弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件再上告を棄却する。
         理    由
 弁護人海野普吉、同位田亮次の再上告趣意は末尾に添えた別紙記載のとおりであ
るが、再上告論旨によれば、本件は刑訴施行法二条により旧刑訴法によつて審理さ
れる事件であるところ、第二審公判手続においては旧刑訴三五三条所定の審理更新
の手続がされていないので、旧刑訴四一〇条一六号に該当する絶対的上告理由があ
る、という弁護人の主張に対し、原判決は昭和二三年最高裁判所規則第三四号刑訴
規則施行規則(以下「規則施行規則」と略称)三条三号を引用してこれを排斥した
が、右規則施行規則三条三号は憲法七七条の解釈を誤り裁判所規則制定権の範囲を
逸脱したものであつて、当然無効のものであり、従つて右の法条を適用した原判決
は憲法三一条の規定に違反すると、いうのである。
 しかしながら、新刑訴法施行前に公判の請求があつた事件については、一般には
刑訴施行法二条により旧刑訴法及び刑訴応急措置法を適用して審判すべきものであ
るけれども、刑訴施行法一三条においては「この法律に定めるものを除く外、新法
施行の際現に裁判所に係属してゐる事件の処理に関し必要な事項は、裁判所の規則
の定めるところによる。」と定められ、規則施行規則三条三号においては、「開廷
後引き続き一五日以上開廷しなかつた場合においても、必要と認める場合に限り、
公判手続を更新すれば足りる。」と規定せられているから、裁判所は開廷後引き続
き一五日以上開廷しなかつた場合においても、必ずしも公判手続を更新するの必要
なく、裁判所がその必要ありと認めた場合に限り手続の更新をなせば足るわけであ
り、前回公判開廷後一五日以上の経過があつたにも拘らず手続の更新をしなかつた
ことは、何等違法と認むべきものでない、ということは既に当法廷の判例とすると
ころである(昭和二四年(れ)第二〇〇〇号、同二五年二月一五日判決)。論旨は
刑訴施行法一三条にいわゆる「事件の処理」中には公判審理の手続は包含されない
と主張するのであるが、右「事件の処理」が公判審理の手続を含むことは、法文上
からも立法の趣旨からも明白である。論旨はさらに、規則施行規則三条三号と憲法
七七条との関係を問題にするのであるが、憲法七七条は「最高裁判所は、訴訟に関
する手続………について規則を定める権限を有する。」とあつて、規則施行規則三
条三号は右権限の範囲内に属するものと認められるのみならず、右条項は前記のと
おり直接には刑訴施行法一三条に基くものであり、すなわち法律によつて委任され
たものであるから、所論のごとく「国民の関与なしに裁判所のみによつて制定され」
たものでなく、従つて「法律と規則とが競合する場合」でない。すなわち本件原判
決は憲法七七条に反せず、従つて同三一条にも違背せず、論旨はすべて理由がない。
 よつて旧刑訴四四六条に従い、主文のとおり判決する。
 以上は、裁判官沢田竹治郎の少数意見を除き、裁判官全員の一致した意見である。
 裁判官沢田竹治郎の少数意見は次のとおりである。
 多数説の刑訴規則施行規則三条三号が刑訴施行法一三条の委任によつて適法に制
定されたものであるとの見解のとるをえないものであることは多数説がその根拠と
して引用している昭和二四年(れ)二〇〇〇号同二五年二月一五日大法廷判決にお
ける少数意見に述べてあるからそれをここに引用することにする。次に多数説は刑
訴規則施行規則三条三号は憲法七七条の権限の範囲内に属するものと認められると
説明しているところから見ると、多数説は同条号によつて更新手続をしないでした
第二審判決は憲法に違反しないとの趣旨と解せられる。そして、かかる見解は同条
号により最高裁判所の制定した規則が旧刑訴三五三条の規定を改廃する効力のある
ことを前提とするものであるが、かかる見解には反対であるから、その要旨を述べ
る。たゞ本件に必要なる限度に説明をとゞめるために、憲法七七条で規則の対象と
なつている事項中訴訟に関する手続だけについての意見に限ることとする。
 憲法七七条には「訴訟に関する手続」といつているから、この手続とはいやしく
も訴訟に関する手続ならそれがいかなる訴訟に関するものであるかは問うところな
く、一切の手続を指し又その手続が訴訟当事者なり、第三者なりの自由財産等の基
本的人権にどのような深い関係をもち、どのような重大な影響を及ぼすものであつ
てもすべてこの手続に包含され、従つて同条は最高裁判所にいやしくも訴訟に関す
る手続なら細大漏らすところなく、それについて規則を定める権限を与えているも
のだと解することは、同条だけの文字解釈としては一応うなずかれるところである。
しかし、憲法三一条、七六条三項等の各規定に鑑みて訴訟に関する手続の中で国会
