4項の「正当な理由」
があるとは認められない。
第3当裁判所の判断25
1争点1(本件各資産が「機械及び装置」と「器具及び備品」のいずれに該当
するか。)について
⑴「機械及び装置」の意義等について
ア減価償却資産は,法人の事業に供され,その用途に応じた本来の機能を
発揮することによって収益の獲得に寄与するものであるところ(平成20
年判決),法人税法2条23号の委任を受けた施行令13条は,減価償却5
資産として,建物及びその附属設備,構築物,機械及び装置,船舶,航空
機,車両及び運搬具,工具,器具及び備品,鉱業権等の無形固定資産,牛
等の生物を定めている。租税法規の解釈は,法的安定性の要請から,原則
として文理解釈によるべきであり,「機械及び装置」の意義についても,
その字句が通常意味するところにより解釈されるべきであるところ,施行10
令13条は,「機械及び装置」,「工具」並びに「器具及び備品」以外の
減価償却資産として,①土地の定着物としての性質を有する(a)建物及びそ
の附属設備(暖冷房装置,照明設備,通風設備,昇降機その他建物に附属
する設備)並びに(b)構築物(ドック,橋,岸壁,桟橋,軌道,貯水池,坑
道,煙突その他土地に定着する土木設備及び工作物)を,②人又は物の運15
搬を目的とする船舶,航空機,車両及び運搬具を,③無形固定資産である
鉱業権等を,④生物である牛等をそれぞれ定めているから,「機械及び装
置」,「工具」並びに「器具及び備品」は,前記①から④までのもの以外
の減価償却資産を意味するものと解される。
また,代表的な辞典である広辞苑(第六版)によれば,「機械」は外力20
に抵抗し得る物体の結合からなり,一定の相対運動をなし,外部から与え
られたエネルギーを有用な仕事に変形するものであって,主に人力以外の
動力による複雑で大規模なものを,「装置」はある目的のために機械・道
具などを取り付けたしかけを,「工具」は工作に用いる器具を,「器具」
はしくみの簡単な器械を,「備品」は備え付けておく品物をそれぞれ意味25
するとされており(公知の事実),このような「機械及び装置」,「工具」
並びに「器具及び備品」の通常の意味に応じて,前記①から④までのもの
以外の減価償却資産を区分するならば,「機械及び装置」は,製品の生産・
製造又は役務の提供を目的として,1つの機器が単体で,又は2つ以上の
機器が有機的に結合することにより1つの設備を構成する有形資産を意味
するものと解される。5
イ法人税法2条23号は,減価償却資産の範囲につき,複数の資産を例示
した上,その具体的範囲を政令に委任し,施行令13条はこの委任に基づ
いて減価償却資産を定めているところ,減価償却資産は,企業において長
期間にわたって収益を生み出す源泉であるから,その取得に要した金額は,
将来の収益に対する費用の一括前払の性質を有しており,費用収益対応の10
原則からすれば,取得の年度に一括して費用に計上するのではなく,使用
又は時間の経過による減価に応じて徐々に費用化すべきものであって,減
価償却制度は,前記のような考え方に基づき,減価償却資産の取得費用を
その耐用年数にわたって配分することにより,各事業年度の損益計算を適
正なものとし,投下資本の回収を図ることを目的とするものと解される。15
そうすると,法人税法2条23号及び施行令13条は,減価償却資産によ
って将来の収益に対する寄与の度合い,態様等が異なり,その取得費用を
適正に配分する方法が異なり得ることから,これらの点に着目して減価償
却資産を類型化したものと解される。そうであるところ,減価償却資産の
うち,製品の生産・製造又は役務の提供を目的として,1つの機器が単体20
で,又は2つ以上の機器が有機的に結合することにより1つの設備を構成
する有形資産は,当該資産の種類,構造等の当該資産の属性のほか,当該
資産が設備を構成することによりはじめて法人の収益を生み出すものとな
るという特質を有する点において,他の減価償却資産と異なるものであり,
このような特質を有する減価償却資産については,当該資産の取得金額の25
費用化を,それぞれの資産ごとに行うのではなく,当該設備について行う
