弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1本件抗告を棄却する。
2抗告費用は抗告人らの負担とする。
事実及び理由
1抗告人は,「原決定を取り消す。相手方が学校設置条例(昭和39年大阪市条
例第57号)の一部を改正する条例(以下「本件改正条例」という。)の制定をも
ってした大阪市立A養護学校を平成21年3月31日限り廃止する旨の処分の効
力を本案判決が確定するまで停止する。」との裁判を求めた。
本件抗告の理由は別紙「即時抗告理由書」(写し)記載のとおりであり,これ
に対する相手方の主張は別紙「答弁書」(写し)記載のとおりである。
2本案事件は,相手方が,学校設置条例に基づき設置している特別支援学校であ
る大阪市立A養護学校(以下「A養護学校」という。)を平成21年3月31日
限り廃止することなどを内容とする本件改正条例を制定したため,同校に在学す
る児童・生徒及びその保護者である抗告人らが,本件改正条例によるA養護学校
の廃止(以下「本件学校廃止」という。)は違法であるなどと主張して同廃止の
取消しを求めた抗告訴訟であるところ,本件は,抗告人らが,本件学校廃止を定
めた本件改正条例の制定は処分に該当し,同校が廃止されることにより生ずる重
大な損害を避けるため緊急の必要があると主張して,行政事件訴訟法25条2項
に基づき,相手方が本件改正条例の制定をもってした本件学校廃止の効力を上記
のとおり停止することを求めた事案である。
原決定は,本件学校廃止を定めた本件改正条例の制定行為は,抗告訴訟の対象
となる処分に該当しないから,その取消しを求める本案訴訟は不適法であるとい
わざるを得ず,適法な本案訴訟の係属を欠く上,相手方が本件改正条例を制定し
てした本件学校廃止は,これ以上の疎明を欠く本件においては,違法であるとは
いえないから,本件は「本案について理由がないとみえるとき」に該当するとし
て,抗告人らの申立てを却下したため,これを不服とする抗告人らが本件抗告に
及んだものである。
3当裁判所も,本件申立ては理由がないと判断するものであり,その理由は以下
のとおりである。
(1)まず,本件学校廃止を定めた本件改正条例制定行為の処分性につき判断す
るに,条例の制定は,一般的・抽象的な法規範を定立する立法作用の性質を有
するものであり,原則として個人の具体的な権利義務ないし法的利益に直接の
法的効果を及ぼすものではないから,抗告訴訟の対象となる処分には該当しな
いが,他に行政庁の具体的な処分を経ることなく当該条例自体によって,その
適用を受ける特定の個人の具体的な権利義務ないし法的利益に直接影響を及ぼ
すような例外的な場合には,当該条例の制定行為は行政処分に該当するとして,
その取消請求が許されるものと解するのが相当である。
しかして,原決定の認定するとおり,抗告人B,同C,同D及び同Eは,現
在いずれもA養護学校に在学し,その親権者である抗告人F及び同Gは,大阪
市教育委員会から抗告人Bほか3名が就学すべき学校としてA養護学校を指定
する旨の通知をそれぞれ受け,これによって抗告人Bほか3名と相手方との間
には,A養護学校という特定の公の施設の利用関係としての在学関係が設定さ
れていると解されること,相手方は,本件改正条例による改正前の学校設置条
例(昭和39年大阪市条例第57号,疎甲3)によって10校の特別支援学校
を設置しているところ,A養護学校は,新学則による廃止前の大阪市立養護学
校学則(昭和35年大阪市教育委員会規則第11号,疎甲4)に基づき,唯一,
病弱者を就学対象者として寄宿舎を設置している養護学校であって(同学則1
9条1項),大阪市内から約30キロメートル離れた場所に位置するため,遠
方の地域に住所地を有する病弱な児童等(抗告人らも大阪市αないしβに住所
を有する。)にとっては,寄宿舎のある同校において就学することについて直
接の利害関係があることがそれぞれ認められ,これらの事実に照らすと,抗告
人らは,具体的にA養護学校において,教育を受けたり受けさせる権利ないし
法的利益を有すると認めるのが相当である。
そして,原決定の説示するとおり,本件改正条例は,A養護学校の廃止をそ
の内容とするものであるから,同条例が施行されれば,大阪市教育委員会の抗
告人F及び同Gに対する前記指定通知の撤回等の具体的な処分を待つまでもな
く,抗告人Bほか3名と相手方との間の上記在学関係は終了することになり
