弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成23年2月24日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成19年(行ウ)第9号a県政務調査費返還等請求事件
口頭弁論終結の日平成22年9月16日
判決
主文
1被告は,被告補助参加人Aに対し,162万7568円及びこれに対する
同補助参加人に対して請求した日の翌日から支払済みまで年5分の割合による
金員の支払を請求せよ。
2被告は,被告補助参加人Bに対し,636万8995円及びこれに対する
同補助参加人に対して請求した日の翌日から支払済みまで年5分の割合による
金員の支払を請求せよ。
3被告は,被告補助参加人Cに対し,510万6121円及びこれに対する
同補助参加人に対して請求した日の翌日から支払済みまで年5分の割合による
金員の支払を請求せよ。
4被告は,被告補助参加人Dに対し,218万7184円及びこれに対する
同補助参加人に対して請求した日の翌日から支払済みまで年5分の割合による
金員の支払を請求せよ。
5被告は,被告補助参加人Eに対し,1680万6248円及びこれに対す
る同補助参加人に対して請求した日の翌日から支払済みまで年5分の割合によ
る金員の支払を請求せよ。
6被告は,被告補助参加人Fに対し,160万3333円及びこれに対する
同補助参加人に対して請求した日の翌日から支払済みまで年5分の割合による
金員の支払を請求せよ。
7被告は,被告補助参加人Gに対し,246万2985円及びこれに対する
同補助参加人に対して請求した日の翌日から支払済みまで年5分の割合による
金員の支払を請求せよ。
8原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
9(1)訴訟費用について
これを4分し,その3を原告らの,その余を被告の負担とする。
(2)補助参加により生じた費用について
ア原告らと被告補助参加人Aとの間に生じた費用について
これを4分し,その1を原告らの,その余を同被告補助参加人の負担
とする。
イ原告らと被告補助参加人Bとの間に生じた費用について
これを3分し,その2を原告らの,その余を同被告補助参加人の負担
とする。
ウ原告らと被告補助参加人Cとの間に生じた費用について
これを3分し,その2を原告らの,その余を同被告補助参加人の負担
とする。
エ原告らと被告補助参加人Dとの間に生じた費用について
これを5分し,その4を原告らの,その余を同被告補助参加人の負担
とする。
オ原告らと被告補助参加人Eとの間に生じた費用について
これを5分し,その4を原告らの,その余を同被告補助参加人の負担
とする。
カ原告らと被告補助参加人Fとの間に生じた費用について
これを3分し,その1を原告らの,その余を同被告補助参加人の負担
とする。
キ原告らと被告補助参加人Gとの間に生じた費用について
これを4分し,その3を原告らの,その余を同被告補助参加人の負担
とする。
事実及び理由
第1請求
1被告は,被告補助参加人Aに対し,213万9974円及びこれに対する
平成19年8月21日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を請求
せよ。
2被告は,被告補助参加人Bに対し,1843万9819円及びこれに対す
る平成19年8月21日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を請
求せよ。
3被告は,被告補助参加人Cに対し,1427万2633円及びこれに対す
る平成19年8月21日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を請
求せよ。
4被告は,被告補助参加人Dに対し,953万5044円及びこれに対する
平成19年8月21日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を請求
せよ。
5被告は,被告補助参加人Eに対し,8842万7143円及びこれに対す
る平成19年8月21日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を請
求せよ。
6被告は,被告補助参加人Fに対し,239万8674円及びこれに対する
平成19年8月21日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を請求
せよ。
7被告は,被告補助参加人Gに対し,1009万9541円及びこれに対す
る平成19年8月21日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を請
求せよ。
第2事案の概要
1本件は,a県議会の会派である被告補助参加人らが平成17年度に被告(a
県知事)から交付を受けた政務調査費について,a県政務調査費の交付に関す
る条例に定められた基準に違反する違法な支出を行っており,被告補助参加人
らはa県に対して違法な支出となる額に相当する金員を不法行為に基づく損害
賠償として支払うか又は不当利得として返還すべきであるのに,被告はその損
害賠償請求又は不当利得返還請求を違法に怠っているとして,原告らが,被告
に対し,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,被告補助参加人らに対
して上記損害賠償請求又は上記不当利得返還請求(いずれも訴状送達の日の翌
日である平成19年8月21日から支払済みまで民法所定の年5分の割合によ
る遅延損害金の請求を含む。)をすべきことを求めている事案である。
原告らは,第22回口頭弁論期日までにHに対する損害賠償請求又は不当利
得返還請求に係る訴えを取り下げたほか,被告補助参加人Fを除き,前記第1
のとおり請求を減縮した。
2前提事実等(証拠を掲記しない事実は争いがない。)
(1)当事者
ア原告非営利活動法人a市民オンブズマン(以下「原告オンブズマン」と
いう。)は,a県に主たる事務所を置く特定非営利活動法人であり,原告
Iは,その代表者理事であって(この点につき記録上明らかな事実),a
県の住民である。
イ被告は,a県(以下「県」という。)の知事である。
ウ被告補助参加人らは,いずれも県議会議員によって構成される県議会
内の会派であり,権利能力なき社団である。
被告補助参加人らのうち,B,C,D(以上の3派は平成19年5月こ
ろ解散しHを結成)及びF(平成18年3月末に解散し,その構成員で
あったJ議員はEに加入した。)は,本訴提起より前に,既に会派を事
実上解散しているが(証人K〔256∼260項〕,証人L〔220∼2
26項〕,丙E48の25),権利能力なき社団である上記被告補助参
加人らは,清算の目的の範囲内において,その清算の結了に至るまでは
なお存続するものとみなされると解すべきであるところ(一般社団法人
及び一般財団法人に関する法律207条参照),本件における不当利得
返還請求又は損害賠償請求はいずれも清算の目的の範囲内であるから,
その関係では,事実上解散した後も上記各請求の相手方としてなお存続
していると認められる。
(2)法令等の定め
ア地方自治法の規定
地方自治法(以下「法」という。)100条13項(平成20年法律
第69号による改正前のもの。以下同じ。)は,「普通地方公共団体は,
条例の定めるところにより,その議会の議員の調査研究に資するため必
要な経費の一部として,その議会における会派又は議員に対し,政務調
査費を交付することができる。この場合において,当該政務調査費の交
付の対象,額及び交付の方法は,条例で定めなければならない。」と規
定され,同条14項は,「前項の政務調査費の交付を受けた会派又は議
員は,条例の定めるところにより,当該政務調査費に係る収入及び支出
の報告書を議長に提出するものとする。」と規定している。
イa県政務調査費の交付に関する条例の規定
a県においては,法100条13項及び14項の規定に基づき,a県議
会議員の調査研究に資するため必要な経費の一部として政務調査費を交
付することに関し必要な事項を定めることを目的として,a県政務調査費
の交付に関する条例(平成19年a県条例第52号による改正前のもの。
以下「本件条例」という。)が制定されている。本件条例の主な規定は,
次のとおりである(甲1)。
(ア)第2条(政務調査費の交付対象)
政務調査費は,a県議会の会派(所属議員が1人の場合を含む。以下
「会派」という。)に対し交付する。
(イ)第3条(政務調査費の額等)
1項政務調査費の額は,1月につき,30万円に当該会派の所属
議員の数を乗じて得た額とする。
(以下略)
(ウ)第6条(政務調査費の交付決定)
知事は,前条の規定による通知に係る会派について,政務調査費の
交付の決定(変更の決定を含む。)を行い,会派の代表者に通知しな
ければならない。
(エ)第7条(政務調査費の請求及び交付)
1項会派の代表者は,前条の規定による通知を受けた後,毎月1
0日までに,当該月分の政務調査費の交付を知事に請求するも
のとする。
2項知事は,前項の規定による請求があったときは,速やかに政
務調査費を交付するものとする。
(オ)第8条(政務調査費の使途)
会派は,政務調査費を別に定める使途基準に従い使用しなければな
らない。
(カ)第9条(収支報告書)
1項会派の代表者は,毎年度4月30日までに,政務調査費に係
る収入及び支出の報告書(以下「収支報告書」という。)を別
記様式により議長に提出しなければならない。
(以下略)
(キ)第10条(議長の調査等)
議長は,前条の規定により収支報告書が提出されたときは,その写
しを知事に送付するとともに,必要に応じ政務調査費の適正な使用を
期すため調査を行うものとする。
(ク)第11条(政務調査費の返還)
知事は,会派がその年度において交付を受けた政務調査費の総額か
ら,当該会派がその年度において行った支出(第8条に規定する使途
基準に従って行った支出をいう。)の総額を控除してなお残余がある
ときは,当該残余の額の政務調査費の返還を命ずることができる。
(ケ)第12条(収支報告書の保存及び閲覧)
1項第9条の規定により提出された収支報告書は,これを受理し
た議長において,提出すべき期間の末日の翌日から起算して5
年を経過する日まで保存しなければならない。
2項何人も,議長に対し,前項の収支報告書の閲覧を請求するこ
とができる。
(コ)第13条(委任)
この条例の施行に関し必要な事項は,議長が定める。
ウ県議会の規程
県議会においては,本件条例の施行に関し必要な事項を定めることを
目的として,a県政務調査費の交付に関する規程(平成20年a県議会規
則第1号による改正前のもの。以下「本件規程」という。)が制定され
ている。本件規程の主な規定は次のとおりである。(甲4参照)
(ア)第4条(政務調査費の使途基準)
本件条例第8条の使途基準は,別表1のとおりとする(以下「本件
使途基準」という。)。
(別表1)
調査研究費会派が行う県の事務及び地方行政に関する調査研究
並びに調査委託に要する経費
研修費会派が行う研修会,講演会の実施に必要な経費並び
に他団体が開催する研修会,講演会等への所属議員及
び会派の雇用する職員の参加に要する経費
会議費会派における各種会議に要する経費
資料作成費会派が議会審議に必要な資料を作成するために要す
る経費
資料購入費会派が行う調査研究のために必要な図書・資料等の
購入に要する経費
広報費会派が行う議会活動及び県政に関する政策等の広報
活動に要する経費
事務費会派が行う調査研究にかかる事務遂行に必要な経費
人件費会派が行う調査研究を補助する職員を雇用する費用
(イ)第5条(証拠書類等の整理保管)
会派の政務調査費経理責任者は,政務調査費の支出について,会計
帳簿を調整しその内訳を明確にするとともに,証拠書類等を整理保管
し,これらの書類を当該政務調査費の収支報告書の提出期間の末日の
翌日から起算して5年を経過する日まで保存しなければならない。
(3)政務調査費の交付等
ア平成17年度における県の被告補助参加人らに対する政務調査費の交
付金額並びに収支報告書によって確定した支出額及び残余金の額は,次
のとおりである。(甲2参照。以下,個別の被告補助参加人については,
会派名のみで特定する。)
(ア)A交付決定額360万0000円
収入額362万1765円
支出額362万1760円
残額5円
(イ)B交付決定額2160万0000円
収入額2162万3221円
支出額2126万7854円
残額35万5367円
(ウ)C交付決定額1440万0000円
収入額1440万0011円
支出額1427万6727円
残額12万3284円
(エ)D交付決定額1080万0000円
収入額1080万0016円
支出額956万7039円
残額123万2977円
(オ)E交付決定額1億0110万0000円
収入額1億0112万3509円
支出額9739万5980円
残額372万7529円
(カ)F交付決定額240万0000円
収入額240万0000円
支出額239万8674円
残額1326円
(キ)G交付決定額1080万0000円
収入額1080万0038円
支出額1021万6438円
(ただし,別紙支出一覧表(G)上は,10
22万6160円)
残額58万3600円
イ平成17年度において交付を受けた政務調査費について,被告補助参
加人らが支出した年月日,項目及び内容並びに各支出の際の領収書の有
無は,別紙支出一覧表記載のとおりである(Fにつき丙E45)。
⑷本件訴訟に至る経緯
ア原告らは,平成19年4月11日,地方自治法242条1項に基づき,a
県監査委員に対し,被告補助参加人らに対して上記⑶記載のとおり交付
された政務調査費について,違法な公金の支出があったのに,損害を補
填するために必要な措置を講ずることを怠ったとして,住民監査請求
(以下「本件住民監査請求」という。)を行ったところ,同監査委員は,
同年6月8日,原告らに対し,これを棄却する旨の通知を行った(甲5
参照)。
イ原告らは,平成19年7月6日,地方自治法242条の2第1項4号に
基づき,本件訴えを提起した(当裁判所に顕著な事実)。
3当事者の本案前の主張
(被告)
後記Eの主張を援用する。
(E)
原告オンブズマンが平成19年4月11日に行った監査請求は,個別具体的
に支出行為の違法性を主張するものではなく,単に政務調査費の支出の詳細が
不明であるとか支出証拠書類等が添付されていないなどの理由により本件政務
調査費からの支出を違法と主張するものにすぎない。したがって,本件監査請
求は本来不適法として却下されるべきものであったから,本件訴訟は,適法な
監査請求があったことを前提とする地方自治法242条の2に反し,不適法で
ある。
(原告ら)
原告らが行った本件住民監査請求に係る請求書の記載から,住民監査請求の
対象が平成17年度分として交付された政務調査費であると監査委員が認識可
能な程度に特定できており,このことは,県監査委員が判断可能であったこと
からも明らかである。
仮に政務調査費の具体的な支出行為について特定を要するとすれば,実質的
にも法が住民訴訟制度を設けた趣旨を没却することになって不当である。
4本案の争点及びこれについての当事者の主張
(1)政務調査費の使用主体は会派に限られるか否か。
(原告ら)
本件条例や本件規程で政務調査費の交付対象や使用主体を会派に限って
いることからすれば,政務調査費の使用主体は会派に限られる。したがっ
て,会派の意思決定に基づかない政務調査費の使用は違法である。
(被告)
後記被告補助参加人らの主張を援用する。
(A)
平成17年度において,Aの議員はM一人であり,会派と議員が同一で
あることからすれば,政務調査費の使用主体が会派に限られたとしても違
法な支出ではない。
(A以外の被告補助参加人ら)
政務調査費は「議員の」調査研究活動に要する費用を助成するための費
用であり,地方自治法は,交付対象として個々の議員を想定している。本
件条例が交付先を会派としたのは,事務処理手続の簡略化を図った趣旨で
ある。したがって,会派の意思決定に基づく場合のほか,議員の調査研究
活動が会派としての意思に反さず,会派の承認の下で行われる場合も,適
法な政務調査費の支出となると解すべきである。
(2)被告補助参加人らによる支出が違法であるか否か。
(原告ら)
ア支出の違法性の判断基準
次のものは,いずれも違法である。
①社会通念上市町村政や都道府県政に関する調査研究に資する適正な
支出と認められない場合
②裏付ける資料がなく,議員においてこれを積極的に補足説明しない
場合
③同一名目の相当額の支出につき政務調査費の使途基準に合致する部
分とそうでない部分を合理的に区別可能なのに,金額や使途等からみ
てその大半が政務調査以外の活動に使用されていると社会通念上推認
される場合
④政務調査費の使途基準に合致する部分とそうでない部分が混在し,
その合理的区別が困難である場合に,社会通念上相当な割合により按
分された分を超える部分
イ支出項目ごとの違法性
別紙「主張整理表」記載1ないし7の「原告らの主張」欄記載のとお
りである。
(被告)
後記被告補助参加人らの主張を援用する。
(被告補助参加人ら)
ア支出の違法性の判断基準
(A)
上記④に関して,調査研究活動とそれ以外の活動との区別が困難な場
合,社会通念上調査研究活動としての性質をもつものについては,按分
するのではなく,すべて適法と考えるべきである。
(B・C・D・E)
上記②に関して,領収書がないとの一事をもって,政務調査費の支出
が違法となることはない。上記被告補助参加人らにおいて支出の適法性
につき積極的に資料を提出し,補足説明をしているから,これらを考慮
して実質的に判断すべきである。
(G)
上記②に関して,本件規程において整理保管が求められているのは
「証拠書類等」であって,領収書に限定されていない。合理的で相当な
基準に基づいて政務調査費を支出管理し,調査研究活動の実態を記した
書類をもって証拠書類等とすることも認められるべきである。
イ支出項目ごとの違法性
別紙「主張整理表」記載1ないし7の「被告・標記被告補助参加人の
主張」欄記載のとおりである。
第3当裁判所の判断
1本案前の主張について
住民監査請求においては,対象とする財務会計上の行為又は怠る事実を,他
の事項から区別して特定して認識することができるように,個別的,具体的に
摘示することを要するが,監査請求書及びこれに添付された事実を証する書面
の各記載,監査請求人が提出したその他の資料等を総合して,住民監査請求の
対象が特定の財務会計上の行為又は怠る事実であることを監査委員が認識する
ことができる程度に摘示されているのであれば,これをもって足りるのであり,
上記の程度を超えてまで対象とする財務会計上の行為又は怠る事実を個別的,
具体的に摘示することを要するものではないというべきである(最高裁平成1
6年11月25日第一小法廷判決・民集58巻8号2297頁参照)。
本件において,原告らは,被告補助参加人らに対して平成17年度に交付さ
れた政務調査費(以下「本件政務調査費」という。)について,交付決定額や
収入額,費用別の支出額,残額を明らかにしたうえ,支出に係る領収書等の証
拠書類が添付されていないことや,支出につき会派としての意思統一がないこ
とから,支出はすべて違法であると主張して,そのほぼ全額の返還の措置を求
めていることは明らかであるから(人件費については,その4分の1に相当す
る額については違法でないとも主張しているものの,結局は人件費のほぼ全額
も含めた額を違法として請求するよう求めている(甲5〔6頁〕)。),対象
となる行為を一体と見て判断するのが可能かつ相当であるということができる。
そして,原告らが本件監査請求において返還を求めるべきであるとした支出
が監査請求書に添付された平成17年度の政務調査費における収支報告書の支