のが減価償却資産制度の趣旨に照らして合理的であるということができる。
そうすると,製品の生産・製造又は役務の提供を目的として,1つの機器
が単体で,又は2つ以上の機器が有機的に結合することにより1つの設備
を構成する有形資産を「機械及び装置」として減価償却資産とすることも
法人税法2条23号及び施行令13条の趣旨に沿うものというべきである。5
ウ以上の諸点に鑑みると,「機械及び装置」とは,製品の生産・製造又は
役務の提供を目的として,1つの機器が単体で,又は2つ以上の機器が有
機的に結合することにより1つの設備を構成する有形資産をいうものと解
するのが相当である。そして,資産の生み出す収益に応じてその取得金額
を費用化するという減価償却資産制度の趣旨からすれば,当該資産が製品10
の生産・製造又は役務の提供を目的として,1つの機器が単体で,又は2
つ以上の機器が有機的に結合することにより1つの設備を構成するものか
否かについては,当該資産の用途,機能,実際の設置使用状況等(以下「当
該資産の使用状況等」という。)に基づいて判断するのが相当である(し
たがって,通常は「器具及び備品」に当たるとされる資産も,一定の設置15
使用状況等の下では「機械及び装置」に当たることもあり得ることになる。)。
⑵本件各資産が「機械及び装置」に該当するかについて
前記⑴の観点から,本件各資産が「機械及び装置」に該当するかについて
みると,前記前提事実⑴及び証拠(甲8,9,12,13,乙3,4)並び
に弁論の全趣旨によれば,①原告は,パン等の製造,販売等を目的とする株20
式会社であり,本件各パン製造場において大量のパン等を反復的継続的に製
造していること,②本件各機器は,業務用の機器であり,その用途ないし機
能は,別表1の各機器に対応する「機能等」記載のとおりであって,本件各
機器は,本件各工場においてはその全部が,本件各インストア工房において
は別表1の番号1~12の各機器が,それぞれパン等の製造のために設置使25
用されているものであること,③本件各機器は,大量のパン等を反復的継続
的に製造する工程において,それぞれ工程の一部を分担し,ある機器による
作業成果を前提に次の工程を担当する機器による作業が行われており,本件
各機器のうち,冷蔵庫,冷凍庫及び生地保管庫は,生地の発酵の調節及び低
温発酵,温度管理が必要な原材料及び完成品の保管を行い,洗浄乾燥機は,
パン等の製造機器の洗浄乾燥を行っており,これらの機器による作業成果を5
前提として,前記の反復的継続的な製造工程が実施されていること,④本件
各パン製造場における本件各機器の設置状況は,本件各工場はE工場(別紙
図面1-1~3)と,本件各インストア工房はF店(別紙図面2-1~5)
とおおむね同様であるところ,前記の工場又は店舗では,本件各機器のうち,
前記各図面に記載されている作業に使用するものがその記載場所に設置され10
るとともに,別紙図面1-1~3の緑色・黄色・赤色部分及び別紙図面2-
1~5の緑色・黄色部分にそれぞれ冷蔵庫及び冷凍庫が設置されており,本
件各機器が互いに近接した場所に,パン等の製造工程に沿った作業が効率的
に可能となるよう配置されていることが認められる。
以上の事実によれば,本件各資産を含む本件各機器は,当該資産の使用状15
況等に照らし,本件各パン製造場において,有機的に結合し一体となって大
量のパン等を反復的継続的に製造しているものということができるから,パ
ン等の製造を目的として有機的に結合することにより1つの設備を構成して
いるというべきであり,「機械及び装置」に該当すると認められる。
⑶原告の主張について20
ア原告は,別表第一においては「器具及び備品」に該当する具体的な資産
が個別に例示され,別表第二においては「機械及び装置」として設備の種
類が抽象的に挙げられているにすぎないから,別表第一に「器具及び備品」
として掲げられている資産については,「機械及び装置」ではなく「器具及
び備品」に該当するというべきであるとした上,本件各資産は,別表第一25
の「器具及び備品」として掲げられている「1家具,電気機器,ガス機器
及び家庭用品(他の項に掲げるものを除く。)」のうち「電気冷蔵庫,電気
