弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人を懲役三月に処する。
     原審における未決勾留日数中二五日を右本刑に算入する。
         理    由
 本件控訴の趣意は広島高等検察庁検察官飯嶋宏提出にかかる広島地方検察庁尾道
支部検察官秀岡幾仙作成名義の控訴趣意書記載のとおりであり、これに対する答弁
は弁護人鶴敍作成名義の答弁書(但し一(骨子)(2)の冒頭五行を除く。)記載
のとおりであるから、いずれもここにこれを引用する。
 これに対する当裁判所の判断は次のとおりである。
 検察官の論旨第一点。所論は公訴事実第一の点について、法令の適用の誤を主張
し、出入国管理令七〇条七号の罪は継続犯と解すべきであるという。
 <要旨>按ずるに、出入国管理令七〇条七号の罪は、同号に「当該許可書に記載さ
れた期間を経過して本邦に残留するもの」と規定されている如く、所定の期
間を経過した後、本邦に引続き残留する限り(不法残留者の容疑で身柄を拘束され
るまで)、継続して成立する所謂継続犯と解するのが、同号の文言にも合致し、同
令の目的にそうものというべきである(最高裁判所昭和四三年(あ)第二五一六号
同四五年一〇月二日決定、刑集二四巻一一号一四五七頁参照)。
 然らば、本件三年の時効は被告人が本件に関連して身柄を拘束された昭和四九年
三月一七日から進行すべきものであり、本件起訴当時は時効が完成していないに拘
らず、公訴事実第一の点を認めながら、右犯罪行為の公訴時効が昭和四五年一〇月
二七日から進行し、三年を経過した昭和四八年一〇月二七日時効が完成したものと
して、昭和四九年三月二九日右犯罪について起訴された被告人をその点について免
訴した原判決には法令の適用の誤があり、その誤が判決に影響を及ぼすことが明ら
かであり、右事実と原判示事実とは刑法四五条前段の併合罪として処断すべき場合
であるから、原判決はその余の論旨に対する判断をまつまでもなく、右法令の適用
の誤により破棄を免れない。
 よつて、刑事訴訟法三九七条一項、三八〇条により原判決を破棄し、同法四〇〇
条但書により更に判決する。
 当裁判所が、原判示「罪となるべき事実」に加えて認定する罪となるべき事実は
次のとおりであり、これに対する証拠の標目は原判決挙示の証拠と同一である。
 (罪となるべき事実)
 被告人は、韓国に国籍を有する外国人であるが、昭和四五年一〇月二七日貨物船
A号により北九州市小倉港に入港した際、下関入国管理事務所小倉港出張所入国審
査官から寄港地上陸許可を受けて上陸したが、同許可証に記載された同日午後五時
までの期間を経過して昭和四九年三月一七日まで不法に本邦に残留したものであ
る。
 (法令の適用)
 当裁判所が認定した前掲事実と、原判決が適法に確定した原判示事実とに法令を
適用すると、被告人の判示出入国管理令違反の所為は、同令七〇条七号(一四条)
に、原判示外国人登録法違反の所為は、同法一八条一項一号(三条一項)に該当す
るところ、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、各所定刑中懲役刑を選択の
上、同法四七条本文、一〇条により重い前者の罪の刑に同法四七条但書の制限内で
法定の加重をした刑期範囲内で被告人を懲役三月に処し、刑法二一条を適用して原
審における未決勾留日数中二五日を右本刑に算入し、原審及び当審における訴訟費
用については刑事訴訟法一八一条一項但書によりこれを被告人に負担させないこと
として主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 高橋文恵 裁判官 雑賀飛龍 裁判官 渡辺伸平)

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