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平成14年10月24日宣告 
平成14年(わ)第61号 窃盗,強盗殺人被告事件
判決
主文
   被告人を無期懲役に処する。
   未決勾留日数中180日をその刑に算入する。
理由
(犯行に至る経緯等)
1 被告人は,前橋市内の中学校を卒業した後,塗装工,内装工,トラック運転
 手等として稼働し,平成7年に塗装業を営むようになったものの,平成9年1
 1月ころにはこれを辞め,その後は,実父が営む塗装業を手伝いながら居酒屋
 のアルバイトをしていたが,平成10年ころ,麻雀店の客同士であったAと知
 り合って付き合うようになり,同年暮れころから,高崎市内でAが経営してい
 た韓国エステの店長として働きはじめ,平成11年夏ころには,Aが開業した
 ホテトルの手伝いもするようになった。被告人は,同年10月ころ,給与の支
 払いが滞り始めたことなどから,韓国エステの店長を辞めてAのもとを離れ,
 運転代行の仕事に就いたものの,平成13年3月ころからは定職にも就かず,
 消費者金融などから多額の借金をしながら,無為徒食の生活を送っていたが,
 そのころ同様に借金生活を送っていたAと,再び行動を共にするようになっ
 た。一方,Aは,ギャンブル等が原因となって,いわゆる暴力団金融等に対し
 多額の借財の抱え,その返済に苦慮していたところ,住宅リフォーム会社を経
 営するBと知り合い,平成11年と平成13年初頭に同人から多額の借金をし
 た際に同人方を訪れたことがあった。Aは,Bが事業に成功して相当の収入を
 得ていることや,多額の現金を自宅においていることなどを知って,被告人に
 もBが多額の現金を自宅に置いている話を聞かせていた。
2 被告人は,同年4月19日夜,Aとの間でB方から金品を窃取することが話
 題に上り,Aと一緒に下見がてらにB方のある前橋市a町内のマンションに赴
 いたところ,たまたま玄関にある集合郵便受の同人方用の郵便受内に部屋の鍵
 が入っていることに気付き,被告人が手を差し入れてこの鍵を取り出した。こ
 こにおいて,被告人とAとの間でB方に侵入して金品を窃取することの共謀が
 成立し,被告人がB方に侵入し,その間Aが同マンション前で待機して見張り
 をしながら,後記第1のとおり窃盗の犯行に及んだ。
3 被告人とAは,その後も,依然として金に困っていたため,再びBから多額
 の金品を奪おうと考え,今度は同人の不在中に同人方に侵入し,帰宅した同人
 に襲いかかり,ロープ等で同人を緊縛するなどして,同人から金品の在処やキ
 ャッシュカードの暗証番号等を聞き出すことを企てた。その実行のためには,
 2人では足りないと考え,Aは,かねてからの知り合いで,やはり借金の返済
 に追われていたCにこの強盗の話を持ち掛けた。Aは,渋るCに対して,Aら
 がB方に侵入して同人の帰宅を待つ間の見張り役のみでよいなどと説得してこ
 れを承諾させた。またAは,犯行時に顔を隠すためのパンティストッキング,
 毛糸帽子,Bを脅す際に用いる折り畳み式ナイフ等を準備した。
  被告人ら3名は,同年5月18日夜,B方のあるマンションに赴いたが,同
 人が帰宅していなかったことから,その場で,Aが先にベランダからB方に侵
 入し,その後被告人が携帯電話でAからの連絡を受けて,B方に侵入するとの
 打ち合わせを行い,それを受けて,Aが,翌19日午前1時30分ころ,同マ
 ンションの屋上からB方のベランダに降り,無施錠のガラス戸から同人方に侵
 入し,その後Aからの連絡を受けた被告人が折り畳み式ナイフ,金属バット等
 を携えて,Aが解錠したB方玄関から同人方に侵入し,金品を物色しながら,
 同人の帰宅を待った。その間,Cは,被告人らの指示どおり,Bが戻ってき
 たら被告人らに携帯電話で連絡すべく,マンションの周囲や駐車場等を見張っ
 ていた。しかし,侵入してから2時間経ってもBが帰ってこなかったことか
 ら,被告人らは同人を待って当初の計画どおりの犯行に及ぶことを諦め,物色
 中に発見した腕時計等を持ち出し,後記第2のとおり窃盗の犯行を実行するに
 とどまった。
4 Aは,それまでの犯行で窃取した現金や腕時計を入質して得た金で借金の一
 部を返済をしたものの,依然借金の返済に追われる状況は変わらず,しかも同
