弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件抗告をいずれも却下する。
     抗告費用はいずれも抗告人らの負担とする。
         理    由
 本件各抗告の趣旨は、いずれも「原決定を取り消す。相手方の文書提出命令の申
立を却下する」との裁判を求めるというにあり、その抗告の理由は、いずれも別紙
「抗告の理由」記載のとおりである。
 そこで、まず本件各抗告の適否について検討する。
 一 記録によれば、原裁判所は、(1)昭和五二年一〇月一四日、相手方田辺製
薬株式会社の申立にもとづき、別紙病院目録(一)第一ないし第六記載の各病院に
対し、それぞれ別紙当事者目録記載(8)・(24)・(33)・(34)・(3
7)・(40)・(42)・(43)・(48)・(61)・(62)・(81)
の各抗告人らにかかる別紙文書目録(一)第一欄ないし第六欄記載の各診療録の提
出を命じる決定を、相手方日本チバガイギー株式会社の申立にもとづき、(2)同
年一一月二日別紙病院目録(二)第一ないし第一六記載の各病院に対し、それぞれ
別紙当事者目録記載(1)・(12)・(18)・(20)・(21)・(2
3)・(26)・(30)・(32)・(35)・(36)・(39)・(5
1)・(52)・(56)・(57)・(60)・(73)・(75)・(7
6)・(77)・(80)・(89)・(91)・(92)の各抗告人らにかかる
別紙文書目録(二)第一欄ないし第一六欄記載の各診療録の提出を命じる決定を、
(3)同月一六日別紙病院目録(三)第一・二記載の各病院に対し、それぞれ別紙
当事者目録記載(55)・(71)・(78)の各抗告人らにかかる別紙文書目録
(三)第一・第二欄記載の各診療録の提出を命じる決定を、(4)同年一二月一日
別紙所持者目録記載の町に対し、別紙当事者目録記載(77)の抗告人にかかる別
紙文書目録(四)記載の各診療録の提出を命じる決定をそれぞれなしたこと、原裁
判所は、前記各抗告人らの症状の経過等相手方の本件各文書提出命令の申立におい
て明示した「証すべき事実」記載の事実を立証するものとして、右各申立を認容し
たものであることが明らかである。そして、抗告人らは全員が、右の(1)から
(4)までの決定に対し、いずれも即時抗告を申立てるものである。
 二 ところで、記録によると、相手方田辺製薬株式会社は、別紙病院目録(一)
第五欄記載の病院に対する当事者目録(81)の抗告人Aにかかる診療録の提出命
令の申立を同年一二月一日取下げたことが認められるところ、記録によると、右申
立にもとづき原裁判所が提出を命じた診療録はいまだその証拠調がなされていない
ことが認められるから、右申立を認容した原文書提出命令は前記取下により失効し
たものというべく、したがつて、これに対する抗告は、不服申立の対象を欠き、不
適法である。
 <要旨>三 文書提出命令の申立は、文書の所持者に提出義務あることを主張して
その提出を命ずべき旨を求めると共にあわせて当該文書を書証としてその証
拠調を請求する証拠の申出であると解されるのであつて、右申立を認容した文書提
出命令は、所持者に文書の提出を命じるほか、当該文書の証拠申出を採用する証拠
決定の性質をも有するものであるというべきところ、抗告人らは、いずれも原文書
提出命令により提出を命じられた文書の所持者ではなく、原文書提出命令の申立人
とは対立当事者の関係に立つ前記損害賠償請求訴訟の原告であるに過ぎず、原文書
提出命令によつては、抗告人のうち前記一掲記の各抗告人においては、自己の相手
方らに対する損害賠償請求権の存否等に関する相手方の新たな証拠の申立が採用さ
れたもの、その余の抗告人らに関しては併合審判する共同原告の請求について証拠
調の決定がなされたものであるという以上には、その訴訟上の利害関係を生ぜしめ
るものではない。
 そして、当事者一方からの証拠申出に対し、対立当事者が取調の要否等につき意
見を述べ、或いは時機に遅れた攻撃防禦方法として取調に異議を申立て得ること等
