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平成25年6月20日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成25年(行ケ)第10025号審決取消請求事件
口頭弁論終結日平成25年5月30日
判決
原告株式会社ナビ
同訴訟代理人弁護士中村眞一
粟谷しのぶ
山崎岳人
被告株式会社ウインライト
同訴訟代理人弁護士原秋彦
中川直政
同弁理士原島典孝
板垣忠文
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
特許庁が取消2011-300681号事件について平成24年12月18日に
した審決を取り消す。
第2事案の概要
本件は,原告が,後記1の原告の本件商標に係る登録商標に対する不使用を理由
とする当該登録の取消しを求める被告の後記2の本件審判請求について,特許庁が
同請求を認めた別紙審決書(写し)の本件審決(その理由の要旨は後記3のとおり)
には,後記4のとおりの取消事由があると主張して,その取消しを求める事案であ
る。
1本件商標
原告は,平成15年10月31日,「JanNavi」の欧文字と「ジャンナビ」
の片仮名文字を二段に横書きしてなる商標(以下「本件商標」という。)について,
第9類「業務用テレビゲーム機,家庭用テレビゲーム機,硬貨作動式機械用の始動
装置,ゲーム機(テレビジョン受像機専用のもの),コンピュータ用プログラムを
記憶させた記憶媒体」,第28類「マージャン用具,硬貨投入式麻雀卓」及び第4
1類「インターネットのネットワークを利用して対戦する麻雀ゲームの提供,通信
を用いて行う麻雀ゲームの提供,麻雀の教授,麻雀競技会の企画・運営又は開催,
麻雀荘の提供,麻雀大会の企画・運営又は開催,麻雀用具の貸与,娯楽の提供,娯
楽情報の提供,ゲームセンターの提供,会員制による教育・娯楽の提供」を指定商
品又は指定役務として,登録出願をし,平成16年9月17日,設定登録を受けた
(登録第4802600号商標。甲69,70)
2特許庁における手続の経緯
(1)被告は,平成23年7月19日,継続して3年以上日本国内において商標権
者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが本件商標を指定役務中第41類「麻
雀用具の貸与」(以下「本件指定役務」という。)について使用した事実がないと
主張して,取消審判を請求し,当該請求は同年8月2日に登録された。
(2)特許庁は,これを取消2011-300681号事件として審理し,平成2
4年12月18日,「本件商標の指定役務中,本件指定役務については,その登録
は取り消す。」旨の本件審決をし,同月28日にその謄本が原告に送達された。
3本件審決の理由の要旨
本件審決の理由は,要するに,原告は,本件審判の請求の登録前3年以内に日本
国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが本件指定役
務について,本件商標の使用をしていた事実を証明したものとは認められないから,
本件商標の登録は,商標法50条の規定により,本件指定役務について取り消すべ
きである,というものである。
4取消事由
本件商標の不使用に係る判断の誤り
第3当事者の主張
〔原告の主張〕
1本件商標を付した麻雀台の存在について
(1)本件審決は,本件商標を付した麻雀台が要証期間(平成20年8月2日から
平成23年8月1日まで。以下「本件要証期間」という。)に存在した事実を裏付
けるものである原告のホームページ(甲4)について,平成23年4月11日に開
設されたものと認めることはできないと判断した。
しかし,原告は,平成23年4月8日にホームページのためにドメインを取得し,
同月11日には,あらかじめ制作していたWebデータを用いて,ホームページを
開設しており,その事実は,Aの陳述書(甲38,43)によって裏付けられてい
る。
なお,本件審決は,Aが原告と密接な関係にある人物であることをもって,Aの
陳述書には信用性が認められないと判断した。
