弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人を懲役一年八月に処する。
     原審における未決勾留日数中五〇日を右刑に算入する。
     押収にかかる回転式けん銃一丁(大阪高裁昭和五九年押第八一号の2)
を没収する。
     被告人に対する昭和五八年六月一〇日付起訴状記載の第一の公訴事実
(Aらと共謀のうえ昭和五六年八月中ころBに対し逃走資金なととして現金五〇〇
万円を供与し、同人を隠避させたとの点)につき、被告人は無罪。
         理    由
 本件控訴の趣意は、弁護人遠藤政良、同吉田清悟連名作成の控訴趣意書記載のと
おりであり、これに対する答弁は、検察官小A秀春作成の答弁書記載のとおりであ
るから、これらを引用する。
 控訴趣意中、事実誤認の主張について
 論旨は、原判決は判示第三の一において被告人がBに対し店舗購入資金として五
〇〇万円を供与したことを同人の逃走に便宜を与えて隠避させたものと認定した
が、右五〇〇万円は、Bの内妻Cが賃借して経営していたDの営業が不振となつた
ため、同女がBと相談のうえ右店舗の土地建物を買取つて他に転売しようと考え、
その購入資金の一部として被告人から借り受けたものであり、これによつてBの逃
走か容易になる筋合のものでもなく、また被告人にはBの発見を困難ならしめる認
識は全くなかったから、原判決には事実の誤認がある、というのである。
 まず、原判決挙示の関係証拠によると、次の事実が認められる。すなわち、昭和
五四年一月一三日、Bに対して銃砲刀剣類所持等取締法違反等被疑事件の逮捕状が
発布され、同月二一日全国に指名手配されたが、同人はこれより先の同月一五日こ
ろ内妻Cを伴つて大阪市内から郷里に近い三重県尾鷲市内に引越し、同市内の三階
建ビルの一部を賃借し、銀行から融資を受けて原判示DをC名義で開店させること
としたが、前示被疑事件で身辺に警察の手がのびていることを察知し、同年二月一
二日ころCに「東京へ行つてくる」旨告げて同市を離れたが、同女は同年三月初旬
B不在のまま自ら経営者となってDを開店し営業を始めた。Bは同女と電話で連絡
を取り指示を与えていたが、当初店の経営は順調であつたものの、そのうち家賃や
銀行ローンの支払いにも困るようになつたので、同年七月中旬ころ、同女はBに対
してその旨を電話で知らせたところ、Bは月二〇万円の家賃を支払うよりはローン
を組んで同店の土地建物を買取つたうえ引続き同女に営業させ、同女らの生活費と
自己の逃走資金を得るのが得策であると考え、その所有者らと交渉させた結果二、
四九〇万円で買取る話がまとまつた。そこで、同人は、店舗購入の頭金五〇〇万円
の工面を兄弟分のE組若頭補佐Aや被告人に頼むこととし、そのころAを通じて被
告人に五〇〇万円の金策を依頼した。被告人は、Aから「BかDの土地建物を買取
つて店をやつて行きたいといつてきている。Bは表に出てこれないので、しつかり
したしのぎのあてを作つてやる必要があるので、頭金五〇〇万円を出してやつてく
れんか」と頼まれたが、Bが組のために事件を起こし、前示の犯罪で指名手配され
ていることを知りながらこれを了承し、自己の手持金三〇〇万円に他の組員から借
りた二〇〇万円を加え合計五〇〇万円を右Aとともに同年八月中ころDに持参して
Cに手渡した。Bは、前示のとおり同女と電話連絡をとつて右金員の使途について
指示し、同女は右五〇〇万円を頭金に二四〇万円、登記料に五〇万円、家賃滞納分
の支払いに二〇万円をそれぞれ支出し、残りを借金の返済と生活費に使用し、Bに
は何も手渡していない。
 <要旨>以上の事実にもとづき犯人隠避罪の成否について考えるのに、刑法一〇三
条の「蔵匿」とは、自己の支配する場所を提供してかくまうことをいうのに
対し、「隠避セシメ」るとは、逃げかくれするのを容易にすることをいい、判例で
は「蔵匿以外の方法により官憲の発見逮捕を免れしむべき一切の行為を包含する」
(大判昭和五年九月一八日刑集九巻六六八頁)とされているが、もとより蔵匿とと
もに官の発見・逮捕を妨げる行為であるから、右のように「一切の行為」といつて
も自ら限界があるべきで、蔵匿との対比においてそれと同程度に「官憲の発見逮捕
を免れしむべき行為」、つまり逃げかくれさせる行為または逃げかくれするのを直
接的に容易にする行為に限定されると解するのが相当であり、それ自体は隠避させ
ることを直接の目的としたとはいい難い行為の結果間接的に安心して逃げかくれで
きるというようなものまで含めるべきではない。本件の場合、さきに認定したよう
に、五〇〇万円は被告人がBの内妻Cの店舗購入資金として同女に供与したもので
あり、Bの手に渡つたのは皆無であるから、被告人の右行為によつてBが安心して
逃走をつづけることができたとしても、これをもつてBの逃走を容易にし隠避させ
たということはてきない。したがつて、被告人の認識の点に関する所論について判
断するまでもなく、原判決が本件五〇〇万円を「店舗購入資金・逃走資金等」と認
定し、犯人隠避罪の成立を認めたのは、事実を誤認し法令の解釈適用を誤つたもの
であり、この誤りは判決に影響を及ぼすことが明らかである。論旨は理由がある。
 よつて、量刑不当の論旨に対する判断を省略するが、原判決は判示第三の一の罪
とその他の罪とを併合罪として一個の刑を言渡しているので、刑事訴訟法三九七条
一項、三八二条、三八〇条により原判決全部を破棄し、同法四〇〇条但書によつて
直ちに判決することとし、原判示第三の一の事実を除くその余の事実(但し、原判
示第三の二の事実中、「店舗購入資金・逃走資金等」とあるのを「逃走資金等」に
改める)に原判示の法条(但し、原判示第三の所為の適条に「包括して」を加え
る)を適用して被告人を懲役一年八月に処し、原審における未決勾留日数中五〇日
を右刑に算入し、主文四項のけん銃一丁は没収する。
 被告人に対する昭和五八年六月一〇日付起訴状記載の第一の公訴事実は、前示の
理由で罪とならないから、刑事訴訟法三三六条によつて無罪の言渡しをする。
 よつて、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 兒島武雄 裁判官 荒石利雄 裁判官 中川隆司)

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