弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人等の負担とする。
         理    由
 上告人A1の上告代理人弁護士小玉治行の上告理由、第一点、第二点、第四点及
び第七点について。
 所論第一点、第二点及び第四点は、単なる訴訟法違背の主張であり、同第七点は、
上告人A1が原審で主張しなかつた事実を前提とする法令違背の主張であつて、す
べて、最高裁判所における民事上告特例法各号のいずれにも該当しないし、また、
同法にいわゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものとも認められない。
(なお、原判決の事実摘示によれば、被上告人は本件敷地四二坪に対し賃借申出の
主張を為し、上告人A2はこれを自白したものであること明白である。)。
 同第三点、第五点について。
 罹災都市借地借家臨時処理法は、昭和二一年九月一五日から施行されたものであ
つて、同法二条一項所定の建物の借主は、同法の施行によりはじめてその敷地又は
換地を賃借することができるようになつたものであるから、原判決の確定した本件
事実関係の下においては、被上告人は権利の上に眠つていた者といえないし、その
他原判決が上告人A2の本件拒絶に正当事由あることを認められないとした判示並
びに被上告人の本件請求が民法一条に違背し又は社会秩序を破壊する不当な請求と
いえない旨の判示は、すべて正当であると認めるから、論旨は、いずれも、採用で
きない。
 同第六点について。
 当裁判所は、本件賃借権をその設定されたときに当然対抗力をそなえこれを侵害
するものに対しては妨害排除を求めうる物権的な効力を帯有せしめた特殊な性格の
賃借権であると解した原判決の判示を正当とするから(なお、昭和二七年(オ)八
八三号同二八年一二月一八日言渡、同二六年(オ)六八五号同二九年二月五日言渡
当裁判所第二小法廷判決参照)、 論旨は採用することができない。
 上告人両名代理人弁護士中村又一、同塩坂雄策、同古家幸吉の上告理由第一につ
いて。
 当裁判所は、本件賃借権を物権的な効力を帯有せしめた特殊な性格の賃借権であ
ると解した原判決の判示を正当と認めることは小玉弁護人の上告理由第六点につい
て説明したとおりである。されば、論旨を採用して右見解を変更することはできな
い。
 同第二について。
 当裁判所は、原判決の確定した事実関係の下においては、被上告人の本訴請求が
民法一条に違背しない旨の原判示を正当と認めることは、小玉弁護人の上告理由第
三点、第五点について説明したとおりである。されば、本論旨も採用できない。(
なお、所論の同時履行、慣習に関する主張は原審でなされたものでないから、この
点に関する論旨も採るを得ない。)。
 同第三について。
 原判決が、罹災都市借地借家臨時処理法は被控訴人の借家していた強制疎開によ
り除却された建物の敷地である本件四二坪全部の土地の借地権の取得を許容してい
ると判断したのは正当であつて同法二条を不当に適用した違法は認められない。そ
して、所論引用の東京高等裁判所の判決は、本件に適切でない。それ故、所論は、
採用できない。
 同第四について。
 確認判決は、争いのある現在の法律関係の存否を確定すれば足りるものである。
そして、所論昭和二一年一二月八、九日頃設定された賃借権なる原判示は、本件確
認判決の目的物たる現在の法律関係を特定し、他の法律関係との異同を識別するに
足りる特徴を明らかにする表示として欠くるところがないから、所論は採用できな
い。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    入   江   俊   郎

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