 月23日には,被告人とともに申し入れていた,あてにしていた融資を断られ
 てしまった。追いつめられたAは,たまたまBの経営する会社事務所の前を通
 りかかった際に,また同人から金員を強取することを思い立ち,被告人とCに
 誘いの連絡を入れたが,Cからは断られた。しかし,Aは,同日中に何として
 でも借金の返済資金を調達しなければならず,被告人も同様の資金を早く得る
 必要があったことから,被告人とAの2人だけでもBから金品を強取すること
 を決意した。
  被告人とAは,被告人が運転する自動車に,Aが用意したガムテープ,折り
 畳み式ナイフ,金属バット等を積み込んでB方のあるマンションに赴いたが,
 同人が既に在宅していることが分かったため,当初予定したとおり,不在の同
 人方に侵入して同人の帰宅を待つという方法が不可能となってしまった。そこ
 で,被告人らは,マンションから離れた場所にBを呼び出し,その背後から襲
 う方法で金品を強取しようとして,同日午後8時40分ころ,Aが携帯電話で
 B方に電話を掛け,仕事の話を装って同人を呼び出そうとした。しかし,同人
 から外に出向くのを断られ,同人方においてならば仕事の話に応ずる旨言われ
 たので,結局,AがB方を訪れることとなった。そこで,被告人らは,まずA
 が仕事の話を装ってB方に入り,頃合いを見て携帯電話で被告人に連絡し,被
 告人は金属バット等を用意してB方玄関前で待機し,AがBを襲った時の物音
 等を合図に被告人もB方に侵入し,2人でBに襲いかかることとした。しか
 し,これを実行すると,Bに顔を見られることから,Aは,自己らの犯行であ
 ることの発覚を防ぐためにBを殺害するほかないと考え,被告人も,この方法
 で実行することに同調して,ここに,被告人とAの間で,Bを殺害してでも金
 品を強取する旨の共謀を遂げた。
  そして,予定どおり,Aが同日午後9時20分ころ,B方に入り,同人と仕
 事の話などをしながら,その途中借用を装って入った同人方トイレ内から携帯
 電話で被告人にB方玄関前で待機するように連絡し,さらにBを襲う機会を窺
 った。その後,BがAに帰って欲しい様子を見せたため,Aは,一旦同人方を
 退出したところ,既に玄関前に待機していた被告人から,なぜ出てきたのかと
 いうようなそぶりを示されたので,同日午後11時ころ,Aは,車の鍵を忘れ
 たと虚偽を述べて再びB方に入っていき,計画を続行することとした。Aは,
 B方内で鍵を探す振りをしながら,上着ポケット内に入れていた折り畳み式ナ
 イフの刃を開いてこれを上着ポケット内に隠し持ち,Bの様子を窺っていた
 が,ケースにつまずき,Bと向き合う形となったところで,Bを後方に押し倒
 した。その物音を聞いてB方に入った被告人は,Aと共に,後記第3のとおり
 強盗殺人の犯行に及んだ。
(犯罪事実)
被告人は,
第1 Aと共謀の上,平成13年4月19日午後9時ころから同10時ころまで
  の間に,前橋市a町b番地のc所在のde号室B方において同人所有に係る
  現金約710万円を窃取した。
第2 前記A及びCと共謀の上,同年5月18日午前1時30分ころから同3時
  30分ころまでの間に,前記B方において同人所有に係る腕時計1個ほか9
  点(時価合計約388万3500円相当)を窃取した。
第3 B(当時40歳)を殺害して金品を強取しようと企て,前記Aと共謀の
  上,同月23日午後11時ころから翌24日午前3時ころまでの間,前記
  B方において,被告人がBを羽交い締めにするなどして押さえつけ,Aが,
  Bの頸部に所携の折り畳み式ナイフ(刃体の長さ約8.3センチメートル。
  平成14年押第38号の4)を突き付け,その頭部や足を所携の金属バット
  で殴りつけ,こもごも同人をベッド上にうつ伏せに倒した上,その両手足を
  所携のガムテープで緊縛し,Aが上記Bの背部を上記ナイフで多数回突き刺
  すなどし,よって,同人を胸腔内に達する左背面刺創からの失血により死亡
  させて殺害した上,同人所有に係る現金約100万円及び腕時計2個ほか2
  点(時価合計約130万円相当)を強取した。
  (補足説明)
1 検察官は,判示第1の窃盗につき,被害者作成の被害届に1万円札900枚
 位(内100万円の束5個)及び千円札300枚位が被害に遭い,追加被害届
 には時価120万円相当のロレックスの腕時計が被害に遭った旨の記載がある
