弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成13年(ワ)第23366号 製造・販売差止等請求事件
(口頭弁論終結の日平成14年10月29日)
           判       決
原        告   サニーペット株式会社
訴訟代理人弁護士     永 石 一 郎
同            土 肥 將 人
同渡 邉 敦 子
同            中 村 知 己
被        告  株式会社モリタ
訴訟代理人弁護士     山 崎 武 徳
同            村 中   徹
同鷹 取 重 信
同            家 近 正 直
同            出 嶋 侑 章
同            桑 原   豊
同            福 田   正
同            草 尾 光 一
同            宮 本 圭 子
同            濱 口 廣 久
同            山 本 和 人
同            秦   周 平
             主       文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
             事実及び理由
第1 請求
1 被告は,別紙被告商品目録記載の商品を製造し,譲渡し,引き渡し,譲渡若
しくは引渡しのために展示してはならない。
2 被告は,原告に対し,2525万0250円及びこれに対する平成13年1
1月17日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支
払え。
3 第2項につき仮執行宣言
第2 事案の概要
本件は,入浴専用車(以下,単に「入浴車」という。)を製造販売する原告
が,① 原告の製造販売する入浴車に装備された物品の性能・形状とその配置とい
った車両を特徴づけるレイアウトは不正競争防止法2条1項1号にいう「他人の商
品等表示として需要者の間に広く認識されているもの」に該当する,仮にそうでな
いとしても,② 被告が,原告の入浴車の形態を模倣した入浴車を製造し原告の販
売先に対して廉価で販売する行為は一般不法行為(民法709条)に当たると主張
して,被告に対して,入浴車の製造販売等の差止め及び損害賠償を求めている事案
である。
これに対して,被告は,① 原告主張の入浴車のレイアウトは,不正競争防
止法2条1項1号の「商品等表示」に当たらない,② 被告の行為は何ら違法性を
有せず,一般不法行為を構成しないなどと主張して,原告の請求を争っている。
1 当事者間に争いのない事実
(1)当事者等
  原告は,入浴・寝具乾燥車,入浴車の製造販売,特装車の製造販売,建築
物の清掃用機械器具の製造販売等を目的とする株式会社である。
  原告と同種の事業を目的とする会社である株式会社モリタエコノスは,平
成13年10月1日,被告と合併し,存続会社である被告が株式会社モリタエコノ
スの事業を包括承継した(以下,株式会社モリタエコノスを含め,両者を区別せず
に「被告」と表記する。)。
  アサヒサンクリーン株式会社(以下「アサヒサンクリーン」という。)
は,昭和52年に巡回入浴サービス事業を開始し,原告及び被告から入浴車を購入
して,寝たきり老人,重度障害者向けの巡回入浴サービスを行っている会社であ
る。
(2)原告の入浴車
  原告は,昭和48年9月から,別紙原告商品目録記載の入浴車(以下「原
告商品」という。)を製造販売している。
(3)被告の入浴車
  被告は,平成12年4月ころから,別紙被告商品目録記載の入浴車(以下
「被告商品」という。)を製造販売している。
2 争点
(1)原告商品の形態は不正競争防止法2条1項1号にいう周知な商品等表示に
該当するか(争点1)
(2)原告商品と被告商品の形態の類否(争点2)
(3)原告商品と被告商品との間で混同を生ずるおそれの有無(争点3)
(4)民法上の一般不法行為(民法709条)の成否(争点4)
(5)原告の損害額(争点5)
3 争点についての当事者の主張
(1)争点1(原告商品の形態の商品等表示該当性)について
 【原告の主張】
ア 商品形態の「商品等表示」該当性
  不正競争防止法2条1項1号は,「商品等表示」の例示として,商品主
