弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人Aの上告趣意について、
 しかし、原判決挙示の証拠によれば判示事実を認め得られないことはないのであ
る。しかして判示認定のように被告人が相被告人B等と共謀関係にあり相被告人の
実行行為を介して自己の犯罪敢行の意思を実現したものと認められる以上、右相被
告人の本件犯行時に所論のように被告人において不在であつたとしても又詐欺の相
手方と面識がなかつたとしても被告人も亦詐欺罪の共同正犯としての責任を免れ得
ないのである。それ故所論は畢竟独自の見解にたつて原審の権限に属する証拠の取
捨判断を非難しひいて事実認定を争うに帰し上告適法の理由にならない。従つて論
旨は採用できない。(なお所論中犯罪事実第一の(二)(四)及びC関係三〇万円
の事実は原判決において何れも無罪と認定せられた事実である)
 被告人A弁護人織田嘉七の追加上告趣意第一点について。
 所論は量刑不当の主張であつて刑訴応急措置法一三条二項により適法な上告理由
とならない。しかして同法条が適憲であることは当裁判所の判例の趣旨とするとこ
ろであり(昭和二二年(れ)第五六号同二三年二月六日、昭和二二年(れ)第四三
号同二三年三月一〇日各大法廷判決参照)同法条により量刑不当の主張が適法な上
告理由となり得ない以上所論法令違反の主張も前提において不適法といわなければ
ならない。それ故論旨は採用できない。
 被告人D弁護人今成泰太郎の上告趣意第一点について。
 記録を精査しても本件原審公判調書の作成が所論のように遅延した証左はないの
みならず、原審公判において弁護人は異議を止めず弁論を遂げているのであつて弁
護権が制限された形迹を認めることはできないから原判決には所論の違法はない。
それ故論旨は採用できない。
 同第二点及び第四点について。
 しかし証拠調の限度、証拠の取捨判断は事実審である原審の権限に属するところ
であり原判決挙示の証拠によれば判示事実を認定し得るのであるから所論の違法は
ない。それ故論旨は採用できない。
 同第三点について
 所論前段の原判決判示第三の(二)の私文書偽造の事実についての事実誤認の主
張は適法な上告理由とならない。
 次に又記録を精査しても所論被告人の私文書偽造の所為が銘酊による心神喪失の
状況の下における犯行である旨の主張があつた形迹は認められないのであるから、
所論後段の原判決には判断遺脱の違法があるとの主張も理由がない。それ故論旨は
すべて採用できない。
 被告人B弁護人樫田忠実、同林頼三郎の上告趣意第一点について。
 所論は原判決判示第一冒頭認定の事実中所論符号(a)(b)(c)(d)をつ
けた諸点について、原審公判調書中むしろそれと正反対の被告人Bの供述記載が認
められても判示同趣旨の記載はないというのである、しかし所論(d)の符号を付
けた判示「従来の経験から見てたとへ隠退蔵物資が存在するとしても、之が払下の
実現を見るまでには相当の障害があり、早急の払下は到底困難であるといふ実情は
充分知つて居たにも拘らず」という部分については原判決は同被告人の判示同趣旨
の供述として採証したものでないことは原判決が同被告人の弁疏をかかげている趣
旨から明らかであり、しかして所論(a)(b)(c)(d)各符合を付けた部分
はもともと判示認定にかかる爾余の事実の結論的事項にすぎないのであるが、原審
第二回公判調書の同被告人の供述記載中裁判長と被告人との間にとりかわされた「
問、二月下旬頃軍衣袴の払下についてどの程度の見込を持つていたか、答、私とし
てはA、Eの地位勢力を尊重し且信頼して毎日その進展を待つていました、問、そ
の二人がFに頼んでいるから何とかなるであろうと思つた程度か、答、左様です」
(記録六三七二丁)「問、昭和二十二年二月下旬頃から三月初旬頃における軍衣袴
払下の見込はどうだつたか、答、好転している非常に有望であるという話をE、A
から聞いていた丈でその言葉を裏付ける客観的内容は聞知致しませんでした」(記
録六三八二丁)「問、其頃(三月十四日頃)Eから軍衣袴払下の見込について具体
的な話があつたか、答、EはFが書類を受取つて呉れたから大丈夫だ申請の三分の
一位は間違なく出ると云つたので私の算定で十二万着位は確実に出ると云う見込を
