弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     一 原判決中、被上告人の上告人に対する反訴請求に関する部分を破棄
する。
     二 右部分につき本件を大阪高等裁判所に差し戻す。
     三 上告人のその余の上告を棄却する。
     四 前項に関する上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
一 上告代理人川崎敏夫の上告理由第一点について
  所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当と
して是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原
審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用する
ことができない。
二 同第二点について
  原判決は、被上告人の反訴請求を認容するに当たり、上告人が訴外D工業株式
会社(以下「D工業」という。)から同社が訴外Eらに対して有する金三五〇〇万
円の債権及びこれを担保するため本件建物に設定された抵当権及び所有権移転請求
権仮登記上の権利(以下「本件担保権」という。)を譲り受けたと認定したうえ、
(1) 本件建物はいずれ収去される運命にあつて価値がないに等しいものの、(2)
 当事者らは本件建物ないしは本件建物に設定された抵当権の価値をいずれも金二
四〇〇万円ないし金二五〇〇万円と解しており、(3) 本件建物は被上告人が関与
することによつて右の価値を有するに至つたというべきであり、(4) 上告人が本
件抵当権付債権を取得した経緯に照らせば、上告人が本件訴訟において本件抵当権
によつて担保される債権が金三五〇〇万円ないしはそれに附帯する利息損害金であ
る旨を主張することは許されず、(5) 抵当権によつて担保される債権額は究極的
には当該不動産の価値を限度とすることに照らせば、本件建物によつて担保される
債権額は金二五〇〇万円であると解するのが相当であると説示する。
  しかし、原判決説示に係る右の諸事情があるとしても、被担保債権額が金二五
〇〇万円に限定される理由とはならないから、原審の右判断を是認することはでき
ない。
  また、原判決挙示の乙第一二号証(不動産登記簿謄本)には、本件抵当権の被
担保債権として、債務者を訴外三和企業組合とする昭和四〇年九月三〇日債務弁済
契約の返還債権三五〇〇万円並びに日歩三銭の割合による利息及び日歩五銭の割合
による損害金である旨の記載があるのに、原判決においては右被担保債権の発生原
因事実も、右債権と上告人がD工業から譲り受けたとされる同社と訴外Eらに対す
る債権との関係も説示されず、更に、D工業から上告人への債権譲渡契約又は上告
人から訴外F及び同Gへの債権譲渡契約における各譲渡債権の内容又は右各譲渡債
権と本件担保権との関係についての審理も尽くされていない。
  以上によれば、原判決には、被担保債権額の認定に関して審理不尽ひいては理
由不備の違法があるといわなければならず、右の違法は判決に影響を及ぼすことが
明らかである。
三 ところで、原審は、被上告人の反訴請求について、上告人に対して、被上告人
から被担保債権の弁済を受けるのと引換えに本件抵当権の登記及び本件仮登記の各
抹消登記手続をするよう命じている。
  しかしながら、被担保債権の弁済は抵当権設定登記の抹消登記手続に対して先
履行の関係に立つものであつて、同時履行の関係に立つものではないから(大審院
明治三七年(オ)第三〇七号同年一〇月一四日判決・民録一〇輯一二五八頁、最高
裁昭和四一年(オ)第六三三号同年九月一六日第二小法廷判決・裁判集民事八四号
三九七頁、最高裁昭和五六年(オ)第八九〇号同五七年一月一九日第三小法廷判決・
裁判集民事一三五号三三頁参照)、たとえ、将来の給付の訴えの利益が認められ、
かつ、弁済すべき被担保債権の額を確定することができるときであつても、抵当権
設定登記の抹消登記手続を求める請求は、将来債務者又は物上保証人が被担保債権
を弁済すること(物上保証人にあつては、被担保債権を債務者に代わつて弁済する
ことによつて取得した抵当権が所有権と混同して消滅すること)を条件として、許
容することができるにとどまると解するのが相当である。そして、右の理は、金銭
債権を担保することを目的としてされた代物弁済の予約等を原因とする所有権移転
請求権の仮登記の抹消登記手続を求める請求についても、変わるものではない。
  原審が、右と異なる見解のもとに、被担保債権の弁済と引換えに本件抵当権の
登記及び本件仮登記の各抹消登記手続を命じたことは、同時履行の抗弁権に関する
民法五三三条の規定の解釈適用を誤つた違法があるものといわなければならす、右
の違法は判決に影響を及ぼすことが明らかである。
四 そうすると、原判決中、反訴請求を認容した部分は、前記のとおり判決に影響
を及ぼすことの明らかな法令の違背があるから、破棄を免れない。そして、本件に
おいては、本件担保権に係る被担保債権の額につき更に審理を尽くさせるため反訴
請求に関する部分を原審に差し戻すことが相当である。
五 よつて、原判決中、反訴請求に関する部分を破棄し、右破棄部分につき本件を
原審裁判所に差し戻し、その余の部分については論旨は理由がないので本件上告を
棄却することとし、民訴法四〇七条一項、三九六条、三八四条、九五条、八九条に
従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    牧       圭   次
            裁判官    島   谷   六   郎
            裁判官    藤   島       昭
            裁判官    香   川   保   一
            裁判官    奧   野   久   之

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