洗濯機その他これに類する電気又はガス機器」に該当することは明らかで
あるから,「器具及び備品」に該当すると主張する。
しかしながら,前記⑴のとおり,「機械及び装置」は,製品の生産・製
造又は役務の提供を目的として,1つの機器が単体で,又は2つ以上の機5
器が有機的に結合することにより1つの設備を構成する有形資産をいうと
解されるのであり,通常は「器具及び備品」に当たるとされる資産も,一
定の設置使用状況等の下では「機械及び装置」に当たることもあり得るこ
とになるのであるから,別表第一に「器具及び備品」として掲げられてい
る資産に該当し得るものであることをもって「機械及び装置」に該当しな10
いということはできない。
したがって,原告の前記主張は採用することができない。
イ原告は,①本件各資産は,その内容から細目ごとの区分が明瞭で,区分
は容易に可能である上,物理的にも機能的にも他の資産から独立している,
②減価償却資産の単位は,本来の機能を発揮し得る取引単位ごとに判定す15
べきであるところ(平成20年判決),本件各資産は,減価償却資産の単位
としても別個のものであるなどとして,本件各資産は,それぞれが物理的
にも機能的にも独立したものであり,「器具及び備品」に該当すると主張す
る。
①については,確かに,前記前提事実⑴エ及び弁論の全趣旨によれば,20
本件各資産は機器としては別個のものであり,その用途又は機能は,別表
1の各機器に対応する「機能等」欄記載のとおりであることが認められる
のであって,本件各資産は,物理的及び機能的に他の資産から区別し得る
ものであるとはいえる。しかしながら,前記⑵のとおり,本件各機器は,
本件各パン製造場におけるパン等の製造のために設置使用され,有機的に25
結合し一体となって大量のパン等を反復的継続的に製造しているものであ
り,当該資産の使用状況等に照らし,パン等の製造を目的として有機的に
結合することにより1つの設備を構成しているものというべきであるから,
原告の主張する事実をもって本件各資産が「器具及び備品」に該当すると
いうことはできない。また,②については,減価償却資産の単位の問題と
減価償却資産の区分の問題とは別個の問題であるから,本件各資産を別個5
の減価償却資産とすべきものであるとしても,そのことから本件各資産が
「器具及び備品」に該当するということはできない。
したがって,原告の前記主張は採用することができない。
ウ原告は,本件各資産が「器具及び備品」と「機械及び装置」の両方に該
当し得る場合には,①租税法規が侵害規範であり,その解釈適用は予見可10
能性が担保されたものである必要性が極めて高いこと,②申告納税制度の
下,納税者が第一次的に上記解釈をする責任を負担していることから,原
告は,本件各資産につき,「器具及び備品」と「機械及び装置」のいずれで
減価償却を行うかを任意に選択できると主張する。
しかしながら,前記⑴イのとおり,法人税法2条23号及び施行令1315
条は,減価償却資産によって将来の収益に対する寄与の度合い,態様等が
異なり,その取得費用の適正な配分方法が異なり得ることから,これらの
点に着目して減価償却資産を類型化したものと解されるから,ある資産が
「器具及び備品」に該当すると同時に「機械及び装置」にも該当すること
を法人税法2条23号及び施行令13条が予定しているとは考え難い。ま20
た,ある資産がいずれの減価償却資産に区分されるべきかについて納税者
が選択権を有する旨の規定は見当たらないところ,法人税法は,減価償却
資産の取得費用をその耐用年数にわたって配分することにより,各事業年
度の損益計算を適正なものとし,投下資本の回収を図ることを目的とする
減価償却制度について,減価償却を適正に行うためには耐用年数,取得価25
額,償却方法等が合理的なものでなければならず,これらを法人の自主性
に委ねることは会計慣行の実情,税務行政上の見地から問題が少なくない
ことから,法人が選定し得る償却の方法,償却費の計算に関する基本的事
項をすべて法定し限度額を設けたものと解されるのであって,明文の規定