立てました」(記録六三九三丁)等の問答の趣旨からして前記事項を推認されなく
はない。この点について正反対の趣旨の供述があると主張する所論は記録上どの点
を指すものか具体性を欠き漫然原審の証拠判断を争うに帰するから採用できない。
 同第二点について
 しかし原判決認定にかかる判示第一の(一)(二)の詐欺の事実は所論のように
単に政治献金をするための金員を出金させたというのではなく、判示に明らかなよ
うに軍服の払下は不確実であるのに拘らずそれが早急且確実であるかのように詐つ
て政治献金等の名義の下に被害者から金員を交付させて、騙取したというのであつ
てその事実は挙示の証拠により認められるのであるから所論は結局独自の見解に立
脚して原判決の認定を非難するものといわねばならない。それ故論旨は採用できな
い。
 同第三点について
 所論は原判決判示第一(一)の事実について所論被告人等が軍衣袴の払下可能を
確信していたことが判決挙示の証拠により認められることを前提とするものである。
しかし原判決は被告人Bの原審公判廷における供述中所論趣旨に添う部分はその証
拠説示に際して特に被告人の弁疏として採証から除外しているところでありその他
判決挙示の証拠を検討しても所論に添う説示はないのである。従つて所論はその前
提において原判決証拠説示に反する見解に立ちひいて原判決の事実認定を争う主張
に帰し適法な上告理由とならない。
 同第四点について。
 原判決はその証拠説示において所論摘示の被告人の弁解を掲げて採証から除外し
ているのであるから、むしろ原判決は判示「真実G事件解決のため使用する意思が
ないのに拘らずある様に装ひ」の部分については所論被告人の判示同旨の供述とし
て採証したものではなく、その他の挙示の証拠を綜合して認定しているのである。
従つてこれと異る見解の下に原判決の採証を非難する所論は採用できない。
 同第五点について
 しかし原判決判示第一(二)の事実中所論部分の判示趣旨は軍衣袴の早急払下は
もともと困難であるのに拘らずあたかも単にHの不渡小切手が原因で払下困難にな
つたかのように申向け右小切手金額に当る金を出しさえすれば確実容易に払下げら
れるかのように詐つた点にあることは判文に照し明らかであつて右判示は詐欺罪の
欺罔行為として何等欠けるところはないといわなければならない。従つて所論は判
文の真意に添わない独自の見解に立つもので理由がない。
 同第六点について
 原判決判示第一、第二の事実は債務不履行の事実に過ぎないとの所論は、挙示の
証拠で判示事実が認められる本件においては独自の見解を述べるにすぎないから採
用できない。しかして原審が犯意なきことの証拠を採らないで有罪の認定をしたと
の主張は結局原審の裁量に属する証拠の取捨判断を非難しひいて事実認定を争うに
帰し採用できない。
 同第七点について
 所論は事実誤認の主張で適法な上告理由とならない。
 同第八点について
 所論は事実誤認を前提として原判決の違憲を主張するのであるから前提において
適法な上告理由と認められない。(なお右弁護人等から上告趣意書補充の上申と題
する書面が提出されているが右は期間経過後に提出されたものであるから同書面中
前記上告趣意の辞句用語等の補充訂正の範囲を逸脱した所論部分については判断を
与えない。)
 被告人B同E同A弁護人織田嘉七の上告趣意第一点について
 所論中(甲)は原判決判示共謀の事実につき(乙)は判示隠退蔵物資等摘発処理
委員会に摘発物資の払下等処分の権限がないという事実につき(丙)は所論摘示の
各判示部分につき何れも原審の採らない証拠を掲げて原審の証拠の取捨判断を非難
しひいて事実認定を争うのであるけれども所論摘示の証拠があるからといつて直ち
に原審の採証が経験則に違背する違法があるとは断定できない。所論は結局適法な
上告理由とならない。なお所論末段「従来の経験から見て……相当の障害があり」
という判示に関する非難は右章句中「従来の経験」とは本件自体における従来の経
緯をいい、「相当の障害」とは右章句に引続く「早急の払下は到底困難であるとい
う実情」という辞句と一体をなし原判決中既に判示している隠退蔵物資等摘発処理
委員会に払下等処分権限がない結果早急払下に難関がある趣旨であることが原判決
の判示から明であり、右判示事実は挙示の証拠により肯認することができるから所