しかし,Aは,平成23年4月9日から同年5月31日までの間,原告の代表取
締役であり,同年4月当時,ホームページを制作,開設した当事者でもある。その
当時,Aと原告が密接な関係にあったことは当然であり,かかる事実をもって,同
人の陳述の信用性が否定されるということにはならない。
また,本件審決は,株式会社ジョイスの麻雀台「パイリーダー」と原告の麻雀台
「ジャンナビ」との関係を説明するAの陳述書(甲43)について,「ジャンナビ
JN02手打ち台」なる製品名で平成23年4月から自社のホームページに手打ち式の
麻雀台を掲載していたとの記載がある一方で,同じような麻雀台「L」を1年後(平
成24年4月)に完成させたとの記載もあるなど,不自然な記載が散見されるとか,
平成23年6月20日に譲り受けたとする「K」の麻雀台の下部には,その説明と
相違して,「平成24年6月20日」との記載が見られるなどとして,上記陳述書
をもって,本件要証期間に本件商標を付した麻雀台が存在したと認めることはでき
ないと判断した。
しかし,上記陳述書中の麻雀台「L」の完成に係る「平成24年4月」との記載
は,「平成23年4月」の,麻雀台「K」の譲り受けに係る「平成24年6月20
日」との記載は,「平成23年6月20日」の誤記であるから,上記陳述書の内容
は,時系列において不自然なものではない。
(2)本件審決は,本件商標を付した麻雀台が存在したことの証拠となるべき写真
がないと指摘した。
しかし,有限会社LSコミュニケーションズ(以下「LSコミュニケーションズ」
という。)のアミューズメント事業部長であるBの陳述書(甲42)には,概略,
「平成23年6月3日には,原告との間で,ソフトウェア製品の販売に関する契約
に合意し,旧車二輪専門店BANBAN(以下「BANBAN」という。)に対し,
ソフトウェアを販売しました。BANBANのホームページには,平成24年6月
から麻雀ゲームジャンナビが掲載されています。さらに,同月6日には,原告との
間で販売代理店契約を結び,全自動の麻雀台「ジャンナビ」を麻雀店ファーストワ
ン(以下「ファーストワン」という。)に販売した。」旨の記載があるところ,B
ANBANのホームページに麻雀ゲームジャンナビが掲載されたのは,「平成23
年6月」の誤記である。したがって,LSコミュニケーションズがBANBANに
ソフトを販売し,BANBANがこれをホームページに掲載をしたのは平成23年
6月であり,同社がファーストワンに全自動式麻雀台を販売したのも同月6日であ
って,これらの販売は,本件要証期間に行われたものである。そして,上記陳述書
に添付された写真は,本件商標を付した麻雀台の存在を裏付けるものである。
(3)以上のとおり,本件要証期間に本件商標を付した麻雀台は存在していたもの
である。
2秋葉麻雀同好会との取引について
(1)本件審決は,原告が平成23年4月28日に秋葉麻雀同好会に本件商標を付
した麻雀台を貸与したことを裏付ける証拠である物品受領書(甲7の1枚目上段)
について,同物品受領書には受領者の住所の記載がないとして,これのみをもって
同物品受領書に記載された取引が行われたことを認めることはできないと判断した。
しかし,上記物品受領書に受領者の住所の記載がないのは,受領者の負担を軽減
するため,受領者からはサインのみをもらったためであり,住所の記載がないとい
う事実だけをもって,同物品受領書の信用性を否定することはできない。そして,
同物品受領書の品名欄には,「ジャンナビ手打ち台JN02」と,金額欄には「105
00」と,備考欄には「レンタル代として」とそれぞれ記載されており,これらの
記載は,平成23年4月28日に原告が秋葉麻雀同好会に手打ち式麻雀台を貸与し
たことを裏付けるものである。
(2)本件審決は,「麻雀台「ジャンナビ」は,平成23年4月28日,秋葉麻雀
同好会のCに貸し付けました。」と記載されたAの陳述書(甲38)について,
その陳述を裏付ける具体的な証拠がないと判断した。
しかし,上記陳述書の陳述内容を裏付けるものとして,上記物品受領書や領収証
(控)(甲54)等が存在する。また,Aの上記陳述書は,当該陳述書の信用性が