 ことに基づき,判示第1の窃盗の被害金品は現金約930万円及びロレックス
 の腕時計1個(時価120万円相当)であると主張する。これに対し,被告人
 は100万円の束が7個と千円札と5千円札の束で10万円くらいの合計71
 0万円くらいあったと供述し,共犯者のAは100万円の束4個ともう1つ1
 00万円の束だったかは覚えていないが1万円札及び千円札が130万円分く
 らいで合計530万円あったと供述し,また,被告人はロレックスについては
 知らない旨供述し,Aはこれについては何ら供述していない。そして,被告人
 らは,判示の各事実について,被告人とAとの間で細部には食い違う点もある
 が,被害者方に侵入して金品を窃取したり,被害者を殺害したことなど重要な
 事実について自白しており,積極的に真実を隠そうとしている様子は認められ
 ないから,判示第1の犯行で窃取した金品についてのみ虚偽の供述をする理由
 は見出し難い。そして,被害者の申告どおりの現金があったことについては,
 同人の供述のほかにこれを裏付けるものはなく,また,腕時計についても,被
 害者の交際相手が,追加被害届に記載された腕時計を被害者から見せられたこ
 とがある旨供述している以外に,本件犯行時にこれが窃取されたことを裏付け
 るものはない。そして,被害者方での現金の管理はそれほど厳格に行われてい
 なかったことが窺えること,被害者は,盗難保険の保険会社の関係者から,保
 険金請求するなら,警察に追加被害届を出せば保険金が増える旨言われたの
 で,被害届を出してから1か月以上経ってから,追加被害届を出したと説明し
 ていること等に照らすと,これらの記載内容の信用性には合理的な疑問を差し
 挟む余地がある。
  そこで,被告人及びAの各供述内容を比較検討することになるが,被告人の
 供述に係る被害金額の方がAの供述による被害金額よりも多額であるところ,
 被告人においてこの点についてことさら自らに不利益な虚偽の供述をすべき理
 由は存在しないこと,被害者方から現金を窃取したのは被告人であり,Aは被
 告人が窃取した現金を受け取ったに過ぎないことなどを併せ考慮すれば,被告
 人の供述に従い,現金約710万円を窃取したとの限度で認定するのが相当で
 ある。
2 判示第3の強盗殺人につき,検察官は,被告人とAとの事前共謀に基づくも
 のであり,また,被告人は被害者の頸部をロープで締め付けていると主張する
 のに対し,弁護人は,被告人がAと被害者の殺害を最初からは共謀しておら
 ず,また被告人は被害者の頸部をロープで締め付けていないと主張し,公判廷
 において被告人もこれに沿う供述をしている。
  そこで,まず,殺害の共謀の時期について検討するに,被告人とAの供述に
 よれば,本件犯行当日の平成13年5月23日までに,被告人は,AがBと顔
 見知りであることを知っていたこと,時期についてははっきりしないが,Aが
 被告人に対し,Bに対する強盗を行う前に,「顔を見られたら,やるしかない
 よな。」と話していたこと,当初の予定では,外出中のB方に,被告人とBに
 分からないよう顔を隠したAが侵入して待ち伏せ,帰宅したBに対し襲いかか
 って金を奪うというものであったが,当日の午後9時ころ,被告人とAが乗用
 車でB方マンションの前まで行ってみると,既にBは帰宅していることが分か
 ったので当初の計画は中止したこと,Aは,被告人に対し,計画の変更につい
 ていろいろ考えを述べた後,結局,同日午後9時20分ころ,「俺が先に部屋
 に入って,トイレに行って携帯に電話をするから,荷物を持って上がってきて
 くれ」と電話があったらバットとロープ等の入った袋を持ってB方の前まで来
 るように指示して,ナイフを携帯した上,B方を訪ね,被告人は乗用車で待機
 していたこと,午後10時47分にAは,B方のトイレから被告人に携帯電話
 をかけ,これに従い,被告人はB方の前のエアコンの室外機の陰に待機したこ
 と,AがB方から出てきたときに,被告人は,Aに,なぜ出てきたのか疑問を
 示すような様子を見せ,これを見てAは,Bに対し,鍵を忘れた旨虚偽を述べ
 て再びB方に入ったこと,この時Aは玄関の鍵をかけず,その後,被告人はA
 と共に判示第3の強盗殺人の犯行を行ったことなどの事実が認められる。