論のように原判決は理由不備の違法もなく又証拠によらずして事実を認定した違法
もないといわなければならない。
 同第二点について
 しかし所論(二)の中献金の点は既に被告人B弁護人樫田忠美同林頼三郎の上告
趣意第二点について説示したとおり理由がない。又「品物は埼玉県の倉庫から出す」
との点は原判決挙示の原審証人Cの原審公判廷における供述中に明示されているの
であるから所論のように証人Hの証言や被告人Bの供述中にこの点についての証拠
がないからといつて所論理由不備の違法はない。其の他の所論は結局事実誤認の主
張であつて適法な上告理由とならない。
 同第三点について
 所論は原判決が判示第一(一)の事実の認定に供した証人Hの証言中「献金さえ
すれば直ぐ払下げてくれるものと思ひ」の点は同人の想像にすぎないと主張するが、
右証言はいわゆる推測事項の証言であつて単なる想像でないことは原判決摘示で明
であるから原判決には所論の違法はない。
 同第四点について
 所論(一)原審証人Iの証百中所論摘示部分(所論原判決摘示は同証人の証言の
趣旨に添うもので所論のように証言の趣旨を誤つて引用したとはいえない。)が判
示「明日にでも指令書が出る」ということの反対証拠になるという所論は独断にす
ぎない。同証人の証言及び所論(二)の原審証人Jの証言の原判決摘示によると同
人等は当初はCを通して、更に同人等が判示金円を被告人Bに交付するのに同人に
面接した際に同人より直接判示言辞をきいた趣旨が説示されている。(殊に右証人
JはC等には安心出来ぬのでBに会つてその際判示言辞を同人から聞いた旨述べて
いるのである。)又所論(四)の原審証人Kの証言は原判決摘示に明らかなように
L農業会関係の事実についての供述であつて直接所論原判決判示第一(二)のM農
業会N支部等関係の事実に関するものではない。しかして所論(五)の証人Cにつ
いて所論の事由があるとしても必ずしも直ちに同証人の証言を措信し得ないとはい
い得ない。従つて原判決判示第一(二)三月二十六日頃の事実関係について原判決
認定を非難する所論はすべて理由がない。次に所論(三)の原審証人Oの証言は原
判決摘示によると同証人は被告人B及びCに会つた際Cから判示趣旨のことをきか
されI等と相談の結果要求金額を出すことにしてその旨をCからBに話してもらい、
Bにも会つたところBは手土産が出来たから一括して早速指図書が取りに行けると
云つた、それで百五十万円の小切手を即座に書いてBに渡した云々というのである
からその趣旨は正に判示事実に添うものといわねばならない。従つて原判決判示第
一(二)四月一日頃の事実関係について原判決認定を非難する所論も理由がない。
それ故論旨はすべて採用できない。
 同第五点について 所論(一)は原判決認定の判示第一事実について被告人等に
は詐欺の犯意がなかつたのであると主張し原判決の認定は憲法三七条一項に違背す
る不公平な裁判であると論ずるのであるが所論は結局原審の適法になした証拠の取
捨判断を争いひいて事実誤認の主張をなすもので前提において適法な上告理由とな
らない。しかして所論憲法三七条一項の公平な裁判所の裁判というのは構成其の他
において偏頗の惧のない裁判所の裁判という意であつてこの点についての所論が理
由がないことは当裁判所の判例とするところである。(昭和二二年(れ)第一七一
号同二三年五月五日大法廷判決)
 次に所論(二)は原判決認定の判示第一事案の共謀の点に関し日時、場所及び通
謀について証拠がないと主張するのであるが共謀の日時、場所は犯罪構成要件では
ないから必ずしも判決に明示することを要しないのであつて単にその日時場所が判
文上特に明示されていないからといつて所論のように直ちに判示共謀の事実認定を
左右し得るものではない。
 しかして所論共謀の事実は原判決挙示の証拠を綜合すればこれを認め得られない
ことはないのであつて所論第一の被告人E同Aが被害者H、Cの関係について関知
しないとの点所論第三の同被告人等が金員の分配を受けないとの点及び所論第四の
被告人Bに犯意がないとの点は何れも原審の採用しない証拠に基く独自の主張であ
り又所論第二のように仮に被告人E同Aが同Bの具体的な欺罔行為の際不在であつ
てその内容を知らないとしてもその一事では同被告人等の判示共謀の事実認定を動