否定されない限り,それ自体として直接証拠になるべきものである。
(3)以上によれば,原告が,平成23年4月28日に秋葉麻雀同好会に本件商標
を付した麻雀台を貸与したことが認められるべきである。
3Dとの取引について
(1)本件審決は,原告が平成23年6月20日にDに本件商標を付した麻雀台
を貸与したことを裏付ける証拠である物品受領書(甲7の1枚目下段)について,
同物品受領書には受領者の住所の記載がないとして,これのみをもって同物品受領
書に記載された取引が行われたことを認めることはできないと判断した。
しかし,前記2(1)と同様に,上記物品受領書に受領者の住所の記載がないのは,
受領者の負担を軽減するため,受領者からはサインのみをもらったためであり,住
所の記載がないという事実だけをもって,当該物品受領書の信用性を否定すること
はできない。そして,同物品受領書の品名欄には,「ジャンナビ麻雀台JN01(全自
動卓)」と,金額欄には「21000」と,備考欄には「レンタル代として」とそ
れぞれ記載されており,これらの記載は,平成23年6月20日に原告がDに麻雀
台を貸与したことを裏付けるものである。
(2)本件審決は,「私は,平成23年6月20日に確かに原告より,「ジャンナ
ビ」という商標の付いた全自動式の麻雀台1台を21000円で借りました。」
と記載されたDの陳述書(甲20)について,同陳述書には原告とDとの間の貸
与に関する経緯が陳述されていないとして,その陳述は真実ではないと認定した。
しかし,虚偽陳述を推認させる事実が存在しないにもかかわらず,ある事実経過
についての陳述がないという理由のみで陳述の信用性を否定することは認められる
べきではない。
また,本件審決は,Dの陳述書(甲20)における同人の署名と,物品受領書(甲
7の1枚目下段)における同人の署名では,筆跡が異なると指摘する。
しかし,上記物品受領書の署名は,走り書きでサインされたものであり,陳述書
(甲20)における署名と筆跡が若干異なることは,同一人物による署名であって
も当然にあり得ることである。
(3)本件審決は,原告がD宛てに作成した領収書(控)(甲55)と物品受領
書(甲7の1枚目下段)では,伝票番号の相違があること,上記領収書(控)はパ
ソコンで作成されているのに,上記物品受領書は手書きで作成されていること,上
記領収書(控)は,口頭審理における審尋において,原告が,他に上記物品受領書
に関する書類はない旨主張した後に提出されたものであることなどからすると,上
記領収書(控)の作成過程や上記物品受領書の信憑性については,疑問を抱かざる
を得ないと判断した。
しかし,金銭に係る領収書と物品受領書はそれぞれ異なる書類であり,それぞれ
によって伝票番号の相違があることは当然にあり得ることである。
(4)以上によれば,原告が,平成23年6月20日にDに本件商標を付した麻
雀台を貸与したことが認められるべきである。
4LSコミュニケーションズとの取引について
(1)本件審決は,原告が平成23年6月20日及び同年7月20日にLSコミュ
ニケーションズに本件商標を付した麻雀台を貸与したことを裏付ける証拠である両
者間の販売代理店契約書(甲32)について,同契約書に添付された取扱販売物目
録の表示が,販売物の表示ではなく,本件商標の指定役務と同一の表示であること
をもって,同契約書の作成経緯については疑義を抱かざるを得ないと判断した。
しかし,LSコミュニケーションズが原告の代理店として行う業務の内容は,商
品の販売のみならず,役務の提供も含まれるのであり,その内容を明確にするため
に,あえて指定役務の表現を契約書に用いることはあり得ることであり,かかる記
載が,販売代理店契約書自体の信用性を否定するような不合理なものということは
できない。
(2)本件審決は,原告とLSコミュニケーションズとの間の取引に係る領収書
(控)・入金伝票(甲44,46)に関し,原告のLSコミュニケーションズに対
するレンタル料は月額5万円とされ,原告のホームページで提示しているレンタル
料(2万円)の2.5倍もの高額であるとして,このような取引があったこと自体
