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裁判例


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平成15年3月28日宣告
平成14年(わ)第533号,578号,631号,720号,859号 住居侵入,強盗,逮捕監
禁,窃盗,監禁,銃砲刀剣類所持等取締法違反,火薬類取締法違反
主文
被告人を懲役12年に処する。
未決勾留日数中170日をその刑に算入する。
理由
(犯罪事実)
 被告人は
第1平成14年4月19日ころ,群馬県勢多郡a村大字bc番地所在宗教法人A神社拝殿
内において,同法人所有の鏡1枚ほか酒8本(時価合計約72万円相当)を窃取し
た。
第2 同年5月14日ころ,同県前橋市d町e丁目f番地所在有限会社B工場内において,
同社所有にかかる普通乗用自動車(軽四)(時価約15万円相当)を窃取した。
第3 Cと共謀の上,同年6月13日午前3時15分ころ,同県桐生市g町h丁目i番地D1
階所在の刀剣古美術E店舗内において,同店経営者F所有の刀13振外10点(販
売価格合計約1608万円相当)を窃取した。
第4 同年7月16日ころ,同県吾妻郡j町大字k町l番地所在G方において,同人所有の
散弾銃3丁ほか7点(時価合計約20万2000円相当)を窃取した。
第5 同月17日ころ,同県桐生市g町m丁目n所在H方において,同人所有の散弾338
発,ライフル弾93発ほか16点(時価合計約20万4350円相当)を窃取した。
第6 金員を強取しようと企て,同月20日午前0時40分ころ,同県前橋市o町p番地I方
離れに無施錠の玄関から侵入し,そのころ,同所離れにおいて,J(当時19歳)に
所携の散弾銃の銃口を突きつけ,上記I方母屋南東8畳間に案内させた上,同所に
おいて,上記I(当時55歳)及びK(当時49歳)に対し,上記記載の散弾銃の銃口を
突きつけ,「強盗だ。金を出せ。」などと申し向けて脅迫し,同人らの反抗を抑圧し,
同人ら所有にかかる現金1万2000円を強取した。
第7 同日午前0時50分ころ,上記第6記載のI方において,上記第6記載のJに対し,
引き続き上記散弾銃の銃口を向けて脅迫して,同所付近の畦道に駐車していた普
通乗用自動車まで同女を連行して,強いて同車の助手席に乗車させた上,自ら同
車を運転して発進疾走させ,同日午前1時9分ころ,同県勢多郡a村大字qr所在ホ
テルL108号室に同宿させ,さらに,同日午前5時51分ころから,同車助手席に同
女を乗車させて,同県桐生市内,栃木県鹿沼市内,同県上都賀郡s町内等を経由
し,同県同郡同町字tu番地先v林道上まで同車を走行させ,同月22日午後0時こ
ろ,同女が同所に駐車中の同車内から逃走するまでの間,同女を同車から脱出す
るのを不能にさせ,もって,同女の身体を不法に逮捕監禁した。
第8 同月20日ころ,同県鹿沼市wx番地所在のM郵便局西方約5キロメートル地点の
主要地方道w・s線上に設置のN株式会社(代表取締役社長O)仮設事務所におい
て,同社所有にかかる缶ジュース6本ほか2点(時価合計約2418円相当)を窃取
した。
第9 法定の除外事由がないのに,同月22日ころ,同県上都賀郡s町y番地所在P方東
方約1800メートルのv林道上において,散弾銃2丁及び火薬類である散弾実包2
56発並びにライフル銃用実包93発を所持した。
第10同日午後1時ころ,上記第9記載のP方東方約800メートルのv林道上におい
て,Q(当時46歳)及び同人の妻R(当時45歳)が使用していた普通乗用自動車を
強取しようと企て,上記両名に所携の散弾銃を突きつけるとともに,「とりあえず乗
せていってもらおう。」などと語気鋭く申し向けて脅迫し,両名の反抗を抑圧した上,
同所付近に駐車中の上記普通乗用自動車1台(時価約180万円相当)を強取し
た。
第11 上記第10記載の日時場所において,上記Q及びRに上記散弾銃を突きつけな