  そうすると,Aが素顔をさらしたままBに対する強盗の実行に着手すれば,
 Aひいては被告人が強盗犯人であることが,Bに分かってしまうのであるか
 ら,Aが素顔でBに対する強盗をすると決意し,これを被告人が認識認容した
 時点で,被告人らはBに対する強盗殺人を共謀したものと認めるのが相当であ
 る。したがって,平成13年5月23日午後9時20分ころ,被告人は,Aが
 強盗目的で,素顔をさらしたままB方に入っていくのを見ていながら,Aの行
 動に異を唱えることなく,自然に積極的にその行動をともにし,本件強盗殺人
 の犯行に及んでいるのだから,被告人とAの間には,この時点において,Bに
 対する強盗殺人の共謀が成立したと認めるのが相当である。
次に,被告人がロープでBの頸部を締め付けたかどうかを検討するに,これ
 を窺わせる証拠は,Aの供述以外にはないので,その信用性が問題となる。A
 は公判において,「中村がドアを開けて入ってきて,Bさんの後ろ側から中村
 がロープで首を絞めました」,「そのあと,Bさんを中村が後ろから締め上げ
 ていたんですが」と供述し,検察官調書において,「その後,中村は,Bさん
 をベットのある寝室に連れ込もうとして,ベット,ベットなどと言いながら,
 Bさんの首にロープを巻き付けたまま,Bさんの背後に中村が回わり,そのロ
 ープを引っ張りました。そのためBさんの首はロープで締め付けられる状態に
 なり,Bさんはロープを手で掴んで必死に首が締まるのを防ごうとしながら
 も,体がひきずられるような形になりました」,「中村は,Bさんの首に回し
 たロープを引っ張り,そのままベットの上にBさんを引きずった状態で乗せ
 」,「それでも,Bさんは,暴れ続け,一度,中村とBさんの体が離れて,B
 さんが寝室の窓際に向かって逃げようと足を踏み出したことがあり,中村が多
 分,首に巻いていたロープを引っ張ったと思うのですが,Bさんの体をベッド
 の方に引き倒しました。そして,その反動か、Bさんがベットから寝室の入口
 側の床に落ちる形になり,中村は,ベットの上に膝をついた姿勢で,Bさんの
 背後からBさんの首にロープを巻き付け締め上げている体勢になりました」と
 供述している。
Aの上記供述,特に検察官調書における供述は,迫真性に満ちており,犯行
 の約2か月後であって比較的新しい時点でのものであるから一見信用できるよ
 うにも思われる。しかしながら,Aは,上記の検察官調書において,「一度,
 ナイフを置いて金属バットに持ち替えると,そのナイフを何処に置いたのか後
 から分からなくなってしまうようなパニック状態でした」と本件犯行時の自己
 の状態について述べ,また,自己の行動について,細部については曖昧な供述
 をしており,本件犯行時,Aは極度の興奮状態にあったと認められること,A
 の供述内容は,全体的に,被告人の行動について過大に供述し,自己の行動に
 ついては過小な表現をするなど自己弁護的な傾向が窺われることに加えて,上
 記Aの供述のように、抵抗するBにロープをかけ,引きずるなどすれば,Bの
 身体にはロープによる擦過傷等が生ずるのが自然であると考えられるところ,
 鑑定書,解剖写真撮影報告書等の関係証拠によっても,Bの頸部周辺にさした
 る擦過傷を認めることはできないことをも併せ考えると,Aの供述には合理的
 な疑いを入れる余地がある。したがって,被告人がロープでBの頸部を締め付
 けたことについては,認定できないと判断した。
(法令の適用)
該   当   罰   条       
判示第1及び第2の各行為     いずれも刑法60条,235条
判示第3の行為  刑法60条,240条後段
刑種の選択       第3の罪につき無期懲役刑
併合罪加重       刑法45条前段,46条2項本文
未決勾留日数の算入       刑法21条
訴訟費用の不負担       刑訴法181条1項ただし書
(量刑の理由)
 本件は,被告人が共犯者Aらと共に,事業に成功し順調に会社経営を行ってい
た被害者から金品等を窃取し,さらに強取することを企て,2回にわたり被害者
方に忍び込み多額の金品を窃取した上,遂には被害者をナイフで突き刺して殺害
して金品を強取したという窃盗及び強盗殺人の事案である。
 被告人は,消費者金融などから約300万円に上る高額の借金を抱えながら無
為徒食の生活をおくっていたところ,被告人以上に多額の借財を抱えその返済に