かすことはできない(渡辺綱雄上告趣意第三点に対する説明参照)から所論は畢竟
事実誤認の主張に帰することになる。それ故論旨はすべて採用できない。
 被告人E同A弁護人渡辺綱雄の上告趣意第一点について
 所論は原判決判示第一(一)冒頭の「当時軍服払下を希望して居たP商事株式会
社社長Hに対し同年三月上旬頃東京都中央区ab丁目c番地料理店Q事R方に於て、
被告人三名同席の上、被告人Eに於て「品物は我々が責任を以つて出してやるが、
出た後のことはBに一任して置くから同人と相談してやつてくれ」との旨申し向け」
という判示事実について右所為は判示詐欺の実行行為として認定された事実である
と前提した上(一)原判決挙示の証拠では右所為が判示金円詐取前である三月上旬
頃の事実であることを証明し得ない(二)原判決採証にかかる証人Hの原審公判廷
における供述と同人の一審公判廷における供述とは相矛盾し後者によれば右所為は
判示第一(一)の犯罪終了後の事実であること明であるにかかわらず経験法則に違
背して措信することのできない前者によつて事実を認定した違法がある(三)仮り
に右所為が判示のように三月上旬頃の事実であるとすれば本件証拠上三月上旬当時
においては未だEにおいてSに対する献金を考慮していないのであるから右所為は
前提において献金せしめる犯意がないこと明であるといわねばならないと主張する
のであるが原判決挙示の原審証人Hの供述は「三月上旬頃Tから今度義兄Bの尽力
で軍服が払下げて貰へることになつたが一口乗つて金を出さないかと誘はれ、其の
頃同人に連れられてB方へも行き又同人等の集合場所である銀座の料亭Qへも出入
する様になつたが……其の後銀座の料亭QでBからEAに紹介されたが其の席上E
は私に僕は軍服がどう処分されるか判らないが払下の方は責任を以てしてやる後の
事はBに相談して呉れ他の事には関係しないと云つたが、私も外務参与官といふ現
職の大官が斯様に云ふからには大丈夫だと安心した、Aは特に何も云はなかつたが
払下運動についてはEと相談が出来て居り一緒に骨を折つて呉れてゐるものと思つ
た云々」というのであり、又同証人の一審公判調書中の供述記載によれば「私が献
金を出す前一番最初にBに連れられてQへ行つた時EAに会ひ、両人から間違なく
軍衣袴は出ると云ふことを聞かされたので、此の運動に加はるに至つたが、Aから
は常に間違はないといふ話を聞かされてゐた、献金を出してから不安に思つてQで
Eに尋ねたことがあるが其の時Eから品物を出してやるといふことを明言され、其
の品物をどう配分するかは俺は知らんBに相談しろと云はれた、其の時はAも同席
してゐた云々」というのであつて右一審における証人Hの証言には同証人が献金を
出してからEに尋ねた結果品物を出してやると明言された事実もあるが又同証人が
献金を出す前既にEから間違なく軍衣袴は出るということを聞かされた旨をも述べ
ているのであるからこの点について原審裁判所が直接審理した結果前記原審におけ
る同証人の証言を得てこれを綜合して判示事実を認定した以上原判決の採証には所
論採証法則違背の違法はなく、結局所論(二)は原審の権限に属する証拠の取捨判
断を原審が採用しない証拠に基いて非難するに帰する。しかして右原判決の証拠説
示及び原判決判示の前後の文脈によれば原判決判示の所論三月上旬頃とあるのは同
月中旬をも含めて判示第一(一)の金円詐取の日時を指す趣旨であることが窺われ、
しかも所論Eの所為は本件詐欺の実行行為である判示Bの欺罔行為にいたる事情の
認定であることを認め得るのであるから所論(一)(三)も理由がないといわねば
ならない。それ故論旨はすべて採用できない。
 同第二点について。
 所論(イ)は原判決挙示の原審証人Uの証言、被告人Eの原審公廷における供述
についての原審の採用しない部分を掲げ採証の適否を争い原判決は所論摘示事実を
証拠によらずして認定した違法があると攻撃するのである。しかし所論摘示の右証
人等の供述は記録上認め得られはするけれども、それだからといつて直ちに所論原
判決の証拠摘示に採証法則に違背する違法があるといい得るものではなくしかも原
判決挙示の其の他の証拠をも綜合すれば所論摘示事実を認め得られるのであるから
所論は理由がない。又所論(ロ)は原審証人Uの証言について原判決の採証しない
