弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     当審における訴訟費用は被告人Aの負担とする。
         理    由
 被告人Aの弁護人久保恭孝の上告趣意第一点は、憲法三一条違反をいうが、実質
は単なる法令違反の主張であり、同第二点は、単なる法令違反、事実誤認の主張で
あつて、いずれも刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。
 被告人B、同Cの弁護人青木英五郎の上告趣意中判例違反をいう点について。
 記録によると、被告人B、同Cに対する公訴事実の要旨は、
 被告人両名は共謀のうえ
一、昭和四〇年四月一六日兵庫県a港岸壁において、Dらが他から窃取してきたガ
ソリン約一二キロリツトルを、その情を知りながら、Eから代金四二万円で買い受
け、もつて賍物の故買をし、
二、同月一九日右同所において、Dらが他から窃取してきたガソリン約六キロリツ
トルを、その情を知りながら、Eから代金二一万円で買い受け、もつて賍物の故買
をした、
というものである。
 これについて、第一審判決は、右被告人両名が意思相通じて公訴事実の日時場所
においてDらが他から窃取してきたガソリンをそれぞれ買い受けたことは証拠によ
つて認められる、ただ、右被告人両名は、右一の日には五・七キロリツトル、二の
日にはむしろ一二キロリツトルを各買い受けた旨供述するが、右供述はにわかに信
用できないから、その買い受けた量が公訴事実どおり一が約一二キロリツトル、二
が約六キロリツトルであると認めることには、いささか躊躇を感ぜざるをえないが、
いずれにせよ、それぞれ少なくとも約六キロリツトルを買い受けたことは明らかで
あると説示し、結局被告人両名が、これら買い受けたガソリンが盗品であるとの認
識すなわち賍物性の知情をもつていたことについて証明が十分でないことを理由に
無罪を言い渡したもので、本件において争点の核心をなすものは、被告人らが賍物
性についてその情を知つていたか否かである。
 これに対し検察官から控訴の申立があり、原審は、みずから事実の取調として、
検察官が知情の立証として申請した証拠物の売上帳二葉を取り調べ、更に被告人両
名に対し公判廷で主として知情の点につき詳細にわたつて質問したことが記録上明
らかである。
 このように、本件の核心をなす知情の点について事実の取調をした以上、原審が、
前記数量の点も含めて公訴事実どおりの事実を確定し、有罪の判決をしたことは、
所論引用の判例になんら違反するものではない(昭和三一年(あ)第四四七八号同
三四年五月二二日第二小法廷判決、刑集一三巻五号七七三頁、同三四年(あ)第四
七〇号同三六年一月一三日第二小法廷判決、刑集一五巻一号一一三頁各参照)。そ
れゆえ所論は理由がない。
 同弁護人の上告趣意中その余の論旨は、単なる法令違反、事実誤認の主張であつ
て、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。
 よつて、同法四〇八条、一八一条一項本文(被告人Aにつき)により、裁判官全
員一致の意見で、主文のとおり判決する。
  昭和四三年一一月二一日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    松   田   二   郎
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    長   部   謹   吾
            裁判官    岩   田       誠
            裁判官    大   隅   健 一 郎

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