弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を東京高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告代理人大森鋼三郎の上告理由第一、(五)について
 記録によれば、被上告人は上告人に対し、本件係争地が被上告人の所有に属する
ことの確認を求め、その理由として、右土地は被上告人が昭和三七年六月二一日D
から買い受けた分筆前の静岡県富士市a字bc番dの土地(以下「分筆前のc番d
の土地」という。)に含まれる旨主張し、上告人は、被上告人がDから買い受けた
土地は、第一審判決添付図面(以下「図面」という。)記載の(イ)点と(ハ)点
とを結んだ線(以下「(イ)(ハ)線」という。)よりも東側であり、本件係争地
はこれに含まれていない旨主張して争つているものと理解される。
 これに対し、原審は、分筆前のc番dの土地から分筆したc番eの土地(以下「
本件土地」という。)を被上告人が所有するに至つたことは当事者間に争いがない
として、本件土地が本件係争地に当たるか否かを検討し、(1) 分筆前のc番dの
土地及び分筆前の同所c番fの土地(以下「分筆前のc番fの土地」という。)は
いずれもEの所有であつたところ、分筆前のc番dの土地は、昭和の初めころから
F製紙株式会社、G製紙株式会社、被上告人へと順次賃貸されたが、どの会社が使
用していたときにも、図面記載の(イ)、(ハ)、(ニ)、(ホ)の各点を順次直
線で結んだ線上に板塀を設けて隣地(分筆前のc番fの土地及び本件係争地)との
境とし、使用範囲を区分していた、(2) その後板塀は撤去され、その跡に檜の生
垣が設けられていたが、分筆前のc番dの土地を賃借していた被上告人は、昭和三
七年六月二一日Eの家督相続人Dから右土地を買い受け、従前どおり区分された使
用範囲の土地を工場敷地として用い、昭和五〇年ころには檜の生垣を撤去して、そ
こに有刺鉄線を張りめぐらした、(3) 本件係争地及びその西側の分筆前のc番f
の土地については、昭和の初めころより、その東側約半分を上告人先代が、西側約
半分をHが、それぞれEから借地していたところ、Hの子Iは、昭和四九年四月八
日契約書に「一二八坪の半分約六四坪」と明記して、Dから分筆前のc番fの土地
の西側半分を買い受けてc番gとし、また、上告人は、昭和五一年七月一九日にD
から分筆前のc番fの土地のうちIが買つた残りの部分(現在のc番fの土地)を
買い受けたが、本件係争地をも買い受けたものと信じ、引き続きこれを占有使用し
ている、(4) 図面記載の(イ)、(ハ)、(ニ)、(ホ)の各点を順次直線で結
んだ線を分筆前のc番dの土地とc番f及び同番gの各土地との境界線とした場合
の分筆前のc番dの土地の実測面積は、公簿面積二一七四・九〇平方メートルより
六三・七二平方メートル少なく、これに反し、上告人が占有使用している本件係争
地及びc番fの土地の実測面積は、c番fの土地の公簿面積二一一・五五平方メー
トルより九一・三八平方メートル多く、c番fの土地に隣接するh番gの実測面積
は、公簿面積二一一・五八平方メートルより五・六一平方メートル多いことが判明
した、(5) 被上告人代理人小山美登二は、図面記載の(ハ)点より(イ)点及び
(ロ)点を結ぶ線に下ろした垂線(図面記載の(ロ)点及び(ハ)点を結んだ線。
以下「(ロ)(ハ)線」という。)が公図上の境界線とも一致する分筆前のc番d
の土地と同番fの土地との境界線であると考え、本件係争地を分筆登記した、との
事実を確定したうえ、(イ)(ハ)線は被上告人らが隣地との使用上の区別をして
いた線で、いわゆる地番境として公的に設定、認証された境界ではなく、分筆前の
c番dの土地と同番fの土地との公的境界線は、(ロ)(ハ)線であることが認め
られるとして、被上告人の請求を認容した第一審判決を維持した。
 しかしながら、一筆の土地の一部(以下「甲部分」という。)が右土地のその余
の部分(以下「乙部分」という。)から現地において明確に区分され、甲部分は甲
に、乙部分は乙にそれぞれ賃貸されたのちにおいて、甲が目的物を当該一筆の土地
と表示して売買契約を締結したとしても、他に賃貸されている乙部分を含むとする
旨の明示的な合意がされている等特段の事情のない限り、取引の通念に照らして甲
部分のみを売買の目的としたものと解するのが相当というべきである。本件におい
て、原審の確定した前記事実によると、分筆前のc番dの土地を買い受けた被上告
人は、上告人の占有使用している本件係争地を含まない土地を借地として使用し、
しかも、当該土地と本件係争地との間には、被上告人より前の借地人が使用してい
たときから板塀又は生垣が設けられており、被上告人自身も、本件土地を買い受け
たのち、同じ場所に有刺鉄線を張りめぐらしたというのであるから、本件係争地が
分筆前のc番dの土地に含まれるかどうかは別として、他に特段の事情のない限り、
被上告人が本件係争地を含む土地を買い受けたものと認めることは、経験則上是認
することができないというべきである。そして、原審の認定する実測面積と公簿面
積との関係だけでは、右の特段の事情があるものということはできない。
 そうすると、首肯するに足りる特段の事情の存することについて認定説示するこ
となく被上告人が買い受けた土地に本件係争地が含まれるものと認めた原判決には、
法令違反若しくは理由不備の違法があるものというべく、論旨は理由があり、その
余の論旨について判断するまでもなく、原判決は破棄を免れない。そして、本件は、
右特段の事情の存否について更に審理を尽くさせるため、これを原審に差し戻すの
が相当である。
 よつて、その余の上告理由についての判断を省略し、民訴法四〇七条一項に従い、
裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    谷   口   正   孝
            裁判官    角   田   禮 次 郎
            裁判官    高   島   益   郎

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