がないにもかかわらず,いずれの減価償却資産に該当するかを納税者の選
択に委ねることは前記のような法人税法の趣旨に反するというべきである。5
したがって,原告の前記主張は採用することができない。
エ原告は,冷蔵庫,冷凍庫及び生地保管庫につき,①冷蔵庫,冷凍庫及び
生地保管庫による生地の保管を経なくてもパン等は製造できるのであるか
ら,冷蔵庫,冷凍庫及び生地保管庫の生地の保管は,パン等の製造に不可
欠なものではないこと,②冷蔵庫,冷凍庫及び生地保管庫による生地の保10
管は,生地を貯蔵しているにすぎず,生地に直接変化を与える機能を有す
るものではないことなどから,冷蔵庫,冷凍庫及び生地保管庫による生地
の保管をもってそれらの機器がパン等製造の生産工程の中で供用されてい
るということはできず,「機械及び装置」に該当しないと主張する。
しかしながら,①については,前記⑴のとおり,「機械及び装置」は,製15
品の生産・製造又は役務の提供を目的として,1つの機器が単体で,又は
2つ以上の機器が有機的に結合することにより1つの設備を構成する有形
資産をいうと解するのが相当であり,当該資産が実際に他の機器と有機的
に結合することにより1つの設備を構成して製品の生産等を行っている以
上,当該資産の用途又は機能が製品の生産等に不可欠なものでないことは20
「機械及び装置」に該当するか否かの判断を左右するものではないという
べきである。また,②については,冷蔵庫,冷凍庫及び生地保管庫による
生地の保管は,(a)顧客の需要に応じてパン等を提供するため生地の発酵を
調節すること,(b)低温発酵させること,(c)生地とバターを馴染ませるこ
となどを目的として行われるものであって(乙3,4),冷蔵庫,冷凍庫及25
び生地保管庫による生地の保管が生地に直接変化を及ぼさないということ
はできない。
したがって,原告の前記主張は採用することができない。
オ原告は,本件各パン製造場の冷蔵庫及び冷凍庫は,原材料又は完成品の
保管のみを行い,又は原材料又は完成品の保管を主たる目的とするもので
あるところ,①パンの製造工程は,小麦粉から生地を仕込み,成形して焼5
き上げるまでの工程をいうものであり,原材料又は完成品の保管は製造工
程ではない上,冷蔵庫及び冷凍庫における原材料又は完成品の保管はそれ
らに直接変化を与えるものではないこと,②本件各工場の冷蔵庫及び冷凍
庫は,製造活動が行われている場所とは別の場所に配置されており,物理
的に生産工程から分離されていること,③冷蔵庫及び冷凍庫の温度設定等10
については,機器の納入時に納入業者が設定を行っており,製造部門が積
極的に管理しているものではないこと,④原告の店舗では,カフェスペー
スで用いられ「器具及び備品」に該当するとされている冷蔵庫と同一又は
同様の様式の冷蔵庫が店舗に併設された工房で使用されているものがあり,
このような場合に工房で使用されている冷蔵庫を「機械及び装置」に該当15
するとすることは,設置場所によって減価償却の取扱いに差異を設けるこ
ととなり,資産の損耗の程度に着目して耐用年数を決する減価償却資産制
度の本旨に反すること,⑤同一の冷蔵庫が店舗の工房で原材料の保管等に
使用された後,カフェスペースで利用される場合に,同一の資産であるに
もかかわらず,工房で使用されているときには「機械及び装置」に該当し,20
カフェスペースで利用されているときは「器具及び備品」に該当するとす
るのでは,用途によって「機械及び装置」に該当するか否かが異なること
となり,納税者の予測可能性が著しく損なわれることなどから,冷蔵庫及
び冷凍庫は,「機械及び装置」には当たらないと主張する。
しかしながら,次のとおり,原告の前記主張は採用できないというべき25
である。
まず,①については,前記⑴のとおり,「機械及び装置」は,製品の生産・
製造又は役務の提供を目的として,1つの機器が単体で,又は2つ以上の
機器が有機的に結合することにより1つの設備を構成する有形資産をいう
と解するのが相当であるところ,前記⑵に認定したところに弁論の全趣旨
を総合すれば,(a)本件各パン製造場の冷蔵庫及び冷凍庫は,本件各パン製5
造場において大量のパン等を反復的継続的に製造することを可能とするた
