弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
1 本件控訴をいずれも棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
       事実及び理由
第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人が,控訴人の平成10年3月分の源泉所得税について平成11年3月
31日付けでなした源泉所得税34万6181円の納税告知処分及び不納付加算税
3万6000円の賦課決定処分並びに被控訴人の平成10年4月分から平成10年
9月分までの源泉所得税144万6148円の納税告知処分及び不納付加算税16
万4000円の賦課決定処分をいずれも取り消す。
3 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。
第2 事案の概要
1 本件は,外国人芸能人のあっせん仲介業を営む控訴人が,フィリピン共和国に
おいてフィリピン国籍の芸能人の紹介を行う者に対して支払った金員は,所得税法
161条2号に規定する国内源泉所得にあたるとして,被控訴人が控訴人に対し,
源泉徴収にかかる所得税の納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分をしたの
に対し,控訴人が,前記金員は国内源泉所得にあたらないとして,これら処分の取
消しを求めた事案であり,原判決が本訴請求をいずれも棄却したため,これを不服
とする控訴人が控訴したものである。
2 争いのない事実等,争点及び争点に関する当事者の主張は,次のとおり加除訂
正するほか原判決の事実及び理由欄の「第2の1,2」に摘示のとおりであるか
ら,これを引用する。
(1) 原判決6頁4行目の「そのもの」を「その者」と改める。
(2) 同9頁4行目の「支払に関する」の後に「控訴人作成の」を加え,同8行
目の「本件」を削除する。
3 当審における控訴人の補足的主張
(1) 原判決の事実認定は,現地紹介者であるフィリピン人社会の特殊性に対す
る理解・認識が欠落しており,重大な事実誤認がある。すなわち,現地紹介者であ
るフィリピン人は日本人とは社会的環境,道徳観,価値観が全く異なっており,約
束を反故にすることなど何の抵抗も感じない日常生活をしているものである。した
がって,タレントが6か月という約束した期間を平然として破った場合に対処する
ため,現地紹介者に対しても手数料の分割払という担保措置を講じざるを得ない
し,再入国だからといって,当初の現地紹介者を無視してタレントと直接交渉する
ことは,現地紹介者であるフィリピン人の風俗・習慣から逸脱することになり,今
後別の有望なタレントの紹介を受けることができなくなってしまうという特殊事情
が存するため,タレントを再入国させるについて当初の現地紹介者を通じて再び行
わざるを得ないのである。
(2) 原判決は,控訴人の同業者に対しては現地紹介者に対する手数料が国内源
泉所得として扱われていないという控訴人の主張を排斥するに際し,乙5号証(本
件の税務調査を担当した名古屋国税局の国税実査官[当時]のA作成の陳述書)の
供述記載をもって控訴人の主張と反対趣旨を述べるものとしているが,乙5号証に
は控訴人の主張と反対趣旨を述べる供述は全く見られないから,その証拠評価を誤
ったものである。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も本訴請求はいずれも棄却すべきであると判断するが,その理由は次
のとおり加除訂正するほか原判決の事実及び理由欄の「第3」に説示のとおりであ
るから,これを引用する。
(1) 原判決10頁10行目の「甲1号証ないし」を「甲1号証,2ないし5号
証の各1,2,甲6号証,」と改める。
(2) 同12頁4行目の「されていること」の後に次のとおり加える。
「,また,控訴人からその現地従業員に対する支払指示に関するメモにおいても,
タレントへの初回報酬と現地紹介者への手数料が区別されておらず,その支払合計
金額が単にサラリーと一括表示されており,これは,控訴人自身がタレントと現地
紹介者との関係を一体視している証左であること」
(3) 同頁15行目の「記載のとおり),」の後に次のとおり加える。
「しかも,ワンタイムコミッションへの支払額は,原判決別表2(1)のとおりタ
レント1人当たり1回100米ドルから300米ドルにとどまるのに比して,現地
紹介者への手数料支払額は,同別表2(3)のとおりタレントの出国時手数料だけ
でもおよそ1500米ドルから2750米ドルと高額であり,かつタレントへの報
酬支払額と比しても前記現地紹介者への手数料支払額が高額であることは同別表3
をみても明らかであり,到底,控訴人が主張するような現地の市井人によるタレン
トの紹介行為に対する対価とは認め難い。」
(4) 同13頁5行目の「なお」を削除し,同12行目末尾に行を改めて次のと
おり加える。
「よって,被控訴人のした本件各納税告知処分及び国税通則法67条1項に基づく
不納付加算税の賦課決定処分はいずれも適法である。」
2 付加する判断
 控訴人の当審における補足的主張(1)についてみるに,フィリピン人の現地紹
介者やタレントが約束を反故にすることなど何の抵抗も感じないほどの道徳観や価
値観をもって日常生活をしているとする控訴人の主張は客観的証拠に基づかない独
自の見解というべきであり,これを前提とする手数料の分割支払やタレント再入国
時の手数料の再支払に関する控訴人の主張及びこれに沿う控訴人代表者の原審供述
部分(甲7号証も同旨)も採用することはできない。また同補足的主張(2)につ
いてみるに,乙5号証の14頁24行目以下には,本件の税務調査を担当した国税
実査官Aが控訴人の主張を受けて調査したところによると,控訴人と同様の同業者
においてはマネージャーコミッションについて課税されている事実がある旨の陳述
記載があり,この点に関する控訴人の主張も理由がない。
3 以上の次第で,本訴請求をいずれも棄却した原判決は相当であって,本件控訴
は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
名古屋高等裁判所民事第4部
裁判長裁判官 小川克介
裁判官 黒岩巳敏
裁判官 鬼頭清貴

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