体を直接認識させる氏名等のほか,本来第一義的には商品の出所を識別させるため
のものではない商品の容器若しくは包装をも挙げていることからすると,商品の形
態自体が「商品等表示」に当たる場合があり得るものと解するのが相当である。
  ただ,商品の形態が,出所表示機能,自他識別機能を備えるものとして
評価されるためには,当該商品の形態が他に誰も製造,販売及び使用したことがな
く,特定の者のみが長期間それを製造販売した結果,その形態を有する商品がその
者の商品として需要者の間に広く知られるようになることが必要である。
  長期間の営業努力による商品の周知性,商品に蓄積された信用は保護す
るに値し,このように解することで,商品等表示に化体された他人の営業上の信用
を自己のものと顧客に誤認混同させて顧客を獲得する行為を防止するという不正競
争防止法の趣旨に合致する。
イ 原告商品の特徴と出所表示機能
  入浴車のような特装車の車体部分は,自動車メーカーの製造にかかる既
存のものであり,原告のように特装車の製造販売を業とする者は,既存の車体に装
備する物品の性能・形状とその配置を考案することによってそれぞれの商品の独自
性を出す。そして,入浴車の需要者は,特にその使用方法に着目するのであり,使
用方法は入浴車のレイアウトに大きく影響される。つまり,入浴車の需要者は,そ
のレイアウトに着目して商品を選択する。
  すなわち,特装車(入浴車)である原告商品において出所表示機能及び
自他商品識別機能を有するのは,別紙原告商品配置図記載の物品のレイアウトであ
り,この原告商品に特有の形態が不正競争防止法2条1項1号の「商品等表示」に
該当する。原告商品のレイアウトの特徴を詳述すると,以下のとおりである。
① 清水タンクは,他の物品の収納に最も支障のない車両後部で,しかも
湯水別送方式のため必要なホース2本分のリールを置くスペースを空けた範囲で,
1回の入浴に必要な量(対象者宅の水道が使えなくても1回は入浴サービスができ
るように,バスタブ約140リットル,シャワー約50リットル)を想定して,大
きさと設置場所を決定した。
② 灯油ボイラーは,清水タンク内の水を摂氏25度の温水にして1分間
で16リットル供給できるものを採用し,性能の安定性の点から,セミ貯湯の床置
式を選択した。そして,灯油ボイラーは出し入れの必要がないこととカプラーの位
置から,後部補助席の右側(運転席の真後ろ)に設置した。
③ 煙突は,灯油ボイラーの位置によりその位置が決まり,風向き,排出
量の制限をなるべく受けることなく排気できるように,排気効率を考えて全方向型
のいわゆるUFO型とした。
④ 灯油タンクは,入浴サービスで巡回するために必要な車両のガソリン
補給(約40件ごとに補給することを想定)と同時に灯油タンクに給油できるよう
40リットル(1件の入浴サービスで約1リットル使用)とし,しかもカプラーの
位置を考慮しガソリンと同時に給油できるよう右側後方に設置した。
⑤ 給水ポンプは,湯水別送方式で温水と冷水を扱うため灯油ボイラーに
隣接させ,カプラーの位置に近い右側に設置した。その性能は,地上5階での入浴
サービスに対応できるものを選択した。
⑥ 制御装置は,巡回サービスで入浴車を道路左側に駐車して操作するこ
とがほとんどであるため,操作者の安全性を考え,しかも操作者が一人であること
が多いため保安上の観点から,他の扉を閉めて最後部のドアだけを開けて操作でき
るように,後部左側に設置した。
⑦ ホースは,混合栓の湯水別送方式であるため2本必要である。
⑧ カプラーは,車外で自動車の排気口のない右側下部に設置すること
で,制御装置でいったん設定した後,最後部扉も施錠して入浴サービスができるよ
うにした。また,湯水別送方式であるため,給水口1つ,送水口2つとなる。
⑨ 入浴担架は,バスタブが2分割であって入浴担架の方が長くなるた
め,レールにはめ込むスライド収納方式を採った。
⑩ バスタブは,取り出しが容易になるように車両中央部に設置した。
ウ 原告商品の形態の周知性
  原告は,昭和48年に原告商品の販売を開始し,パンフレットの配布,
展示・説明会の開催等の広告宣伝活動を行ってきた。また,原告は,昭和49年に
浴槽と頭部洗浄槽を分離した移動浴槽につき特許出願をしたほか,昭和53年に湯