め,他のパン等の製造機器に近接した位置に,パン等の製造工程に沿った
作業が効率的に可能となるよう配置されていること,(b)温度管理が必要な
原材料及び完成品を一定量保管し,パン等の製造に必要な原材料を供給し,
店舗への出荷まで完成品を保管する機能を果たしていることが認められ,10
このような本件各パン製造場の冷蔵庫及び冷凍庫の使用状況等に照らせば,
それらは他のパン等の製造機器と有機的に結合し一体となってパン等の製
造を行っているということができる。そうすると,本件各パン製造場の冷
蔵庫及び冷凍庫は,パン等の製造を目的とする1つの設備を構成するもの
ということができるのであって,冷蔵庫及び冷凍庫による原材料又は完成15
品の保管がパン等の製造活動そのものではないことをもって冷蔵庫及び冷
凍庫が「機械及び装置」に該当しないということはできない。また,冷蔵
庫及び冷凍庫による原材料及び完成品の保管は,適切な温度管理によって
常温であれば生ずる物品の変化を生じさせないようにするものであるから,
前記の保管が保管の対象物に直接変化を与えないということはできない。20
次に,②については,前記⑵に認定したとおり,本件各工場における本
件各機器の設置状況は,E工場(別紙図面1-1~3)とおおむね同様で
あるところ,前記の工場では,前記各図面に記載されているとおり,冷蔵
庫及び冷凍庫を含む本件各機器が,互いに近接した場所に,パン等の製造
工程に沿った作業が効率的に可能となるよう配置されていることが認めら25
れるのであって,本件各工場において原材料及び完成品を保管する冷蔵庫
及び冷凍庫が,生産工程から分離されているということはできない。
また,③については,前記⑴のとおり,ある資産が製品の生産・製造又
は役務の提供を目的として,単体で,又は他の資産と有機的に結合するこ
とにより1つの設備を構成しているか否かは,当該資産の使用状況等に基
づいて判断されるべきであり,前記のような冷蔵庫及び冷凍庫の使用状況5
等に照らせば,冷蔵庫及び冷凍庫の温度を製造部門が積極的に管理してい
ないことをもって,冷蔵庫及び冷凍庫がパン等の製造を目的として有機的
に結合することにより1つの設備を構成していることが否定されるもので
はない。
そして,④及び⑤については,前記⑴のとおり,ある資産が製品の生産・10
製造又は役務の提供を目的として,単体で,又は他の資産と有機的に結合
することにより1つの設備を構成しているか否かは,当該資産の使用状況
等に基づいて判断されるべきであるから,同一の機器であっても,その設
置場所や用途によって「機械及び装置」に該当するか否かの判断が異なる
ことは当然であるといえる。15
カ原告は,①本件各工場の洗浄乾燥機は,本件各機器の他のものとは全く
別の場所に配置され,パン等の製造工程から外れて製造部品の洗浄乾燥の
ために稼働しているにすぎないし,パン等製造において原材料に直接変化
を与える機能を有するものでもない,②洗浄乾燥機のうち箱洗浄機は,外
注先の業者が洗浄作業を行い,点検管理も当該業者が行っているなどとし20
て,本件各工場の洗浄乾燥機がパン等製造の生産工程の中で供用されてい
るとはいえず,「機械及び装置」に該当しないと主張する。
しかしながら,①のうち洗浄乾燥機の設置位置の点については,前記⑵
に認定したとおり,本件各工場における本件各機器の設置状況は,E工場
(別紙図面1-1~3)とおおむね同様であるところ,前記の工場では,25
前記各図面に記載されているとおり,洗浄乾燥機を含む本件各機器が,互
いに近接した場所に,パン等の製造工程に沿った作業が効率的に可能とな
るよう配置されていることが認められるのであって,本件各工場の洗浄乾
燥機が,生産工程から分離されているということはできない。
また,①のうち洗浄乾燥機の機能の点については,「機械及び装置」は,
製品の生産・製造又は役務の提供を目的として,1つの機器が単体で,又5
は2つ以上の機器が有機的に結合することにより1つの設備を構成する有
形資産をいうと解するのが相当であるところ,前記の本件各工場における
洗浄乾燥機の設置状況及び弁論の全趣旨によれば,本件各工場の洗浄乾燥
