弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人江川庸二の上告理由第一点について。
 被上告人らの上告人に対する本件金員請求債権に対し、上告人が相殺の意思表示
に供した反対債権たる金五〇万円の慰藉料請求権の原因として主張されている共同
不法行為は、被上告人B1、同B2がDと共謀して、右B2が私生子である上告人
を生んだことによる同女の世間態や将来のみを考えて、上告人が真実親子関係にな
いD、被上告人B1両名の子であるとして虚偽の出生届をしたというものであつて、
そのため上告人としては、真実の父親に対する相続権を行使することができず、真
実の母親からの愛情も受けることができなかつたし、また、このような届出がなさ
れなければ、上告人としては早く独立して生計を立てることができたはずであつた
のに、右被上告人らとの生活の中心となつて働いてきたあげく、現在のように孤独
の立場に置かれるようになつたことにより、前同額相当の精神的苦痛を負うに至つ
たというのが上告人の原審における主張である。
 しかし、原判決は、右被上告人らが右の届出をしたのは、被上告人B2の将来も
さることながら、上告人が私生子として世間からべつ視されることを防止する意図
であつたことが明らかであり、出生当時上告人主張のように果して実父に対する認
知の請求がたやすく容認されるような客観的状況にあつたかどうかは明らかでない
し、前記意図から推すと、右被上告人らには、かかる届出によつて上告人主張のよ
うな権利を侵害することの認識がなかつたことは極めて明白であると判示して、上
告人主張の不法行為の成立を否定しているのである。
 右原判示は、その認定の事実関係のもとで、右被上告人らは右届出の当時上告人
主張のような結果の発生を予見しまたは予見しうべき事情になかつたことが明白で
あるとして、上告人の所論抗弁を排斥しているものと解せられ、右原審の認定判断
は、記録に徴し肯認できる。
 従つて、右被上告人らの過失を云々する所論は、ひつきよう、原審の認定にそわ
ないことをいうものであり、原判決には民法七〇九条の解釈の誤りも理由そごもな
いから、所論は、すべて採用できない。
 同第二点について。
 所論不当利得返還の請求原因として被上告人B1が主張し、原審が認定した事実
関係は、被上告人B1が本件田畑を所有者らからそれぞれ買受け、代金を完済して
いたところ、同人の所有権移転についての許可手続等未了に乗じ、上告人は、ほし
いままに、前示所有者らから自分が本件田畑を買受けたものとして、自己名義に農
地移転の許可を県知事から得たうえ、所有権移転登記をも受けて、これを単独で占
有するに至つたというのであり、一方上告人と被上告人らとの血縁関係、共同生活
関係等を考慮すると、上告人のためになされた知事の農地移転許可処分が無効であ
ると断定できるかはきわめて疑わしいし、右処分の取消を求めて被上告人B1が提
訴するとしても出訴期間の制限がある等の事情を考慮すると、種々の手段を講じて
も結局被上告人B1が確定的に本件田畑の所有権移転を受け得ることは現在では至
難のことに属するというのである。
 しかして、原判決は、以上の事実関係から、上告人は本件田畑の買受人でないの
に、買主と同一の状態を事実上保持することができ、なんら法律上の原因なくして
右田畑を占有耕作して所有権者と同様の利益を受け、一方、本来の買受人である被
上告人B1は、支払済の買受代金一九五、〇〇〇円相当の損失を蒙つたとし、かつ、
右利得と損失との間に相当因果関係があると判断し、上告人の右利得も前示認定の
事情に徴すれば、被上告人B1が本件田畑の買受代金として売主に支払つた右同額
を下らないと判定しているのである。
 右原審の認定は、挙示の証拠関係に照して肯認できるし、その認定事実関係のも
とでなした右判断はすべて首肯できるから、上告人が、被上告人B1に対し右同額
の不当利得金返還義務を負うものとした原判決は正当といわねばならない。
 また、原審認定判示の事実関係から明らかなように、被上告人B1の買受につい
ては、農地移転の知事の許可がなかつたのであるから、同人としては本件田畑の所
有権をいまだ取得しなかつたといわねばならず、同人がその占有を取得したとの事
実の主張も認定もないのであるから、本件においては、同人が本件田畑自体、すな
わちその所有権ないし占有を上告人の利得に因つて失つたと見ることはできない。従
つて、本件不当利得返還請求において、もともと原物の返還を考える余地はないと
いわねばならないから、原物返還不能の場合にのみ価格返還の請求ができることを
もつて原判決の法律解釈の誤りをいう所論は、前提を欠き採用できない。
 よつて、民訴法三九六条、三八四条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致で、
主文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    山   田   作 之 助
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外

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