水別送方式に係る考案につき実用新案登録出願をした。
  原告は,昭和53年に日本テレビ系列で放送された24時間テレビ「愛
は地球を救う」に原告商品を参画させたが,この時点で入浴車は原告商品しか出品
されていなかったこともあり,原告商品への引き合いが増えることになった。原告
は,昭和53年以降毎年上記24時間テレビに参画するほか,日本在宅サービス協
会,全国在宅介護事業協議会等の会報に広告を掲載するなど広告宣伝を継続して行
った。
  その結果,遅くとも平成11年末ころまでには,原告商品の独自の特徴
ある形態は,地方公共団体,民間企業を中心とする需要者の間に広く認識されるよ
うになった。
エ まとめ
  以上によれば,原告商品のレイアウトは,周知な商品等表示(不正競争
防止法2条1項1号)に当たるというべきである。
【被告の主張】
ア 原告商品の形態と「商品等表示」
一般論として,商品の形態自体が不正競争防止法2条1項1号の「商品
等表示」に該当する場合があることは,被告も否定するものではない。しかし,原
告の主張する「レイアウト」は別紙原告商品配置図による特定を前提としても,表
示性に欠けており,出所表示機能を有しない。
  原告の主張するところは,外形的な表示以外の需要者等からは視野に入
らない物品の配置等の形状を含めた全体的な構成が商品等表示を基礎付ける要素で
あるということのように思われる。しかし,外見的に認識が容易ではない物品の配
置等の形状が,当該商品の出所表示としての「商品等表示」に該当することは,お
よそ考えられない。
  不正競争防止法2条1項1号は,「商品等表示」が需要者等に対して,
商品の形状等の表示機能を有することを前提としてその保護を図る趣旨であり,需
要者等に対する表示性を欠く原告主張の「レイアウト」についてまで同法の保護が
及ぶものではない。
  さらに,原告主張の入浴車の「レイアウト」は,特段の独自性を有する
ものではなく,需要者等から見て,原告商品の出所を明らかにするような機能を有
しない。
  そもそも,入浴車は,市販のワンボックスカーの限られたスペース内
に,水タンク,バスタブ,ホース,ボイラー,ポンプ等を搭載し配置したものであ
り,これらの配置自体は,技術的にも格別の困難を伴うものではない。しかも,入
浴サービスの作業をするためには,車の構造上,バスタブ,ホース,担架などを車
体後部から出し入れすることになり,必然的にボイラー,ポンプは荷物室の前部
に,ホースリールは出し入れしやすい後部に,バスタブ,担架も大きさからいって
後部から出し入れしやすい位置に配置することにならざるを得ない。被告はユーザ
ーとの協議を踏まえて物品を適正に配置して入浴車を製造したものであり,物品の
配置は車両内における搭載の工夫と認識されることがあるとしても,それを超えて
一つのデザインを構成するという効果を有するものではない。
イ 原告商品の形態の周知性について
  原告が,原告商品の販売を昭和48年に開始したこと,昭和53年以降
「24時間テレビ」に原告商品を出品していることは認めるが,原告商品の形態が
周知であるとの法律上の主張は,争う。
  そもそも,原告主張の原告商品の「レイアウト」は,何ら固定のもので
はなく,ユーザーにとっては原告商品がどのようなレイアウトであるかについての
普遍的な認識は存在しない。
  また,ユーザーは入浴車のレイアウトを手がかりに商品を識別しておら
ず,後述のとおり他社製品との混同の可能性が存在しないが,このことは周知のも
のとされるような具体的なレイアウトが観念しにくいことの裏返しでもある。
  周知な商品等表示といえるためには,当該表示が特定人の商品や営業を
表示するものであることが知られていることを要するところ,入浴車については原
告商品の形状に着目した商品出所,営業主体の認識は存在していない。したがっ
て,ユーザーにおいて原告商品の形状自体から商品出所,営業主体について広く認
識されているとはいえない。
ウ まとめ
  以上のとおり,原告主張の原告商品の「レイアウト」は,周知な商品等
表示に当たらない。
(2)争点2(原告商品と被告商品の形態の類否)について
 【原告の主張】
  被告は,アサヒサンクリーンの要求する仕様に基づき被告商品の製造販売
を開始したが,その形態はデッドコピーといえるほどに原告商品の形態と酷似して