機は,業務用の機械であり,本件各工場において大量のパン等を反復的継
続的に製造することを可能とするため,パン等の製造機器の洗浄乾燥を行10
っていることが認められる。このような本件各工場の洗浄乾燥機の使用状
況等に照らせば,それらは他のパン等の製造機器と有機的に結合し一体と
なってパン等の製造を行っているということができ,本件各工場の洗浄乾
燥機は,パン等の製造を目的とする1つの設備を構成するものということ
ができるのであって,洗浄乾燥機が洗浄乾燥を行うものであり,原材料に15
直接変化を与えるものでないことをもって,洗浄乾燥機が「機械及び装置」
に該当することが否定されるものではない。
また,②については,前記⑴のとおり,ある資産が製品の生産・製造又
は役務の提供を目的として,単体で,又は他の資産と有機的に結合するこ
とにより1つの設備を構成しているか否かは,当該資産の使用状況等に基20
づいて判断されるべきであり,前記のような本件各工場における洗浄乾燥
機の使用状況等に照らせば,外注先の業者が洗浄作業及び洗浄乾燥機の点
検管理を行っていることをもって,箱洗浄機がパン等の製造を目的として
有機的に結合することにより1つの設備を構成していることが否定される
ものではない。25
したがって,原告の前記主張は採用することができない。
⑷まとめ
以上によれば,本件各資産は,「機械及び装置」に該当するというべきで
ある。
2争点2(本件各事業年度の法人税の申告が過少申告となったことについて国
税通則法65条4項の「正当な理由」があるか。)について5
⑴国税通則法65条4項に定める「正当な理由」の意義
過少申告加算税は,過少申告による納税義務違反の事実があれば,原則と
してその違反者に対し課されるものであり,これによって,当初から適法に
申告し納税した納税者との間の客観的不公平の実質的な是正を図るとともに,
過少申告による納税義務違反の発生を防止し,適正な申告納税の実現を図り,10
もって納税の実を挙げようとする行政上の措置である。この趣旨に照らせば,
過少申告があっても例外的に過少申告加算税が課されない場合として国税通
則法65条4項が定めた「正当な理由があると認められる」場合とは,真に
納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり,上記のような過
少申告加算税の趣旨に照らしてもなお納税者に過少申告加算税を賦課するこ15
とが不当又は酷になる場合をいうものと解するのが相当である(最高裁平成
17年(行ヒ)第9号同18年4月20日第一小法廷判決・民集60巻4号
1611頁,最高裁平成17年(行ヒ)第20号同18年10月24日第三
小法廷判決・民集60巻8号3128頁参照)。
⑵「正当な理由」の有無20
原告は,①本件各処分がされる以前に,本件各資産が「器具及び備品」に
該当するとの原告の判断に対し,神戸税務署長から異議を述べられることは
なく,神戸税務署長において本件各資産が「器具及び備品」に該当すること
を是認してきたといえる,②耐用年数の短縮の申請の場面においては,旧別
表第二において採用されていたモデルプラントの考え方(具体的な設備ごと25
にモデルプラントを想定し,それを構成する個々の資産の個別耐用年数を総
合した年数により,全体に適用される1つの総合耐用年数を算定する考え方)
が生きているなどとする耐用年数通達の解説が公開されている以上,納税者
としては,「機械及び装置」のモデルプラントに掲げられていない冷蔵庫等
の資産については,別表第二の適用においても「機械及び装置」に該当しな
いと考えてもやむを得ないといえる,③耐用年数通達は,「構築物」と「機5
械及び装置」との区分については定めを置きながら,「器具及び備品」と「機
械及び装置」との区分については何らの定めを置いていないのであり,そう
であるにもかかわらず,「各資産が生産工程の一部として機能を有するか否
か」との基準によって両者を区別することを納税者に要求することは酷であ
るなどとして,原告が本件各資産が「器具及び備品」に該当すると判断して10
