弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決および第一審判決を破棄する。
     被告会社を免訴する。
         理    由
 弁護人海野普吉、同位田亮次の上告趣意は末尾添附のとおりである。
 職権により調査すると、原審の是認した第一審判決は、被告会社に対し、取引高
税法四八条一項、四七条本文および第一審相被告人Aの同判決各判示行為について
適用したと同一の法条(刑法四七条、一〇条を除く)を適用し、いずれもその所定
の罰金額の範囲内で、被告会社を第一審判決主文一項掲記の各罰金刑に処したので
ある。
 ところで、右被告会社に適用された取引高税法四八条一項の規定の趣旨は、法人
の代表者または法人もしくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人また
は人の業務または財産に関して、同法四一条ないし四四条の違反行為をしたときは、
その行為者を罰するほか、事業主たる法人または人に対して、各本条の罰金刑を科
する旨を定めたいわゆる両罰規定であつて、事業主たる法人または人に対しては、
右四八条一項の規定が根拠となつて前記四一条ないし四四条の規定のうち罰金刑に
関する部分が適用されることとなるものであることは、右四八条一項の明文により
明らかである。すなわち、事業主たる法人または人は、右四八条一項により行為者
の刑事責任とは別個の刑事責任を負うものとされ、その法定刑は罰金刑とされてい
るのである。しからば、これに対する公訴の時効については、刑訴二五〇条五号に
より時効期間は三年であり、その起算点は、同法二五三条一項により、取引高税法
四八条一項にいわめる同法四一条ないし四四条の違反行為が終つた時と解するのが
正当であるといわなければならない。そしてこのことは、右両罰規定によつて罰金
刑を科せられる事業主たる法人または人の責任が行為者本人の責任に随伴するもの
であるからといつて、また右両罰規定における行為者の責任と事業主たる法人また
は人の責任とは、ともに行為者の違反行為という一個の原因に基づく両様の効果で
あり、しかも右法人または人と行為者とは、事業主とその従業者という一体の関係
に立つものであるからといつて、その理を異にすべきものではない。一個の違反行
為を原因とする二つの刑事上の責任のうち、行為者に対しては懲役または罰金の刑
を科し、事業主たる法人または人に対しては罰金刑を科するものとされている場合
にあつては、公訴の時効につき、行為者に科すべき刑により時効期間を定める旨の
特別の規定が設けられていれば格別、しからざる以上は、事業主たる法人または人
に対する公訴の時効は、これに対する法定刑たる罰金刑につき定められた刑訴二五
〇条五号の規定によるほかはない。また、そのように解することが、憲法の採用し
た罪刑法定主義の要請にも適合する所以である。
 しかるに、原審の是認した第一審判決は、挙示の証拠により、被告会社の使用人
である第一審相被告人Aの同判示第一の各違反行為が同判決別紙第一表記載のとお
り昭和二三年一二月一日頃から同二四年四月三〇日頃までの間に、同第二の違反行
為が同二四年六月九日頃に、それぞれ終つている事実を適法に認定しており、また
記録によれば同年七月中旬頃静岡税務署長から被告会社あてに右各違反行為につき
通告処分がなされたことが認められる。しからば、被告会社に対する公訴の時効は、
右Aの判示第一の各違反行為についてはそれぞれ右第一表記載の日時に、同第二の
違反行為については同年六月九日頃に進行を開始し、右静岡税務署長の通告処分に
よつて中断されたのである。そして、被告会社に対する本件公訴の提起は昭和二八
年一月二九日であるこどが記録上明らかであるから、右公訴は、右通告処分があつ
た後刑訴二五〇条五号による三年の期間を経過し、既に公訴時効完成後に提起され
たものというほかはないのであつて、これと異なる前提の下になされた第一審判決
およびこれを是認した原判決は、ともに違法たるを免れず、これを破棄しなければ
著しく正義に反するものと認められる。
 よつて、刑訴四一一条一号により原判決および第一審判決を破棄し、同四一三条、
四一四条、四〇四条、三三七条四号により、被告会社に免訴の言渡をなすべきもの
とし、上告趣意に対する判断を省略し、主文のとおり判決する。
 この判決は、裁判官斎藤悠輔、同池田克、同高橋潔、同高木常七、同石坂修一の
少数意見あるほか、裁判官全員一致の意見によるものである。
 裁判官斎藤悠輔、同池田克、同高橋潔の少数意見は、次のとおりである。
 刑訴法は、公訴時効の期間につき、(一)刑法により刑を加重しまたは減軽すべ