出として記載されているものを指すことは明らかであり,対象外の支出との区
別は可能であるうえ,監査委員は,必要があれば上記収支報告書に係る各会派
への確認や各会派からの資料提出等により各支出行為を明らかにさせることに
よって,本件監査請求の対象である各支出行為を容易に把握することができる
ものというべきである。
したがって,本件住民監査請求においては,上記程度の特定をもって監査対
象としての特定は足りているから,本件の訴えは,適法な住民監査請求を経た
適法なものである。
2争点(1)政務調査費の使用主体は会派に限られるか否か。)について
前記前提事実等⑵のとおり,本件条例2条は,a県議会における会派に対し
て政務調査費を交付することとし,同条例8条は,会派が政務調査費を別に定
める使途基準に従って使用しなければならないと定め,これを受けた本件規程
は,本件使途基準において,いずれも「会派が行う」との表現を用いている。
もっとも,法100条13項は,政務調査費が「議員の」調査研究に資する
ため必要な経費の一部として交付されるものと定め,本件条例1条は,「a県
議会議員の」県政に関する調査研究に資するため必要な経費の一部として交付
するものと定めているから,法及び本件条例は,政務調査費の支出対象となる
調査研究の主体としては,会派ではなく議員を想定していると解される。そう
すると,本件使途基準にいう「会派が行う」調査研究活動には,会派がその名
において自ら行うもののほか,会派の所属議員等にこれを委ね,又は所属議員
による調査研究活動を会派のためのものとして承認する方法により行われるも
のも含まれると解すべきである。また,特段の事情のない限り,会派の代表者
が会派の名においてした行為は,会派自らがした行為と評価されるものである
(最高裁平成21年7月7日第三小法廷判決・集民231号183頁参照)。
そして,後記のとおり,各会派は,平成17年度に至るまでに,使途基準を
定めるなどして各議員に対する調査を包括的に委託したものと認められ,これ
に反する証拠はない。
したがって,政務調査費の使用主体は会派自らが行うものに限られるとの
原告らの主張は採用することができず,この点のみを根拠に被告補助参加
人らによる本件各支出が違法であるということができない。
3争点⑵(被告補助参加人らによる支出が違法であるか否か。)について
(1)政務調査費の支出と違法性の判断
ア法は,条例の定めるところにより,議会の議員の調査研究に資するた
め必要な経費の一部として,会派又は議員に対して政務調査費を交付す
ることができるとし,他方,政務調査費の交付を受けた会派又は議員は,
条例の定めるところにより,当該政務調査費に係る収入及び支出の報告
書を提出するものとしている(法100条13項,14項)。この政務
調査費の制度は,議員の調査研究活動を活発にして議会の審議能力を強
化するとともに,情報公開を促進する見地からその使途の透明性を確保
しようとする趣旨と解される。
また,法の上記規定を受けて定められた本件条例は,政務調査費は会
派に対して交付し(2条),会派は,政務調査費を本件規程で定める使
途基準に従って使用するものとし,県政に関する調査研究に資するため
必要な経費以外のものに充てることを禁止している(8条)。そして,
本件規程は,政務調査費の使途の基準として8項目を掲げて使途を限定
したうえで(4条),政務調査費の交付を受けた会派に対し,政務調査
費の支出について会計帳簿を調整しその内訳を明確にするとともに,領
収書等支出を明らかにする証拠書類を整理し,5年間保管すべきことを
義務づけている(5条)。また,本件条例11条は,知事は,会派がそ
の年度において交付を受けた政務調査費の総額から,当該会派がその年
度において行った支出の総額を控除してなお残余があるときは,当該残
余額の返還を命ずることができるとしている。
上記のように,政務調査費が会派又は議員の調査研究活動を活発にし
て議会の審議能力を強化するためのものであることからすると,これを
どのように活用するかは本来会派又は議員の自律的判断に委ねられるべ
きでものであるが,反面,政務調査費は,その使途が限定され,県政に
関する調査研究に資するため必要な経費以外のものに充てることが禁止
されており,交付を受けた会派に会計帳簿の調整や支出を明らかにする
証拠書類等の整理保管が義務づけられていることなどからすると,政務
調査費が地方自治法や本件条例,本件規程の趣旨に従って適正に使用さ
れなければならないことは明らかである。
以上に鑑みると,会派の政務調査費経理責任者が整理保管を義務付け
られている証拠書類等の資料に照らし,社会通念上県政に関する調査研
究に資する支出と認めることができない支出は,使途基準に合致しない
違法な支出というべきである。そして,会派が政務調査活動に必要な費
用として支出したことにつき,社会通念に照らして上記活動に必要と認
められないうえ,それを裏付ける資料がなく,会派においてこれを積極
的に補足する説明もしないような場合には,当該会派は,当該支出が使
途基準に合致しない違法な支出とされることを甘受せざるを得ないとい
うべきである。
また,ある支出が政務調査活動のためでもあるし,他の目的,例えば
議員の後援会活動のためでもあるという場合にどのように対処すべきか
について,本件条例や本件規程には何らの規定も設けられていない。し
かし,その全額を政務調査費から支出するのが相当でないことは明らか
であるから,条理上,按分した額をもって政務調査費とすべきであり,
特段の資料がない限り,例えば,2つの目的のために支出した場合には
2分の1とするなど,社会通念に従った相当な割合をもって適法な政務
調査費の支出額を確定すべきである。
この点に関し,原告らは,特にEに係る政務調査費の支出について,
費目間の流用が認められないと主張するが,政務調査費を支給する趣旨
に照らせば,客観的にいずれかの使途基準に合致する支出であれば適法
な支出であると解すべきであって,特定の支出が異なる費目に計上され
たとの一事をもってこれを違法であると解することはできず,原告らの
主張は採用できない。
イところで,原告らは,政務調査費の支出行為が平成18年度にされた
ものについて,会計年度を異にする以上,平成17年度の政務調査費か
ら支出した扱いとすることは違法であると主張する。
しかし,本件条例11条は,「知事は,会派がその年度において交付
を受けた政務調査費の総額から,当該会派がその年度において行った支
出(第8条に規定する使途基準に従って行った支出をいう。)の総額を
控除してなお残余があるときは,当該残余の額の政務調査費の返還を命
じることができる。」と規定し,各年度ごとの支出を前提としているも
のの,普通地方公共団体においても,歳出の会計年度所属は原則として
支出負担行為をした日の属する年度としていること(地方自治法施行令
143条1項5号)にも照らせば,支出の原因となる事実が当該年度内
に生じたものについて,実際の支出行為が翌年度に行われる場合につい
てまで,当該年度の支出として認めない趣旨であるとまで解することは
できない。したがって,支出の原因となる事実が平成17年度に生じて
いれば,支出行為が平成18年度にされていたとしても,それだけで支
出が本件条例に従わず,違法なものということはできない。
(2)各会派による支出の違法性
(以下においては,適宜,個別の支出行為を,別紙支出一覧表の「番号」欄
(以下「支出番号」という。)の記載をもって特定する。)
アAについて
(ア)研修費
a56分勉強会負担金《A23,32,65,75番》
前記前提事実等⑶イ,後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,56
分勉強会は,県議会の各会派所属議員の全員が集まって,県議会の
昼休憩に外部講師を招聘して行う講演と質疑応答の研修会であり
(丙A2〔4頁〕),第48回は「ツーリズムのモデル県を目指し
て」と題する社団法人ツーリズムa会長の講演(甲A1〔181∼1
84番〕),第49回は「a県の自然災害の特徴」と題するa地方気
象台長の講演(甲A1〔154∼157番〕),第50回は「地域
密着と国際化」と題するN社長の講演(甲A1〔54∼57番〕),
第51回は「O音楽祭から見た教育・文化行政」と題するO音楽祭
総合プロデューサーの講演(甲A1〔27∼30番〕)が行われた
ことが認められるところ,これらの勉強会は,その参加形態に照ら
せば,各会派が合同で実施する勉強会であると評価すべきであるう
え,上記各回の講演テーマはいずれもa県政に関連するといえるから,
調査研究活動との関連性が認められる。この点に関し,同勉強会負
担金は昼食費を含んでいるものと認められるが,同勉強会が昼休憩
に実施されることに鑑みれば,昼食代も同勉強会実施に係る必要経
費というべきである。そうすると,同勉強会負担金合計1万211
3円は,すべて会派の調査研究に資するため必要な経費であると認
められる。
したがって,上記支出は,本件使途基準に合致すると認められる。
b「人権交流集会」参加費《A66番》
「人権交流集会」は,全国部落解放運動連合会の発展的な組織で
ある全国地域人権運動総連合会の九州ブロック協議会が主催した
「2005年度九州・沖縄交流学習会」のことであり(甲A1〔5
1∼53番〕,証人P〔127項〕,弁論の全趣旨),九州各県の同
和行政の実情などの報告や意見交換を行うものであったことが認め
られるところ,その内容に照らせば,会派による県の人権・同和行
政の調査研究に資するものというべきである一方で,仮に上記団体
がAと関係のある団体であったとしても,そのことから直ちに上記
集会への参加費の支出がAから上記団体に対する助成等の趣旨であ
るとは認められない。したがって,「人権交流集会」参加費300
0円は,本件使途基準に合致するものと認められる。
(イ)資料作成費
コピー代計5983円《A6,11,16,24,28,34,39,
44,57,64,69,76番。うち790円《A76番》について
は,請求書の記載(甲A1〔25番〕)に照らし,平成18年3月に
支出の原因が生じたと認められる。》,インクカートリッジ代計1万
0754円《A17,41,70番》及びコピー用紙代1480円《A
63番》は,県議会の議員控室における活動に伴って,県庁舎1階に
設置された各会派共同使用のためのコピー機及びAの議員控室(丙A
6の1・2)に設置されたプリンタを使用したことにより生じた費用
であることが認められるところ(丙A2〔5頁〕,弁論の全趣旨),
平成17年度当時唯一の所属議員であったMにおいて選挙区であるb
市に後援会事務所を設けていたものの(証人P〔69項〕),上記議員
控室において,事務職員として雇用されたPが,マスコミ対応等必ず
しも調査研究活動とはいえない職務も行っていたこと(丙A5〔3
頁〕,証人P〔36,37,132∼136項〕。Pは,調査研究に関
することのみマスコミ取材に対応していたと供述するが(159項),
採用できない。)からすれば,Aが上記議員控室において専ら調査研究
活動を行っていたとまでは認めることはできない。
そうすると,上記支出のうち,会派による県政に関する調査研究で
ない活動のためにされた部分は本件使途基準に合致しないものと認め
られる。もっとも,実際上,会派の行う調査研究活動のためにされた
支出部分とそうでない支出部分とを明確に区分することは困難である
から,普通地方公共団体の議会の議員の地位,権限及び職務内容等に
鑑み,条理上,会派による県政に関する調査研究活動のための支出部
分は2分の1であり,その余は本件使途基準に合致しない支出と認め
るのが相当である。
以上によれば,上記支出額計1万8217円の2分の1の限度で調
査研究に資するため必要な経費に当たるものとして,本件使途基準に
合致すると認められる。
そうすると,違法な支出は9108円(1円未満切り捨て。以下同
じ。)となる(以下,違法な支出につき,単に【違法な支出9108
円】のように記載する。)。
(ウ)資料購入費
a書籍代《A56番》
甲A1〔81∼84番〕,丙A2〔7頁〕及び弁論の全趣旨によ
れば,「c幻燈譜」及び「c発にっぽん村へ」は,cの地域振興に
関する書籍であると認められるところ,納品書の宛名が「(P)様」
となっている一方で,請求書は「A」宛であり,かつ,領収書は「Aa
県議団」宛となっていることに照らせば(甲A1〔82∼84
番〕),MやPの個人的購入であると認めることはできない。した
がって,上記各書籍の購入費は,会派の調査研究に資するため必要
な経費として,本件使途基準に合致すると認めるのが相当である。
b新聞購読料《A18,22,33,50∼52,77∼79番》
(a)「しんぶんQ」・「a民報」購読料
甲A1〔17∼19番等〕,丙A2〔5頁〕及び弁論の全趣旨
によれば,Mは自宅において「しんぶんQ」及び「a民報」を購入
していたほか,政務調査費を使ってAの議員控室用に各1部ずつ
を購入していたことが認められるところ,これらがMの所属する
Aの機関誌であることを考慮しても,Mの個人的購入であるとか
政党への経済的支援であるとまでは認められない。したがって,
「しんぶんQ」及び「a民報」購読料は,本件使途基準に合致する
支出であると認められる。
(b)全国・地方一般紙,「R新聞」,「S新聞」購読料
甲A1〔21∼23番等〕,丙A2〔6頁〕によれば,全国及
び地方一般紙のほか,「R新聞」及び「S新聞」の購読料として支
出されたことが認められるが,これらはいずれも会派の調査研究
に資するために必要な経費に当たるというべきであるから,本件
使途基準に合致すると認められる。
cパンフ資料購入費《A54番》
パンフ資料購入費1000円は,a県受託事業男女共同参画講座事
務局から,「やさしく学ぼう女性の権利女性差別撤廃条約と選択
議定書」2部を購入する経費であるところ,同書に女性差別撤廃条
約の成立経緯や同条約の解説等が記載されていると認められること
(甲A1〔89番〕,丙A7)からすれば,会派による女性差別問
題に関する県政についての調査研究に資するため必要な経費に当た
るということができるうえ,必要部数が1部に限るとまで認めるこ
とはできないから,上記の購入費用は,本件使途基準に合致する支
出であると認められる。
d「a生活と健康を守る会新聞」・「T」購読料《A53,71番》
甲A1〔38,39,95,96番〕,丙A2〔6頁〕及び弁論
の全趣旨によれば,「a生活と健康を守る会新聞」には,社会福祉の
分野の記事が多く掲載されていること,「T」が,障がい者関係者団
体である「U」が発行する雑誌であり,障がい者関係の記事が掲載さ
れていることが認められるから,これらの購入費用は,貧困者に対
する社会保障や身体障がい者に対する支援政策に関する調査研究に
資するために必要な経費といえる。原告らは,これらを発行する団
体がAの支援する団体であるとか,領収証(甲A1〔96番〕)の
宛先が「M県議様」となっていると主張するが,そうであるとして
も,上記認定に照らせば,上記費用が上記団体に対する援助である
とかMの個人的な目的によるものとは認め難く採用できない。
したがって,上記支出は,本件使途基準に合致すると認めるのが
相当である。
(エ)広報費
aウェブサイト利用料《A12番》
被告及びAは,会派の調査研究活動や議会活動等をウェブサイト
に掲載したと主張し,証人Pはほぼ同旨の証言をする(証人P〔26
項〕。丙A2〔7頁〕も同旨)が,これを裏付ける的確な証拠はな
く,採用できず,他にウェブサイトの内容を認めるに足りる証拠は
ない。したがって,上記支出は,本件使途基準に合致するとは認め
られない。
【違法な支出4095円】
b議会報告(県議団ニュース)印刷代《A37,80番》
丙A2〔7頁〕・A3及び弁論の全趣旨によれば,県議団ニュー
スは,表題が「Aa県議団ニュース」であり,表面の約半分が視察等
の議会活動報告,裏面の大半が議会における質問や姿勢に関する記
事であることが認められる。そうすると,表面の下4分の1弱の範
囲にMの意見ないし感想が記載されていることを考慮しても,県議
団ニュースは,会派の行う議会活動等の広報活動として発行された
ものというべきである。また,平成18年4月27日付けの478
0円の支出《A80番,甲A1〔12番〕》は,その時期に照らし,
支出原因は同年3月までにあったものと認められる。
したがって,県議団ニュース印刷代25万6780円は,本件使
途基準に合致すると認めるのが相当である。
(オ)事務費
a通信運搬費,庁舎等管理費・使用料,文具購入費《A1,7,13,
19,25,29,35,40,42,46,47,58,62,
74,81,83番》
甲A1〔3番等〕,丙A2〔7,8頁〕,証人P及び弁論の全趣
旨によれば,通信運搬費9万8447円,庁舎等管理費・使用料6
万8725円及び文具購入費1581円(消臭プラグタバコ用付替
マリンソープ(甲A1〔131番〕)もその目的,額に照らし,含
める。)は,いずれも議員控室での活動に付随して生じた経費であ
ると認められるところ,前記のとおり議員控室での調査研究活動の
割合は2分の1と認めるのが相当であるから,上記支出額の2分の
1の限度で調査研究活動に資するため必要な経費に当たるというこ
とができる。そうすると,上記支出額の合計16万8753円を2
分の1で按分した限りで本件使途基準に合致すると認められる。な
お,庁舎等使用料3万6401円《A1番》は,平成16年度の分で
あるが(甲A1〔247頁〕),原告らは2分の1の限度で返還を
求めているのみであるから,上記判断を左右しない。
【違法な支出8万4376円】
b名刺代《A4番》
名刺代4000円は,Aの議員控室において,事務職員として雇用された
Pの名刺であり,紙面上に議員控室の連絡先とともに「県政に対するご
意見・ご要望をお寄せ下さい」と記載されていることが認められるが
(甲A1〔235∼238番,1枚目の239番〕,丙A4),Pの活
動が,上記のとおり,必ずしも調査研究活動のみであったとは認め難
いことに照らせば,条理に基づき,その2分の1の限度で本件使途基
準に合致すると認めるのが相当である。
【違法な支出2000円】
(カ)人件費《A2,3,8,9,10,14,15,20,21,26,
27,30,31,36,38,43,45,48,49,59∼6
1,68,72,73,82,84番》
丙A2及び弁論の全趣旨によれば,給与・賞与,社会保険料等の人
件費計305万5978円(いずれも,平成18年3月までの勤務分
であると認められる。)は,Aの議員控室において補助職員としてP
を雇用することによって生じたものであると認められるところ,前記
のとおり議員控室での活動のうち政務調査活動の割合は2分の1であ
ったとするのが相当であるから,上記支出額もこれに対応して按分し
た額が政務調査費をもって充てることができるものと考えられる。し
たがって,上記支出額の2分の1である152万7989円の限度で
本件使途基準に合致すると認める。
【違法な支出152万7989円】
(キ)小括
以上によれば,Aが政務調査費から支出した363万0756円(原
告らが返還を求めていない分を含む。)のうち,違法な支出額は合計
162万7568円である。
イBについて
(ア)使途内規の定め
Bは,本件使途基準に基づいて「a県政務調査費使途基準に基づく内
規」(丙B1)を定めたことが認められる(丙B28〔3頁以下〕,
証人V〔13項以下〕)。その内容は大要次のとおりである。
a議員活動費
(a)調査研究活動費
会派又は会派が認めた県政推進についての課題を調査研究する
ために要する経費,会派で行う政策研究に要する委託経費(後記
(b)を除く。)で,次の基準による。なお,予算の都合により打ち
切ることができる。
(県内)
8キロメートル未満(往復移動距離。以下同じ。)3000