いる。アサヒサンクリーンの被告に対する要求は,清水タンクの容量,ポンプの性
能,ボイラーの能力,ホースの長さ,バスタブの容量・形状等について原告商品と
同一であり,それまで原告商品を購入していたアサヒサンクリーンが被告に原告商
品と同一のものを作ることを要求し,それに応えたのが被告商品である。
  具体的な商品の形態をみると,被告商品は,脱着式洗髪槽,湯水別送方式
の混合栓,天井に収納する入浴担架,車外装備のカプラー,丸型の排気口,ボイラ
ー,灯油タンク,ポンプ,清水タンク,ホースから構成されるところ,これらの物
品の形状及びその配置は原告商品と酷似している。
  このほか,タンクの容量,ボイラーの性能,入浴フロー図についても,原
告商品のそれと酷似している。
 【被告の主張】
  原告の主張のうち,被告商品の形態について原告商品の形態と類似する点
があることは認めるが,被告とアサヒサンクリーンの交渉経過については否認す
る。
  原告商品と被告商品の間には,細部を含めるとかなりの相違点があり,デ
ッドコピーと同視できるものではない。
  原告の主張に従えば,需要者等は入浴車のレイアウトを詳細に認識し,そ
のことを手がかりとして商品購入の動機としているということになる。仮にそのよ
うな行動様式をとるのであれば,需要者等は原告商品と被告商品の細部にわたる差
異についても認識しているはずであり,需要者等は原告商品と被告商品が異なる商
品であることを認識しているはずである。
  仮に,被告商品が原告商品のデッドコピーであるとしても,原告商品は昭
和48年の販売開始以来多年を経過した商品であるから,商品形態の模倣について
販売開始から3年を経過していない商品に限り不正競争防止法上の保護を与えるこ
ととしている法の趣旨(同法2条1項3号)に照らし,原告商品の形態が同法2条
1項1号による保護の要件を欠くことは明らかである。
(3)争点3(原告商品と被告商品との間で混同を生ずるおそれ)について
 【原告の主張】
  原告商品と被告商品は同じ入浴車であり,前記(2)のとおり,両商品の形
態,すなわち搭載される物品により形成されるレイアウトは実質的に同一であるか
ら,被告の行為は,需要者に対し,原告商品との間で誤認混同を生じさせるもので
ある。
 【被告の主張】
  被告は,被告商品の販売に当たって,販売者が被告であることを明示し,
商品名として「湯香(ゆのか)」という商標を用いて,独自の宣伝を行っている。
  また,ユーザーは入浴車の選定に当たり,作業性の観点から個別のユーザ
ーごとの細かな仕様の変更を求めるのが通常である。商品の受注については,それ
らの要望を反映した仕様変更を当然の前提としているから,ユーザーが被告商品に
ついて原告商品と誤認混同することはあり得ない。
(4)争点4(民法上の一般不法行為の成否)について
 【原告の主張】
  原告は,ユーザーの要望,車両の構造上の制約,洗髪槽脱着式のバスタ
ブ,湯水別送方式などを考慮した上で搭載する物品を選び,独自の工夫をして別紙
原告商品配置図のとおりのレイアウトを考案し,加えて展示説明会,講習会などに
よる現地指導などの地道な宣伝活動をすることで原告商品の価値を高めた。そし
て,原告商品をこれらの投下資本を考慮した公正な価格で販売することにより営業
活動を行っている。
  他方,被告は,アサヒサンクリーンの要求した清水タンクの容量,ポンプ
の性能,ボイラーの能力,ホースの長さ,バスタブの容量・形状等に基づき,原告
商品に搭載された物品とそのレイアウトが酷似する被告商品を製造した。しかも,
被告は原告商品との区別を付けた独自の商品で長年にわたって原告と競争してきた
株式会社デベロの販売先ではなく,原告の従来からの販売先に対して,原告商品と
同じものが安く購入できるといって被告商品を売り込んでいる。
  上記の被告の行為は,レイアウトの考案,顧客開発といった努力をするこ
となく,原告の成果にただ乗りするという悪質なものであり,公正かつ自由な競争
原理により成り立っている取引社会において,著しく不公正な手段を用いて原告の
営業活動を侵害するものである。
  被告の行為は,取引上の信義則に反する違法なものであり,それにより原
告に後記の損害が生じている。しかも,被告は被告商品の販売により原告の取引機