き場合には、加重しまたは減軽しない刑を基準とし、(二)共犯については、すべ
て正犯の刑を基準とすると共に、最終の行為が終つた時からすべての共犯に対し時
効の期間を起算するものとし、共犯の一人に対してした公訴提起による時効の停止
は、他の共犯に対してその効力を有するものと定めているのであつて、これらの規
定によると、刑訴法は、個々の罪については、行為者の一身的ないし主観的事由に
より刑の加重または減軽をなすべき場合であつても、それらの事由の存否にかかわ
りないものとして公訴時効の期間の画一を期し、また、共犯については、事件を単
位として事件関与者につき公訴時効の期間の統一を期していることが明らかである。
そして、刑訴法の右の趣旨は、本件の適用法令たる取引高税法罰則のいわゆる両罰
規定の場合にも妥当するものと考える。
 すなわち、同罰則によれば、違反行為をした従業者に対しては各本条の懲役また
は罰金の刑を科し、事業主たる法人または人に対しては各本条の罰金刑を科するも
のとし、後者は前者の刑事責任とは別個の刑事責任を負うものとされてはいるが、
前者の違反行為を原因としこれに随伴するものであり、事件単位としては共犯の場
合と同視すべきものであつて、後者の公訴時効につき特に前者に科すべき刑により
その期間を定める旨規定するところがないというだけの理由で共犯の場合と別異に
すべき合理的理由はないものといわなければならない。また、事業主たる法人また
は人に対する罰金刑は、従業者の税法違反行為に対する制裁を補充する性質を有す
るものと解することができる。すなわち、行為者たる従業者は概して資力に乏しく
これに対し財産刑を科しても効果なき場合多きに反し、事業主たる法人または人は
概して資力大なるを常態とするものであるからこれに対し従業者に対する各本条所
定の罰金刑を科して税法所定の目的を達成しようとするのである。されば、公訴時
効の期間に関する規定を適用するに当つても、違反従業者に対する刑を基準とすべ
きこと当然であるといわなければならない。
 してみると、本件において被告会社に対する公訴時効の期間は、違反行為をした
従業者につき定められた法定刑を基準として決定すべきものとする解釈に立つ原判
決を正当とすべく、多数意見に賛同することができない。
 裁判官石坂修一の少数意見は次の通りである。
 斎藤、池田及び高橋の三裁判官の少数意見中、本件両罰規定制定理由の一を、事
業主と従業者との間における資力の多寡に求めるものの如く推測せられる点は、こ
れを留保し、その余には賛同する。
 裁判官高木常七の少数意見は次のとおりである。
 本件の適用法令である取引高税法四八条一項は、事業主たる法人または人自身の
犯罪を定めたものではなく、行為者たる使用人らの犯罪を前提として、それとの関
連において事業主の刑事責任を定めた特種の処罰類型であると解するのが相当であ
る。
 されば事業主の刑事責任は、行為者本人の刑事責任に当然随伴すべきものであり、
本件のように行為者の責任が存続する場合においては、事業主もまたその処罰を免
れないものといわなければならない。従つて事業主に対する公訴時効の期間につい
ても行為者に対するそれに従うべきものであると考える。
 以上の理由により、本件において被告会社に対する公訴時効の期間は、違反行為
をした従業者につき定められた法定刑を基準として決定すべきものとする見解に立
つ原判決を結局正当とするものであつて、これに反する多数意見には、にわかに左
袒することはできない。
 検察官村上朝一、同高橋一郎公判出席
  昭和三五年一二月二一日
     最高裁判所大法廷
         裁判長裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    島           保
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    池   田       克
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    下 飯 坂   潤   夫
            裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    高   橋       潔
            裁判官    高   木   常   七
            裁判官    石   坂   修   一
 裁判官 垂水克己は病気につき署名押印することができない。
         裁判長裁判官    小   谷   勝   重

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