弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

     主     文
  原判決を破棄する。
  本件を大阪家庭裁判所に差し戻す。
     理     由
本件控訴の趣意は,被告人作成の控訴趣意書並びに弁護人相川嘉良作成の控訴趣
意書及び同補充書に各記載のとおりであるから,これらを引用する(なお,弁護人
は,被告人の控訴趣意は事実誤認と量刑不当の主張に尽きる旨釈明した。)。
まず,弁護人の控訴趣意中,不告不理原則違反(刑訴法378条3号後段違反)
の主張についてみるに,その論旨は,原判決は,原審第1回公判期日において,原
審弁護人からの本件起訴にかかる児童福祉法違反事件の犯行日に関する求釈明に対
し,検察官が「起訴状に8月初めころとあるのは,8月1日から8月4日の間とい
うことで,その間では行為は1回という趣旨です。7月には,行為は合計複数回あ
ります。」と釈明していたのに,あえて,その犯行日を「平成13年7月末前後こ
ろ」とした上で,その余の点については起訴状記載の公訴事実と同じ内容の事実を
認定,摘示して被告人を有罪としているが,このように起訴されていない7月中の
行為を含む認定は明らかな訴因逸脱であって,原判決には,審判の請求を受けない
事件について判決をした違法がある,というのである。
そこで,記録を調査して検討すると,本件起訴状には,公訴事実として,「被告
人は,平成13年8月初めころ,大阪市a区b町c丁目d番e号所在のfマンショ
ンg号室被告人方において,自己の長女A(昭和63年1月9日生,当時13年)
が満18歳に満たない児童であることを知りながら,同女の着衣を脱がせて全裸に
した上,自己の陰茎を同女の陰部に押し付け,自己の手指を同女の陰部に挿入する
などして,同女をして自己を相手に性交類似の行為をさせ,もって,児童に淫行を
させる行為をしたものである。」と記載されていること,検察官は,原審第1回公
判期日において,原審弁護人からの犯行日に関する求釈明に対し,「起訴状に8月
初めころとあるのは,8月1日から8月4日の間ということで,その間では,行為
は1回という趣旨です。7月には,行為は合計複数回あります。」と釈明したこ
と,この釈明を踏まえて,被告人は,罪状認否において,「7月下旬に本件と同様
の行為をしたことはありますが,8月以降はそのような行為は一切しておりませ
ん。」と陳述し,原審弁護人もまた,「行為をしたことについては認めますが,8
月以降はしていない。」と述べて被告人の無罪を主張したこと,ところで,被告人
は,捜査,公判を通じ,平成13年7月中に長女に4回くらい性的ないたずらをし
たことを認めた上で,同月24日から同月27日までの間に1回起訴状記載のよう
な性交類似の行為をしたのが最後で,その後はしていない旨供述していること(原
判決挙示の被告人の警察官及び検察官調書(乙2,6,8)並びに原審公判供
述),他方,長女は,被告人から5回にわたり性的ないたずらをされたとした上
で,最初は同年7月初めころ,2回目は同月9日か10日ころ,3回目は同月16
日から19日までの間,4回目は同月末で,その時は服を無理矢理脱がされ,馬乗
りになって姦淫された,最後が同年8月3日で,その被害の内容については公訴事
実に沿うものであった旨の供述をしていること(原判決挙示の同女の警察官及び検
察官調書(甲1ないし3)),同女のこの供述は,具体的かつ詳細で,関係証拠と
も矛盾がなく,信用性が高いこと,ところが,原判決は,犯罪事実として,公訴事
実とほぼ同じ内容としながらも,ただ,犯行日については,これを「平成13年7
月末前後ころ」と異なる認定,摘示をしたことがそれぞれ認められる。
 以上によれば,本件の場合,起訴にかかる「平成13年8月初めころ」の児童福
祉法違反事実以外に,これと併合罪の関係となり得る「平成13年7月下旬ころ」
の同法違反事実についても,相当程度証明が尽くされているといえるところ,原判
決は,検察官が釈明により「平成13年8月1日から8月4日の間」と特定した本
件訴因の時間的範囲をあえて「同年7月末前後ころ」まで拡張し,逸脱して犯罪事
実を認定したために,その認定した事実が,本来検察官が訴追の対象として指定し
た犯罪事実であるのか,それ以外の平成13年7月下旬ころの児童福祉法違反事実
であるのか,著しく明確さを欠くに至っているもので,しかも,この点について何
ら判断を示していないのであるから,結局,原判決は,その判文を見る限り,訴追
の対象となった犯罪事実について判断をしないまま,それ以外の事実を認定した可
能性も否定できない。そうしてみると,原判決には,所論のいう審判の請求を受け
ない事件について判決をした違法があるといわざるを得ないし,さらに,その裏返
しとして,審判の請求を受けた事件について判決をしなかった違法もあるといわざ
るを得ない。論旨は理由がある。
したがって,被告人の論旨及び弁護人のその余の論旨について判断するまでもな
く,原判決は刑訴法397条1項,378条3号により破棄を免れない。そしてま
た,原審及び当審で取り調べた証拠からすると,本件は直ちに控訴裁判所で判決を
することが相当な場合とも認められない。
 よって,同法400条本文により本件を原裁判所である大阪家庭裁判所に差し戻
すこととし,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 白井万久 裁判官 大西良孝 裁判官 磯貝祐一 )

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