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平成17年10月14日判決言渡 同日原本領収  裁判所書記官
平成16年(ワ)第11617号 不正競争行為差止等請求事件
口頭弁論終結日 平成17年9月27日 
           判      決
       原       告   株式会社ラナパージャパン
同訴訟代理人弁護士安  田  有  三 
        同             吉  田  杉  明 
      被       告     ユニバーサル通商株式会社
           主     文
1 被告は,別紙標章目録1又は同2記載の標章を付したレザートリートメン
トを販売し,その容器及び包装箱に同標章を付してはならない。
2 被告は,前項のレザートリートメントを廃棄せよ。
3 被告は,原告に対し,金604万8000円及びこれに対する平成16年
6月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 訴訟費用は被告の負担とする。
5 この判決は,仮に執行することができる。
   事実及び理由
第1 請求
  主文同旨(なお,第3項の遅延損害金の起算日は訴状送達の日の翌日)
第2 事案の概要
 1 争いのない事実等(証拠を掲げていない事実は当事者間に争いがない。) 
(1) 原告は,英国法人リナパーリミテッド(以下「英国リナパー社」とい
う。)が有する次の商標権(以下「本件商標権」といい,その登録商標を「本件商
標」という。)につき,平成15年10月15日,専用使用権を取得した(以下
「本件専用使用権」という。甲2,3)。
 登録番号  第4341205号
 出願日  平成9年7月30日
 登録日  平成11年12月3日 
 商品区分及び指定商品  第4類 クリーム状保革油
 登録商標  RENAPUR(標準文字)
(2) 原告は,平成16年8月18日,英国リナパー社から本件商標権を譲り受
け,移転登録を得た(甲12)。
(3) 被告は,平成15年8月から9月にかけて,革製品表面の保護つや出し及
び撥水効果を奏するレザートリートメント(以下「被告商品」という。)を輸入
し,その後,現在までに少なくとも2万2680個を販売した。
(4) 被告商品は,レザートリートメントを収めた円柱型の白いプラスチック製
容器本体(以下「被告容器本体」という。),取扱説明書及びスポンジ2個並びに
それらを収めた紙製の長方形の包装箱(以下「被告包装箱」という。)から構成さ
れており,被告容器本体の表面には別紙標章目録1記載の標章(以下「被告標章
1」という。)が,被告包装箱の表面には別紙標章目録2記載の標章(以下「被告
標章2」といい,被告標章1と併せて「被告各標章」という。)がそれぞれ付され
ている。
2 本件は,原告が,被告に対し,被告各標章は,本件商標と同一ないし類似で
あり,本件商標権及び専用使用権を侵害していると主張して,商標法36条1項に
基づく被告商品の販売等の差止め,同法2項に基づく廃棄及び民法709条に基づ
く損害賠償を求める事案である。
3 本件の争点
(1) 本件商標と被告各標章との類否
(2) 損害の発生及びその額
第3 争点に関する当事者の主張
1 争点(1)(本件商標と被告各標章との類否)について
〔原告の主張〕
 被告容器本体及び被告包装箱に付された被告各標章は,本件商標と同一ない
し類似である。
 原告は,平成15年10月15日から本件商標権の専用使用権者であり,平
成16年8月18日には本件商標権の譲渡を受け,その旨の移転登録を受けている
から,被告による被告商品の輸入販売行為は,平成15年10月15日以降は原告
の本件専用使用権を,さらに,平成16年8月18日以降は原告の商標権を侵害し
ていることは明らかである。
〔被告の主張〕
 否認ないし争う。
2 争点(2)(損害の発生及びその額)について
〔原告の主張〕
 被告は,原告が本件商標権の専用使用権を取得した平成15年10月15日
以降,被告各標章を付した被告商品を,次のとおり販売した(甲11の1ないし
6)。
 平成15年10月18日 2400個
      同年11月 6日 1008個
         同月10日  480個
         同月13日  480個
         同月26日  240個 
      同年12月13日 1440個
           合 計 6048個
 原告及び株式会社花田(以下「花田」という。)は,本件商標を付したレザ
ートリートメント(以下「原告商品」という。)を販売しているが,原告商品1個
につき,原告の得る粗利益は1029円である(甲10)。そして,原告商品は原
告及び花田の商品として,平成15年初めには需要者の間で著名となっていたの
で,平成15年10月15日ころには新たに販売のために要する経費はかかってい
ない。したがって,原告商品の限界利益は1個当たり少なくとも1000円を下回
ることはない。
 したがって,商標法38条1項により,原告は,平成15年10月15日以
降現在まで,被告の上記販売行為により少なくとも604万8000円(1000
円×6048個)の損害を受けている。
〔被告の主張〕
 被告が,被告商品を,平成15年8月から9月にかけて合計2万2680個
輸入し,その後,一旦販売したことは認めるが,その余は否認ないし争う。  被
告商品の輸入販売個数は,被告容器本体に被告標章1を直接印字した被告商品と被
告標章1を印字したラベルを被告容器本体に貼付した被告商品とを併せて2万26
80個であるが,被告が平成15年8月から12月にかけて販売した被告商品につ
いては,株式会社東京ガロンヌ(以下「東京ガロンヌ」という。)の取扱い商品合
計1万8734個のうち,合計7278個が返品されているから,実売個数は合計
で7856個にすぎない。 
第4 争点に対する判断
 1 争点(1)(本件商標と被告各標章との類否)について
(1) 上記第2の1(1)のとおり,本件商標は「RENAPUR」であるとこ
ろ,上記第2の1(4)のとおり,被告容器本体及び被告包装箱にはそれぞれ,被告標
章1及び被告標章2が付されている。
(2) 商標の類否は,対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合
に,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであ
