弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人和島岩吉の上告趣意は末尾に添附した別紙記載の通りである。
 第一点。
 原判決挙示の証拠により判示事実を認めることができるばかりでなく証人Aの供
述(原判決に証人Aの当公廷における供述記載とあるは供述の誤記と認める)を証
拠にしたことについて何等経験則に反するところはない、論旨は独自の見解にすぎ
ないから採用できない。
 第二点。
 所謂自然犯たると行政犯たるとを問はず犯意の成立に違法の認識を必要としない
ことは当裁判所の判例とするところである(昭和二三年(れ)第二〇二号同年七月
一四日大法廷判決参照)従つて被告人が所論のように判示進駐軍物資を運搬所持す
ることが法律上許された行為であると誤信したとしてもそのような事情は未だ犯意
を阻却する事由とはなしがたい。原判決の認定したところによれば被告人は判示物
件を進駐軍物資と知りながら運搬所持したというのであるから本犯罪の成立をさま
たげるものではない。論旨は原判決は被告人は進駐軍物資を運搬することは許され
ないものであることの認識があつたことの証拠を示さない違法があると主張するの
であるが、所謂行政犯たる本件犯罪の成立に違法の認識を要しないこと前述の通り
であるから所論のような証拠を示す必要はない、従つて論旨は理由がない。
 よつて旧刑訴四四六条により主文の通り判決する。
 以上は裁判官全員一致の意見である。
  検察官 岡本梅次郎関与
  昭和二五年一一月二八日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    穂   積   重   遠

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