(ただし,抗告人Cは,平成▲年▲月▲日に出生し,現在A養護学校中学部第
○学年に在学しているから,本件改正条例の施行の有無にかかわらず,平成2
1年3月末日の経過をもって高等部を設置していない同校に係る相手方との間
の在学関係は終了するものと解される。),その結果,抗告人らはA養護学校
に就学し,又は就学させることが不可能になるから,本件改正条例の制定によ
り,抗告人らの上記権利ないし法的利益が具体的に侵害されることは明らかで
ある。
そうすると,本件学校廃止を定めた本件改正条例の制定行為は,行政庁の他
の処分を待つまでもなく,抗告人らの個別・具体的な権利義務ないし法的利益
に直接影響を及ぼすものであるから,抗告訴訟の対象となる処分に該当すると
いうべきであり,上記のような直接の影響の存在を認定しながら,その処分性
を否定した原決定は,この点において不当であるといわざるを得ない。
(2)しかしながら,本件において,行政事件訴訟法25条4項所定の「本案に
ついて理由がないとみえるとき」に該当するものと判断すべきことは,原決定
の説示するとおりであり,この点に関する抗告人らの主張はいずれも採用する
ことができない。
すなわち,原決定の認定するとおり,抗告人らは,本件学校廃止によりA
養護学校に在籍できなくなり寄宿舎からも退去することになるため,夜間に
おける教育指導も期待できず,病弱者でありながら寄宿舎のないH養護学校
に通学し又は通学させざるを得ないなど,抗告人らにとって少なからぬ不利
益を被ることは否定できないが,他方,本件改正条例の制定をもってした本
件学校廃止は,平成21年4月1日以降,既設の養護学校8校のうち病弱者
対象校であるA養護学校を廃止し,肢体不自由者対象校3校をいずれも肢体
不自由者に加えて病弱者を対象とする特別支援学校に再編し,そのうちH養
護学校を除く2校においては病弱者に対する特別支援教育として訪問教育の
みを実施するものとし,H養護学校において病弱者に対する特別支援教育を
行うこととして,A養護学校の機能を大阪市内のH養護学校に移管し,これ
によりA養護学校について指摘されていた病弱者対象校としての難点(大阪
市内から遠隔地に所在し,医療機関との連携がとりにくいこと)を克服し,
併せて移管先のH養護学校を相手方における病弱者に対する特別支援教育の
センターとして機能させるという教育施策の一環として行われたものである
こと,本件改正条例は,抗告人らのA養護学校に係る相手方との間の在学関
係を終了させることのみを目的とするものではなく,A養護学校自体を廃止
することをその内容とするものであり,同校に係る在学関係を含む様々な法
律関係に変動を生じさせるにとどまらず,当該地方公共団体における教育行
政の組織そのものを上記のとおり変更するものであって,将来にわたって当
該地方公共団体の区域内に住所を有する学齢児童・生徒及び就学予定者並び
にこれらの者の保護者はもとより,教員その他の職員等,当該教育行政にか
かわる者に広く適用されるものである上,H養護学校においてもA養護学校
での特別支援教育と大差ない教育を受けることが可能であることがそれぞれ
認められ,以上のような抗告人らを含む児童・生徒及び保護者並びに教育関
係者の全体の利益を考慮すれば,抗告人らの上記不利益を考慮してもなお,
A養護学校の廃止を決めた本件改正条例が,その内容において不合理なもの
であるとは認め難く,教育行政における裁量権を逸脱・濫用してされた違法
なものであるともいえない。
なお,抗告人らは,当裁判所平成18年4月20日判決を引用し,同判決
が,公法上の契約における信義則上の義務違反を理由として慰謝料請求を認
容したことをもって,本件学校廃止処分の違法性を根拠づける一事由とする
が,同判決も,当該公立保育所の廃止処分そのものは適法であると判示した
ものであって,この点に関する抗告人らの主張も採用することができない。
4以上によれば,抗告人らの本件申立てを却下した原決定は結論において正当で
あり,本件抗告は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり決定
する。
平成21年3月18日
大阪高等裁判所第5民事部
裁判長裁判官大和陽一郎
裁判官黒岩巳敏
裁判官市村弘

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