弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中、被上告人の本訴請求を認容した部分を破棄し、右部分につき
本件を大阪高等裁判所に差し戻す。
     上告人のその余の上告を棄却する。
     前項に関する上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 一 上告代理人荻矢頼雄、同西川道夫、同山本恵一の上告理由第一について
 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当とし
て是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審
の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用するこ
とができない。
 二 同第二について
 本件記録によれば、被上告人が本訴の請求原因として主張するところは、(1) 
大阪市a区b町c丁目d番地、e番地、同町f丁目g番地、同区h町i丁目j番地、
k番地の五筆の土地(以下、これらをあわせて「e番地等の土地」という。)は被
上告人の所有であるところ、昭和二三年一二月二五日、大阪市復興特別都市計画事
業の施行者たる大阪市長は、e番地等の土地に対する換地予定地として大阪市復興
特別都市計画土地区画整理l町工区一〇ブロツク符号四、宅地三八二七・一〇平方
メートルを指定し、これにより被上告人は右換地予定地の使用収益権を取得した(
なお、行政庁が特別都市計画事業として施行していた土地区画整理における換地予
定地は、昭和三〇年四月一日の土地区画整理法施行後は同法施行法五条一項、六条
により土地区画整理法による土地区画整理事業上の仮換地とみなされることになつ
たので、以下においてはこれを「仮換地」という。)、(2) 右一〇ブロツク符号
四の仮換地内にある原判決別紙第一目録(一)記載の土地(以下「本件土地」という。)
は、同市a区b町c丁目m番地の土地(以下「m番地の土地」という。)の一部に
該当する場所に位置するが、上告人は、昭和三七年末ごろより本件土地上に原判決
別紙第一目録(二)記載の建物を所有し、本件土地を占有している、(3) よつて、
被上告人は上告人に対し、前記使用収益権に基づき、前記建物を収去して本件土地
を明け渡すよう請求し、あわせて昭和四〇年七月二日以降本件土地の明渡完了まで
の賃料相当損害金の支払を求める、というのであり、これに対し上告人は、前記l
町工区一〇ブロツク符号四の仮換地に対応する従前の土地のうちには本件土地の位
置する場所もm番地の土地の一部として含まれているとの見解のもとに、抗弁とし
て、本件土地の位置する場所に該当するm番地の土地の一部はもと被上告人の所有
であつたが、訴外Dは昭和二〇年一二月中に善意無過失で所有の意思をもつて右土
地の占有を開始し、昭和二三年一二月二五日に前記の仮換地の指定があつたのち、
昭和二七年三月一五日からは訴外Eが、昭和二八年五月四日からは上告人がいずれ
も所有の意思をもつて同じ場所すなわち本件土地の占有を承継したから、Dが占有
を開始した時から一〇年を経過した昭和三〇年一二月ごろ上告人は本件土地の位置
する場所に該当するm番地の土地の一部の所有権を時効取得した、仮に右取得時効
が成立しないとしても、上告人は、前記占有開始にあたり善意無過失であつたから、
以後一〇年の経過によつて右m番地の土地の一部の所有権を時効取得した、したが
つて、上告人は仮換地である本件土地につき使用収益権を有する、と主張している
ことが明らかである。もつとも、訴訟の途中で上告人は仮換地と従前の土地との対
応関係に関する前記のような主張を改め、本件土地はm番地の土地に対応する仮換
地に含まれておらず、m番地の土地に対する仮換地は前記l町工区九ブロツク符号
五として本件土地以外の場所に指定されているものであることを認めたが、右主張
変更にもかかわらず、前記取得時効の抗弁の主張内容についてはなんらの訂正もさ
れなかつた。
 以上のような当事者双方の主張を前提として、原判決は、上告人らが仮換地指定
後の本件土地の占有を継続しても、これによつて右土地に対応する従前の土地でな
いm番地の土地の一部につき所有権を時効取得できるいわれはない、との理由によ
り、上告人の前記抗弁を排斥した。
 上告人の上記時効取得の抗弁は、要するに、上告人が仮換地である本件土地の占
有継続によりこれに対応する従前の土地の所有権を時効取得し、その結果その仮換
地である本件土地に対する使用収益の権能をも取得した、という趣旨のものと解さ
れる。ところで、土地区画整理の過程で仮換地が指定された場合において、右指定
後所有の意思をもつて一定期間継続してその仮換地を占有した者は、時効によりこ
れに対応する従前の土地の所有権を取得するとともに、ひいて仮換地につき所有権
に基づく使用収益権と同様の使用収益権能を取得するものと解されるところ(最高
裁昭和四三年(オ)第九二五号同四五年一二月一八日第二小法廷判決・民集二四巻
一三号二一一八頁)、右占有にかかる土地が一筆の土地又は一括された数筆の土地
に対して指定された一区画の仮換地の一部である場合には、従前の土地中これに対
応する部分が特定されていないときでも、時効制度の趣旨に照らし、右占有者は、
従前の土地につき仮換地に対する当該占有にかかる土地部分の割合に応じた共有持
分権を時効取得するとともに、これに伴い、当該仮換地の占有部分につき、共有持
分権者の一人が右持分権に基づいて現に右占有部分につき排他的な使用収益の権能
を取得している場合と同様の使用収益権能をも取得するに至るものと解するのが相
当である(前掲判決及び最高裁昭和四三年(オ)第三八一号同年九月二四日第三小
法廷判決・民集二二巻九号一九五九頁参照)。そしてこの場合、占有者が時効取得
する所有権ないし共有持分権は、占有にかかる仮換地に実際に対応する従前の土地
に対するそれであつて、右仮換地に対応する従前の土地が甲土地であるのに占有者
においてこれを乙土地と誤信していたとしても、時効取得するのは甲土地に対する
所有権ないし共有持分権で、乙土地に対するそれでないとともに、その反面、占有
者における右のような誤信の存在は、占有の開始についての過失の有無に関連する
ことがありうるのは格別、甲土地についての時効による権利取得の成否自体にはな
んら影響を及ぼすものではないというべきである。してみると、本件土地が上告人
の主張するようにm番地の土地に対応する仮換地の一部ではなく、e番地等の土地
の仮換地の一部であり、結局上告人は誤つてこれをm番地の土地の仮換地の一部で
あると信じて占有していたこととなるものであるとしても、単にそのことだけで直
ちに上告人の前記時効取得の抗弁を理由がないとして排斥することはできないもの
といわなければならない(原審の確定したところによれば、本件土地はm番地の土
地の一部に該当する場所に仮換地として指定されたものであるところ、これに対応
する従前の土地はe番地等の土地であつてm番地の土地ではないというのであるか
ら、仮換地たる本件土地の占有による従前の土地に対する所有権の時効取得の成否
を論ずるにあたつては、仮換地指定前における右m番地の土地の一部の占有を考慮
に入れることはできないが、本件においては仮換地指定後の本件土地の占有のみに
よりこれに対応する従前の土地の時効取得が成立する可能性がないとはいえないの
である。)。右と趣旨を異にする原判決は、法令の解釈適用を誤り、ひいては審理
不尽、理由不備の違法を犯したものというべきであり、論旨は理由がある。
 三 以上の次第であるから、原判決中被上告人の本訴に関する部分は破棄を免れ
ず、右破棄部分につき、更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すことと
し、その余の部分に関する上告は理由がないから、これを棄却することとする。
 よつて、民訴法四〇七条一項、三九六条、三八四条、九五条、八九条に従い、裁
判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    本   山       亨
            裁判官    団   藤   重   光
            裁判官    藤   崎   萬   里
            裁判官    中   村   治   朗
            裁判官    谷   口   正   孝

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