に疑義があると判断した。
しかし,原告は,当初,LSコミュニケーションズに対し,麻雀台を売却するこ
とを予定していたが,LSコミュニケーションズから,事業が軌道に乗るまでは,
レンタルとして月々のレンタル料を支払い,最終的に売却代金の精算をするという
形にしてほしいとの要請があった。そこで,原告は,最終的には売却として精算す
ることを前提に,月額5万円というレンタル料で特別にLSコミュニケーションズ
に貸与したのである。
(3)以上によれば,原告が,平成23年6月20日及び同年7月20日にLSコ
ミュニケーションズに本件商標を付した麻雀台を貸与したことが認められるべきで
ある。
5よって,本件商標の不使用に係る本件審決の判断は誤りである。
〔被告の主張〕
1本件商標を付した麻雀台の存在について
(1)原告のいう麻雀台に本件商標が付されていたことは,客観的な証拠により立
証されておらず,また,その販売を行った主体が原告であるという証拠もない。
(2)原告は,平成23年4月11日に開設された原告のホームページに麻雀台が
掲載されていた旨主張する。
しかし,原告のホームページの公開時期を立証する客観的な証拠はない。ドメイ
ンを取得しても,コンテンツを掲載していないウェブサイトはいくらでもあり,ド
メイン取得の事実を示すのみでは,ホームページの運用開始日が証明されるもので
はない。
かえって,ホームページの「沿革」欄には,平成16年9月に「ネットワークを
利用して対戦する麻雀ゲームジャンナビの提供」と記載されているが,同年7月1
日から平成18年5月24日まで,原告は,休眠会社の状態にあったこと,Aは,
被告に対する平成19年4月10日付け通知書において,原告がネットワークを利
用して対戦する麻雀ゲームの提供を行っていないことを認めていること,ドメイン
の取得時期は,Aが原告の代表取締役に就任した時期とほぼ一致していることなど
からすると,原告のホームページは,本件審判請求がされた後に,本件商標の使用
の体裁を取り繕うために制作されたものであることが強く推認される。
(3)原告は,Bの陳述書(甲42)に記載されている麻雀台の販売日の記載は
誤記であり,正しい記載に基づけば,LSコミュニケーションズはファーストワン
に対し,「平成23年6月6日」に麻雀台を販売したものである旨主張する。
しかし,原告がLSコミュニケーションズに麻雀台を販売したことを裏付ける客
観的な証拠はなく,そのような事実があった旨述べるBの陳述書の内容には,信憑
性がないといわざるを得ない。
2秋葉麻雀同好会との取引について
原告は,平成23年4月28日に秋葉麻雀同好会なる団体に対し,麻雀台を貸与
した旨主張する。
しかし,原告がそのような貸与があったことの裏付けとして提出した証拠は,次
のとおり,いずれも信憑性のないものである。
(1)電子メール(甲60~66)について
原告は,秋葉麻雀同好会等の取引先との間の電子メールの写しと称する書面(甲
60~66)を提出しているが,これらの書面は,原告において,いつでも単独で
作成できるものであり,証拠としての価値を見いだすことはできない。
しかも,甲66の中段辺りのメールヘッダでは,金曜日(Friday)が「Fliday」
と間違って綴られているが,メールヘッダは,本来,コンピュータによって自動的
に付される記載であるから,スペルミスなど起こり得ないはずであり,この書面が
メールヘッダ部分を含めて原告によって捏造されたものであるのは明らかである。
そのほか,時刻表示において24時間表示と午前・午後表示が混在していたり,月
を示す英語の先頭文字が小文字で表記されるなど,コンピュータによって自動的に
生成されるメールヘッダの記載としては,あり得ない記載がある。
したがって,上記電子メールは,いずれも信用することができないものである。
(2)物品受領書(甲7の1枚目上段)及び領収証(控)(甲54,67)につい

前記(1)のとおり,麻雀台の貸付の裏付けとして提出された,秋葉麻雀同好会と原
告との間でやり取りされたというメールは,変造されたものであり,当該貸付行為
自体が存在しないことを強く推認させるものであるから,そのようなメールの内容
