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平成24年6月7日判決言渡同日原本交付裁判所書記官
平成23年(ワ)第9404号不正競争行為差止等請求事件
口頭弁論終結日平成24年4月9日
判決
原告株式会社フォーチュン
同訴訟代理人弁護士田中雅敏
同宇加治恭子
同鶴利絵
同柏田剛介
同生島一哉
同新里浩樹
同訴訟復代理人弁護士浦川雄基
同訴訟代理人弁理士有吉修一朗
被告株式会社オートクラフト
同訴訟代理人弁護士阪口大視
主文
1被告は,別紙被告商品目録1ないし4記載の各商品を製造し,販売し,引
渡し又は販売若しくは引渡しのために展示してはならない。
2被告は,前項の各商品を廃棄せよ。
3被告は,原告に対し,8万5000円及びこれに対する平成23年8月5
日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4原告のその余の請求を棄却する。
5訴訟費用は,これを3分し,その2を原告の負担とし,その余は被告の負
担とする。
6この判決は,第1項,第3項及び第5項に限り,仮に執行することができ
る。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1原告
(1)主文第1項及び第2項と同旨
(2)被告は,原告に対し,900万円及びこれに対する平成23年8月5日か
ら支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(3)訴訟費用は被告の負担とする。
(4)仮執行宣言
2被告
(1)原告の請求をいずれも棄却する。
(2)訴訟費用は原告の負担とする。
第2事案の概要
1前提事実(当事者間に争いがない。)
(1)当事者
原告は,自動車用品の販売及び卸業等を目的とする会社である。
被告は,各種自動車用品,部品の販売等を目的とする会社である。
(2)原告商品
原告は,平成21年12月9日から,別紙原告商品目録1ないし4記載の
各商品(以下,併せて「原告各商品」という。)を販売している。原告各商品
は,ドアミラーにウィンカーが設けられている自動車において,そのウィン
カーの周囲に取り付けられる装飾品である。
(3)被告の行為
被告は,平成23年2月から別紙被告商品目録1ないし4記載の各商品(以
下,併せて「被告各商品」という。)を販売しており,被告各商品は,原告各
商品と同一の用途に用いられる装飾品である。
2原告の請求
原告は,被告の行為が不正競争防止法(以下「法」という。)2条1項3号
の他人の商品の形態を模倣した商品を譲渡などする行為に当たるとして,法3
条に基づき,被告の行為の差止め及び被告各商品の廃棄を求めるとともに,法
4条に基づき,900万円の損害賠償及びこれに対する本件訴状送達の日の翌
日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めて
いる。
3争点
(1)被告各商品は,原告各商品の形態を模倣した商品であるか(争点1)
(2)損害額(争点2)
第3争点に関する当事者の主張
1争点1(被告各商品は,原告各商品の形態を模倣した商品であるか)につい

【原告の主張】
以下のとおり,被告各商品は,原告各商品の形態を模倣した商品である。
(1)原告各商品の形態は,別紙原告商品形態1ないし4記載のとおりであり,
被告各商品の形態は,別紙被告商品形態1ないし4記載のとおりである。
被告各商品は,凸状部の表面に溝部が設けられている点においてのみ原告
各商品の形態と相違するものであるが,これは創作性の乏しい微細な改変に
すぎず,原告各商品と実質的に同一の形態のものである。
なお,原告各商品と被告各商品は,自動車のドアミラーに設けられたウィ
ンカー周辺に装着されるものであるから,①ウィンカーが隠れないように
ウィンカーより大きな開口部を有する必要があること,②商品の立体的な曲
面がドアミラーの曲面と同一である必要があることの2点において,ドアミ
ラーの形状による形態上の拘束を受けるものである。しかしながら,それ以
外の形態は,作成者が随意に創作し,設定することができるものであり,現
に,原告各商品と同種商品を比べると,上記の点を除いた外観は全く異なる
ものであり,看者が受ける印象も全く異なっている。
(2)被告各商品のパッケージデザインや商品説明は,原告各商品とほとんど同
じものである上,被告の社名も記載されていないことからすると,被告各商
品が原告各商品に依拠して作られたことは明らかである。
【被告の主張】
以下のとおり,被告各商品は,原告各商品の形態を模倣した商品ではない。
(1)被告各商品の形態は,自動車のドアミラー及びそれに備え付けられたウィ
ンカーの形状によっておおよそ決定されるものであり,同種の商品である原
告各商品の形態と類似するのは当然のことである。
また,原告各商品の形態が同種の商品に共通するありふれた形状であるこ
とからしても,被告各商品は,原告各商品の形態に依拠して作り出されたも
のではない。
(2)被告各商品のパッケージは,オレンジ色を基調としている点で原告各商品
のパッケージと同じであるが,原告各商品のパッケージには赤色が使用され
ているのに対し,被告各商品のパッケージには使用されていない点で異なっ
ており,パッケージのロゴも明らかに異なっている。
2争点2(損害額)について
【原告の主張】
被告は,平成23年2月から同年7月までの6か月間に,1か月当たり少な
くとも1000セット(左右一対で1セット)の被告各商品を販売した。
被告各商品の1セット当たりの販売価格はいずれも2300円(税込)であ
り,その粗利益は1500円を下らないから,被告は,被告の行為により少な
くとも900万円の利益を受けており,原告は同額の損害を被った(法5条2
項)。
〔計算式〕
1,500×1,000×6=9,000,000
【被告の主張】
被告は,被告各商品を合計800セット製造し,85セットを販売したにす
ぎない。また,1セット当たりの利益は,1000円を上回るものではない。
第4当裁判所の判断
1争点1(被告各商品は,原告各商品の形態を模倣した商品であるか)につい

