弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人海野普吉同位田亮次両名および同岩淵彰郎の各上告趣意は、末尾に添えた
別紙記載の通りである。
 (一)海野位田両弁護人論旨第一点は、原判決には擬律錯誤の違法がある、とい
うのである。本件は被告人Bが原審相被告人らと共謀の上同被告人が農業会長とし
て栃木県から村内の米穀割当超過供出者に配給すべく委託されて業務上保管中の昭
和二十一年産米政府買入報奨用生活必需物資たる判示の各物品をほしいまゝに受配
資格のない自己またはその他の者に配分したという事実を業務上横領を以て処断し
たのであつて、その事実は原判決が証拠によつて認定したところであるから、論旨
のその事実を争う部分は、結局事実誤認の主張にほかならず、上告の適法な理由に
ならない。問題は右報奨物資の有資格者に分配された残余の部分中論旨のいわゆる
「端数量」なるものが「昭和二十一年度産米政府買入報奨用生活必需物資特配要綱」
第二の第十一項「本特配に依り残数量を生じた場合は県の指示ある迄之を他に流用
しないものとする」とある「残数量」中に含まれるか否かである。弁護人は被告人
が右「端数量」は「残数量」以外であると考えて本件の処分をしたのであるから横
領の犯意がないと主張するのであるが、たとい判示物品が所論の「端数量」に該当
するとしても、それは同村米穀割当超過供出者以外の者すなわち受配資格のない者
に分配すべからざる物であること、および被告人が右分配に際し権限踰越の認識を
有していたということは、原判決が証拠によつて認定したところであつて、その認
定が実験則に反するものとは思われない。所論は原判決の採用しなかつた被告人の
原審公判廷における供述等を援用して被告人に本件犯行の犯意がなかつたことを主
張するものであつて、論旨は理由がない。
 (二)同論旨第二点は、原判決には証拠調の決定を施行しない違法がある、とい
うのである。よつて記録をしらべて見ると、原審はその第二回公判廷において、海
野弁護人の申請を採用し昭和二二年度食糧調整委員会帳簿の取寄せをなす旨決定し、
栃木県塩谷郡A村長に対し右委員会帳簿(議事録の写)の送附方を嘱託してその送
附を受け、これを記録にとじ込んだゞけで、それを公判廷へ持ち出さなかつたので
ある。しかしながら書類の取寄決定は、書類についての証拠調決定とはおのずから
異なるのであつて、取寄決定をしながら取寄せた書類について証拠調をしなかつた
とて、証拠調の決定を施行しなかつたものとは言えない。殊に本件においては、右
昭和二二年度食糧調整委員会帳簿は、原判決が証拠として引用しなかつたものであ
り、なお取寄せられた右書類は記録にとじ込まれてあつて弁護人が閲覧し得る状態
にあつたにかゝわらず弁護人はそれについて証拠調を申請せず、かつまた原審はこ
れと同内容の「A村食糧調整委員会会議録」について証拠調をしているのであるか
ら、原審が取寄せた書類を法廷で展示しなかつたことが訴訟手続上の瑕疵であつた
としても、それが原判決に影響を及ぼさなかつたことは明かであつて、論旨は理由
がない。
 (三)同論旨第三点は、問題の物資は原判決の言うごとくその保管を栃木県から
委託されたものではなく、既にA村農業会の所有に属したものであるから、同農業
会長がこれを処分した行為は、臨時物資需給調整法上の責任はともかくとして、横
領罪に関わるべきものではない、と主張する。しかしながら、本件報奨用物資は被
告人がA村農業会長として同村内の米穀割当超過供出者に配給すべくその保管を栃
木県から委託されたものである事実は、原審公判廷における被告人の供述その他の
証拠によつて認定され得るところである。すなわち被告人は原審公判廷において、
犯意の点は否認したが、事実はその通り相違ないと供述しており、そして報奨物資
の取扱ならびに配給は市町村長の権限に属し市町村農業会長としてはその指示に従
うものであつても、市町村長は地方事務所長の、地方事務所長はさらに県の配給指
示に従うものであること、原判決が引用した昭和二一年度産米政府買入報奨用生活
必需物資特配要綱の記載によつて明かであるから、結局農業会長としては県から配
給の委託を受けた関係にあるものと言うべく、原判決のこの点の摘示はその趣旨に
解すべきである。次に論旨の言う栃木県食糧課長からA村農業会長宛回答書と題す
る書面は原判決が証拠として採用しなかつたところであり、また本件報奨用物資に
ついてA村農業会が荷受機関に対しその代金を支弁したとしても、各受配者の支弁
すべき代金の一括立替払であることも考えられるのであるから、必ずしもそれによ
つてその物資の所有権が農業会に帰属したとは言えないのである。そして原判決は、
本件報奨用物資の所有権がはたしてだれに帰属するかを積極的に判示してはいない
が、所論のごとくそれがA村農業会に属するものでなく他人の物である事実は、確
定判示しているのであつて、論旨は結局原判決の認定しない事実に基いて論をなす
ものであり、上告理由として採用し得ない。
 (四)岩淵弁護人論旨第一点は、海野位田両弁護人論旨第三点と同趣旨であつて、
その理由のないことは(三)に述べた通りである。
 (五)同論旨第二点は、原判決が被告人の本件犯行を業務上横領と認定したのを
証拠によらぬものと非難する。しかしながら、被告人が本件物資を業務上保管して
いたという事実は、原判決がその挙げた証拠特に被告人の原審公判廷における供述
によつて認定したところであつて、原判決が虚無の証拠によつて右の事実を認定し
たという非難は当らない。所論は原審の採用しなかつた証拠に基いて独自の見解を
主張するにほかならず、上告理由として採用することはできない。
 (六)同論旨第三点もまた事実認定に対する非難であつて、上告の適法な理由に
ならない。
 (七)同論旨第四点は、被告人に犯意がなかつたことを主張するのであるが、被
告人に判示の報奨物資をその委託の趣旨に反して受配資格のない自己または第三者
に配分するという認識があつた事実は、原判決が被告人の原審公判廷における供述、
原審証人音羽誠の供述、被告人に対する検事の聴取書中の供述記載、その他の証拠
を綜合して認定したところであつて、既に受配資格なき自己において物資を領得し
また受配資格なき第三者をしてこれを領得せしむる認識があつた以上、本件横領の
犯意なしとは言い難い。また所論後段については前記(一)に説明した通りであつ
て、論旨はすべて理由がない。
 (八)同論旨第五点は、判示物資がA村農業会の所有であるということを前提と
して原判決が被告人の行為を横領罪にあたるものとしたのを非難する議論であるが、
その理由なきことは前記(三)に述べた通りである。
 (九)同論旨第六点は、前記(一)の論旨と同様であるが、既に述べた通り、原
判決は、判示物品が所論の「端数量」にあたるとしてもそれは同村内の米穀割当超
過供出者以外の者すなわち受配資格のない者には分配すべからざる物であることを
確定判示しているのである。そして被告人がA村村長としての職務権限に基いて本
件物資の配分をしたものであるとの事実は原判決の認定しなかつたところであつて、
論旨は理由がない。
 よつて、旧刑訴第四四六条に従い、主文の通り判決する。
 以上は当小法廷裁判官全員一致の意見である。
 検察官 茂見義勝関与
  昭和二五年七月一一日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    穂   積   重   遠

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