8∼25キロメートル未満5000円
25∼50キロメートル未満7000円
50∼100キロメートル未満1万0000円
100∼150キロメートル未満1万1000

150∼200キロメートル未満1万2000

(県外)
県の旅費規程により計算した額
(b)通信連絡費
会派から委託された調査研究活動に必要な電話代,FAX料及
びインターネット使用料の経費等毎月3
万円
b会派で直接使用する費用
(a)共通費
①会派が雇用する職員の人件費必要な

②会派が使用する消耗品,備品の購入代,印刷費用,会派の事
務所の維持に必要な庁舎使用料,光熱水費
(b)研修費・会議費
①56分勉強会必要な

②その他の研修・会議必要な

cその他の政務調査活動
その他必要な経費は議員団長が決定する。
(イ)調査研究費
a調査研究活動費《B1∼6,8∼13,22∼27,30∼35,
38∼55,57∼62,64∼81,83∼88番》
Bは,各所属議員に対し,上記使途内規a(a)の支給基準に従って,
「調査研究活動費」(別紙支出一覧表における「○○議員調査研究
費等名目手当」の一部である。)として計937万8000円を支
給したものと認められるところ(甲B1〔2頁等〕,丙B1),上
記支給基準は,a県議会議員の議員報酬及び費用弁償条例(平成20
年条例第23号による改正前のもの。以下,単に「弁償条例」とい
い,特記しないときは,同改正前のものを指す。)上,議員の旅費
は職員等の旅費に関する条例(丙E50)で規定する副知事相当の
額であり(弁償条例8条1項),本会議や委員会に出席する際の旅
費については,往復の路程が16キロメートル未満は5000円で
あって,16キロメートル以上は,鉄道賃,船賃及び車賃に500
0円を加算した額とする制度となっていた(同条2項。丙E49の
1・2)ことに加え,上記支給をもって充てられるものが必ずしも
移動旅費に限られないことに照らせば,不合理とまではいえない。
しかし,「旅費請求書」(甲B1〔3頁等〕)には各用務地での
活動目的や内容等が一切記載されておらず,他に調査研究活動との
関連性を裏付ける証拠がないうえ,これを積極的に補足する説明も
ないことからすれば,上記支出額すべてについて直ちに本件使途基
準に合致するものと認めることはできない。
もっとも,Bは,平成20年度における政務調査費の支出状況に関
する証拠を提出するところ,「調査研究活動費」に対応する平成2
0年度の支出(平成17年度の6名のうち,Bに加入した5名分)は,
所属議員の調査研究に伴って支出された「調査研究費」,「研修
費」,「会議費」,「資料購入費」,「広報費」,「事務費」,
「事務所費」及び「人件費」であると認められるところ(丙B18
∼22),まず「調査研究費」のうち「政務調査費支払証明書(旅
費用)」に記載のある旅費の支出は,その支給基準が弁償条例(現
行条例)8条1項ただし書に規定するところと同額の1キロメート
ル当たり37円とされているうえ,同証明書の記載から認められる
各用務地における活動内容はいずれも会派の調査研究に関するもの
であるといえるから,すべて適法な支出であると認められる。また,
その他の費用についても,領収証に基づいて実費が支給されており,
その使途も,名刺代合計3万8850円(丙B26〔6,34
頁〕)を除き,いずれも会派の行う調査研究活動に関連し,概ね按
分された金額が計上されているものと認められる(丙B23∼2
7)。したがって,平成20年度における上記支出のうち,政務調
査費からの支出合計582万4034円(丙B18∼22の第1の
2の各合計欄の下段の合計参照)につき,名刺代(政務調査費から
の支出額3万8850円)を除く578万5184円の支出は適法
である。
以上に加え,平成20年度当時における使途基準は本件使途基準
と実質的に異ならないところ(丙A8〔34∼36頁〕。使途項目
として「事務所費」が新たに明記されたのみである。),平成17
年度と比較して新たな会派を結成したというものの,会派が行う調
査研究活動に大きな変化が生ずるとは通常考え難いうえ,一般に平
成17年度よりも政務調査費からの支出が謙抑的になったこと(甲
39∼42,丙B18∼22,弁論の全趣旨),平成17年度のB
に所属していた議員は6名なのに対し,平成20年度分の資料を提
出したのは5名であることなどに照らせば,平成20年度において
適法と認められる上記支出額の5分の6をもって,平成17年度に
おける実際の支出額のうち本件使途基準に合致する額であると認め
るのが相当である。
すなわち,平成17年度に「調査研究活動費」として支出された
額のうち694万2220.8円は,本件使途基準に合致すると認
められる。
【違法な支出243万5779円】
b通信連絡費(支出番号は上記aと同じ。)
Bは,上記使途内規a(b)に基づき,「通信連絡費」の名目で(別
紙支出一覧表における「○○議員調査研究費等名目手当」名目の支
出の一部である。),各所属議員それぞれに対し,議員1人当たり
月額3万円ずつを支給したことが認められる(甲B1〔2頁等〕,
丙B1。甲B1においては,電話代名目で請求されている。)。
しかし,本件条例8条を受けて本件規程4条には政務調査費から
の支出項目とその内容を具体的に定めた本件使途基準が規定されて
いること,本件規程5条が政務調査費の支出を裏付ける証拠書類等
の整理保管を義務づけていること,本件条例11条において,知事
は交付された政務調査費のうち支出額を控除した残余につき返還を
請求できるとされていることなどに照らせば,政務調査費からの支
出は,実際に調査研究に資するため必要な経費の一部として支出さ
れた実額についてのみ許容する趣旨であることは明らかであり,所
属議員に対し一律に定額支給すること(以下「一律支給」とい
う。)は,その支給額が実額を上回った場合に精算の取扱いがなさ
れるなどといった事情のない限り,原則として許されないと解され
る。
他方で,そのような精算の取扱いがなされていなくても,証拠書
類の収集等の事務手続が煩雑化する場合や,支出をしても領収書が
発行されないか,政務調査以外の目的での支出も含まれているなど
実額の把握が困難な場合においては,社会通念上実額を上回るもの
ではないといえる相当な額に限って,各議員に対して一律に定額を
支給することも許されると解するのが相当である。
しかるところ,電話,FAX及びインターネット等は,通常様々
な用途に用いられ,政務調査に要した実額を把握することが容易と
はいい難いため,各所属議員に対して,実額の支給ではなく一律支
給とすること自体には合理性があるとはいえ,支給されていた月額
3万円が,社会通念上実額を上回るものでない額であることを裏付
ける的確な証拠は見当たらないから,これを直ちに本件使途基準に
合致する支出であると認めることはできない。
もっとも,平成20年度において所属議員5名に対する「通信運
搬費」(上記「通信連絡費」に対応すると認められる。)として支
出された計129万3091円は,実際に支出した経費のうち,電
話,FAX,インターネット使用料等について,利用目的や活動内
容に照らし2分の1の限度で政務調査費から支出されたものである
ことが認められ(丙B23∼27),いずれも調査研究に資するた
めに必要な経費として適法と認められる。
そうすると,平成17年度の「通信連絡費」計216万円は,1
29万3091円の5分の6のある155万1709.2円の限度
で本件使途基準に合致すると認めるのが相当である。
【違法な支出60万8290円】
c県政報告会横断幕作成費《B7番》
県政報告会が県政の調査研究活動に含まれるとしても,それに用
いられた横断幕が直ちに調査研究に資するものと認めることはでき
ないところ,被告及びBは,いかなる横断幕であったかを示す証拠
を提出せず,これについての補足説明もしないのであるから,政務
調査との関連性は不明確であるといわざるを得ない。したがって,
上記横断幕の作成費として支出された2万4150円は,本件使途
基準に合致しない支出であると認める。
【違法な支出2万4150円】
d各種視察及び調査時の日当・土産・写真現像代
「集中豪雨被災箇所現地調査旅費(d町・e市f町)」8660円
《B14番》,その際に撮影した写真の現像代2750円《B17番。
甲B1〔49,50頁〕》及び上記調査時の移動に要したジャンボ
タクシー代5万9220円のうち8460円《B20番》は,甲B1
〔42∼44頁〕に照らし,社会通念上,いずれも調査研究に資す
るため必要な経費に当たると認められる。原告らは,上記ジャンボ
タクシー代につき,国会議員が上記調査に参加していることから,
同議員の分8460円が違法であると主張するが,いわゆるジャン
ボタクシーの代金であることや,Bの所属議員5人及び補助者1人が
同行していたことに照らせば,必要経費に変わりはなかったものと
認められるから,上記額の限りで本件使途基準に合致しないとはい
えない。
また,「Wダム・Xダム・Y園調査」に係る旅費8660円《B2
8番》,その際に撮影した写真の現像代1600円及び2572円
《B19,29番。甲B1〔53,54,79,80頁。後者には前
記視察の際の分を含む。〕》,台風14号被害調査旅費1万356
0円《B36番》,並びにZに対する出張調査旅費7900円のうち
原告らが返還を求めている電車運賃6000円及び雑費1200円
《B63番》についても,甲B1〔76,77,101∼105,1
90∼193頁〕に照らし,同様と認められる。
したがって,上記支出は,いずれも本件使途基準に合致するもの
と認めるのが相当である。
さらに,土産代として支出された計1万2390円《B15,16,
18番》は,上記各視察の際に視察先への土産を購入した費用であ
ると認められるところ,社会的儀礼として相当な範囲内の支出であ
るといえるから,本件使途基準に合致すると認められる。
e自治研センター会費《B56番》
丙B28〔4,5頁〕,証人V〔47,48項〕及び弁論の全趣旨
によれば,a県地方自治研究センターは,自治体政策の調査研究を行
う組織であり,その会員は,会誌や,研究会等への参加を通じて,
情報提供を受けることができるものと認められる。したがって同セ
ンターに対する会費4万2315円は,自治体政策に関する調査研
究のために必要な経費であって,本件使途基準に合致すると認めら
れる。
fA1住宅地図購入費《B82番》
Bは,会派からの委託に基づき,各議員が県政報告会等を開催する
などの調査研究活動をしていたと認められるところ(弁論の全趣
旨),上記の活動目的に照らせば,住宅地図は,調査研究活動をす
るに当たって必要なものということができるほか,その購入部数(a
市の地図はA4版と合わせて7冊ずつ購入(甲B1〔254〕))
も不当であるということはできない。したがって,A1住宅地図購入
費52万2683円は,本件使途基準に合致すると認める。
なお,上記支出は,平成18年4月10日に支出されているものの,
支出の時期に照らせば,購入したのは平成17年度であったと認め
るのが相当であるから,この点は,上記判断を左右しない。
(ウ)研修費
a56分勉強会負担金《B91,93,95,103番》
前記ア(ア)aのとおり,56分勉強会は調査研究に資するものであ
ると認められるため,負担金計7万2678円は本件使途基準に合
致するものと認められる。
b各種研修会等参加旅費及び土産代
後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,「自治体議員全国学習会」
《B89番》(介護保険制度改革等の学習会,丙B3の1・2)の出
席旅費6万9720円,「B1センター研修講座」《B90番》(丙
B4の1∼3)参加出席旅費11万4840円,「2005年度自
治体財政分析講座」《B92番》(丙B5の1・2)出席旅費8万7
680円,「a県自治体政策調査研究協議会(g・h研修)視察」(農
業関係施設等の視察調査,丙B7の1∼6)旅費38万3880円
《B98番》,同視察先への手土産代1万1340円《B96番》,
「2006年度地方財政セミナー」(政府予算と地方財政計画の分
析を行うセミナー,丙B9の1・2)出席旅費7万5780円《B1
00番》,「平成17年度a県児童養護施設職員合同研修会」(少年
犯罪や児童虐待等に関する研修会,甲B1〔301,302頁〕,
丙B10の1・2)参加費他1万1000円のうち原告らが違法で
あると主張する宿泊費・交流会費8000円《B101番》,「全国
地方自治研究センター交流集会」(市町村合併後の町づくりに関す
る講演討論会,丙B11の1・2)出席旅費3万5020円《B10
4番》は,いずれも調査研究に資する費用として本件使途基準に合
致すると認められる。
また,「2005年度自治体議員団九ブロ会議」出席旅費5万1
720円《B94番》は,同会議において,総選挙や党勢拡大運動に
ついての報告がされているものの,その報告ないし協議の対象の大
半が,各県における現状等に充てられていること(丙B6の3〔2
頁〕)からすれば,会派の調査研究活動の一環であると評価しうる。
したがって,この支出は,本件使途基準に合致すると認める。
(エ)会議費
丙B28〔6頁〕,証人V〔59項〕,後掲各証拠及び弁論の全趣旨
によれば,「会派検討会議(議員団会議)」(議員による調査研究結
果の報告等,丙B12の1∼12,B28〔1頁〕)旅費計33万2
000円《B105,107,108∼113,115,117,12
1番》,第2・5・6回広報委員会会議(広報事業の実施計画や議員
と語ろうini開催について議論,丙B13の1∼3)出席旅費計90
00円《B106,114,119番》,議員定数問題調査会会議(議
員定数削減について議論,丙B15の1∼3)出席旅費4万5000
円《B116,118番,120》,議員と語ろうini(定例会の概要
説明及び商店街振興等に関する事例発表,丙B16の1∼3)出席旅
費7000円《B124番》は,社会通念上,会派所属議員の会議であ
るか,会派として所属議員の一部に出席を委ねたものであると認めら
れるし,各会議の議題が調査研究活動との関連性を有することに加え
て,旅費支給基準として準用している前記使途内規a(a)が前記のとお
り不合理とまではいえないこと等に照らせば,いずれも本件使途基準
に合致すると認めるのが相当である。
しかし,議会対策会議旅費計6万円《B122,123番。丙B1
4》は,会派が行った会議であることや,調査研究活動との関連性を
裏付ける証拠がなく,またこれについて積極的に補足する説明もなさ
れていないから,本件使途基準に合致しないものと認める。
【違法な支出6万円】
(オ)資料作成費
aコピー代《B125∼128,130∼133,135∼138
番》
丙A2〔5頁〕,B1〔350頁等〕及び弁論の全趣旨によれば,
コピー代計8万0259円は,議員控室における活動に伴って県庁
舎1階に設置されたコピー機を使用したことにより生じた費用であ
ると認められるところ,後援会事務所を兼ねて別途事務所を設けて
いる議員がいることを考慮しても(証人V〔103∼105項〕),
社会通念上,議員控室において専ら調査研究活動が行われていたと
まで認めることはできず,これに反する証拠(丙B28〔6頁〕,
証人V〔62項〕)は採用できない。そして,普通地方公共団体の議
会の議員の地位,権限及び職務内容等に鑑みると,上記議員控室が
県政に関する調査研究活動に供される割合は2分の1と認めるのが
相当であるから,上記支出額の2分の1の限度で調査研究に必要な
経費に当たり,本件使途基準に合致すると認められる。
【違法な支出4万0129円】
b農林統計協会費《B129番》
甲B3,丙B28〔6頁〕,証人V〔60・61項〕及び弁論の全
趣旨によれば,農林統計協会費として支出された1万5210円は,
農林業に関する調査研究に資するものとして本件使途基準に合致す
る支出であると認められる。
c手帳代《B134番》
手帳代3万7590円は,甲B1〔368頁〕によれば,県議会
議員の用いる手帳1冊の購入費であると認められることや,用途及
び購入部数に照らし,会派の調査研究に資するため必要な経費に当
たるから,本件使途基準に合致すると認められる。
(カ)資料購入費
a書籍代
甲B1〔389,408,409,463,494,495,5
05頁〕,丙B28〔6頁以下〕及び弁論の全趣旨によれば,「全
国同和人権促進会」に振り込まれた5万2500円《B144番》は,
人権政策に関する文献の購入費であって,会派の調査研究活動に資
するものと認められるほか,「C1」計3万2210円《B154,2
06番》,「D1」3セット計12600円《B185番》,「E1」
7冊計1万4000円のうち原告らが返還を求めている1万200
0円《B211番》,「F1」7281円《B222番》の各購入費は,
いずれも会派の調査研究活動に資するものとして本件使途基準に合
致するものと認められる。上記のうち「C1」については,領収書の
宛先が議員である「G1」名であると認められるが(甲B1〔409,
495頁〕),このことは上記認定を左右しない。また,「F1」の
購入は,請求書の日付(甲B1〔525頁〕)によれば,平成17
年度中にされたものと認められる。なお,C1のうちB154番は,
甲B1〔409頁〕によれば,平成16年度の購入と認められるが,
原告らはこの点の違法を主張をしていない。
b新聞雑誌購読料
甲B1〔387頁等〕及び弁論の全趣旨によれば,「H1新聞」及
び「I1」の購読料並びに議会開催時の一般紙の購読料計18万550
0円《B143,155,161,162,168,172,176,
184,192∼194,207,213,220,224番》,
「J1新聞」購読料1万円《B191番》,「K1」購読料2000円
《B223番》(3月分の新聞代は,支出原因が平成17年度である
ことが明らかであるほか,M1についても,支出命令書添付書面の記
載(甲B1〔528頁〕)や支出時期に照らし,同年度中の支出で
あると認められる。)は,いずれも調査研究活動に資するため必要
な経費として本件使途基準に合致するものと認められる。原告らは,
議会開催中の新聞購読は調査研究活動といえないと主張するが,直
ちにそのようにはいえないし,また,J1新聞の購読は支持団体に対
する寄付と主張するが,これを認めるに足りる証拠はない。
(キ)広報費《B225∼232番》
丙B17の1∼4及び弁論の全趣旨によれば,広報費計56万59
62円は,いずれも会派の会報を印刷・送付するための費用であると
認められるところ,同会報には議会総括や委員会総括のほか,議会に
おける所属議員による一般質問や答弁等が記載されており,これによ
って会派の議会活動や政策が明らかになっているものと認められるか
ら,上記支出は,本件使途基準に合致すると認められる。
(ク)事務費
a算定基礎届事務手続費用《B253番》
甲B1〔576頁〕及び弁論の全趣旨によれば,算定基礎届事務
手続費用として支出された500円は,議員控室で雇用した事務職
員の算定基礎届に係る手続履践に要した交通費であると認められる
ところ,後記((ケ))のとおり,2分の1である250円の限度で本
件使途基準に合致すると認められる。
【違法な支出250円】
b切手代《B233,236,261,263,264,268,2
70,273,278,279,283∼286,308∼310,
313番》
原告らが違法であると主張する切手代(上記各番号のもの。ただ
し,B278,286番は,支出のうち2分の1のみを違法と主張す
る。)のうち,11月4日の切手10枚の購入《B286番》につい
ては,社会通念上,調査研究活動に当たって書類等の郵送の必要が
生ずるものというべきであるから,会派の調査研究活動に係る経費
と認められる。
一方,他の63万6015円の支出は,いずれも一度に50通を
超える郵便物を発送するものであるか,多量の切手を購入するもの
であるから,調査研究活動との具体的な関連性が認められる必要が
ある。しかし,この点につき,Vは,県民への議会報告や広報に関す
る費用であると陳述書に記載するが(丙B28〔8頁〕),上記(キ)
のとおり,会報の送料は広報費として支出されており,他にいかな
る報告や広報を行ったのかについて証拠がないことに照らし,たや
すく採用し難い。そして,他に会派の行う調査研究活動との関連性
をうかがわせる証拠はないから,本件使途基準に合致しない支出で
あると認められる(なお,8月9日の切手の購入《B278番》につ
いては,原告らが返還を求める2分の1の限りで認める。)。
【違法な支出63万6015円】
c文具代,インク代,インターネット接続料,電話料金,書庫代,
庁舎管理費《B238∼241,245,246,248,249,
254∼257,265,269,271,275∼277,28
9∼292,296∼298,301∼305,311,312,
314,315,318∼320,324∼328,330番》
文具代,インク代,インターネット接続料,電話料金,書庫代,
庁舎管理費(なお,平成18年4月に支出されたもの《B326∼3
28,330番》は,甲B1〔685,687,689,693
頁〕によれば,いずれも平成17年度中の支出であると認められ
る。)は,社会通念上,Bの所属議員等による活動に付随して支出さ
れたものであると認められるものの,上記活動が専ら会派ないし会
派から委託された調査研究活動であるとまで認めることはできない。
もっとも,普通地方公共団体の議会の議員の地位,権限及び職務内
容等に鑑みると,調査研究活動に供された割合は2分の1であると
認めるのが相当である。したがって,上記支出額59万0323円
の2分の1である29万5161.5円の限度で本件使途基準に合
致すると認められる。
【違法な支出29万5161円】
dデジタルカメラ購入費《B299番》
デジタルカメラ購入費14万0710円については,デジタルカ
メラが調査結果を保存し,これを報告するなどする際に利用しうる
ことに照らせば,調査研究に資するため必要な経費であると認めら
れる。したがって,上記支出は,本件使途基準に合致すると認める。
eウェブサイト管理料《B247番》
ウェブサイト管理料12万円につき,被告及びBは,ウェブサイ
ト上で議会報告等を行ったと主張し,これに副う証拠(丙B28
〔8頁〕)もあるが,これを裏付ける的確な証拠はなく,たやすく
採用できないうえ,他にウェブサイトの内容を認めるに足りる証拠
はない。
したがって,上記支出は,本件使途基準に合致しないと認める。
【違法な支出12万円】
fデジタルカラー複合機購入費《B329番》
甲B1〔691頁〕及び弁論の全趣旨によれば,デジタルカラー
複合機購入費用98万7735円(振込手数料を含む。)は,平成
17年度中に納入されたものであり,かつ,Bの議員控室で使用に供
されたものであると認められるところ,前記のとおり議員控室が県
政に関する調査研究活動に供される割合は2分の1であると認める
のが相当であるから,上記支出額の2分の1については政務調査費
をもって充てることが許される。したがって,上記支出額の2分の
1である49万3867.5円の限度で調査研究に必要な経費に当
たり,本件使途基準に合致すると認められる。なお,原告らは,こ
の購入が政務調査費を消化する目的であると主張するが,これを認
めるに足りる証拠はない。
【違法な支出49万3867円】
(ケ)人件費《B331∼359番》
甲B1〔694頁以下〕及び弁論の全趣旨によれば,人件費計33
1万0708円(平成18年4月21日の社会保険料2万1508円
《B359番》については,同年3月分の支出であるから(甲B1〔7
76頁〕),平成17年度中の支出原因があったというべきであ
る。)は,Bの議員控室において事務職員を雇用したことにより生じた
ものであると認められるところ,前記のとおり議員控室が県政に関す
る調査研究活動に供される割合は2分の1であると認めるのが相当で
あるから,上記支出額の2分の1については政務調査費をもって充て
ることが許される。したがって,上記支出額の2分の1である165
万5354円の限度で調査研究に必要な経費に当たり,本件使途基準
に合致すると認められる。
【違法な支出165万5354円】
(コ)小括
以上によれば,Bが政務調査費から支出した2126万7854円の
うち,違法な支出額は合計636万8995円である。
ウCについて
(ア)使途内規の定め
Cは,本件使途基準に基づいて「a県議会・C「県政務調査費」使途
内規」(丙C1)を定めたことが認められる。その内容は大要次のと
おりである。(丙C9,証人L〔29項以下〕,弁論の全趣旨)
a議員活動費
(a)調査研究活動費及び会議出席旅費
会派又は会派が認めた県政推進についての課題を調査研究する
ために要する経費(下記(b)(c)(d)を除く。)
(県内)
8キロメートル未満(片道移動距離。以下同じ。)3000