が法律で定めなければならぬと解せられるもののあることは議論の余地がない。し
かのみならず、訴訟に関する手続についての規定中にはかような法律で定めなけれ
ばならぬものの他のものでも法規の性質を有するものもあることは争いえないとこ
ろである。しかるに、憲法四一条には国会は唯一の立法機関である旨を規定して、
例外なく法規を制定する権限は国会に属する旨を宣言しているのであるから、訴訟
に関する手続についての規定が法規の性質を有するものである限り、これを制定す
る権限は国会に属するものといわなければならぬ。そうすると憲法七七条は最高裁
判所に訴訟に関する手続について法規たる性質を有しない規定だけを規則で制定す
る権限を与えたものと解しなければならぬようであるがかように解することは同条
の立法趣旨にそわないものであるといわなければならぬ。それ故に憲法七七条は法
規の性質を有する規則をも制定する権限を最高裁判所に与えたものであると解する
のが相当である。しかし、それかといつて訴訟に関する手続の規定で憲法三一条等
の関係から法律でなければ定められないもの以外の法規たる規定を制定する権限の
一切を国会の立法権から剥奪してこれを最高裁判所の規則制定権に専属せしめると
いう憲法の趣旨であるかというにかような趣旨を明らかに示している規定は勿論、
その趣旨を窺知するに足る規定も亦その規定の片鱗も憲法には存しない。そうする
と右のような訴訟手続に関する規定を制定する権限は国会と最高裁判所といずれに
も属するものといわなければならぬ。しかるに、右のような手続の規定について国
会で制定すべきものは何れであるか、若しくは最高裁判所で制定すべきものが何ん
であるかを明確に定めた特別の規定は憲法に存しない。そこで、いきおい訴訟に関
する手続についての規定を国会と最高裁判所とはその見るところに従つてそれぞれ
法律と規則とで制定することとなり、その結果は法律と規則の内容が互に矛盾、牴
触する場合が生ずることは避けられないところといわなくてはならぬ。しかも、内
容の相互に相いれないかかる法律と規則とがいずれも同時に有効のものと認むべき
でないことはいうまでもない。ここにおいて内容が矛盾牴触するかかる法律と規則
とはその何れが有効であるかの問題を生ずるがこの問題を解決するに足る直接の明
文は憲法に存しない。しかし、本来は唯一の立法機関たる国会の権限に属している
訴訟に関する手続についての法規を制定する権限を最高裁判所にも与えた憲法の精
神を推量するに主として、いやしくも法規の性質を有する規定であるなら、それが、
どんな訴訟に関する手続の規定でもそのすべてを国会が法律で定めなくてはならぬ
というようなことでは訴訟事件の処理上実際に適切でないから国会だけでなく、訴
訟事務の実際に当りこれに精通している最高裁判所にも訴訟に関する手続の規定を
制定する権限を行使せしめるのが相当だとの趣旨であることには間違がない。とこ
ろで、憲法は最高裁判所にこの規定を制定する権限を与えるについて、一方ではこ
の規定を規則で制定するということに定め、他方では憲法が一般的に法律、政令、
命令、条例、規則等の形式的効力を政令は法律に、命令は政令に、条例、規則は法
律に劣るとするたてまえでいろいろの規定を定めていながら、この最高裁判所の制
定する規則に限つて、その形式的効力が法律に優位するとか法律に同位するとかの
趣旨を特に認めた規定を設けていないばかりでなく、法律や政令の制定に関する形
式上の手続についての憲法の規定を一般規則とことなり特に最高裁判所の規則だけ
に適用することを認めた規定も定めていないし、憲法四一条の規定から明らかであ
るように、規則を定める最高裁判所の国家機関としての地位は法律を定める国会の
国家機関としての地位に次ぐものと見るべきこと等に鑑みて訴訟に関する手続につ
いての法律と規則との形式的効力にも法律は規則に優位するとの憲法上の一般原則
が適用され、訴訟に関する手続についての法律とその内容において矛盾牴触する規
則はその法律によつて改廃されるがその法律を改廃しえないものとする憲法の精神
だと解するの外はない。されば、憲法七七条は国会が訴訟に関する手続について定
めた法律とその内容において矛盾する規則を制定することを最高裁判所に許さない
し、最高裁判所が訴訟に関する手続について定めた規則とその内容において矛盾す
る法律を制定することを国会に禁止するものではないと論結しなければならぬ。(
かように、右七七条の規定を解すべきだとすると憲法は訴訟に関する手続について
の規定を国会が定めるか最高裁判所が定めるかの終局的な決定権は国会の専権に属
せしめるという趣旨だということになる。そうすると、この見解は最高裁判所の規
則制定権は一に国会の意思によつてその運命が定まるという一見極めて暖昧な影の