は別として、右申出を認容した決定に対しては、独立して不服を申立てることを得
ないのであるから、原文書提出命令によつては、書証の証拠調の決定がなされたと
いう利害関係を有するに過ぎない抗告人らは、いずれも原文書提出命令に対し独立
して不服を申立てることは許されないというべきである。
 右の理は当該文書の性質、内容を問わないものであつて、例えば文書が対立当事
者の秘密ないしはプライバシイに関するものであり、その意味において対立当事者
がその提出につき利害関係なしとはいえないものであるとしても、それは訴訟上の
利害関係というにはあたらず、これを以て対立当事者として文書の提出を阻止し得
べき筋合のものではない。そのことは、かような文書を挙証者自身が所持しあるい
は所持者たる第三者が任意に提供する場合において、対立当事者が訴訟上その提出
を阻止し得る何らの手段も有しないことから考えても明らかである。(ただし、右
の点を、後記のとおり抗告権を有する文書所持者が、その立場において文書提出を
拒む理由として主張し得るか否かは、また別個の問題である。)
 もつとも民訴法三一五条は、文書提出命令の申立に関する決定に対しては即時抗
告をなすことを得と規定し、特に抗告権者を限定していないけれども、同条が、文
書提出命令に関する決定については、証拠の申出を採用する旨の決定に対し独立の
不服申立をなし得ぬ旨の原則を、特に排除する特則を定めたものであるとは解され
ない。おもうに、同法三一二条の規定は、文書の提出を強制することが文書所持者
の権利ないしは利益の侵害であることに鑑み、真実発見という訴訟上の要請に一線
を画して、同条所定の場合にのみ所持者にその侵害を受忍すべき公法上の義務を課
したものと理解すべぎであるから、文書提出命令において判断される右義務の存否
については本来本案訴訟の帰すうとは別個に挙証者と所持者との間で争われるべき
問題であり、文書提出命令の証拠決定たる一面があくまで当事者間の問題として終
局判決に集約されて争われるのとは異なる意味を有するのである。そこで、同法三
一五条は、文書提出命令の申立を排斥された挙証者においては、別途に即時抗告に
より、提出義務の存否を争い得るとすると共に、他方文書の提出を命じられた所持
者においては、命令に従わないときは訴訟上不利益を被り、あるいは過料の制裁を
受けるなどのことから、即時抗告をもつて、文書提出命令にかかる提出義務の存否
については、これを本案訴訟の審理とは別に争う機会を与えたものと解するを相当
とする。したがつて、民訴法三一五条の規定をもつて、抗告人らに、原文書提出命
令に対し即時抗告をなし得る権利があるものと解すべき根拠とはなし難い。
 そうすると、本件各即時抗告の申出は、いずれも不適法であるから、これを却下
することとし、抗告費用の負担につき民訴法八九条・九三条を適用して、主文のと
おり決定する。
 (裁判長裁判官 胡田勲 裁判官 北村恬夫 裁判官 下江一成)
 (別紙)
 当事者目録(省略)
 (別紙)
 病院目録(一)(一部登載)
 第一 広島市abのc       河 石 病 院
                    院長 B
 第二 呉市d町e丁目f番地  国 立 呉 病 院
                    院長 C
 (別紙)
 病院目録(二)・(三)、所持者目録(省略)
 文書目録(一)(一部登載)
 第一欄ないし第六欄共通に左の患者の左の期間における外来および入院診療録
(看護記録も含む)
 (患者氏名) (生年月日)  (住 所) (期 間)
 (第一欄-河石病院分)
 D 大10・3・1 広島県g町hi 昭和45年中診療分
 (第二欄-呉病院分)
 E 大4・1・1  呉市jk-l 昭和41年11月28日より・昭和43年
7月まで
 F 大7・4・7  呉市m町n-o 昭和41年中診療分
 (別紙)
 文書目録(二)ないし(四)(省略)
(別 紙)
<記載内容は末尾1添付>

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