会が奪われることを認識していた。
  以上によれば,被告の行為は,仮に不正競争行為に該当しないとしても,
民法上の一般不法行為(民法709条)に当たり,被告は損害賠償責任を負うもの
である。
 【被告の主張】
  原告の主張のうち,被告がアサヒサンクリーンの要請に基づき被告商品を
製造したことは認めるが,その余は否認し,争う。
  原告商品と被告商品の間には,前記(2)で主張したとおり,種々の相違点が
あり,そもそも被告商品を原告商品のデッドコピーと評価することはできない。
  自由競争原理によって支配される市場において,商取引は許された模倣と
許されない模倣の区別のもとで行われている。この区分は,基本的には,特許法等
の知的所有権法の枠組みで規律されるべきものである。被告は,原告が有していた
実用新案権等の権利の保護期間の終了後に,法律上許された販売活動をしたものに
すぎない。
  また,商品形態の模倣は一定の要件のもとで不正競争行為とされている
が,商品の販売後3年を経過したものについては,不正競争防止法による保護は及
ばない(同法2条1項3号)。これは,商品販売後3年経過以降については模倣商
品の販売を自由競争に委ねる趣旨である。
  これらの法の趣旨に照らすと,不正競争防止法上の保護の及ばない商品形
態については,これを模倣したとしても不法行為責任を負うことはないというべき
である。
  原告は,原告商品の製造に当たり原告のみが資金や労力を投下した旨主張
するが,原告商品は原告の独自の創意工夫によって考案されたものではなく,需要
者であるアサヒサンクリーンの提案に基づき,同社の要望を商品化したものにすぎ
ない。商品化においては,アサヒサンクリーンの寄与が大であり,同社の貢献を一
切捨象して,自らの商品開発努力のみを殊更に強調することは,事実に反する。
  また,被告が被告商品をアサヒサンクリーンに販売するに際しては,原告
の取引機会を奪うことを目的とした営業活動は行っていない。
  上記のとおり,被告による被告商品の販売は,何ら違法性を帯びるもので
はなく,原告の主張は理由がない。
(5)原告の損害額
 【原告の主張】
  被告は,現在までに判明しているだけで,被告商品をアサヒサンクリーン
に35台(原告商品の販売価格は1台当たり408万1000円),松下電工エイ
ジフリーサービス株式会社に5台(前同420万円),昭和サービス株式会社に1
台(前同450万)販売した。
  上記合計41台の販売価格の合計は1億6833万5000円であり,仕
入原価,製造費などの費用を控除した利益率は15パーセントを下らないから,原
告は被告商品の製造販売により2525万0250円の損害を被った(不正競争防
止法5条1項)。
 よって,原告は,被告に対し,不正競争防止法2条1項1号,3条に基づ
き,被告商品の製造販売等の差止めを求めるとともに,同法4条,民法709条に
基づき,不正競争防止法違反又は民法上の一般不法行為に基づく損害賠償として,
2525万0250円及びこれに対する平成13年11月17日(訴状送達の日の
翌日)から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
 【被告の主張】
  原告の主張のうち,被告商品の販売先及び販売台数については認めるが,
損害の内容及び額については争う。
第3 当裁判所の判断
1 争点1(原告商品の形態の商品等表示該当性)について
(1)商品形態の商品等表示該当性
  商品の形態は,本来的には商品の機能・効用の発揮や美感の向上等のため
に選択されるものであり,商品の出所を表示することを目的として選択されるもの
ではないが,特定の商品形態が独自の特徴を有し,かつ,この商品形態が,長期間
継続的かつ独占的に使用されるか,又は短期間でも強力な宣伝等が伴って使用され
たような場合には,結果として,商品の形態が当該商品の出所を表示するものとし
て需要者の間で周知になることもあり得るというべきである。そして,このような
場合には,上記商品形態が,当該商品の技術的機能に由来する必然的,不可避的な
ものでない限り,不正競争防止法2条1項1号に規定する「他人の商品等表示とし
て需要者の間に広く認識されているもの」に該当するものというべきである。
(2)原告商品の形態の特徴及び他の入浴車との対比