に沿う物品受領書(甲7の1枚目上段)や領収証(控)(甲54,67)もまた,
およそ信用することはできないものである。
3Dとの取引について
原告は,平成23年6月20日にDなる人物に対し麻雀台を貸与した旨主張する。
しかし,原告がそのような貸与があったことの裏付けとして提出した証拠は,次
のとおり,いずれも信憑性のないものである。
(1)電子メール(甲61)について
前記2(1)のとおり,原告が麻雀台の貸与を立証するものと称して提出する電子メ
ールには,明らかに変造されたものが多数含まれており,全体として信用すること
ができないものである。したがって,原告とDとの間でやり取りされたという電子
メール(甲61)もまた,信用することはできない。
(2)物品受領書(甲7の1枚目下段),Dの陳述書(甲20)及び領収書(控)
(甲55)について
前記のとおり,麻雀台の貸与の裏付けとして提出された,Dと原告との間でやり
取りされたというメールは,信用することができず,当該貸付行為自体が存在しな
いことを強く推認させるものであるから,そのようなメールの内容に沿う物品受領
書(甲7の1枚目下段),Dの陳述書(甲20)及び領収書(控)(甲55)もま
た,およそ信用することができない。
4LSコミュニケーションズとの取引について
原告は,平成23年6月20日及び同年7月20日にLSコミュニケーションズ
に対し,麻雀台を貸与した旨主張する。
しかし,原告がそのような貸与があったことの裏付けとして提出した証拠は,次
のとおり,いずれも信憑性のないものである。
(1)電子メール(甲62~66)について
前記2(1)のとおり,原告が麻雀台の貸与を立証するものと称して提出する電子メ
ールは,変造された内容を包含しており,全体として信用することができないもの
である。
(2)領収書(控)・入金伝票(甲44,46),受領書(甲45,47)につい

LSコミュニケーションズに対する麻雀台の貸付を裏付けるものとして原告が提
出した電子メールは,およそ信用することができず,当該貸与行為自体が存在しな
いことを強く推認させるものであるから,そのようなメールの内容に沿う上記領収
書(控)・入金伝票(甲44,46),受領書(甲45,47)もまた,およそ信
用することはできない。
また,これらの書面によれば,貸与されたジャンナビJN01の1か月当たりの賃料
は5万円であるところ,原告は,自身のホームページでは,当該麻雀台のレンタル
料を1か月当たり2万円と表示しているから,原告は,販売代理店契約を締結して
いる取引先(LSコミュニケーションズ)との間ではホームページに記載している
料金の2.5倍の金額でレンタルするという異常な取引をしていることになる。
これに対し,原告は,LSコミュニケーションズから,事業が軌道に乗るまでは,
麻雀台のレンタルということにして月々のレンタル料を支払い,最終的に売却代金
を精算する形にしてほしいとの要請があったと主張する。
しかし,当該取引の根拠であると原告が主張する甲32の契約は,「販売代理店
契約」であって,同契約が予定しているのは,LSコミュニケーションズが原告か
ら購入,調達した製品を第三者に対して再販売する独占的権利を付与されるという
取引である。そうだとすると,LSコミュニケーションズから原告に対し,販売で
はなく,上記のような要望があったという主張の趣旨は不明であるとしかいいよう
がなく,また,かかる要望は,甲32の契約における取引の目的である販売代理店
なる地位の付与からは大きくかけ離れているものであって,上記弁解が真実である
とはおよそ考え難い。
(3)販売代理店契約書(甲32)について
甲32は,LSコミュニケーションズが「本件販売物を販売」することを内容と
するものであるところ(第2条),「本件販売物」の内容を列挙した別紙「取り扱
い販売物目録」中の3ないし12は,本件商標の第41類の指定役務全般を引き写
したものにすぎず,意味不明の記載である。
5よって,本件商標の不使用に係る本件審決の判断に誤りはない。
第4当裁判所の判断
1本件商標を付した麻雀台の存在について
(1)原告は,本件商標を付した麻雀台が本件要証期間に存在した事実を裏付ける