るが,それには,そのように使用された商標が外観,観念,称呼等によって取引
者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべきであり,し
かもその商品の取引の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引状況に基づい
て判断すべきである(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第
三小法廷判決・民集22巻2号399頁,最高裁平成6年(オ)第1102号同9
年3月11日第三小法廷判決・民集51巻3号1055頁参照)。   
  そこで,上記基準に基づいて,本件商標と被告各標章とを対比する。
ア 被告標章1について
  まず,外観については,本件商標は「RENAPUR」(標準文字)で
あって,アルファベットの大文字7文字から成るのに対し,被告標章1は別紙標章
目録1記載のとおり,「Renapur」という文字を筆記体で表したものであっ
て,アルファベット7文字から成り,頭文字のみ大文字で後の6文字は小文字であ
るが,スペルは本件商標と同一である。
 次に,称呼については,本件商標と被告標章1はスペルが同一であるた
め,いずれも,「ラナパー」若しくは「リナパー」という同一の称呼を生じる。
 さらに,観念については,本件商標及び被告標章1はいずれも造語と認
められ固有の意味を有しないから,両者はいずれも特定の観念を生じない。
イ 被告標章2について
 まず,外観については,本件商標は「RENAPUR」(標準文字)で
あって,アルファベットの大文字7文字から成るのに対し,被告標章2は別紙標章
目録2記載のとおり,「Renapur」という文字を,ゴシック活字調の極太文
字を白色で縁取りし,わずかに影文字調に表したものに,さらに,ゴシック活字調
の太字で白抜きの片仮名「ラナパー」をそのアルファベットの上に重ねるように表
したものであって,「Renapur」という文字部分はアルファベット7文字か
ら成り,頭文字のみ大文字で後の6文字は小文字であるが,スペルは本件商標と同
一である。
 次に,称呼については,本件商標と被告標章2のアルファベット部分は
スペルが同一であるため,いずれも,「ラナパー」若しくは「リナパー」という同
一の称呼を生じる。また,被告標章2の片仮名部分は「ラナパー」であるから,本
件商標と同一ないし類似の称呼を生じる。
 さらに,観念については,本件商標及び被告標章2はいずれも造語と認
められ固有の意味を有しないから,両者はいずれも特定の観念を生じない。
ウ そして,被告商品が本件商標の指定商品である「クリーム状保革油」に
該当することは明らかである。
(3) 以上のとおり,外観,観念,称呼等によって取引者に与える印象,記憶,
連想等を総合して全体的に考察すると,被告標章1は本件商標とほぼ同一であり,
被告標章2は本件商標と類似するものと認められ,しかも被告商品は本件商標の指
定商品に該当するから,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあることは明
らかである。
  よって,被告商品を輸入販売する行為は,本件商標権又は専用使用権を侵
害するものとみなされる(商標法37条1号)。
 2 争点(2)(損害の発生及びその額)について
(1) 前記争いのない事実及び証拠(甲5,10,11の1ないし6)によれ
ば,次の事実が認められる。
ア 被告は,平成15年8月14日から同年9月2日にかけて,大韓民国の
商社であるムンファ社から,被告商品を少なくとも合計2万2680個輸入した
(甲5)。
イ その後,被告は,平成15年10月18日から同年12月13日までの
間に,東京ガロンヌに対して,被告商品を合計6048個販売した(甲5,11の
1ないし6)。
ウ 平成15年9月から平成16年2月までの,原告商品の販売単価の平均
価格は1328円である(甲10)。
エ 原告商品の1個当たりの輸入原価は239円であり,その他に,横貼付
日本語説明シール代,取扱説明書代,注意書代,スポンジダスター代,1個入印刷
箱代,48個入段ボール箱代及び検査・セット詰め工賃などの付帯諸掛費として,
1個当たり59.67円の費用を要する。したがって,1個当たりの製造原価は,
299円(1円未満四捨五入)である(甲10)。
(2) 商標法38条1項の「商品の単位数量当たりの利益」とは,侵害行為がな
ければ商標権者又は専用使用権者において追加的に販売することができたはずの数
量の権利者商品の販売額から,当該数量の権利者商品を追加して販売するために追
加的に必要であったはずの費用を控除した額を,当該数量で除して,権利者商品の
単位数量当たりの額としたもの,すなわち,商品販売額から変動経費を控除した上
で,単位数量当たりの額として算出した,いわゆる限界利益をいうものと解され
る。
  本件では,原告商品の1個当たりの製造原価には上記認定のとおりの輸入
原価及び付帯諸掛費が含まれているから,それらには,侵害行為がなければ原告に
おいて追加的に販売することができたはずの数量の原告商品を追加して販売するた
めに必要であったはずの費用,すなわち,変動経費が既に含まれていると解される
から,結局,本件における商標法38条1項の「商品の単位数量当たりの利益」と
は,前記(1)ウの原告商品の販売単価の平均価格1328円から前記(1)エの製造原
価299円を減じた額である1029円と認めるのが相当である。
  したがって,商標法38条1項により,次のとおり,原告商品の単位数量
当たりの利益である1029円に原告が本件専用使用権を取得した平成15年10
月15日以降に被告が東京ガロンヌに販売した数量である6048個を乗じた額で
ある622万3392円をもって,原告が受けた損害の額と認めるのが相当である
ところ,原告の請求額は604万8000円であるから,その限度において請求を
認める。
  1029×6048=6,223,392(円) 
 3 結論
 したがって,原告の請求はいずれも理由があるからこれを認容することと
し,主文のとおり判決する。
    東京地方裁判所民事第47部
      裁判長裁判官    高  部  眞規子
裁判官 東海林    保
        
裁判官 田  邉    実

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