8∼25キロメートル未満5000

25∼50キロメートル未満7000

50∼100キロメートル未満1万0000

100∼150キロメートル未満1万1000

150∼200キロメートル未満1万2000

用務の都合により宿泊する場合の宿泊料1万3300

(b)資料作成費
会派又は会派が認めた政策推進に必要な資料の印刷代,原稿料,
写真現像焼付代及びコピー代毎月1万

(c)資料購入費
会派又は会派が認めた政策推進に必要な図書,雑誌,新聞,ビ
デオテープ及びCD−ROMの購入代毎月2
万円
(d)事務費
県政調査研究活動に必要な電話代,FAX代及びインターネッ
ト使用料毎月3
万円
b会派が直接使用する費用
(a)共通費
会派が使用する消耗品,備品の購入代及び印刷費用(議会事務
局コピー代,C広報印刷費用)
(b)研修費・会議費
会派が開催する研修会及び会議並びに県議会主催の56分勉強
会に必要な経費
c経費は精算払いとする。
dその他必要な経費は会長(議員団長)が決定する。
(イ)調査研究費《C1∼4,9∼12,17∼20.27∼30,40
∼43,51∼54,65∼68,74∼77,84∼87,99∼
102,110∼113,119∼122番》
Cは,各所属議員に対し,上記使途内規a(a)の支給基準に従って,
「調査研究活動費」として合計1013万8000円を支給したもの
である。
もっとも,上記支給基準は,弁償条例に定める旅費に照らして不合
理とまではいえないものの,「県内調査研究活動費請求・領収書」
(甲C1〔3頁等〕)には各用務地での活動目的や内容等が一切記載
されておらず,他に調査研究活動との関連性を裏付ける証拠がないう
え,これを補足する説明もないことからすれば,同請求・領収書記載
の支出額すべてについて直ちに本件使途基準に合致するものであった
と認めることはできない。
他方,上記「調査研究活動費」に対応する平成20年度当時の支出
(所属議員の調査研究に伴って支出された「調査研究費」,「広報
費」,「事務所費」及び「人件費」。なお,平成17年度当時の4名
の議員のうち,Bに参加しなかった高村議員の分を除いた者の分(証人
L〔227,228頁〕)である。)計543万4401円(丙C3∼
5)についてみると,まず,同年度に「調査研究費」として支出され
た264万0198円は,「政務調査費支払証明書(旅費用)」(丙
C6〔1頁等〕)に記載された支出は,その支給基準が弁償条例(現
行条例)の規定するところと同額の1キロメートル当たり37円とさ
れているうえ,同証明書や領収書添付用紙,調査研究報告書(丙C6
〔1∼55頁〕,C7〔1∼21頁〕,C8〔1∼17頁〕)上認め
られる各用務地での活動内容に照らせば,すべて会派の調査研究に必
要な費用であると認めることができる。また,丙C6∼8によれば,
「広報費」,「事務所費」及び「人件費」として政務調査費から支出
された合計279万4203円(丙C3∼5参照)についても,調査
研究活動と無関係のものは見当たらないうえ,事務所費及び人件費に
ついては事務所の設置と事務職員の雇用によって生じた経費であるこ
とから議員の活動内容に照らして概ね2分の1の限度で政務調査費か
ら支出されているものであって,前記のとおり,平成20年度の支出
が謙抑的であったことなどに照らせば,いずれも調査研究に資するた
め必要な経費であると認められる。そうすると,平成20年度におけ
る上記支出の合計543万4401円の支出は適法である。
以上を前提として,平成17年度の支出の適法性を合理的に推認す
れば,平成17年度に調査研究活動費として支出された1013万8
000円は,543万4401円の3分の4である724万5868
円の限度で本件使途基準に合致すると認められる。
【違法な支出289万2132円】
(ウ)研修費
a56分勉強会負担金《C55,56,88,123番》
前記ア(ア)aのとおり,56分勉強会は調査研究に資するものであ
ると認められるから,負担金計4万8452円は本件使途基準に合
致するものと認められる。
b議会傍聴者弁当代《C31,57,58,124番》
丙C2の2〔3頁〕,C9〔6,7頁〕,証人L〔67∼69,1
27∼136,217項〕及び弁論の全趣旨によれば,議会の一般
質問傍聴者の弁当代計10万2450円は,議会傍聴者から意見を
聴取する機会における支出であると認められるから,会派の調査研
究活動に資する経費であり,支出額も社会通念上相当な範囲内とい
うことができるから,本件使途基準に合致するものと認められる。
これに対して,原告らは,議会を傍聴した後援会等の支持者に対
して弁当を振る舞っただけであり,調査研究活動との関連性はない
と主張するが,丙C2の2〔3頁〕,C9,証人L〔218,219
項〕に照らし,議会傍聴者の大半が議員の後援会員であったとは認
められず,他に上記主張事実を認めるに足りる証拠はないから,採
用できない。
(エ)会議費《C13,21,32,44,59,78,89,103,
114,125番》
「C会議」参加旅費22万9000円,「文教警察委員会行政視察」
参加旅費5000円,「商工労働委員会行政視察」参加旅費3000
円,「地方組織(機関)再編の説明会」旅費4万6000円,「議会
広報委員会」参加旅費3000円,「平成18年度予算説明会」参加
旅費3万6000円,「L1造成費説明会」参加旅費1万8000円,
「平成18年度予算(案)知事説明会」参加旅費1万8000円,
「会派代表者会」参加旅費1万円は,Cの使途内規a(a)に従って「会
議出席旅費」として計上し,これを支出したことが認められるところ
(甲C1〔21,35,54,76,98,132,150,174,
191,192,211頁〕,証人L〔168,214∼216項〕,
弁論の全趣旨),前記のとおり当該支給基準は不合理とまではいえな
いうえ,これらの会議の内容は,会派の行う調査研究活動との関連性
を有していると認められる。
以上からすれば,会議費として支出された合計36万8000円は,
すべて本件使途基準に合致すると認められる(なお,これらのうち「C
会議」を除くものは,いずれも本件使途基準にいう会議費に当たると
はいい難いが,会派の調査研究活動に関連する以上,上記判断を左右
しない。)。
(オ)資料作成費
a各所属議員に対する「資料作成費」定額支給分《C5,14,22,
33,45,60,69,79,90,104,115,126
番》
丙C9及び弁論の全趣旨によれば,Cは,上記使途内規a(b)に基
づき,各所属議員に対し,「資料作成費」の名目で議員一人当たり
月額1万円の資料作成費を支給していたことが認められる。
もっとも,事務手続の煩雑化を避けるため,一律支給制を採った
ことには合理性があるとしても,上記支給額が実額を上回るもので
ないと認めるに足りる的確な証拠はないから,直ちに全額を本件使
途基準に合致すると認めることはできない。
他方,前記と同様に,平成20年度において適法と認められる支
出額をもって,平成17年度に要した実額を合理的に推認できると
いうべきところ,同年度にCに所属していた議員につき,平成20
年度に「資料作成費」名目で支出された政務調査費は合計3万55
41円であり(丙C3∼5),これは視察等の際撮影した写真の現
像代等であって(丙C6〔56∼63頁〕,C7〔22頁〕),い
ずれも調査研究に資するため必要な経費であると認められる(平成
17年度の支出について一律支給のほか会派支出分もあることから,
個人支出分を比較すれば足りるというべきである。)。
以上によれば平成17年度における議員の「資料作成費」の支出
合計48万円は,3万5541円の3分の4である4万7388円
の限度で本件使途基準に合致すると認めるべきである。
【違法な支出43万2612円】
bコピー代及びコピー用紙代《C6,23,34,46,61,70,
92,93,105,106,116,127,128番》
丙C9〔8頁〕及び弁論の全趣旨によれば,コピー代計4187
円及びコピー用紙代246円(丙C9〔8頁〕によれば,原告らが
支出内容が不明と主張する246円《C105番》は,コピー用紙代
であると認められる。)は,いずれも県議会の議員控室での活動に
付随して生じた費用であると認められるところ,同議員控室で専ら
調査研究活動のみが行われていたとまでは認められず,社会通念上,
一般の議員活動等も行われていたと認められるから,全額を本件使
途基準に合致するものと認めることはできない。
もっとも,議員の権限及び職務の性質・内容等からすれば,社会
通念上2分の1の限度で調査研究活動に資する支出であったという
ことができるから,上記支出額の2分の1の限度で本件使途基準に
合致するものと認められる。
【違法な支出2216円】
c北欧視察旅行に関する写真代・報告書印刷代《C80,81,91
番》
北欧視察旅行の写真現像代や報告書印刷代として支出された12
万1906円は,県議会の視察研修として,C及びDの所属議員全
員(計7名)が,スウェーデン等の福祉や農業施策等を視察してき
た北欧視察旅行の際に撮影された写真の現像費用や,他の議員ない
し県民に配布し,報告会を開くための報告書の印刷費用であると認
められるところ(丙C2の3〔2頁〕,C9〔8頁〕,D8,D1
4〔5頁〕,証人L〔90∼93,157∼164項〕,証人K〔1
87∼201項〕),上記の視察内容及び支出目的に照らせば,福
祉や農業等に関する県政について会派が調査研究するのに資するも
のということができるから,本件使途基準に合致すると認めるのが
相当である。
(カ)資料購入費
a各所属議員に対する「資料購入費」定額支給分《C7,15,24,
35,47,62,71,82,94,107,117,129
番》
丙C9及び弁論の全趣旨によれば,Cは,各所属議員に対し,前記
使途内規a(c)に基づき,「資料購入費」として議員一人当たり月額
2万円を支給していたことが認められるところ,これが実額を上回
らないことを認めるに足りる証拠はない。
他方,平成17年度にCに所属していた議員につき,平成20年
度において「資料購入費」として政務調査費から支出されたのは計
6万5124円であるうえ(丙C3∼5),この支出はいずれも領
収証に基づき実費支給されたものであり,かつ,各議員により購入
された資料は新聞や書籍であって,それぞれが会派の調査研究活動
と無関係であるとまでは認め難いことに照らせば,すべて調査研究
に必要な経費であると認められる。
そうすると,平成17年度の支出額合計96万円は,6万512
4円の3分の4の限りで本件使途基準に合致すると認められる。
【違法な支出87万3168円】
b「M1新聞」購読料《C48,95,96,131番》
弁論の全趣旨によれば,平成17年度定例県議会用に全国地方一
般紙を購入し,その購読料として2万4830円を支出したことが
認められるところ,一般紙の通常の内容に照らし,会派の調査研究
活動に必要な経費であるということができるから,上記支出は,本
件使途基準に合致するものと認められる。
c書籍代《C130番》
原告らは,「E1」4冊の購入費8000円のうち,3冊分600
0円が違法な支出であると主張するが,Cの議員が当時4名であった
こと等を考慮すれば,社会通念上相当といえる範囲内であり,会派
の調査研究活動に必要な経費ということができるから,本件使途基
準に合致すると認められる。
(キ)広報費《C36,37,72,97,132番》
「C会報」印刷代56万7150円については,同会報が定例県議会
報告や視察調査の結果等を記載したものであると認められること(丙
C2の1∼4)からすれば,これによって県民に県政に関する情報を
提供することでこれに対する意見要望を聴取する目的を有すると認め
られるから,会派の調査研究活動に必要な経費として本件使途基準に
合致するものと認めるのが相当である。
(ク)事務費
a各所属議員に対する「事務費」定額支給分《C8,16,25,3
8,49,63,73,83,98,108,118,133番》
前記前提事実等⑶イ及び弁論の全趣旨によれば,Cは,各所属議員
に対し,前記使途内規a(d)に基づいて議員1人当たり月額3万円を
事務費として支給していたことが認められるものの,上記支給額が
実額を上回るものでないことを認めるに足りる証拠はないから,直
ちに全額について本件使途基準に合致すると認めることはできない。
もっとも,平成17年度にCに所属していた議員につき,平成2
0年度に事務費として政務調査費から支出されたのは計40万05
05円であるところ(丙C3∼5),これらは,いずれも領収証に
基づいて支出されているうえ,調査研究以外の目的で生じた経費を
含むといえるものについて,活動内容等に照らし2分の1の限度で
政務調査費から支出されていることが認められるから(丙C6〔1
28∼219頁〕,C7〔57∼60頁〕),すべて会派の調査研
究に必要な経費であると認められる。
そうすると,平成17年度において議員の「事務費」として支出
された合計144万円は,40万0505円の3分の4の限度で本
件使途基準に合致するものと認めるのが相当である。
【違法な支出90万5993円】
bコーヒー代《C26,39,50,64,109番》
甲C1〔43,44,68,85,105,183頁〕,C9
〔9頁〕によれば,コーヒー代1万3506円は,県議会内にある
議員控室において,県民らが来訪した際に提供されたコーヒーの費
用であると認められるところ,このような機会に照らせば,会派の
行う調査研究活動に当たって提供されたものであり,社会通念上相
当な額の支出であるということができる。したがって,この支出は,
本件使途基準に合致するものと認めるのが相当である。
(ケ)小括
以上によれば,Cが政務調査費から支出した1427万6727円の
うち,違法な支出額は合計510万6121円である。
エDについて
(ア)使途内規の定め
Dは,本件使途基準に基づいて「a県議会D「県政務調査費」使途内
規」(丙D1)を定めたことが認められる。その内容は大要次のとお
りである。(丙D14,証人K〔20項以下〕,弁論の全趣旨)
a議員活動費
(a)調査研究活動費及び会議出席旅費
会派又は会派が認めた政策推進についての課題を調査研究する
ために要する経費(下記(b)(c)(d)を除く。)
(県内)
8キロメートル未満(片道移動距離。以下同じ。)3000

