弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件抗告を棄却する。
         理    由
 本件抗告の要旨は、
 「相手方会社は、抗告人会社をしてその所有にかかる本件不動産につき根抵当権
(債権極度額三十万円、契約期間昭和二十四年七月十三日まで遅延損害金は百円に
つき日歩五十銭の割)を設定せしめ、同年四月十四日その登記を経由し、同日相手
方会社より金二十万円を抗告人会社に貸しつけたところ、抗告人会社においてその
債務の履行をしないと主張し、前記抵当権の実行として、本件不動産につき競売の
申立をし、この申立にもとづいて競売手続が進められ競落許可決定がなされるに至
つたものである。そして、抗告人会社が前記日時相手方会社に対しその主張の債務
を負担したことは認めるのであるが、その後相手方会社は昭和二十七年九月中抗告
人会社に対する前記貸金債権をAに譲渡し、同月二十二日付書面をもつてその旨抗
告人会社に通知し、その通知は翌二十三日抗告人会社に到達した。それゆえ、相手
方会社は、もはや抗告人会社に対して前記債権を有しないこととなつたものである
し、そればかりでなく、抗告人会社は昭和二十七年十月初旬に新債権者Aから前記
債務の免除を受けたのである。このようにして、抗告人会社の前記債務は消滅に帰
したものであり、少なくとも相手方会社としては前記債権を有しないのにかかわら
ず、相手方会社は依然として抗告人会社に対し右の債権を有するものとして本件競
売の申立をしたものであつて、原裁判所が本件競売手続を進行せしめ、競落許可決
定をしたのは不当である。よつて右決定を取り消し、さらに相当の裁判あらんこと
を求める。」
 というにある。
 そこで調べてみるのに、相手方会社の提出した(末尾にA名義の証明文句の記載
がある)上申書およびそれに添附の昭和二十七年九月二十二日付債権譲渡通知書、
同日付配達証明書、昭和三十一年七月九日付通知書、同月十二日付配達不能報告
書、昭和三十四年四月三十日付通知書、同年五月二日付配達証明書の各写ならびに
記録中登記簿謄本の記載によれば、
 1 相手方会社は、抗告人に対し、本件不動産につき抗告人主張の根抵当権を設
定せしめ、その登記を経たうえ、金二十万円を貸与したが、昭和二十七年九月二十
二日、当時相手方会社を退職したAに対し、退職金の一部にあてさせるため譲渡
し、同日債務者たる抗告人会社に右譲渡の事実を通知し、その通知は即日抗告人会
社に到達したこと、しかし抵当権の移転についてはその登記を経ないでいたこと。
 2 ところが、その後中野において抵当権実行のため調査をした結果、本件不動
産に対し地方税徴収のため滞納処分としての差押がなされ、競売申立については滞
納税金の代納を要する旨聞知し、かくては前記債権譲渡の趣旨にそわないことにな
るというので、中野と相手方会社において協議の結果、昭和三十一年七月九日前記
債権譲渡契約の合意解除をし、右両者から同日付で抗告人会社に宛てその旨の通知
書を発したこと、ところが右の通知書は、「受取人宛所に尋ね当らない。」との理
由で配達不能となり、そのまま日時を経過していたこと、そして昭和三十四年五月
一日にいたり、中野と相手方会社とは、同年四月三十日付書面をもつてふたたび抗
告人会社に対し前同趣旨の通知をなし、その通知書は同年五月二日抗告人会社に到
達したこと、
以上の事実が認められる。それゆえ、相手方会社は一旦前記債権をAに譲渡し、こ
れとともに前記抵当権も同人に移転したのであるけれども、後に右譲渡契約の解除
により、右債権は相手方会社に復帰し、同時に抵当権もこれに伴い相手方会社に復
帰するに至つたものというべきである。
 ところで、本件競売手続の経過について調べてみるに、記録によると、相手方会
社は昭和三十二年四月二十二日本件競売の申立をなし、同月二十三日競売開始決定
がなされ、昭和三十四年三月三日競落許可決定がなされたものであることが明らか
である。そして、指名債権の譲渡契約を解除した場合において、その解除による債
権の復帰をもつて債務者に対抗するには、右譲渡契約解除の事実を、もとの譲受人
から債務者に通知するか、あるいは債務者においてこれを承諾することを要するも
のと解すべきであるから、前記認定事実によると、相手方会社が本件競売の申立を
した当時においては、いまだ右債権の復帰についての対抗要件を具備していなかつ
たものといわねばならない。
 しかしながら、抵当権の復帰についてはどうかというに、前記認定のように、相
手方会社からAに移転登記を経ないうちに、債権譲渡契約が解除されたことによ
り、抗当権もまた債権に随伴して相手方会社に復帰したのであり、したがつて、そ
の後においては、相手方会社の抵当権取得についての対抗要件はこれを具備<要旨>
したものとして取り扱い得る状態になつていたものということができるのである。
そして、このような場合には、債権復帰についての対抗要件が競売申立当時
具備されていなかつたからといつて、直ちに右競売申立が違法となるものではな
く、債務者ないし抵当物件所有者において右対抗要件の欠缺を主張して債権の復帰
を否認し、さらにこれによつて抵当権の復帰を争い、競売手続につき異議を申し立
てるというような挙に出ないかぎり、競売裁判所は競売手続を進行させても差支え
ないのである。また、右の異議申立があつても、これに対する裁判前に右対抗要件
が具備されれば、爾後債務者ないし所有者において債権ならびに抵当権の復帰を否
認し、その点の理由により競売手続を違法として争う余地がなくなり、裁判所とし
てももはや前記対抗要件の欠缺を理由として競売手続を取り消すことができないこ
とになるものといわなければならない。そして、相手方会社が、競売手続開始後で
はあるけれども、昭和三十四年五月二日に前記債権復帰についての対抗要件を具備
したものであることは前認定のとおりであり、なお前記債権の譲受人たるAが、抗
告人会社主張のように抗告人会社に対しその債務を免除したという事実について
は、これを認めるに足るなんらの資料もない。
 以上の次第で、本件競売はその基本たる被担保債権を有しない相手方会社の申立
にかかるもので違法であるという抗告人会社の主張はこれを採用することができ
ず、他に本件記録を精査しても原決定を取り消すべき瑕疵の存することを認め得な
いので、本件抗告は理由がないものとしてこれを棄却することとし、主文のとおり
決定する。
 (裁判長裁判官 内田護文 裁判官 多田貞治 裁判官 入山実)

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