(1)法2条4項によれば,「商品の形態」とは,需要者が通常の用法に従った使
用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状並
びにその形状に結合した模様,色彩,光沢及び質感をいう。
証拠(甲1の1~9,甲2の1~9,甲3の1~9,甲4の1~9,甲5
の1~9,甲6の1~9,甲7の1~9,甲8の1~9)によれば,被告各
商品の形態は,いずれも,凸状部の表面の各辺に沿って溝部が設けられてい
る構成であること(別紙被告商品形態1〔具体的構成態様〕(g),別紙被告
商品形態2〔具体的構成態様〕(e),別紙被告商品形態3〔具体的構成態様〕
(f)及び別紙被告商品形態4〔具体的構成態様〕(g))において,原告各商
品の形態と相違するものの,その他の構成は原告各商品の形態と共通である
ことが認められる。
そして,上記相違点に係る被告各商品の溝部は,深さが浅く,幅も狭いも
のであり,証拠(甲15の2・3)によれば,ドアミラーにウィンカーが設
けられている自動車において,そのウィンカーの周囲に取り付けられて実際
に使用された際には,識別することができない程の微細な形状の差違である
ことが認められる。
そうすると,被告各商品は,原告各商品と実質的に同一の形態の商品であ
るというべきである。
(2)被告は,原告各商品と同種の商品として株式会社MIYAMAの製造販売す
る商品(乙1,4及び5。以下「MIYAMA商品」という。)があり,これは
原告各商品の形態と同様の形態である旨主張する。
そこで検討すると,そもそもMIYAMA商品の製造販売の開始時期は明ら
かではなく,少なくとも原告各商品に先行して販売されていたものであると
認めるに足りる証拠はない。
また,別紙原告商品目録1の商品は,三角形状部材(別紙原告商品形態1
〔具体的構成態様〕(d))を有しており,底辺と斜辺の交差する先端部分が
鋭角であるのに対し,証拠(乙1,4,5)によれば,上記原告商品に対応
するMIYAMA商品(商品名(TOYOTA「キラ・メッキ」ウィンカーリング
【T-Aタイプ】)は,三角形状部材に対応する部分の面積が上記原告商品の
半分以下の大きさであり,底辺と斜辺の交差する先端部分も角が丸くなって
おり,一見して異なる形状であることが認められる。これらの差違からする
と,上記原告商品と上記MIYAMA商品の形態が実質的に同一のものである
ということはできない。
他に,原告各商品とMIYAMA商品とが実質的に同一の形態であることを
認めるに足りる証拠はない。
加えて,原告各商品の形態と自動車メーカーの純正品の形態が大きく異な
ること(甲16,17,弁論の全趣旨)も考慮すると,原告商品の形態につ
いて,自動車のドアミラー及びそれに備え付けられたウィンカーの形状に
よっておおよそ決定されるものであるとか,同種の商品に共通するありふれ
た形状であるなどということはできない。
(3)前記(1)のとおり,原告各商品と被告各商品は,実質的に同一の形態の商
品であるということができ,前記(2)のとおり,原告各商品の形態について,
同種の商品に共通するありふれた形状であるということはできない。
そして,被告が,被告各商品を製造するに当たり,原告各商品の存在や形
態について認識していたことを自認していること(答弁書3頁)からすれば,
被告各商品は,原告各商品の形態に依拠して作り出されたものであると推認
することができる。
以上によれば,被告各商品は,原告各商品の形態を模倣した商品であると
いうべきである(法2条5項)。
2争点2(損害額)について
証拠(乙3,6~8)によれば,被告は,被告各商品を合計800セット製
造し,このうち85セットを販売したことが認められる。
また,被告各商品の1セット当たりの利益が少なくとも1000円であるこ
とについて当事者間に争いはないが,これを上回ることを認めるに足りる証拠
はない。
そうすると,被告が被告の行為により受けた利益の額は8万5000円であ
り,原告は,同額の損害を被ったものと認められる(法5条2項)。
〔計算式〕1,000×85=85,000
3結論
よって,主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官山田陽三
裁判官松川充康
裁判官西田昌吾

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