8∼25キロメートル未満5000

25∼50キロメートル未満7000

50∼100キロメートル未満1万0000

100∼150キロメートル未満1万1000

150∼200キロメートル未満1万2000

(県外)
県の旅費規程により計算した額
(b)資料作成費
会派又は会派が認めた政策推進に必要な資料の印刷代,原稿料,
写真現像焼付代及びコピー代毎月1万

(c)資料購入費
会派又は会派が認めた政策推進に必要な図書,雑誌,新聞,ビ
デオテープ及びCD−ROM購入代毎月2
万円
(d)事務費
県政調査研究活動に必要な電話代,FAX代及びインターネッ
ト使用料毎月3
万円
b会派が直接使用する費用
(a)共通費
①会派が使用する消耗品,備品の購入代,印刷費用
②会派の事務所の維持に必要な庁舎使用料,光熱水費
(b)研修費,会議費
会派が開催する研修及び会議に必要な経費
①56分勉強会必要な

②その他の研修,会議必要な

c経費は精算払いとする。
dその他必要な経費は会長(議員団長)が決定する。
(イ)調査研究費《D1∼3,12∼14,20∼22,32∼34,5
1∼53,61∼63,71∼73,83∼85,96∼98,11
4∼116,123∼125,136∼138番》
前記前提事実等⑶イ及び弁論の全趣旨によれば,Dは,上記使途内規
a(a)の支給基準に従って,「調査研究活動費」として合計497万9
000円を政務調査費から支出したことが認められる。
もっとも,上記支給基準は,弁償条例に定める旅費支給基準に照ら
して不合理とまではいえないものの,「調査研究旅費請求・領収書」
(甲D1〔3頁等〕)には各用務地での活動目的や内容等が一切記載
されておらず,他に調査研究活動との関連性を裏付ける証拠がないう
え,その説明もないことからすれば,同請求・領収書記載の支出額す
べてについて直ちに本件使途基準に合致するものであったと認めるこ
とはできない。
他方,上記「調査研究活動費」に対応する平成20年度の支出(平
成17年度の所属議員3人のうちHに加入した2名分の調査研究に伴
う「調査研究費」,「事務所費」及び「人件費」がこれに当たると認
められる。)についてみると,まず,同年度に「調査研究費」として
支出された合計56万8102円(丙D10)については,支給基準
がa県議会議員の報酬及び費用条例(現行条例)と同額の1キロメート
ル当たり37円であることに加え,「政務調査費支払証明書(旅費
用)」や領収書の記載(丙D13〔1∼26頁〕)上認められる各用
務地での活動内容に照らせば,いずれも会派の調査研究に必要な経費
であると認めることができる。また,「事務所費」及び「人件費」と
して政務調査費から支出された計206万9864円(丙D9(受付
印のある差替え後のもの。以下同じ。),D10)についても,事務
所の設置と事務職員の雇用によって生じた経費を議員の活動内容に照
らして2分の1の限度で政務調査費から支出されているものであって,
会派の調査研究に必要な経費であると認められる。そうすると,平成
20年度における上記支出の合計263万7966円の支出は適法で
ある。
以上によれば,平成17年度に調査研究旅費として支出された49
7万9000円は,263万7966円の2分の3の限度で本件使途
基準に合致すると認められる。
【違法な支出102万2051円】
(ウ)研修費
a旅費《D4,126∼128番》
e市への会派視察研修旅費10万7900円は,e市と合併した地
域の実情視察のために要した費用であり(丙D3の2〔3頁〕,証
人K〔48∼52,253項〕),e市及びj県への研修費8万90
20円は,バイオマス発電事業等の視察調査に使用された費用であ
るから(甲D1〔205頁〕,丙D3の5〔3頁〕,証人K〔53∼
55,255項〕),いずれも会派の調査研究活動のための支出で
あると認められる。この点に関し,原告らは,議員らが利用したグ
リーン車の料金は出費の必要性に欠けると主張するが,一般に議員
の鉄道賃については特別車両料金が含まれること(弁償条例8条1
項,現行の職員等の旅費に関する条例16条1項4号)に照らし,
採用できない。
したがって,上記支出は,すべて本件使途基準に合致すると認め
る。
b土産代,食事代,弁当代《D35,54,139番》
甲D1〔59,86頁〕,丙D14〔4頁〕及び弁論の全趣旨に
よれば,平成17年7月17日に支出された6700円《D35番》
は,k地区の椎茸栽培等の視察研修の際,土産代として支出されたも
のであり,講師を含む5名分の食事代2万0800円《D54番》は,
上記視察研修の際に支出されたものであると認められるところ,上
記研修が会派の調査研究活動であるといえ,かつ,支出額も社会通
念上相当といえる範囲内であることに照らせば,本件使途基準に合
致するものと認められる。
また,丙D14〔4頁〕,証人K〔64∼66頁〕及び弁論の全趣
旨によれば,議会傍聴者の弁当代2万8000円《D139番》は,
議会傍聴会が県民の意見聴取の機会となることから,調査研究活動
の一環ということができること,支出額も社会通念上相当といえる
ことから,本件使途基準に合致するものと認められる。
c56分勉強会負担金《D64,65,99,140番》
前記ア(ア)aのとおり,56分勉強会は調査研究に資するものであ
ると認められるから,負担金合計3万6339円は本件使途基準に
合致するものと認められる。
(エ)会議費《D23,36,37,74,86,100,117番》
「県政を語る会」の参加費用5万7000円は上記使途内規a(a)を
準用して支出されたと認められるところ(丙D14〔4頁〕),上記
支給基準が不合理とまではいえないこと,県政を語る会は県民に県政
の状況を報告するとともに意見要望を聴取し,会派が政策立案の参考
とする目的でなされる調査研究活動であると認められること(証人K
〔68項〕,弁論の全趣旨)等からすれば,本件使途基準に合致する
支出であると認められる。
また,議会傍聴会の弁当代1万4000円については,前記のとお
り,議会傍聴会が会派の調査研究活動との関連性を有することに鑑み
れば,その必要経費として相当であり,本件使途基準に合致するもの
と認められる。
(オ)資料作成費
a各所属議員に対する「資料作成費」定額支給分《D5,15,24,
38,55,66,75,87,101,118,129,141
番》
前記前提事実等⑶イ及び弁論の全趣旨によれば,Dは,上記使途内
規a(b)のとおり,各所属議員に対する「資料作成費」手当として,
議員一人当たり月額1万円ずつを支給していたことが認められると
ころ,上記支給額が実額を上回らないと認めるに足りる的確な証拠
がないことからすれば,直ちにこれをすべて本件使途基準に合致す
るものとして認めることはできない。
他方,平成17年度にDに所属していた議員につき平成20年度
において資料作成費として政務調査費から支出されたのは2万58
76円であるところ(丙D9,10),この支出は,いずれも実額
支給されたものであり,かつ,会派の行う調査研究活動と無関係と
までは認め難いこと(一部については2分の1の按分がされてい
る。)に照らせば,すべて適法な支出であると認められる。
そうすると,平成17年度の各所属議員に対して資料作成費とし
て定額支給された計36万円は,2万5876円の2分の3の限度
で本件使途基準に合致するものと認められる。
【違法な支出32万1186円】
b海外視察報告書印刷代《D102番》
海外視察報告書印刷費用6万3000円は,前記ウ(オ)cにおいて
認定説示したところと同様に,会派による県政の調査研究に資する
ものとして本件使途基準に合致するものと認められる。
(カ)資料購入費
a各議員に対する「資料購入費」定額支給分《D6,16,25,3
9,56,67,76,88,104,119,130,142
番》
前記前提事実等⑶イ及び弁論の全趣旨によれば,Dは,上記使途内
規a(c)に従って,各議員に対し,「資料購入費」として,議員1人
当たり月額2万円を支給していたことが認められる。
もっとも,一律支給とすること自体に合理性があるとしても,上
記支給額が実額を上回らなかったことを認めるに足りる的確な証拠
はないから,直ちにこれをすべて本件使途基準に合致するものとし
て認めることはできない。
他方,平成17年度にDに所属していた議員につき,平成20年
度において資料購入費として政務調査費から支出されたのは18万
7709円であるところ(丙D9,10),この支出はいずれも実
額支給されたものであり,かつ,会派の行う調査研究活動と無関係
とまでは認め難いこと(丙D12〔1∼15頁〕,D13〔37∼
60頁〕)に照らせば,すべて適法な支出である。
そうすると,平成17年度に各議員に対して資料購入費として定
額支給された計72万円は,18万7709円の2分の3の限度で,
本件使途基準に合致するものと認められる。
【違法な支出43万8436円】
b書籍代《D17番》
5月17日に「本代」名目で支出された2800円(甲D1〔2
8頁〕)につき,証人Kは,会派として必要な物と証言する(証人
K〔85,86項〕。控室用資料と陳述書には記載している(丙D1
4〔5頁〕)。)が,会派の行う調査研究活動との関連性は明らか
でなく,他にこれをうかがわせる証拠はないから,本件使途基準に
合致するものとは認められない。
【違法な支出2800円】
c会派控室備品代《D103番》
甲D1〔167頁〕,丙D14〔5頁〕,証人K〔202∼207
項〕)及び弁論の全趣旨によれば,会派控室備品代5980円は,D
の議員控室において使用するコピー用紙その他事務用品の購入費で
あることが認められるが,同議員控室で専ら調査研究活動しか行わ
れていなかったとまでは認められず,議員活動等も行われていたと
認められるから,全額を本件使途基準に合致するものと考えること
はできない。
もっとも,議員の権限及び職務の性質・内容等からすれば,2分
の1の限度で本件使途基準に合致するものというべきである。
したがって,上記支出額の2分の1である2990円の限度で本
件使途基準に合致すると認められる(なお,原告らは,別紙支出一
覧表においては5980円全額の返還を求めているが,その後,う
ち2分の1につき,政務調査費から支出することが違法でないと自
認するに至った(平成22年8月30日付け第22準備書面〔21
頁〕参照)。)。
【違法な支出2990円】
(キ)広報費
a会報発行費用《D7∼10,26,40∼44,57,77∼80,
90,105∼108,131,144番》
会報印刷代として原告らが自認する96万4990円の支出《D8
∼10,40∼44,77∼80,105∼108番》,甲D1
〔12∼15頁〕によれば会報印刷代であると認められる5万88
00円の支出《D7番》及び5000円の支出《D57番》について
は,発行された会報の内容(甲D1〔13,71,129,174
頁〕,丙D3の1∼5)に照らせば,会派の政策等を県民に広報し,
意見聴取等を行うためのものであると認められるから,本件使途基
準に合致すると認められる。この点に関し,領収証の宛名が議員個
人名(甲D1〔15頁等〕)や後援会事務所(同14頁等)となっ
ていることは,上記判断を左右しない。
これに対し,平成17年6月6日の5万7750円《D26番》,
同年11月19日(実際は8月16日)の4万9350円《D90
番》,平成18年2月23日の13万6500円《D131番》及び
同年3月31日の8万1000円《D144番》の各支出(合計32
万4600円)については,甲D1〔45,46,145,146,
218,219,240,241頁〕によれば,何らかの印刷費で
あると認められるものの,上記会報印刷に係る印刷業者(甲D1
〔14,15頁等〕)と異なることなどに照らせば,会報発行費用
とは認められないうえ,他に会派の調査研究活動に関連するとうか
がわれる的確な証拠はない。したがって,これらの費用の支出は本
件使途基準に合致しないものと認める。
【違法な支出32万4600円】
b郵便料金等《D18,58,68,89,120番》
会報発送郵便料金であると原告らが自認する5万3704円《D1
8番》,会報発行時期(平成17年7月20日付け(丙D3の2)
及び平成18年1月1日付け(丙D3の4))や支出事由(甲D1
〔93,110頁〕)に照らして,上記郵便料金であると認められ
る平成17年7月22日付けの2万7040円の支出《D58番》,
同月21日付けの5万9535円の支出《D68番》及び平成18年
1月1日付けの20万3252円の支出《D120番》については,
上記のとおり会報の発行が会派の調査研究活動に資するものである
から,その経費である郵送料についても本件使途基準に合致すると
認める。
これに対して,平成17年7月20日の2万5000円の支出《D
89番》は,葉書代であると認められるところ(甲D1〔146
頁〕),その使途が明らかでないと証人Kは証言しており(証人K
〔218項〕),他に会派の調査研究活動との関連性がうかがえる
証拠がないことからすれば,本件使途基準に合致しないものと認め
る。
【違法な支出2万5000円】
(ク)事務費
a各議員に対する事務費定額支給分《D11,19,27,45,6
0,69,81,95,109,122,135,147番》
前記前提事実等⑶イ,丙D14及び弁論の全趣旨によれば,Dは各
議員に政務調査を委託したことにより生じる事務費用として,上記
使途内規a(d)のとおり,議員1人当たり月額3万円を支給していた
ことが認められるところ,一律支給自体は事務手続の負担を軽減す
るために合理的であるとしても,これが実額を上回るものでないか
どうかは必ずしも明らかではなく,むしろ平成20年度の支出(丙
D9,10,12,13)と対比すれば,平成17年度当時の月額
3万円の支給は,実額を上回っていたことがうかがわれるから,全
額が本件使途基準に合致すると認めることはできない。
もっとも,平成17年度にDに所属していた議員につき,平成2
0年度に事務費として政務調査費から支出されたのは71万203
2円であるところ,これらはいずれも,領収証等に基づいて実額が
支給されているうえ,会派の調査研究目的以外の目的で生じた経費
を含むといえるものについてはほとんどにつき2分の1の限度で政
務調査費から支出されていることから(丙D12〔39∼87頁〕,
D13〔98∼180頁〕),会派の調査研究活動に必要な経費で
あると認めるのが相当である。
そうすると,平成17年度に事務費として定額支給された計10
8万円は,71万2032円の2分の3の限度で本件使途基準に合
致するものと認められる。
【違法な支出1万1952円】
bコピー代等
コピー代計3390円《D28,31,48,59,94,121,
133,145番》は,甲D1〔50,52,77,95頁等〕上
記載のある費目に照らして,インターネット接続料4万5360円
《D29番》,事務用品2441円《D30番》,プリンタ用インク
4610円《D50番》,コピー用紙代計1万2810円《D82,
110番。なお,《D110番》については,弁論の全趣旨に照らし,
コピー等のための用紙代であると認める。》,及びプリンタカート
リッジ代3150円《D113番》(計7万1761円)については,
各領収書の宛名の記載や弁論の全趣旨に照らし,いずれもDの議員
控室における活動に付随して生じたものであると認められるところ,
その活動内容等に照らし,2分の1の限度で会派の調査研究活動の
ために必要な経費に当たると認めるのが相当であるから,上記各支
出は,2分の1の限度で本件使途基準に合致すると認められる。
【違法な支出3万5880円】
c新聞購読料《D46,111,112,146番》
定例会用の全国地方一般紙の購読料計2万4830円は,上記に
おける通常の記事内容に照らし,会派による県政の調査研究に資す
るため必要な経費であるといえるから,本件使途基準に合致すると
認められる。
d雑誌・書籍購入費《D70,132番》
平成17年9月22日の5万5735円の支出は,自治体情報誌
であるN1出版社発行の「O1」を購入した費用であり,平成18年2
月7日の8万8200円の支出は,P1新聞社発行の「Q1」を購入し
た費用であると認められるところ(丙D14〔6頁〕),これらは,
その雑誌名等に照らし,いずれも会派の調査研究活動に必要な経費
として本件使途基準に合致する支出であると認められる。
e写真代《D91∼93番》
平成17年11月2日及び19日に支出された計2万7805円
は,甲D1〔147,148頁〕及び弁論の全趣旨によれば,会派
研修会写真代として支出されたと認められるから,この写真が会派
の調査研究活動と無関係であるとまでは認められない。したがって,
これらの支出は,本件使途基準に合致するものと認めるのが相当で
ある。
f日付もただし書もない領収証《D134番》
日付もただし書もないR1株式会社作成に係る領収証による987
円の支出(甲D1〔222頁〕)については,パソコンのインクを
購入した費用であると認められる(弁論の全趣旨(D平成21年4月
13日付け第1準備書面〔41頁〕))。したがって,この支出は,
前記コピー代等と同様に2分の1の限度で本件使途基準に合致する
ものと認めるのが相当である。
【違法な支出493円】
gコーヒー代《D47番》
甲D1〔76頁〕及び丙D14〔6頁〕によれば,コーヒー代1
575円は,県議会内における市民相談や会派の会議の際に提供さ
れたコーヒー代であると認められるから,会派の行う調査研究活動
に当たって提供されたものということができ,かつ,社会通念上相
当といえる範囲内の支出であるということができる。したがって,
この支出は,本件使途基準に合致するものと認めるのが相当である。
hその他の事務費からの支出《D49番》
平成17年7月に事務費として支出されたもののうち1796円
分については,支出命令書上,会派控室用新聞代他として支出され
た7488円のうち一部であると認められるものの(甲D1〔74
頁〕),これにつき被告及びDからの具体的な説明はないうえ,こ
の支出原因をうかがわせる証拠もないから,本件使途基準に合致し
ない支出と認めるべきである。
【違法な支出1796円】
(ケ)小括
以上によれば,Dが政務調査費から支出した956万7039円のう
ち,違法な支出額は合計218万7184円である。
オEについて
(この項においては,証拠の枝番号を省略して表記することがある。)
(ア)使途内規
Eは,本件使途基準に基づいて「a県E県政調査会使途基準に基づ
く内規」を定めたことが認められる。その内容は大要次のとおりであ
る。(丙E51,弁論の全趣旨)
a議員活動費
(a)調査研究活動費
①旅費
会派又は会派が認めた県政推進についての課題を調査研究す
るために要する経費(下記②③(b)(c)を除く。)
(県内)
8キロメートル未満(片道移動距離。以下同じ。)3000