部分を掲げて原審は同証言の趣旨を変更して採証した違法があるといい、或いは同
証言の証拠価値について争うのであつて記録上所論摘示の供述も認められるけれど
も記録を精査するにそれを以つて直ちに原審の採証に所論の違法があると認めるこ
とはできないから所論は理由がない。
 同第三点について。
 所論は原判決判示第一の事実の具体的欺罔行為は被告人Bの所為に基くものであ
るから被告人E同Aが右所為について刑責を問われるには同被告人等において被告
人Bと共謀した事実即被告人Bの具体的行為を認識し同被告人と犯意を通し共同し
て犯罪を実行しようとする意思が証拠により認められなければならない、しかるに
この点に関する原判決挙示の証拠はそれ自体のうちに矛盾撞着を含み、条理に反す
るものであるか或いは不合理にして他の証拠に照し到底措信できないものであるか、
然らざれば判示共謀の事実を証明するに不十分なものばかりである旨巨細に亘り原
審の採証について証拠の取捨判断を非難し原判決には審理不尽理由不備若しくは理
由齟齬の違法があると主張するのである。しかし凡そ共謀者が共同正犯として処罰
せられる所以は共犯者が共同意思の下に一体となつて互に他人の行為を利用して自
己の意思を実行に移す点にあり数名の者がある犯罪を行うことを通謀しそのうち一
部の者がその犯罪の実行行為を担当し遂行した場合には他の実行行為に携わらなか
った者も之を実行した者と同様にその犯罪の責を負うべきもので、必らずしも通謀
者において実行者の具体的行為の内容を逐一認識することを要しないものといわね
ばならない。しかして本件においては被告人E同Aにおいて同Bの判示各具体的欺
罔行為の内容を知悉していた証左はないとしても右被告人等が判示のように軍衣袴
払下希望者に対し献金すれば早急確実に払下の希望が達せられるように詐つて金員
を騙取しょうという趣旨の詐欺の犯行を通謀し、右通謀に基いて被告人Bが判示具
体的欺罔行為に出て金員を騙取した事実は判決挙示の証拠を綜合すれば認め得られ
ないことはなくその採証に所論の違法を認め難いから所論は理由がない。
 なお所論判決挙示の各個の証拠に対する主張について附加説明すると、所論(1)
原審証人Oの証言中同証人に対する被告人Bの言辞が仮に所論のように不能又は虚
偽の事実に関するとしてもそれだけでは右Bよりかかる言辞を聞いたという同証人
の証言の価値を左右し得るものではなくこの点についての所論は理由がない。又所
論(1)末段及び所論(2)前段の点は弁護人織田嘉七の上告趣意第四点に対し説
明したように採るをえない。所論(2)後段の原審証人J同Iの証言が伝聞証拠に
すぎないとしても一の情況証拠たるを失わず原判決は右証言のみによつて所論事実
を認定したものではないから所論は理由がない。所論(3)(イ)原審証人Cの証
言中所論「Eからは軍服は政府から出るが一般には払下げず炭鉱関係が優先的に払
下げになるとの話があつたので……」という点は原判決採証のE及びAの証言と対
比すると時間的に矛盾する嫌はあるがそれだけでは所論のように同証人の証言の信
憑力を全体的に否定することはできないし、その内容はまた一の情況証拠たるを失
わない。しかしてその他の所論は原審の採用しない証拠に基いて原審の権限に属す
る証拠判断を争うものであつて、原判決には特に採証法則に違背する違法があると
は認められない以上所論は理由がない(ロ)一審証人Cの証言は原判決摘示に明ら
かなように同証人の経験事実に基いて推測した事項であつて証拠とすることができ、
しかも同証言の「私達の出した金……」というのは直接所論判示第一(二)のC等
の金員に関するものではない趣旨が窺われるから所論のように単に判示第一(二)
の金員交付当時Aが不在であつたということだけでただちに右証言が証拠価値のな
いものとはいい得ない。そしてその他の所論は独自の見解の下に原審の証拠判断を
争うものであるから論旨は採用できない。所論(4)(イ)原判決が掲げている証
人Hの証言に関する所論非難は独自の見解に基くか若しくは原審の採用しない証拠
によつて、その証拠判断を争うに帰する。(ロ)右証人の一審における証言が想像
にすぎないとの所論は判決挙示の証言内容により明らかなように同証人の実験事実
を述べたものであるから理由がなく右証言の採証が採証法則に違背するとの主張も