うすい第二次的な劣弱のものにすぎないとする憲法の趣意であると解することにな
る。しかしそれでは右七七条を特に設けた憲法の趣旨がいかにも低調で殆ど無意味
に等しくなり、若しも同条がこの程度の権限を最高裁判所に与えるにとどまる趣旨
の規定であるとしたなら、憲法は必ずしも同条の規定を特に設ける必要はないので
あつて、最高裁判所の規則で定めさせるのが適切だと考える訴訟に関する手続につ
いては国会が最高裁判所にこれについて規則を定める権限を与える旨の委任の法律
を制定すれば事足るのではないかとの説もでてくるかもしれぬが、もともと、最高
裁判所の憲法上の地位は司法機関たるにとどまつて、立法権を行使することを本来
の任務とするものではない。従つて憲法に特別の規定がない限り当然にはいかに法
律で最高裁判所に規則を制定する権限を委任しても、最高裁判所はこの委任の規定
だけに基ずいて法規たる規則を制定することは憲法上許されないと解すべきである
から、右七七条は法律の委任によつて最高裁判所が規則を制定するためにも不可欠
の規定であるのみならず、同条の規定は法律の委任のない場合において且つ法律に
定めていない訴訟に関する手続について最高裁判所がその見るところによつて規則
を制定する権限を特に最高裁判所に与えているものであることにおいても亦高く評
価されてしかるべき規定と思う。なお、憲法七三条六号が内閣に憲法及び法律の規
定を実施する為めに政令を定める権限を与え、五八条三項が衆、参の各議院にそれ
ぞれ規則を定める権限を与えている趣旨も亦これと大同小異であると思う。そして、
かように最高裁判所の規則が国会の意思によつてその効力を左右されることを憲法
は認めているのだというと、いかにも憲法の立法精神は非法理的であるかのように
考えられるが、このことはその時々における政治的社会的事情の要請に応じて訴訟
に関する手続についての規定が法律と規則とに適宜に配分されることになるような
国会と最高裁判所との協力と善処とを期待しこれに一任するのが事柄の性質にも実
際にも適合するとの憲法の遠謀深慮にいでたものと解せられる。そして憲法のこの
精神は法律と政令、法律と衆、参各議院の制定する規則との関係にも認められる。
なおかように憲法七七条の規定を解したところで立法権によつて司法権の独立がお
びやかされる端を発するものでも何でもないと信ずる。蓋し、若しも裁判所が訴訟
に関する手続を定めた法律の内容が憲法の保障する司法権の独立を侵犯するような
ものであると判断したなら、裁判所はこの法律は違憲のものと宣言して訴訟手続に
この法律を適用することを拒否すれば足りるからである。唯しかし、その法律には
違憲のかどはないが、裁判所の公正を期し速進を図る上に適切でないと判断される
にとどまるものであるというなら事は別である。これはひとり訴訟に関する手続の
法律についてだけの問題ではない。一般法律についてと同様にそれは立法の功拙、
適不適の問題であるにすぎないから、国会の善処によつてその法律の改善されるの
を待つの外なく司法機関たる裁判所が容喙関与のできない埒外のことがらであると
いわなければならぬ。)
 されば旧刑訴三五三条に矛盾牴触することの明らかな刑訴規則施行規則三条三号
は憲法七七条に違反し無効のものであるといわなければならぬ。(旧刑訴三五三条
は明治憲法下で制定されたもので厳格の意味では国権の最高機関で唯一の立法機関
である国会の制定したものではないが、明治憲法下で適法に制定された法律でその
内容が日本国憲法の規定に反しない同条の規定は日本国憲法下においても有効で国
会の制定した法律と同一の形式的効力を有すとの説を前提とする)。されば、本件
再上告はその理由がある。そして原判決の是認した第二審判決は旧刑訴三五三条に
違反し、同四一〇条一六号に該当するから、第二審判決及びこれを是認した原判決
を破棄し事件を第二審裁判所たる水戸地方裁判所に差戻すべきものである。
 検察官 長谷川瀏関与
  昭和二五年一〇月二五日
     最高裁判所大法廷
         裁判長裁判官    塚   崎   直   義
            裁判官    沢   田   竹 治 郎
            裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    井   上       登
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    河   村   又   介
 裁判官真野毅、同穂積重遠は出張につき署名押印することができない。
         裁判長裁判官    塚塚   崎   直   義

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