8∼25キロメートル未満5000

25∼50キロメートル未満7000

50∼100キロメートル未満1万0000

100∼150キロメートル未満1万1000

150∼200キロメートル未満1万2000

用務の都合により宿泊を要する場合の宿泊費1万2300

(県外)
県の旅費規程により計算した額
②管理費
各選挙区内の調査研究のため,「E県政調査会出張所」を設置
することにより生じる管理費
上限毎月2万9000

③通信費
調査研究活動に必要な電話代,FAX,インターネット使用

上限毎月3万

(b)資料作成費
会派又は会派が認めた政策推進に必要な資料の印刷代,原稿料,
写真現像焼付代及びコピー代上限毎月2万1000

(c)資料購入費
会派又は会派が認めた県政推進に必要な図書,雑誌,新聞購入
代,ビデオテープ代及びCD−ROM代上限毎月
3万円
b会派が直接使用する費用
(a)研修費・会議費
56分勉強会その他の研修・会議等,会派が開催する研修及び
会議に必要な経費
(b)事務費
消耗品・備品の購入代,印刷費及び庁舎使用料等,会派の事務
所維持に必要な経費
(c)人件費
給料及び社会保険料等,会派が雇用する職員の人件費,必要な
経費
cその他必要な経費は会長が決定する。
(イ)調査研究費
a調査研究活動費《E20∼47,204∼231,299∼327,
373∼401,553∼555,557∼580,591∼61
8,713∼715,717∼740,802∼804,806∼
829,927∼953,1088∼1114,1188∼121
4番》
前記前提事実等⑶イ及び弁論の全趣旨によれば,Eは,各所属議員
に対し,上記使途内規a(a)に従って,「調査研究活動費」として計
6098万2000円を支給したことが認められる。
もっとも,上記使途内規における旅費の支給基準が不合理とまで
は認められないものの,「調査研究旅費請求書」(丙E4の13の
4の1等)には各用務地での活動目的や内容等が一切記載されてお
らず,他に政務調査との関連性を裏付ける資料がないうえ,これを
補足する説明もないこと等からすれば,同請求書記載の支出額すべ
てについて直ちに本件使途基準に合致するものと認めることはでき
ない。
他方,平成20年度の支出のうち,上記「調査研究活動費」に対
応するものについてみると,同年度に「調査研究費」として支出さ
れたと認められる支出は,その支給基準が弁償条例(現行条例)の
規定するところと同額の1キロメートル当たり37円とされている
うえ,「調査旅費支払証明書」上認められる各用務地での活動内容
には,会派としての調査研究活動と無関係であると認めるに足りる
ものは見当たらないから(丙E24∼43,S1議員についていえば
具体的にはE36〔11頁等〕,48の2〔2頁〕),すべて会派
の調査研究に必要な経費であると認めることができる。また,その
他「会議費」及び「広報費」等についても,会派の調査研究活動と
無関係であると認められる支出は見当たらないうえ,「事務費」,
「事務所費」及び「人件費」等の経費は,ほとんどがその活動内容
に照らし2分の1ないし3分の1で按分されているか,按分された
額以下の額のみが政務調査費から支出されていると認められるから,
上記「調査研究費」等の支出額合計2571万0241円は,概ね
調査研究に資するために必要な経費として適法であると認められる。
そして,上記の金額は議員20人の6か月間分の支出額であると
ころ,議員1人当たりの1か月分の支出額21万4252.008
・・・円に平成17年当時の年間のべ議員数(303人)を乗じる
と,6491万8358.524・・・円となり,これに加えて,
前記のとおり,平成20年度の政務調査費の支出が,一般に平成1
7年度よりも謙抑的になっていることなども合わせ考慮すると,平
成17年度に「調査研究活動費」として支出された合計6098万
2000円は,すべて本件使途基準に合致するものと認めるのが相
当である。
b県外視察調査出席旅費
1期議員県外視察調査旅費(タクシー代を含む。)計39万87
70円《E1031∼1036,1169番》はT1工場及びU1工場
の視察のため(丙E13の8),2期議員県外視察調査旅費(タク
シー代及び写真現像代を含む。)計66万7187円《E1071∼
1078,1170,1172番》は私立美術館及びV1農場等の視
察のため(丙E13の11,証人S1〔第19回の68∼78項〕),
3・4・5期議員県外視察調査旅費(タクシー代を含む。)計54
万4982円《E1017∼1023,1026番》はいわゆる三位
一体改革に関する勉強会及び過疎債で建設されたl県W1大吊橋の視
察のため(丙E13の1),3期議員と文部科学省との協議・研修
旅費計13万6380円《E1029,1030番》は教育基本法の
改正に関する協議のため(丙E13の7)にそれぞれ支出されたこ
とが認められるところ,これらはいずれも会派による県政の調査研
究活動に必要な経費というべきであるから,すべて本件使途基準に
合致するものと認めるのが相当である。
これに対して,原告らは,2期議員県外視察の訪問先がいずれも
特定の宗教団体であるX1財団の関係施設であることから調査研究活
動ではないと主張するが,採用の限りでない。
したがって,県外議員視察調査の経費としてなされた上記各支出
は,いずれも本件使途基準に合致する支出であると認められる。
(ウ)研修費
a56分勉強会負担金《E259,496,799,1180番》
前記ア(ア)aのとおり,56分勉強会は調査研究に資するものであ
ると認められるため,負担金33万5874円は本件使途基準に合
致するものと認められる。
bその他の研修費《E675,1079,1171番》
Eは,第5回都道府県議会議員研究交流会負担金6420円《E6
75番》について,各地方議会の議員による講演や意見交換会の開
催に要した費用であると主張するが,いかなる内容の講演や意見交
換会であったのかをうかがわせる証拠はなく,これが会派の調査研
究活動に必要な経費ということはできないから,本件使途基準に合
致しないと認められる。
【違法な支出6420円】
また,皇室典範勉強会の講師謝礼,同交通費及び会場代計22万
9693円《E1079,1171番》は,勉強会の内容(丙E13
の10,14の3)に照らしても,直ちに県政の調査研究に資する
とまでは認め難いから,本件使途基準に合致しないと認められる。
【違法な支出22万9693円】
(エ)会議費
「会派議員総会」出席旅費19万6000円《E107∼119,1
22∼130,133∼136番》(丙E5の1(なお,E136番は,
請求印と領収印がないが,J議員に対する支給と認める。)),平成1
7年6月8日の「地方行政機関の再編に係る説明会」出席旅費16万
7000円《E236∼256番》(丙E6の3),同年8月10日の
「地方機関の統廃合についての説明会」出席旅費21万9000円《E
460∼487番》(丙E8の3),「平成18年度国政予算等に関
する友好団体との意見交換会」出席旅費37万7000円《E684∼
687,689∼705,707,709∼711番》(丙E10の
8),「平成18年度県政予算要求状況の説明会」出席旅費18万1
000円《E898∼901,903∼908,910,911,91
3∼921,923∼925番》(丙E12の5),「平成18年度
予算要望の説明会」出席旅費及び「議員総会」出席旅費35万100
0円《E1037∼1050,1052∼1063番》(丙E13の9
の2の1∼3,13の9の3∼7),「議員定数問題調査会」14万
8000円《E1064∼1070番》(丙E13の9の8∼14)は,
各会議への出席に際し,上記使途内規a(a)①に定める旅費の支給基準
を準用して支出されたものと認められるところ(弁論の全趣旨),前
記のとおり上記支給基準が不合理とまではいえないこと,前掲証拠に
照らし,いずれの会議も会派による県政に関する調査研究活動である
といえることからすれば,いずれも本件使途基準に合致すると認めら
れる。
(オ)資料作成費
a各議員に対する資料作成費定額支給分《E76∼103,176∼
203,328∼356,402∼429,525∼527,52
9∼552,647∼649,651∼674,741∼743,
745∼768,830∼856,954∼980,1115∼1
141,1215∼1241番》
前記前提事実等⑶イ及び弁論の全趣旨によれば,Eは,各所属議員
に対し,上記使途内規a(b)に基づき,「資料作成費」として月額2
万1000円(計634万2000円)を支給したと認められる。
もっとも,事務量を軽減するために一律支給とすることには合理
性が認められるとしても,上記使途内規に定められた支給月額が実
額を上回るものでない相当な金額であると認めるに足りる的確な証
拠はないし,これを超えた場合に精算がなされた形跡もないことか
らすると,直ちに全額の支出が本件使途基準に合致すると認めるこ
とはできない。
他方,平成20年度の議員の調査研究に伴って支出された「資料
作成費」についてみるに,丙E24∼43及び弁論の全趣旨によれ
ば,領収書等に基づく実額支給がなされているうえ,会派による調
査研究活動と関連性がないとまで認めるに足りないことからすれば,
上記「資料作成費」として支出された17万3594円は適法であ
る。そして,上記の金額は,議員20人の6か月分の支出額である
から,議員1人当たりの適法な支出額は,1か月1446.616
6・・・円となり,これに平成17年当時の年間のべ議員数(30
2人)を乗じると,合計43万6878.233・・・円となる。
そうすると,平成17年度に支出された634万2000円は,
43万6878.233・・・円の限りで本件使途基準に合致する
と認められる。
【違法な支出590万5121円】
bコピー代《E18,138,260,364,458,583,6
76,800,926,1027,1173,1269番》
コピー代計11万1458円(資料購入費に計上されている5月
分4993円《E138番》,事務費に計上されている6月分283
5円《E260番》,11月分9714円《E800番》及び1月分
1万3789円《E1027番》もここに含める。)は,領収書の記
載等(丙E4の11の2の1等)に照らし,議員控室における活動
に付随して生じたものであると認められるが,上記活動が専ら調査
研究活動であったとまでは認められず,一般の議員活動等も行われ
ていたと認められるから,全額が本件使途基準に合致する支出であ
るとすることはできないものの,議員の権限,職務の性質及び内容
等に鑑み,社会通念上,2分の1の限度で会派の調査研究に資する
活動に供されたと認めるのが相当である。
したがって,上記支出額の2分の1の限度で本件使途基準に合致
する支出であると認められる。
【違法な支出5万5729円】
c議員手帳購入費《E897番》
議員手帳100部の購入費として支出された30万9750円に
ついては,議員手帳の利用が調査研究活動と無関係であるとはいい
難いものの,購入当時(平成17年12月ころ)の所属議員数が2
8名であり(丙E12の5の5の1∼3),事務職員の人数が不明
であること等からすれば,72部については必要性及び相当性がな
いというべきであり,会派の調査研究活動に必要な費用であると認
められないというべきである。
したがって,上記支出のうち28部分8万6730円については
本件使途基準に合致するが,その余の分22万3020円について
は本件使途基準に合致しないと認める。
【違法な支出22万3020円】
(カ)資料購入費
a各議員に対する資料購入費定額支給分《E48∼75,148∼1
75,270∼298,430∼457,497∼499,501
∼524,619∼621,623∼646,769∼771,7
73∼796,857∼883,981∼1007,1142∼1
168,1242∼1268番》
前記前提事実等⑶イのとおり,Eは,各所属議員に対して,「資料
購入費」手当として月額3万円(合計906万円)を支給したもの
である(27名分が7か月,28名分が3か月,29名分が1か
月)。
もっとも,事務量を軽減するために一律支給とすることには合理
性が認められるとしても,上記の支給額が実額を超えないものであ
ると認めるに足りる的確な証拠はないし,これを超えた場合に精算
がなされた形跡もないことからすると,直ちにすべてについて本件
使途基準に合致すると認めることはできない。
他方,平成20年度の議員の調査研究に伴って支出された「資料
購入費」についてみるに,丙E24∼43及び弁論の全趣旨によれ
ば,領収書等に基づく実額支給がなされているうえ,政務調査との
関連性を疑うべきものも見当たらないことからすれば,「資料購入
費」として支出された52万7380円は適法であると認められる。
そして,上記の金額は議員20人の6か月分の支出額であるから,
議員1人当たりの適法な支出額は,1か月4394.8333・・
・円となり,これに平成17年度当時の年間のべ議員数(302
人)を乗じると,合計132万7239.666・・・円となる。
そうすると,平成17年度に支出された906万円は,132万
7239.666・・・円の限度で本件使途基準に合致すると認め
られる。
【違法な支出773万2760円】
b雑誌購読費《E3,5,8,15,19,142,143,263,
267,365,371,490,491,585,587,68
0,712,889,890,1012,1013,1083,1
085,1181,1182番》
「Y1」,「Z1」及び「A2」購読費計42万1720円(事務費と
して支出された「Y1」9月分《E491番》もここに含める。)は,
上記各雑誌がいずれもEの機関誌であることを考慮しても調査研究
に資する側面があることは否めないし,購入部数も所属議員の人数
分に若干の余部を加えた程度であって,個人的購入であるとか政党
への経済的支援であると認めることができないことからすれば,会
派の調査研究に必要な経費として本件使途基準に合致するものと認
めるのが相当である(なお,「Y1」平成18年2月分の請求書(丙
E13の15の2の1)が白紙であるから違法な支出であるとの原
告らの主張は,同請求書が白紙であるとは認め難いから(丙E53
の3参照),採用できない。)。
c新聞購読費《E16,17,140,141,261,262,3
57∼362,366,367,492,493,589,590,
682,683,885,886,893,894,1010,1
011,1081,1082,1183,1184番》
B2新聞,C2新聞及び議会開催中の各種新聞購入費計9万6383
円については,B2新聞やC2新聞をはじめとする各種一般新聞は,
その内容に照らし,県政に関する調査研究に役立つということがで
きるから,上記支出はすべて本件使途基準に合致するものと認めら
れる。
da県職員録等購入費《E106,147番》
a県職員録等の購入費として支出された合計9万5150円のうち,
a県職員録の購入費650円は,a県職員の人員配置を調べたり,県
政に関する問い合わせに利用することできることからすれば,会派
の調査研究に資するものと認められる。
a県教職員録30部の購入費9万4500円(丙E5の11の1・
2)は,上記と同様に県教職員の人員配置等の調査に有用であると
いうことができるものの,a県職員録の購入を1部にとどめておきな
がら,同教職員録について30部購入することについては必要性及
び相当性に欠けるものといわざるを得ず,これに反する証拠はない
から,そのすべてを会派の調査研究に必要な経費と認めることはで
きない。
したがって,上記各支出のうちa県職員録の購入費650円及びa
県教職員録の購入費9万4500円のうち1部分である3150円
は本件使途基準に合致すると認められるが,その余は,本件使途基
準に合致しないと認める。
【違法な支出9万1350円】
ee地区の住宅地図購入費《E372番》
e地区住宅地図購入費4万4100円は,丙E7の13の1・2に
よれば,住宅地図(e市北部・南部)各1冊の購入費であると認めら
れるところ,e地区の住宅地図は会派による県政の調査研究に利用し
うるし,購入部数が不相当であるとか,選挙活動目的の購入である
といった事情も認められない。
したがって,上記支出は,本件使途基準に合致する支出であると
認めるのが相当である。
fその他の書籍購入費《E1174,1177番》
「D2」28冊の購入費2万9400円《E1174番》及び「E
2」28冊の購入費7万1400円《E1177番》は,いずれも,
その題名に照らし,県の経済産業に関する資料及び現代用語事典と
して調査研究に有用であるといえるし,その用途からして議員の人
数分に1を加えた数を購入することも不相当とはいえない。
したがって,上記支出はすべて本件使途基準に合致するものと認
められる。
g時刻表購入費《E1025番》
時刻表1部の購入費1050円は,県において公共交通機関を利
用して調査研究活動をするに当たって必要なものであるといえるう
え,購入部数が不相当ともいえないこと等からすれば,会派による
調査研究に必要な経費に当たると認めるのが相当である。
したがって,上記支出は,本件使途基準に合致すると認められる。
(キ)事務費
事務費83万7711円(コピー代計2万6338円《E260,8
00,1027番》及び平成17年9月21日のY2購入分1万176
0円《E491番》は,資料作成費ないし資料購入費として判断す
る。)のうち,庁舎使用料計5万2870円《E2,884番》(E2
番については,丙E3の2の2によれば,平成16年度の分と認めら
れるが,原告らは違法支出の根拠としてこれを主張するものではない
し,また,原告らは2分の1の返還を求めているにすぎないから,結
論において異ならない。),FAXリース合計12万5055円《E6,
7,137,257,363,459,582,677,801,8
96番》,FAXトナー代計1万5330円《E268,269番》,
Z通話料計4万1537円《E13,144,264,368,489,
586,681,888,1014,1080,1187番》,IT
利用料4万5360円《E14番》,コピー用紙代計2万9158円
《E1015,1178番》,文具代計2万5600円《E105,4
95,1175,1176番》,ゴム印購入費9000円《E104
番》(丙E4の16の1・2),L1複写機等購入費36万9526円
《E1086番》,FAXリース契約の合意解約金及び振込手数料計1
1万5775円《E1028番》(丙E13の6の2の2)は,Eに貸
与された県庁内の党控室における活動に付随して生じたものであると
認められる(証人S1〔第19回の47,48項〕,弁論の全趣旨)が,
上記活動が専ら調査研究活動であったことまでは認められず(これに
反する証人S1の証言〔第21回の5項〕は採用できない。),一般の
議員活動等も行われていたものと認められるから,上記支出額の全て
について本件使途基準に合致すると認めることはできない。もっとも,
議員の権限及び職務の性質・内容等に照らせば,2分の1が調査研究
活動であったと認めるのが相当であるから,上記支出額の計82万9
211円の2分の1は本件使途基準に合致すると認められる。
【違法な支出41万4605円】
また,丙E4の3の1・2,6の2の1∼3,6の5の1∼3,1
2の2の1∼5)及び弁論の全趣旨によれば,社会保険協会費・委員
会費3000円《E9番》,社会保険算定基礎届に係る事務手続のため
に要した交通費500円《E258番》,健康保険・厚生年金保険の被
保険者賞与支払届郵送代120円《E235番》,源泉徴収票の法定調
書合計表及び給与支払報告書の郵送代200円《E895番》は,いず
れも事務職員の雇用に付随して生じた支出であると認められるところ,
後記(ク)のとおり人件費は2分の1の限りで本件使途基準に合致すると
認めるべきであるから,上記各支出もそれぞれ2分の1の限度で会派
の調査研究活動に資するものと認めるのが相当である。したがって,
上記合計3820円のうち1910円の支出が本件使途基準に合致す
るものと認められる。
【違法な支出1910円】
他方,デジカメカードチップ購入費3980円《E892番》は,デ
ジタルカメラとともに会派の調査研究活動に利用できるということが
できるし,平成17年6月9日付け会議資料郵送代700円《E139
番》は,「地方行政機関組織の再編について」と題する第1回行政財
政改革推進委員会資料を送付した際の送料であることが認められ(丙