  本件において,原告は,別紙原告商品配置図に表示された入浴車のレイア
ウト,具体的には,バスタブ,清水タンク,灯油ボイラー,煙突など搭載された物
品の性能・形状や配置場所が「商品等表示」に当たる旨を主張する。
  そこで検討するに,当事者間に争いのない事実(第2,1)に証拠(甲1
の1,2,3の1~8,6~10,乙1の1~8,2)及び弁論の全趣旨を総合すると,
次の事実が認められる。
ア 原告は,昭和45年2月に設立され,昭和48年9月から原告商品を販
売している。現在,入浴車を製造又は販売する会社として,原告のほかに,アサヒ
サンクリーン,株式会社デベロなど約8社があるが,昭和53年ころから長い間,
原告と株式会社デベロの2社が事実上市場を独占する状態が続いていた。その後,
平成9年12月に介護保険法が成立し,平成12年4月から介護保険制度が導入さ
れたことから,訪問入浴介護事業に参入する業者は増え,平成13年12月の時点
では同サービスの登録業者は2839社となっている。
イ 原告商品は,小型ワゴン車に,バスタブ,清水タンク,灯油ボイラー,
ホースなど入浴車として必要な物品を搭載したものである。これらの物品の配置
は,別紙原告商品配置図のとおりであり,ワゴン車の運転席の後部側に,順に灯油
ボイラー,給水ポンプ,灯油タンク,排水ポンプを,車両後部の上側に洗髪槽脱着
式のバスタブ,下側に清水タンクを,最後部にホースリールを2個配置している。
ホースは2本あって,湯と水を別に給水するようになっている(いわゆる湯水別送
方式)。また,灯油ボイラーの上方向に丸型で全方向に排気することができる排気
口を備え,入浴担架を車両天井に収納している。
  上記の物品及びその配置に関連して,原告は,昭和49年9月13日,
「移動浴槽」の発明につき特許出願をしたほか,昭和53年10月5日,湯水別送
方式を採用した「病人用移動浴槽えの給湯給水装置」の考案につき実用新案登録出
願をしている。 
ウ 前記同業他社はそれぞれ入浴車を製造又は販売しているが,その入浴車
は小型ワゴン車に入浴車として必要な物品を搭載するという基本的な構成におい
て,原告商品と共通している。そして,同業他社の入浴車の中には,運転席の後部
にボイラー,ポンプ及び灯油タンクを配置したもの,水用,湯用の2本のホースと
車両の最後部に2個のホースリールを配置したもの,浴槽の下側に水タンクを配置
したものがある。
エ 入浴車の大きさや装備については,入浴サービス業者が,入浴車を運行
する道路の状況,提供するサービスの内容などから決めることになるが,自動車
(ワゴン車)の構造上,バスタブ,ホース,担架などは車体の後部から出し入れす
ることにならざるを得ない。したがって,入浴車において,ボイラー,ポンプは荷
物室の前部に,ホースリールは出し入れしやすい後部に,バスタブ,担架も大きさ
等からいって,後部の出し入れしやすい位置に配置するのが通常である。
(3)判断
  前記(2)で認定した事実によれば,原告商品は,小型ワゴン車に,バスタ
ブ,清水タンク,灯油ボイラー,ホースなど入浴車として必要な物品を搭載したも
のであるが,その搭載方法は,ワゴン車の荷物室という限られた空間において,各
物品の大きさ,機能,介護者による運転・操作の容易さ,要介護者の快適さなどの
諸要素に応じて想定し得るいくつかの搭載方法の中から容易に想到できるものであ
り,需要者に強い印象を与えるような外観を備えたものではないこと,原告以外の
業者の製造販売する入浴車には,少なくとも一部の物品の配置やその形状について
類似する商品があることが認められる。
  このような事情に照らすと,原告主張の原告商品の形態,すなわち,搭載
された物品の配置やその形状といったレイアウトは,客観的に,他の商品と識別し
得るだけの独自の特徴を備えたものとはいえず,出所を表示する商品等表示となり
得るものではない。
  原告は,原告商品のレイアウトの特徴として,10個の項目を挙げている
(第2,3の(1)イ)。たしかに,この中には,原告商品の製造に当たり,原告が独
自の工夫を施したことがうかがわれるものもあるが,仮にそのような工夫があった
としても,その部分のみを取り上げて原告商品の形態に他の商品と識別し得る独自
の特徴があるということはできないし,移動式の浴槽や湯水別送方式については,