原審と見解を異にする前提にたつもので遽かに採るを得ない。所論(5)(イ)原
審証人Tの証言と同Kの証言とは摘示内容自体でも必らずしも所論のように相矛盾
するとまではいい得ないのみならず所論Eの供述を排斥して所論証言を採用したか
らといつてたゞちに所論のように採証法則に違背した違法があるとは認められない。
又所論証言の内容は判示事実認定の綜合証拠としての価値なしとはいい得ないから
所論は理由がない。(ロ)右証人Tの証言の原判決摘示内容は仮に同証人の主観に
おいて所論の事由があるとしても所論のように供述の真意を変更した採証とまでは
いえないし、右内容は一応客観的な事実に関する証言として証拠となり得るもので
あるから所論は理由がない。所論(6)(イ)原審における被告人Dの供述は原判
決摘示内容に照せば所論のように必ずしも不可分の一体をなす一個の供述中の片言
隻句を捉えて真意と異なる事実の証明の資料としたものと言ふことはできない(ロ)
右被告人の一審公判廷における供述が信用できないとの所論は畢竟独自の証拠解釈
に基いて原審の権限に属する証拠の取捨判断を非難するに帰し採用できない。(所
論供述中「Cがいよいよ金を持つて来るという晩」というのは必らずしも所論のよ
うに判示第一(二)(イ)の三月二十六日頃を指すものとはいえない、蓋し原判決
採証の原審証人Cの証言中にも金は明日中(三月一七日)に持つて来る様にと云わ
れた旨摘示せられている。)所論(7)原審における被告人Aの供述の証拠価値を
争う主張は原審の採用しない資料に基くものである。所論(8)(イ)被告人Eの
原審における供述の採証は所論摘示のとおりであつて、所論のようにEにおいて献
金しろと明らかに奨めたとはいい得ないにせよ又Hに都合させた金だということを
Sの所へ献金を持つて行く時にBからきいたにせよこれを以つて直ちに所論のよう
に右供述内容が判示共謀の事実を認定する資料として価値のないものということは
できないから所論は独自の証拠解釈に基いて原審の採証を非難するに帰し採用でき
ない(ロ)右供述中所論「現金五十万円」は所論「尚同年二月下旬頃……二十万円
を貰つた」の二十万円にあたる趣旨であることが摘示自体でも判るし又所論金額の
摘示は一応公判調書の記載(記録六四七〇丁)をそのまま引用したものであるから
右採証はあえて所論のように歪曲した証拠説示ともいえない、しかして軽米農業会
関係の事実であつても所論供述内容が判示共謀の事実を認定する一資料としての価
値を失うものでないことは原判決認定の事実関係に徴し疑を容れないから所論後段
の主張も理由がない。所論(9)(イ)被告人Bの原審における供述中「Eから軍
衣袴払下運動について政治献金が必要だということを聞いた」点は同人の実験した
事実乃至それに基いて推測した事項であり、又Hの判示第一(一)(イ)の金員交
付の際にEAがその場にいたことは前顕(4)(ロ)に説示したように右Hの証言
するところであつて所論被告人Bの原審における供述は必ずしも所論のように根拠
薄弱な単なる憶測とはいい得ない。所論は或は同被告人の人格を攻撃し或はE、A
等が右Bが現実に金員を受取る際在席しなかつた一事を以つて同人の供述の価値を
争うもので採用し難い。(ロ)所論供述内容は前記所論(6)(ロ)において説明
したように必ずしも所論のように虚構の事実であるとは断ずることはできない。所
論は結局独自の見解に基く主張であるから採用できない。(ハ)原審証人Vの証言
は父子相通してなす虚構の陳述であると主張する所論は原審の採らない資料に基く
証拠判断の非難であつて採用できない。
 よつて刑訴施行法二条旧刑訴四四六条に従い主文のとおり判決する。
 この判決は裁判官全員一致の意見である。
  検察官 田中巳代治、同小幡勇三郎関与
  昭和二六年九月二八日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎

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司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
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