E5の4の1∼3),会派の調査研究に必要な経費と認められるから,
いずれも本件使途基準に合致する支出であると認められる。
(ク)人件費《E4,10∼12,145,146,232,233,2
65,266,369,370,488,494,584,588,
678,679,797,798,887,891,1008,10
09,1084,1087,1185,1186番》
人件費(給与,賞与,社会保険料)計327万5001円は,Eの上
記控室において事務職員1人を雇用したことにより生じたものである
と認められるが(証人S1〔第19回の52項〕,弁論の全趣旨),上
記事務所において専ら調査研究活動が行われていたとまでは認められ
ず,一般の議員活動等も行われていたと認められるから,上記支出額
がすべて会派の調査研究に資するものであったと認めるのは相当でな
い。
もっとも,県議会議員の権限及び職務の性質・内容等に照らせば,
2分の1の限りで調査研究に必要な経費に当たると認めるのが相当で
ある。
したがって,上記支出額を2分の1の限度で本件使途基準に合致す
ると認められる。
【違法な支出163万7500円】
(ケ)各種任意協議会
Eは,任意協議会を設置し,同協議会として研修や視察を行った場合,
これに伴って生じた経費を政務調査費から支出していたことが認めら
れるところ,同協議会が所属議員全員によって構成されるものである
こと(以上につき丙E15∼22,証人S1〔第19回の6項以下〕)
等に照らせば,その活動は,会派としての活動と同視すべきものと認
められる。
以上を前提に,支出の適法性について検討する。
aa県総合政策調査会
m県及びn県での先進地視察の際に支出した43万4950円の
うち原告らが違法であると主張する視察旅費42万8490円《M2
1−3番》及び視察先への土産代6300円《M21−4番》につい
て,視察内容は地方機関の再編等に関する調査研究活動であると認
められ(丙E15の7の4),参加議員数や随行員数(丙E15の
5の3・4,15の7の4)も不相当とはいえないうえ,視察先へ
の土産代も社会的儀礼の範囲内として相当ということができること
からすれば,上記支出はすべて本件使途基準に合致するものと認め
られる。
また,g県での農林水産振興のための調査視察に係る旅費23万8
880円《M21−7番》,視察先への土産代4725円《M21−9
番》及び視察資料代2700円《M21−11番》について,同視察
は,その内容(丙E15の11の10)に照らし,会派の調査研究
に資するものであり,出席した議員数及び随行員数も相当であると
認められるところ,上記の資料は視察に当たって必要なものと認め
られるし(丙E15の11の8),視察先への土産代も社会的儀礼
の範囲内として相当といえるから,これらはすべて本件使途基準に
合致するものと認められる。
これに対し,会長角印作製費9000円《M21−2番》は,直ち
に会派の調査研究に資するものとは認められないから,本件使途基
準に合致しないと認める。また,会長,副会長の名刺作製代693
0円《M21−6番》は,これが通常の議員活動を超えて調査研究活
動のために必要な経費であるとはいい難いから,本件使途基準に合
致しない支出であると認められる。
【違法な支出1万5930円】
ba県市町村周辺部対策協議会《M22−1,2−2番》
o県市町村合併についての県外調査旅費57万2000円及び相手
先への土産代3150円について,調査内容は市町村合併に関する
ものであって,会派による調査研究活動と評価できるし(丙E16
の5の4),参加議員数や随行員数も相当であり,土産代も社会通
念上相当な範囲内であることからすれば,上記支出はいずれも本件
使途基準に合致すると認められる。
ca県私学振興議員連盟
私立幼稚園連合会における通常総会出席旅費600円《M23−1
番》(丙E17の5),a県私学協会との年間計画打合せ出席旅費6
000円《M23−3番》(丙E17の7),平成17年8月8日及
び同年9月15日の私立幼稚園視察時昼食代計2万3400円《M2
3−9,3−14番》並びに写真現像代計1万1870円《M23−
11,3−12,3−15番》(丙Eの17の12の2の1・2,
E17の13の2の1・2,E17の16の1・2),同年11月
2日の私立幼稚園視察時旅費の支出2万2620円《M23−20
番》及びその際の写真現像代5401円《M23−22,3−24
番》(丙E17の22の1∼17の22の2の2,17の24の1
∼17の24の2の2),同年11月25日の私立幼稚園視察時旅
費の支出2万3870円《M23−25番》のほか,p南高校との意
見交換会の際の弁当代1万円《M23−21番》(丙E17の21の
1∼17の21の2の2),私立中高一貫校視察時の昼食代1万6
710円《M23−28番》(丙E17の27の1∼17の27の2
の2)は,いずれも会派による私学振興に関する調査研究に資する
ため必要な経費というべきであるから,本件使途基準に合致する支
出であると認められる。
また,a県私学協会との意見交換会は私学現場の実態に関する意見
交換を行うものであり(丙E17の8の4・7,17の29の4・
5),会派による調査研究活動に当たるといえるから,上記意見交
換会の際に撮影された写真の現像代計1674円《M23−5,3−
31番》は,活動状況の報告等のための資料作成費として本件使途
基準に合致すると認められ,以上を前提とすれば,フィルム代計3
760円《M23−8,3−18番》についても,上記の写真に係る
フィルムの購入費であると認められるから,同様に本件使途基準に
合致すると認められる。そして,幼児教育勉強会交流会負担金《M2
3−26番》に係る振込手数料210円《M23−27番》について
は,上記負担金の振込手数料であると認められるから(原告らも負
担金自体について違法の主張をしていない。),本件使途基準に合
致すると認められる。
他方,丙E17の8の2の1・2,17の29の2・3,証人S1
〔第19回の143∼159項〕によれば,a県私学協会との意見交
換会終了後の懇談会費計27万3000円《M23−4,3−30
番》は,酒食を伴う懇談会の開催費用であると認められるところ,
このような懇談会は,社会通念上,会派の調査研究活動と関連性が
あるとはいい難いから,上記支出は本件使途基準に合致しないもの
と認める。
【違法な支出27万3000円】
da県福祉対策協議会
a県認可私立保育園協議会との意見交換会の際の写真現像代780
円《M24−2番》は,同会が同協議会からの要望等を聴取する機会
であり(丙E18の5の5・6),会派としての調査研究活動であ
ると認められるから,本件使途基準に合致すると認められる。
他方,上記意見交換会の経費負担金19万9980円《M24−1
番》は,請求書(丙E18の5の3の1)の記載からすると酒食を
伴う懇談会の開催費用であると認められるところ,このような懇談
会は社会通念上,直ちに会派の調査研究活動との関連性があるとは
いえず,本件使途基準に合致しない支出と認められる。
【違法な支出19万9980円】
また,a県社会福祉施設経営者協議会との意見交換会の際の支出の
うち,室料を除いた昼食弁当代6万2427円《M24−4番》は,
同会が,午前11時30分から福祉施設経営に関する課題について
の説明とこれに関係する意見交換がなされたものであると認められ
るから(丙E18の8の1∼9),会派の調査研究のため必要な経
費であると認められる(420円の振込手数料については原告らは
返還を求めていない。)。したがって,この支出は,本件使途基準
に合致すると認められる。
これに対して,会長,副会長の名刺作製代4620円《M2−3
番》は,これが通常の議員活動を超えて調査研究活動のために必要
な経費であるとはいい難いから,本件使途基準に合致しない支出で
あると認められる。
【違法な支出4620円】
ea県防衛議員連盟
丙E19の5∼19の7及び弁論の全趣旨によれば,平成17年
4月22日及び同年7月7日付けq演習場付近の学校砲撃音調査に
際して支出された経費のうち原告らが違法であると主張する計4万
9042円《M25−2∼4,5−10番》,q演習場周辺の地域振
興に係る調査・要望活動に際して支出された経費のうち原告らが違
法であると主張する66万0478円《M25−11∼18番》(レ
ンズ付きフィルム購入代及び現像代計1758円も,購入時期等に
照らし,この経費と認める。),第1回九州防衛議員連盟連絡協議
会に係る負担金及び同連盟総会に際して支出された経費のうち原告
らが違法であると主張する計11万0180円《M25−19∼21,
5−24∼26番》,q米軍演習に係る現地対策本部視察に際して支
出された計5万6762円《M25−27∼29番》は,いずれも自
衛隊の演習場が地域に与える影響等に関する調査研究に資するため
必要な経費に当たるというべきであるから(なお,タクシー借上げ
代につき丙E53の5),本件使途基準に合致するものと認められ
る。
他方,副会長名刺作製費2310円《M25−6番》は上記のとお
り議員活動を超えているとは認め難いから,本件使途基準に合致し
ないものと認める。また,黄色ハンカチ30枚購入費6000円《M
25−7番》は,調査研究活動に当たらないことをEが自認している
から,本件使途基準に合致しないものと認める。
【違法な支出8310円】
fa県商業観光対策協議会
丙E20の9の1∼15,20の11の5・6,20の15の4,
20の19の6及び弁論の全趣旨によれば,平成17年度都道府県
観光産業振興議員連盟の会費5万円及び振込手数料630円《M26
−5番》,o県r市への美観地区景観条例に基づく町並みの保存等に
ついての調査の際支出された経費のうち原告らが違法であると主張
する32万6652円《M26−7,6−8番》及び「いま,日本の
観光地に求められるもの」と題するリレー講演開催に要した諸経費
計72万4303円《M26−10∼17番》は,会派の調査研究に
必要な経費に当たるから,いずれも本件使途基準に合致する支出で
あると認められる。
これに対し,会長角印6300円《M26−1番》は,直ちに会派
の調査研究に資するとは認められないから,本件使途基準に合致し
ない支出であると認める。
【違法な支出6300円】
ga県中小企業対策協議会
中小企業対策等に係る意見交換会に関して支出された13万92
29円《M27−1,7−2,7−5番》及びF2百貨店等の視察に関
する経費のうち原告らが適法と自認する1人分の旅費4万1800
円を控除した56万9582円《M27−3,7−4番》は,いずれ
も,その内容(丙E21の5∼9)に照らし,活動状況を報告する
際に利用できる写真を現像する費用や意見交換会の録音テープを反
訳する費用を含めて調査研究活動に資するため必要な経費に当たる
ということができるから,いずれも本件使途基準に合致すると認め
られる。
ha県教育改革推進協議会《M28−1番》
G2氏の講演会の30人分の入場料3万円は,それが教育に関する
後援会であったことに照らし,書籍「日本の教育システム構造と
変動」29部の購入費14万6160円は,その題名から認められ
る内容に照らし(以上につき丙E22の5),いずれも会派の調査
研究に必要な経費に当たるといえるから,本件使途基準に合致する
支出であると認めるのが相当であって,講演者がE比例区選出の参
議院議員であったとしても,上記判断を左右しない。
(コ)小括
以上によれば,Eが政務調査費から支出した9739万5980円の
うち,違法な支出額は合計1680万6248円である。
カFについて
原告らは,Fは,J議員に係る経緯に照らし,同人が政務調査費の被交
付対象となるために1人会派として届け出たものにすぎず,会派として
の実体がないから,政務調査費からの支出はすべて違法であると主張す
る。しかし,県議会においては,議員1名の会派が政務調査費の支給対
象となるものであって,議員1名の会派においては,会派と議員とが同
視されるものというべきであるうえ,原告らの主張する経緯があったと
しても(平成17年7月Eを離脱。丙E48の25),会派としての活
動実体がないとは認められず,いずれにしても原告らの主張は採用でき
ない。
そこで,Fにおける政務調査費の支出が本件使途基準に合致するか否か
を個別に検討する。
(ア)調査研究費《N21∼8番》
丙E45,証人J〔24,25項〕及び弁論の全趣旨によれば,Fは,
前記Eの使途内規a(a)を参考にして,平成17年8月から同18年3
月までの8か月間の調査研究旅費として合計60万3000円を支出
したことが認められる。
もっとも,上記使途内規における旅費の支給基準は,前記のとおり
不合理とまでは認められないものの,「調査研究旅費請求書」(丙E
45〔2頁等〕)には各用務地での活動目的や内容等が一切記載され
ておらず,他に調査研究活動との関連性を裏付ける証拠がないうえ,
これを補足する説明もないこと等からすれば,同請求書記載の支出額
すべてについて直ちに本件使途基準に合致するものと認めることはで
きない。
他方,証拠(丙E27)として提出されている平成20年度4月か
ら9月まで6か月間の調査研究費の支出合計18万9144円(丙E
27)についてみると(平成20年度はE所属議員として,平成17
年度はFとして支出しているが,J自身支出に変化はないと供述してい
る(証人J〔55項〕)。),平成20年度における旅費は,その支給
基準が弁償条例(現行条例)の規定するところと同額の1キロメート
ル当たり37円とされているうえ,「政務調査費支払証明書」(丙E
27〔16頁等〕)の記載上認められる各用務地における活動内容に
照らせば,いずれも調査研究活動との関連性を疑うべきものは見当た
らず,すべて調査研究に必要な経費であると認めることができる。
以上によれば,平成17年度に「調査研究活動費」として支出され
た合計60万3000円は,18万9144円の6分の8(6か月分
と8か月分)である25万2192円の限度で本件使途基準に合致す
るものと認めるのが相当である。
【違法な支出35万0808円】
(イ)研修費《N29∼12番》
甲A1〔29,56,155番〕,丙E45〔1頁〕,証人J〔37
∼40項〕を総合すれば,研修費計1万2015円の内訳は56分勉
強会と議員研修費であること,56分勉強会については,第49回分
2625円,第50回分3180円,第51回分3210円を支出し
たことが認められる。上記のうち,56分勉強会については,前記ア
(ア)aにおいて判断したとおり,会派の調査研究活動であると認められ
る一方,議員研修費については,その内容を窺わせる証拠がないから,
会派の調査研究活動であるとは認められない。
したがって,上記のうち9015円は本件使途基準に合致するが,
3000円は合致しないものと認める。
【違法な支出3000円】
(ウ)資料作成費《N213∼20番》
丙E45,証人J〔43,44項〕及び弁論の全趣旨によれば,Fは,
前記Eの使途内規a(b)を準用して,「資料作成費」として16万33
97円(平成17年8月のみ1万6397円,同年9月から平成18
年3月まで各月2万1000円ずつ)を支出したことが認められる。
もっとも,事務量を軽減するために一律支給とすることには合理性
が認められるとしても,上記使途内規に定められた支給月額が実額を
上回るものでない相当な金額であると認めるに足りる的確な証拠はな
いし,これを超えた場合に精算がなされた形跡もないことからすると,
直ちにすべてについて本件使途基準に合致すると認めることはできな
い。
他方,平成20年度の議員の調査研究に伴って支出された「資料作
成費」についてみるに,丙E27によれば,領収書等に基づく実額支
給がなされているうえ,調査研究活動と無関係と認めるべきものも見
当たらないことからすれば,上記「資料作成費」として支出された1
万0383円は適法であると認められる。
そうすると,平成17年度に支出された16万3397円は,1万
0383円の6分の8である1万3844円の限度で本件使途基準に
合致すると認められる。
【違法な支出14万9553円】
(エ)資料購入費《N221∼28番》
資料購入費合計28万6926円は,前記Eの使途内規a(c)を参考
にして,平成17年8月から平成18年2月までは3万5000円を,
同年3月は4万1926円を政務調査費から充てたことが認められる
(丙E45,証人J〔43∼45項〕)。
もっとも,この支出について,一律支給とすること自体合理性が認
められるとしても,直ちにすべての支出が本件使途基準に合致すると
認めることはできない。
他方,平成20年度の議員の調査研究に伴って支出された「資料購
入費」が,丙E27及び弁論の全趣旨によれば,領収書等に基づく実
額支給がなされているうえ,調査研究活動と無関係と認めるべきもの
が見当たらないことからすれば,上記「資料購入費」として支出され
た4万8568円は適法であると認められる。
そうすると,平成17年度に支出された28万6926円は,4万
8568円の6分の8である6万4757.33・・・円の限度で本
件使途基準に合致すると認められる。
【違法な支出22万2168円】
(オ)広報費《N229∼31番》
証人J〔42,71,72項〕によれば,広報費14万1750円は,
会報作成費であると認められるものの,これは後援会に配布するもの
であったと認められるうえ,上記会報の記載内容が不明であることに
照らすと,これが会派の調査研究に資するものであったということは
できない。したがって,上記支出は本件使途基準に合致しないと認め
られる。
【違法な支出14万1750円】
(カ)事務費《N232∼39番》
事務費合計47万1586円の内訳は,電話代,FAX・インター
ネット使用料等(平成17年8月から平成18年2月までの月額3万
円及び同年3月の2万9586円並びに県政調査会事務所経費月額2
万9000円(8か月合計23万2000円)(丙E45〔4,8,
12,16,20,24,28,32頁〕)であるところ,これが実
額を上回るものでないといえる相当な金額であることを裏付ける証拠
がないため,直ちに本件使途基準に合致するものと認めることはでき
ない。
もっとも,上記支出に対応する平成20年4月から9月までの支出
は電話代を含め事務費合計7万1649円であるところ,これは概ね
領収書に基づく実額を活動内容に照らして2分の1の限度で政務調査
費から支出したものであると認められるから(丙E27),適法とい
うべきである。
したがって,上記平成17年度の支出額合計47万1586円は,
7万1649円の6分の8である9万5532円の限度で本件使途基
準に合致すると認められる。
【違法な支出37万6054円】
(キ)人件費《N240∼47番》
人件費として支出された月額9万円(合計72万円)は,上記事務
所において事務職員1人を雇用したことにより生じたものであると認
められる(丙E48の25〔1頁〕,証人J〔56項〕)が,上記事務
所における活動が専ら政務調査活動であったとまでは認められないた
め,上記支出額をすべて適法ということはできない。もっとも,議員
の権限,職務の性質及び内容等に照らせば,2分の1で按分した額の
限りで調査研究に資するものというべきである。
これに対して,Fは,事務職員の給与は月額18万円であったのを2
分の1の限度で計上していた旨主張し,証人Jは同旨の供述をするが
(証人J〔57,58項〕),平成17年度の給与支払明細書(丙E4
5〔5頁等〕)上は9万円を支給した旨記載されているところ,残余
の9万円の給与支払明細書の提出がないこと,平成20年度の給与支
払明細書(丙E27〔14頁等の上段〕)は平成17年度のそれと同
じ様式でありながら,按分前の支給額が記載されていることや,残り
の9万円につき別に明細書を作成したとも供述するが(109項),
以上の点に加え,そのことを裏付ける証拠がないことに照らせば,上
記供述はにわかに採用できず,他に上記主張を認めるに足りる証拠は
ない。
したがって,上記支出額72万円のうち2分の1である36万円の
限度で本件使途基準に合致すると認められる。
【違法な支出36万円】
(ク)小括
以上によれば,Fが政務調査費から支出した239万8674円のう
ち,違法な支出額は合計160万3333円である。
キGについて
(ア)調査研究費
a使途内規
丙H1〔7頁等〕,H12〔3∼7頁〕,証人H2〔12項以下〕
及び弁論の全趣旨によれば,Gは,調査研究費について,平成16年
度に,次の内容の使途内規を定めたことが認められる。
(a)旅費等
市民相談及び県政報告会のために移動した際に生じる経費
①車賃40円/1キロメート