それ自体は単なる技術思想ないしアイディアであって,具体的な商品形態とは異な
るものである(なお,そのうち,特許権等の対象となる部分については,権利の存
続期間が既に終了している。)。
  さらに,前記(2)によれば,入浴車の大きさや装備については,入浴サービ
ス業者が決定することが認められ,しかも,証拠(乙1の3,6,乙3)によれば,
社会福祉法人等が日本財団から助成金の交付を受けて入浴車を購入する場合には一
定の仕様が求められるため,パンフレットに「日本財団仕様」と記載している例も
あることが認められるものであり,この点に照らしても,入浴車の形態は,今まで
にない極めて独創的なものであれば格別,その性質上,需要者において,特定の事
業者の製造販売に係る商品であることを示すものであるとの認識を持ち得るもので
はない。
(4)この項のまとめ
  以上の認定判断によれば,原告商品の形態が,不正競争防止法2条1項1
号の「他人の商品等表示」に当たるということはできない。
2 争点2(原告商品と被告商品の形態の類否)について
  上記1の認定判断によれば,不正競争防止法に基づく原告の差止請求及び損
害賠償請求は既に理由がないが,念のため,原告商品と被告商品の形態が同一又は
類似するものかどうかについて判断する。
(1)証拠(甲1の1,2,甲3,4,乙5の1~4,6の1~4)によれば,次の事
実が認められる。
ア 原告商品と被告商品を比べると,バスタブ,清水タンク,灯油ボイラ
ー,ホースなどの搭載される物品の配置は共通している。
イ しかし,各物品の形状は異なっている。例えば,車両後部左側に配置さ
れた操作盤,同右側に配置された灯油タンクの大きさや形状は異なる。また,上部
に収納される担架の架台の形状は異なっている。清水タンクについても,側面の外
観,上部面の突起の数が異なっている。さらに,ボイラーに接続するパイプの形状
が異なっている。外観についても,車両の屋根に突き出ている煙突の形状が異なっ
ている。
(2)上記認定の事実に,入浴車については,ワゴン車の荷物室に必要な物品を
搭載する必要からして,物品の配置が自ずから決まるという制約があることを考え
併せると,各物品の形状にみられる上記のような相違点は,需要者にとって,入浴
車の形態について異なる印象を与えるものである。
  そうすると,原告商品と被告商品は,その形態において同一でないことは
もちろん,類似すると認めることもできない。
  したがって,不正競争防止法に基づく原告の請求は,この点からも理由が
ない。
3 争点4(不法行為の成否)について
  本件において,原告は,仮に被告商品の製造販売が不正競争行為に該当しな
いとしても,被告の行為は,著しく不公正な手段を用いて原告の営業活動を妨害す
るという取引上の信義則に反するものであり,民法上の一般不法行為(民法709
条)に該当すると主張する。
  しかしながら,一般に,市場における競争は本来自由であることに照らせ
ば,不正競争行為に該当しないような行為については,当該行為が市場において利
益を追求するという観点を離れて,殊更に相手方に損害を与えることのみを目的と
してなされたような特段の事情のない限り,民法上の一般不法行為を構成すること
もないというべきである。
  本件においては,そもそも前記2で認定したとおり,原告商品と被告商品は
類似するとは認められないから,被告商品は原告商品のデッドコピーと評価するこ
とはできないところ,上記のような特段の事情も認められない。したがって,本件
においては,被告商品の形態が原告商品の形態に酷似することを理由とする原告の
一般不法行為の主張は,採用することができない。
  上記によれば,民法上の一般不法行為に基づく原告の損害賠償請求も,理由
がない。
第4 結論
  以上によれば,原告の請求は,その余の点について判断するまでもなく,理
由がない。
  よって,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官    三 村 量 一
裁判官和久田 道 雄
  裁判官    田 中 孝 一
(別紙)
原告商品目録 被告商品目録原告商品配置図

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