弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
     当審における未決勾留日数中四拾日を原判決の本刑に算入する。
     当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
         理    由
 弁護人村部芳太郎及び被告人の控訴趣意は、各提出にかかる控訴趣意書記載のと
おりであるから、ここにこれを引用する。
 弁護人の控訴趣意第一点(理由のくいちがい)について
 所論の要旨は、Aが金品強取の目的を以てBを欧打した旨認定しているが、原判
決挙示の証拠を以てしては同人が右のごとき目的にて同人を殴打した事実を認める
ことはできない畢竟原判決は理由にくいちがいあるものというのであるが、原判決
挙示の証拠を綜合検討すると原判示事実を十分認めるに足り、原判決にはなんら所
論のごとき理由のくいちがいなく、又訴訟手続に法令違背の違法はな、。論旨は理
由がない。
 被告人の控訴趣意(事実誤認)及び弁護人の控訴趣意第二点(事実誤認)につい
て、
 <要旨>按ずるに刑法第二百四十条前段の罪は強盗の結果的加重犯であつて単純一
罪を構成するものであるから、他人が強盗の目的を以て暴行を加えた事実を
認識してこの機会を利用しともに金品を強取せんことを決意し、茲に互いに意思連
絡の上金品を強取したものは、仮令共犯者がさきになしたる暴行の結果生したる傷
害につきなんら認識なかりし場合と雖も、その所為に対しては強盗傷人罪の共同正
犯を以て間擬するのが正当である。しかして原判決挙示の証拠を綜合すれば、被告
人は昭和二十八年一月二十四日午前一時過ぎ頃A外一名と飲酒して札幌市ab丁目
の電車通を相前後して通行中、Aが金品強取の目的を以て通りかかつたBの顔面を
殴打し「金を出せ」と要求しているのを知つて、自己もこの機会を利用して金品を
強取せんことを企て、直ちにAと協力し茲に同人と意思連絡の上先ずBから同人所
持の金七百円を奪い、更にAがBの左腕を抑え、被告人がBのはめていた腕時計を
外してこれを強奪し、その際Aの暴行によりBの右眼部に治療一週間を要する打撲
傷を負わしめた事実を認め得べく、原判決認定の事実もその判文において些か明瞭
を欠くところがあるけれども、その趣旨とするところは畢竟右と同じである。しか
らば、被告人の所為は冒頭説示の理由により強盗傷人罪の共同正犯にあたること勿
論であつて、原判決には事実の誤認なく、所論には賛同し難い。論旨は理由がな
い。
 よつて刑事訴訟法第三百九十六条により本件控訴を棄却すべきものとし、刑法第
二十一条を適用して当審における未決勾留日数中四拾日を原判決の本刑に算入し、
刑事訴訟法第百八十一条第一項に従い当審における訴訟費用は被告人の負担とし、
主文のとおり判決する。
 (裁判長判事 熊谷直之助 判事 成智寿朗 判事 笠井寅雄)

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