②高速代実

③鉄道賃実

④食事代1000円/1

(b)市民相談経費
①自宅における相談等に係る経費
光熱水費1万5000円/1か月/1人
茶菓子代200円/1件
②自宅外における相談経費
喫茶・駐車場代1400円×件数×20パーセント
(c)県政報告会経費
①資料代200円/1件
②茶菓子代100円/参加人数1人
(d)各種会合等参加経費実

(e)通信費1万5000円/1か

b旅費等及び市民相談経費《G4,8,13,23,31,37,4
6,61,72,79,87,95番》
(a)車賃
Gは,各所属議員に対し,同会派の上記使途内規(a)①に従って
車賃を支給しているところ(丙H12〔3頁以下〕,弁論の全趣
旨),「2005年度旅費等精算表」(丙H1〔7頁等〕)の記
載上認められる移動先での活動内容(市民相談や県政報告会等)
に照らせば,各用務地で調査研究活動が行われていたと認められ
る(なお,市民相談は,所属議員全員が行っていることに照らし,
会派として各議員が行うべきものと定めたと認められるし,県政
報告会は,その性質に照らせば,会派が行う活動であると認めら
れる。)。
しかし,上記使途内規(a)①のとおり,支給基準は1キロメート
ル当たり40円であるところ,これは,現行の弁償条例所定の本
会議や委員会等出席旅費(1キロメートル当たり37円)に照ら
せば,著しく不合理とまではいい難いものの,支給額を1キロメ
ートル単位で設定していながら旅費等精算表には5キロメートル
単位で走行距離を記載しており,これについて合理的な説明もな
いこと等に鑑みれば,車賃全額を本件使途基準に合致すると認め
ることはできない。
もっとも,その記載方法に照らせば,社会通念上,支出額の少
なくとも8割は実際の旅程であると認められるから,車賃317
万7580円(鉄道賃3万0780円(丙H1(8,53,63
頁)もここに含む。)は,その8割である254万2064円の
限度で本件使途基準に合致すると認められる。
【違法な支出63万5516円】
(b)光熱水費,茶菓子代,喫茶・駐車場代,高速代及び食事代
丙H1〔7頁等〕,丙H12〔4頁〕及び弁論の全趣旨によれ
ば,Gは,各所属議員に対し,上記使途内規(b)①の使途内規に基
づき,「事務所光熱水費」として月額1万5000円を支給して
いたことが認められる。
これは,月額3万円を超える実費を2分の1で按分したもので
あるところ,各所属議員は自宅を事務所として使用していたこと
(丙H12〔4頁〕,証人H2〔16∼20項〕),各所属議員の
「2005年度旅費等精算表」(丙H1〔7頁等〕)による自宅
外における相談件数と自宅におけるそれとの対比などからすれば,
市民相談その他調査研究活動に伴う自宅使用率は社会通念上4分
の1であったと認めるべきである。したがって,月額7500円
の限度で,本件使途基準に合致する支出であると認めるのが相当
である。
【違法な支出27万円】
他方,丙H1〔7頁等〕及び弁論の全趣旨によれば,前記使途
内規に基づき,「茶菓子代」,「喫茶・駐車場代」,「高速代」
及び「食事代」が所属議員に対して支給されていたことが認めら
れるが,これらは調査研究活動たる市民相談に伴って生じる必要
経費であり,かつ,その額も社会通念上相当な範囲内であるとい
うべきであるから,上記支出は,会派の調査研究活動に必要な経
費に当たるとして,すべて本件使途基準に合致すると認められる。
c県政報告会等の経費
Gは,前記使途内規(c)のとおり,県政報告会等の際に資料代及び
茶菓子代として合計11万2200円を支出したと認められるとこ
ろ(前記前提事実等⑶イ,丙H1〔7頁等〕,H12〔5頁〕,弁
論の全趣旨),これは調査研究活動の一環である県政報告会等の参
加に伴って必要となる経費であり,かつ金額も相当な範囲内である
といえるから,本件使途基準に合致するものと認められる。
d各種会合参加経費
H1〔7頁等〕によれば,G所属議員による各種会合の参加経費と
して計15万5500円が政務調査費から支出されたと認められる
ところ,そのうち,各種懇談会及び祝賀会の費用計13万3000
円は,酒食を伴うものと推測され,本件使途基準に合致しないとい
うべきである。
しかし,その他の支出については,その活動内容及び支出目的に
照らし,会派の調査研究活動の一環としてされたものと認められる
から,本件使途基準に合致すると認められる。
【違法な支出13万3000円】
(なお,上記b∼dの政務調査費からの支出合計は毎月上限25万
円とされていたことが認められるが(丙H1〔6頁等〕),超過部
分の費目が不明であり,金額も5万1100円と多額でないこと
(丙H1〔22,27頁〕の合計欄参照)などに照らし,ここでは
実際の支出額を記載した旅費等精算表(丙H1〔7頁等〕)に基づ
いて計算した。)
e通信費《G5,9,14,24,32,38,47,62,73,
80,88,96番》
Gは,各所属議員に対し,同会派の前記使途内規に基づき,「通信
費」の名目で議員1人当たり月額1万5000円(合計54万円)
を支給したことが認められる(前提事実等⑶イ,弁論の全趣旨)と
ころ,これが実額を上回った場合に精算がなされた形跡はないうえ,
一律支給の合理性は認められるとしても,上記支出額が実額を上回
るものでないと認めるに足りる証拠がない。
しかし,Gは,平成20年度の支出について特段の立証をしないも
のの,政務調査研究の経費として,電話代等の一定の通信費の支出
を要することは明らかであり,また,他の会派との対比から,控え
目に見積もって,少なくとも1人当たり月額5000円は会派の調
査研究に必要な経費であると認めるのが相当である。したがって,
その限度での支出は,本件使途基準に合致すると認められる。
【違法な支出36万円】
fアンテナショップ視察旅費《G3番》
アンテナショップ視察旅費11万2674円は,県のアンテナシ
ョップをsに設立するに当たって,他県のアンテナショップを視察す
るために要した費用であると認められることに照らせば(丙H1
〔1∼4頁〕,H12〔1,2頁〕),会派の調査研究に必要な経
費であるといえる。したがって,この支出は,本件使途基準に合致
すると認められる。
(イ)研修費
a56分勉強会負担金《G16,35,57,94番》
前記ア(ア)aのとおり,56分勉強会は会派の調査研究に資するも
のであると認められるため,負担金計3万6339円は本件使途基
準に合致するものと認められる。
bh県t視察旅費《G64,65番》
t旅行費計44万2970円は,視察経緯(丙H13)や視察結果
の報告内容(丙H1〔87∼89頁〕)等に照らせば,tにおいて環
境保護行政の調査研究をしたものと認められ,これに反する的確な
証拠はないし,支出額が不相当であるともいい難い。したがって,
気象条件によりやむを得ず延泊したことにより生じた費用《G65
番》も含め,本件使途基準に合致するものと認められる。
c予算案説明会出席旅費《G82番》
予算案説明会出席旅費7万4093円は,同説明会が,国政の予
算案についての主な官庁からの説明や党政調役員から政策課題対応
及びGの実績についての説明であったこと(丙H1〔93頁〕)等
からすると,県政に関する会派の調査目的であると認めることはで
きないから,本件使途基準に合致しない支出であると認める。
【違法な支出7万4093円】
dI2工法視察費《G90番》
I2工法視察費5万4500円は,県の行う工事への同工法の導入
に関して,会派が調査研究を行ったことに伴う支出であったと認め
られるから(丙H1〔94∼98頁〕,H12〔8頁〕),本件使
途基準に合致するものと認められる。
(ウ)会議費《G17,41,66番》
コーヒー代計5055円は,丙H1〔102∼104頁〕に照らせ
ば,会派会議や来客との打合せの際に供されたコーヒーの代金である
と認められるところ,会議や面談の際に飲み物を提供することが社会
通念上不相当といえないことからすれば,本件使途基準に合致すると
認められる。
(エ)資料作成費
aコピー代《G7,12,18,26,27,42,50,59,6
8,78,86,99番》,インターネット使用料《G98番》
コピー代計7600円及びインターネット代4万5360円は,
県議会の議員控室における活動に付随して生じたものと認められる
(丙H12〔9,10頁〕,弁論の全趣旨)が,上記活動が専ら調
査研究活動であったとまでは認められず,一般の議員活動等も含ん
でいたと考えられるため,上記支出額のすべてを本件使途基準に合
致すると認めることはできない。
もっとも,議員の権限,職務の性質及び内容等に照らせば,2分
の1の限度で調査研究活動に資するものと認めるのが相当である。
したがって,上記支出額の2分の1の限度で本件使途基準に合致
すると認められる。
【違法な支出2万6480円】
b写真現像代《G52,53番》
写真現像代計2992円は,県政報告会等で使用する資料作成の
ため必要な経費であったと認められるから(丙H1〔119,12
0頁〕,H12〔9頁〕),会派による調査研究に資するものとし
て本件使途基準に合致すると認められる。
(オ)資料購入費
a各所属議員に対する「資料購入費」定額支給分《G6,10,15,
25,33,39,48,63,74,81,89,97番》
Gは,所属する各議員に対して,自宅で購入する新聞代や雑誌・書
籍代,インターネットプロバイダ料金等の費用として毎月1万50
00円ずつ合計54万円を一律に支給していたことが認められる
(前提事実等⑶イ,丙H12〔10頁〕,弁論の全趣旨)ところ,
これが実額を上回った場合に精算がなされた形跡はないうえ,一律
支給の合理性は認められるとしても,上記支出額が実額を上回るも
のでないと認めるに足りる証拠がないが,前記通信費同様,1人当
たり月額5000円は会派の調査研究に必要な経費であると認める
のが相当である。したがって,その限度での支出は,本件使途基準
に合致すると認められる。
【違法な支出36万円】
b議会開催時の一般新聞購読費《G28,69,70,102番》
議会開催時の新聞購読費計2万4830円は,一般紙の購入に充
てられたものであって(丙H1〔136,139,140,147
頁〕),会派の調査研究に資するというべきであるから,本件使途
基準に合致する支出であると認められる。
c雑誌「I1」購読費《G49,101番》
「I1」購読費1万9200円(研修費に計上された分《G49》も
ここに含める。)は,これが地域情報誌であることに照らせば(丙
H1〔69,143頁〕),地域情報を収集するために購入したも
のと認められるところ,これは,会派の調査研究に資するというべ
きであるから,本件使途基準に合致する支出であると認められる。
d会派代表印作製費《G58番》
会派代表者印作製費1万2700円は,調査研究活動とは無関係
であるというべきであるから,本件使途基準に合致しないものと認
める。
【違法な支出1万2700円】
(カ)事務費
a電話使用料《G1,19,20,30,43,44,51,71,
83,85,92番》
電話使用料3万3161円は,県議会の議員控室での活動に付随
して生じたものであると認められるところ(丙H12〔11頁〕),
前記のとおり2分の1の限度で会派の調査研究に資すると認めるの
が相当であるから,上記支出の2分の1の限度で本件使途基準に合
致すると認められる。
【違法な支出1万6580円】
b切手代《G2番》
切手代1120円は,切手14枚の購入であると認められるとこ
ろ(丙H12〔11頁〕),社会通念上,会派の調査研究に当たっ
て書類等の郵送の必要が生じるものというべきであるから,会派の
調査研究活動に係る経費であると認められる。したがって,この支
出は,本件使途基準に合致すると認められる。
c文具・事務用品・コピー用紙購入費
デジタルカメラ3台の購入費19万6717円《G56番》は,会
派の調査研究活動に資するといえるから,本件使途基準に合致する
ものと認められる。
他方,文具等購入費《G21,22,34,36,40,45,7
5,84番》,事務用品及びコピー用紙等購入費《G76,77,9
1,93,103,104番》合計85万6599円は,いずれも,
県議会の議員控室又は共用のコピー機において使用するための支出
であると認められるところ(丙H1〔141,154,155,1
57∼159,162,169,170,172,174,176,
177頁〕,H12〔11頁〕。資料購入費として計上された両面
テープ等事務用品代4万2630円《G75番》もここに含める。ま
た,平成18年4月5日付けの支出《G104番》は,支出時期に照
らし,平成17年度中に支出原因があったと認められる。),前記
と同様に2分の1で按分した額をもって調査研究に資するものと認
めるのが相当であるから上記支出額の2分の1の限度で本件使途基
準に合致すると認められる。
これに対して,原告らは,上記の支出のうち一部《G22,34,
36,40,45,75,76,84,91,93,104番》は
明らかに高額な支出であり,調査研究活動との関係が不明確である
とか,資産の形成にすぎないと主張するが,高額な支出であること
から直ちに調査研究活動に供されていないと評価することは困難で
あるし(なお,原告らは,コピー用紙代に比してコピー代としての
支出が少ないと主張するが,コピー代は,県議会における共用コピ
ー機を利用した代金であって,前提において誤りがあるといわざる
を得ない。),資産の形成であると認めるに足りる証拠はないから,
この点は,上記判断を左右しない。
【違法な支出42万8299円】
dノートパソコン代《G105番》
ノートパソコン代29万2635円は,ノートパソコンのほか,ワ
ゴン等の購入代金であること(丙H1〔178頁〕),支出の時期
に照らし,平成17年度中に支出原因があったこと,県議会の議員
控室での活動に付随して生じたものであることが認められるところ
(丙H12〔11頁〕,証人H2〔173項〕),前記と同様に2分
の1の限度で会派の調査研究に資するものと認められるから,上記
支出額の2分の1である14万6317円の限度で本件使途基準に
合致すると認められる。
【違法な支出14万6317円】
(キ)小括
以上によれば,Gが政務調査費から支出した1021万6438円
(ただし,別紙支出一覧表(G)上は1022万6160円)のうち,
違法な支出額は合計246万2985円である。
4県の有する請求権についてのまとめ
(1)原告らは,被告補助参加人らが,県に対し,不当利得返還義務を負うほ
か,不法行為に基づく損害賠償義務を負うとも主張する。
しかし,原告らは,故意又は過失について具体的主張をしていない。の
みならず,被告補助参加人らが,支出行為時において,各支出が本件使途
基準に合致せず,県に損害を与えることを認識していたと認めるに足りる
証拠はないし,これが過失であることを基礎づける事情も認めるに足りな
いから,被告補助参加人らに不法行為に基づく損害賠償義務が生じるとは
いえない。
(2)そうすると,被告補助参加人らは,それぞれ,県に対し,平成17年度の政
務調査費に係る前記認定の違法支出額と同額の不当利得返還義務を負うところ,
この義務は期限の定めのない債務であり,権利者が請求をした時に遅滞となる
から(民法412条3項),被告補助参加人らは,権利者である県の代表者で
ある被告が被告補助参加人らに対して請求をした日の翌日から民法所定の年5
分の割合による遅延損害金の支払義務を負う。
5結論
よって,原告らの請求は,上記の限度で理由があるので,その限度でこれを
認容し,その余は理由がないので棄却することとして,主文のとおり判決する。
大分地方裁判所民事第1部
裁判長裁判官金光健二
裁判官萩原孝基
裁判官前川悠
※別紙支出一覧表添付省略

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