本件各事業年度の法人税の申告をしたことについて,国税通則法65条4項
の「正当な理由」があると主張する。
しかしながら,①については,確かに,本件各処分までに本件各資産を「器
具及び備品」に当たるとしてされた原告の確定申告に対して神戸税務署長が
異議を述べていない事実が認められるが(弁論の全趣旨),この事実をもって,15
神戸税務署長が本件各資産が「器具及び備品」に該当することを是認したと
まではいえない。また,②については,原告の主張する耐用年数通達の解説
は,別表第二は,モデルプラントにより耐用年数を定める考え方に基づかな
いものであることを前提として,耐用年数の短縮の申請の可否を判断する場
面ではモデルプラントの考え方が残されている旨を説明するものにすぎない20
ことは明らかである(乙16,18)。そうすると,本件各資産が旧別表第二
の「機械及び装置」のモデルプラントに具体的に掲げられていないことから
別表第二の「機械及び装置」に該当しないと判断することは合理的理由に欠
けるものと言わざるを得ず,原告の主張する耐用年数通達の解説の存在をも
って本件各資産が「器具及び備品」に該当すると判断することが,真に納税25
者の責めに帰することのできない客観的な事情によるものであるということ
はできない。さらに,③については,確かに,耐用年数通達では,「構築物」
と「機械及び装置」の区分については,「生産工程の一部としての機能を有
している」か否かにより判断する旨の定めがあるのに対し,「器具及び備品」
と「機械及び装置」の区分についての定めはないことが認められるものの(乙
16),耐用年数通達における「構築物」と「機械及び装置」の区分の定め5
は,「次に掲げるもののように生産工程の一部としての機能を有しているも
のは,構築物に該当せず,機械及び装置に該当するものとする。」というも
のであり(乙16),生産工程の一部としての機能を有していることが「機
械及び装置」の特質であることを前提とするものと理解し得るから,「生産
工程の一部としての機能を有しているか否か」の基準により「機械及び装置」10
に該当するか否かを判断することが納税者にとって酷であるということはで
きない(なお,前記の耐用年数通達における「生産工程の一部としての機能
を有している」とは,「機械及び装置」の意義として前記1(1)に説示した「製
品の生産・製造又は役務の提供を目的として,1つの機器が単体で,又は2
つ以上の機器が有機的に結合することにより1つの設備を構成する有形資産」15
と同趣旨であると解される。)。
以上によれば,原告が主張する事情をもって,原告が本件各資産が「器具
及び備品」に該当すると判断したことにより本件各事業年度の法人税の申告
が過少申告となったことについて,真に納税者の責めに帰することのできな
い客観的な事情があり,前記(1)に説示した過少申告加算税の趣旨に照らして20
もなお納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合に該
当するということはできず,他に国税通則法65条4項の「正当な理由」が
あることを認めるに足りる証拠はない。
3本件各処分の適法性について
以上説示したところに弁論の全趣旨を総合すれば,①原告の本件各事業年度25
の法人税に係る所得金額及び納付すべき税額は,別紙2記載1のとおりとなり,
本件各更正処分における納付すべき税額と同額となること,②本件各更正処分
に伴って原告に賦課されるべき過少申告加算税の額は,同別紙記載3のとおり
となり,本件各賦課決定処分の額と同額となることがそれぞれ認められる。し
たがって,本件各処分はいずれも適法である。
第4結論5
以上のとおり,原告の請求は,いずれも理由がないからこれらを棄却する
こととし,主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第2民事部
裁判長裁判官三輪方大
裁判官角谷昌毅
裁判官黒田吉人
(別紙1省略)
(別紙2省略)
(別表2省略)25
(別表3省略)

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