がら,「おかしなことをするとすぐに撃つぞ。」などと申し向けて脅迫し,両名を上記
第10記載の車両に乗車させた上,上記Qをして同車を運転させて同所から同車を
発進させ,同日午後3時26分ころ,同県佐野市z町a2番地先東北自動車道Sイン
ター料金所出口付近に至るまで同車を疾走させ,その間,上記両名を同車から脱
出できないようにし,もって不法に両名を監禁した。
第12 法定の除外事由がないのに,同日午後3時29分ころ,上記第11記載の東北自
動車道Sインター料金所出口付近において,猟銃である散弾銃1丁及び火薬類で
ある散弾実包80個を所持した。
(法令の適用)
該当罰条
 判示第1,第2,第4,第5,第8の各行為
                    刑法235条
 判示第3の行為 刑法60条,235条
 判示第6の行為 刑法130条前段,236条1項
 判示第7,第11の各行為刑法220条
 判示第9,第12の各行為銃砲刀剣類所持等取締法31条の11第1項1号,3条1
項,火薬類取締法59条2号,21条
 判示第10の行為 刑法236条1項
科刑上一罪の処理
 判示第6の行為    刑法54条1項後段,10条
 重い強盗罪の刑で処断
判示第9,第12の各行為    それぞれ刑法54条1項前段,10条
いずれも重い銃砲刀剣類所持等取締法違反の罪の刑で処断
判示第11の各行為      刑法54条1項前段,10条
犯情の重いQに対する監禁罪の刑で処断
刑種の選択
 判示第9,第12の各行為 懲役刑を選択
累犯加重
 判示全部の行為につき      それぞれ刑法56条1項,57条
 なお,判示第6,第10の各行為については,刑法14条の制限内で法定の加重
併合罪加重        刑法45条前段,47条本文,10条
 刑及び犯情の最も重い判示第10の罪の刑に刑法14条の制限内で法定の加重
未決勾留日数の算入      刑法21条
訴訟費用の不負担       刑訴法181条1項ただし書
(量刑の理由)
  本件は,被告人が転売目的で鏡や銃刀類などの貴重品を盗み(判示第1,3ないし
5),自己使用目的で車を盗んだ事案(判示第2),前橋市内の民家に侵入して,盗ん
だ猟銃を用いて家人の犯行を抑圧して強盗をしたうえで(判示第6),引き続き同猟銃
を突きつけて当時19歳の女性を被告人運転の自動車内に監禁して逃走し(判示第
7),逃走の途中で無人の事務所から缶ジュース等を盗んだ事案(判示第8),栃木県
内の山中で上記女性に逃げられた直後に,新たに中年夫婦に猟銃を突きつけて同夫
婦の自動車を強取したうえで(判示第10),同夫婦を銃で脅して監禁しながら車を運
転させた事案(判示第11),上記各強盗・監禁の際,不法に猟銃や火薬類を所持した
事案(判示第9,12)である。
  被告人の行為のうち各窃盗の点は,いずれも高値での転売を期待して貴重品を盗
んだり,自己の移動の便のため自動車を盗んだりしたものであって,その自己中心的
で短絡的・利欲犯的動機に酌量の余地は全くない。被告人は,事前に下見をしたり,
防犯装置をくぐり抜けたりして高価な貴重品を大量に盗んだものであり,その犯行態
様は計画的かつ巧妙である。被告人は,窃盗,常習累犯窃盗等の同種前科8犯を有
していることや,侵入窃盗用の工具を大量に保有していたこと,盗品を売りさばくこと
に長けた者と連携して転売先を確保しながら窃盗を敢行していることなどから,窃盗
事犯に対する常習性,組織性が窺える。被告人の窃盗の犯行による被害額は合計1
700万円を越えており,その被害は甚大である。そのうえ被告人は,窃取した刀や猟
銃を暴力団関係者を中心に転売を図っており,実際に被害品のうちかなりのものが
暴力団関係者の手に渡った可能性も否定できず,社会全体が暴力団の撲滅に取り
組んでいる中,被告人が,高い殺傷能力を有する刀や猟銃を安易に暴力団関係者に
転売したことは,強く非難されなければならない。
  次に,被告人が群馬県前橋市内の民家に銃を持って押し入り,金員を強取した上で