窮していた共犯者であるAに誘われ,借金の返済資金や同棲相手との遊興費等欲
しさに本件各犯行に及んだものであって,その動機には,全く酌量の余地がな
い。また,本件強盗殺人は,被告人において,Aと具体的な犯行の段取りについ
て打合せを行い,Aにおいて折り畳み式ナイフ,金属バット,ガムテープ等を準
備してなされたものであり,周到に用意された計画的な犯行である。そして,A
は,本件強盗殺人の際に,被害者に対して,仕事について話があるなどと嘘を言
って,被害者を信用させて,その居宅内に入り,機を窺っていきなり同人に襲い
かかり,それと同時に被告人も被害者の居宅内に入り,被告人が被害者を押さえ
つけ,Aが,金属バットで被害者の頭部・胸部等を殴打し,その手足をガムテー
プで緊縛するなどして,同人に金品の在処を問い詰めたものの芳しい返事が得ら
れず,いたずらに時間が経過することで隣人等に気付かれることを恐れて,遂に
ナイフで同人の背部を4か所にわたって深く突き刺して殺害したものであって,
その態様は,真に残虐なものである。そして,被告人は,Aと共に,その前に2
度にわたって被害者方に侵入して金品を窃取しており,本件は,被害者の財産を
執拗かつ徹底して奪取するためにはその死をも厭わずなされた凶悪な犯行といえ
る。判示第2の窃盗も,当初は強盗を計画し,やはり凶器として用いるナイフ等
を準備して忍び込んだものの,たまたま被害者が帰宅しなかったため窃盗にとど
まったものに過ぎない。財産的な被害をみても,判示第1及び第2の各窃盗にお
いては,現金約710万円及び時価合計約400万円の腕時計ほか9点が奪われ
,判示第3の強盗殺人においても現金約100万円及び時価合計約130万円相
当の腕時計等4点が奪われており,極めて大きいというべきである。
 被害者は40歳と働き盛りであって,その経営する会社は順調に事業拡大して
おり,交際中の女性とも結婚の約束をするなど,公私ともに順調な時に本件によ
って非業の死を遂げることになったもので,その無念さは察するに余りある。被
害者の遺族らは被告人の厳罰を臨んでいるが,当然のことといえる。また,強盗
殺人という凶悪な犯罪が発生すること自体,治安一般に対する社会の不安を増大
させるものであるところ,同一人方に続けて侵入盗が入った上,遂にはそこで強
盗殺人事件が起こったもので,地域住民に与えた不安は多大なものがあり,社会
的影響の大きさも見逃せない。
 そして,被告人は,第1及び第2の窃盗では自ら実行犯となり,第3の強盗殺
人においては,凶器等を持って,上記Aの合図に応じて被害者方に入り,Aが被
害者を金属バットで殴打し,遂には被害者の背部をナイフで突き刺して殺害する
までの間,同人を押さえつけるなどしているのであって,終始重要な役割を果た
している。その結果,被告人は,本件各犯行により現金約300万円のほか,奪
取した腕時計を入質処分して約50万円の利得を得ている。また,強盗殺人の
後,被告人は,被害者方から共犯者が持ち出した被告人らの指紋の付着している
おそれのある布団等を共犯者と共に燃やしたりして証拠隠滅を図るなどしてお
り,犯行後の情状も芳しくない。
 他方,被告人は,素直に罪を認め反省していること,本件各犯行は終始共犯者
であるAの主導で行われており,被告人にAに引きずられた面があることは否め
ないこと,被告人には懲役前科がないこと,被告人の父親が被告人のため公判廷
に情状証人として出廷したことなど酌むべき情状もある。
 しかしながら,そもそも強盗殺人は最も重い犯罪の一つであるところ,本件各
犯行の動機に酌量の余地が全くないこと,計画的かつ周到に準備された上で敢行
された危険な態様の極めて悪質な事案であること,犯行の結果もまことに重大で
あること,本件各犯行においては,共犯者が主導的であったとは言え,被告人も
重要な役割を果たしていること等を併せ考えると,被告人に有利な事情を最大限
斟酌しても,本件については,無期懲役をもって臨むのが相当であると判断した。
(求刑 無期懲役)
(公判出席 検察官加藤直人 国選弁護人杉原信二)
平成14年10月24日
前橋地方裁判所刑事部
裁判長裁判官   長谷川憲一
裁判官   吉井隆平
裁判官   丹下将克

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