ものである原告のホームページは平成23年4月11日に開設されており,その事
実は,Aの陳述書(甲38,43)によって裏付けられていると主張する。
確かに,甲38のAの陳述書には,原告のホームページが平成23年4月11日
に開設された旨記載されているものの,これを裏付けるに足りる客観的な証拠はな
いから,この陳述をもって,同日,原告のホームページが開設されたと認めること
はできないし,他にこれを認めるに足りる証拠はない。
なお,甲43のAの陳述書には,原告が,平成23年6月20日に株式会社ジョ
イスから譲渡された「パイリーダー」という麻雀台の名称を「ジャンナビ」に改め,
これを麻雀台に表記した旨記載されているものの,これを裏付けるに足りる客観的
な証拠はないから,この陳述をもって,本件要証期間に本件商標を付した麻雀台が
存在していたものと認めることはできない。
(2)原告は,Bの陳述書(甲42)における麻雀台の販売日の記載は誤記であ
り,正しい記載に基づけば,原告との間で麻雀台の販売代理店を締結していたLS
コミュニケーションズがファーストワンに麻雀台を販売したのは,「平成23年6
月6日」であるとか,同陳述書に添付された写真は,本件商標を付した麻雀台の存
在を裏付けるものであるなどと主張する。
確かに,Bの陳述書には,LSコミュニケーションズが麻雀台「ジャンナビ」を
ファーストワンに販売した旨記載され,また,そこで引用されている写真2の2に
は,麻雀台様の台の側面に「JANNAVI」様の文字が刻印されたプレートが貼
付されていることが認められる。
しかしながら,原告も自認しているように,Bの陳述書には,LSコミュニケー
ションズがファーストワンに麻雀台を販売したのは平成24年6月である旨記載さ
れている以上(甲42),同陳述書の記載から,LSコミュニケーションズがファ
ーストワンに対し,平成23年6月に麻雀台を販売したとの主張事実を認めること
はできないし,仮に,Bの陳述書には原告の主張するような誤記があったとしても,
同人の陳述を裏付ける客観的証拠は何ら示されていないから,同人の陳述のみをも
って上記主張事実を認めることもできない。
なお,Bの陳述書に添付された上記写真の撮影日,撮影者,撮影場所は,いずれ
も明らかにされておらず,そのような写真によって,本件要証期間に本件商標が付
された麻雀台が存在していたものと認めることはできない。
(3)また,甲20のDの陳述書には,「平成23年6月20日に原告から「ジ
ャンナビ」という商標の付いた麻雀台1台を2万1000円で借りた」旨の記載が
ある。
しかし,「ジャンナビ」という商標の付いた麻雀台が存在していたというDの上
記陳述を裏付ける客観的証拠は何ら示されていないから,同人の陳述のみをもって,
本件要証期間において,本件商標が付された麻雀台が存在していたものと認めるこ
とはできない。
(4)以上のほかに,原告は,秋葉麻雀同好会,D及びLSコミュニケーション
ズとの間でそれぞれ麻雀台の貸与があったことを立証する証拠として,物品受領書
(甲7の1枚目上段及び下段),領収証(控)(甲54,67),領収書(控)(甲
55),領収書(控)・入金伝票(甲44,46),受領書(甲45,47),電
子メール(甲60~66)等を提出している。
しかしながら,上記各書証も,本件要証期間に本件商標が付いた麻雀台が存在し
ていたことを示すものではなく,他にこれを認めるに足りる客観的な証拠はない。
2以上によれば,その余の点について検討するまでもなく,本件要証期間に日
本国内において,商標権者である原告,専用使用権者又は通常使用権者のいずれも
が本件商標を本件指定役務について使用した事実があるとは認められない。
3結論
以上の次第であるから,原告主張の取消事由には理由がなく,原告の請求は棄却
されるべきものである。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官土肥章大
裁判官大鷹一郎
裁判官齋藤巌

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