女性を監禁した行為(群馬事件)の点は,被告人が先に窃取した猟銃等の転売に行
き詰まるや,フィリピン人女性との結婚資金に充当するため,これらの猟銃を道具に
強盗を敢行することを思い立ち,実際に侵入強盗を敢行して金員強取後に,被害者
の警察への通報を遅らせるため,体力に劣る若い女性に銃を突きつけて自己の運転
する自動車内に監禁して逃走し,更に同女の家族に身代金を要求するため同女を引
き続いて監禁して同女の身体の自由を拘束したというものであり,その自己中心的で
利欲犯的・短絡的な犯行動機に酌量の余地は全くない。被告人は,前記各窃盗を連
続して敢行したのみならず,猟銃を用いての強盗を思いつくや,何ら躊躇することなく
かかる凶悪犯罪の実行に着手しており,被告人には,規範意識の著しい減退,高度
の犯罪指向性が感じられる。被害女性は深夜自宅で休息中,突然被告人に猟銃を突
きつけられ,その後高温多湿の真夏に約60時間もの間,殆ど食事も与えられること
なく自動車内に監禁されて連れ回されたのであって,当時19歳と若年であった被害
女性が被った疲労感,恐怖感は想像に余りある。被害女性は被害後数ヶ月経った後
も,電気を消して一人で就寝できないなどの深刻な身体的,精神的ダメージに苦しん
でおり,その結果は重大である。被害女性や同女の両親が,被告人に対して峻烈な
処罰感情を有しているのも当然である。
  そして,上記被害女性が被告人の隙を見て栃木県の山中で被告人から逃走して後,
被告人が,偶然同所付近に釣りに来ていた中年夫婦を猟銃で脅し,同夫婦の自動車
を強取した上で,同夫婦に猟銃を突きつけて監禁しながら自動車を運転させた行為
(栃木事件)の点は,前記群馬事件の後,何ら新たな規範に直面することなく,引き続
いて再び猟銃を用いての自動車及び金員等の強盗の犯行に及んだものであり,その
犯行動機は極めて安易・短絡的であって酌量の余地は全くない。被告人は,のどかな
山中で余暇を楽しんでいた夫婦に対し,白昼突如猟銃を突きつけて前記犯行に及ん
だものであって,その犯行態様は凶悪極まりない。本件は,偶然被害にあった夫婦の
夫が警察官であったことや,夫婦双方が機転を利かせ冷静に行動したことから,結果
的に被告人の逮捕に結びついてはいるが,同夫婦は猟銃を突きつけられて自動車の
運転を強要され,約2時間30分もの間,被告人に自己の生死与奪を握られるという
強い恐怖感を味わったものであり,その被害結果は重大である。
 また,被告人の本件各犯行による物的・精神的被害は上記の通り甚大であるにも
かかわらず,被告人は本件各犯行のいずれの被害者に対しても,何ら慰謝の措置を
講じていない。
 最後に,被告人は,正当な事由なく猟銃や銃弾を大量に所持して上記群馬事件・栃
木事件を敢行し,同事件が公開捜査となりマスコミに報道されて後も更に逃走を続け
たものであって,被告人が逮捕されるまでの間,群馬・栃木を中心とした広く我が国の
一般市民に対し,大量の銃・火薬類を所持した男がいつ目の前に現れるかもしれな
いという底知れぬ恐怖感・不安感を与えた。被告人のかかる行為が社会に与えた波
紋は極めて大きく,この点でも被告人は強く非難されなければならない。
 以上の本件犯行の動機・罪質・態様等の諸事情に照らせば,被告人の刑責は極め
て重い。しかし他方において,被告人は,自己の犯行を正直に捜査機関に告白し素
直に取り調べに応じていること,本件犯行の各被害者に対し謝罪の気持ちを有してい
ること,窃盗・強盗の罪の点については,被害品の一部が還付されその限度で被害
が回復されていることなど,被告人にとって有利な事情もある。
 そこで,これらの事情一切を総合勘案して,主文掲記の刑が相当と判断した。
(求刑 懲役14年)
(公判出席 検察官 大友隆  国選弁護人 大塚武一)
平成15年3月28日
前橋地方裁判所刑事部
裁 判 官  長谷川 憲 一

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