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平成13年(ワ)第27456号 損害賠償等請求事件
口頭弁論終結日 平成14年11月25日
              判       決  
原        告   ホリスター インコーポレーテッド
(以下「原告ホリスターインク」という。)
原        告 株式会社ホリスター
(以下「原告ホリスター」という。)
上記両名訴訟代理人弁護士大 場 正 成
同           尾 崎 英 男
同           嶋 末 和 秀
    被        告 アルケア株式会社
     訴訟代理人弁護士   石 川 順 道
     同          山 本 敦 子
     補佐人弁理士      亀 川 義 示
             主       文  
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第1請求
   被告は,それぞれ,原告ホリスターインクに対して金4億9408万円,原
告ホリスターに対して金1億2479万2000円,及びこれらに対する平成13
年12月28日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
   本件は,原告らが被告に対し,別紙物件目録記載の製品1ないし4(以下そ
れぞれ「被告製品1」ないし「被告製品4」といい,これらを総称して「被告製
品」という。)を販売するなどの被告の行為が,原告らの有する特許権を侵害する
として,損害賠償金の支払を求めた事案である。
 1前提となる事実(当事者間に争いがない事実及び弁論の全趣旨より認められ
る事実。)
(1) 原告ホリスターインクの有する特許権及び原告ホリスターの有する独占的
通常実施権
 ア 原告ホリスターインクは,次の特許権(以下「本件特許権」といい,請
求項1の発明を「本件発明」という。)を有している。
(ア) 発明の名称   人工肛門装置
(イ) 出願日昭和57年10月27日
(ウ) 登録日昭和61年12月11日
(エ) 特許番号第1353330号
(オ) 特許請求の範囲 別紙「特許公報」写しの該当欄記載のとおり
(以下同公報掲載の明細書を「本件明細書」という。)
イ 原告ホリスターは,本件特許権について,独占的通常実施権を有してい
る。
(2) 本件発明の構成要件
  本件発明を構成要件に分説すると,次のとおりである。
  A1 可撓性の収集袋13と,
A2 肛門周辺部の表面に接着されるようになっている開口部34を有す
る可撓性の面板30と,
A3 互いに着脱可能な1対の半硬の第1および第2の連結リング16,
37とから成り,
A4 第1の連結リング16は収集袋13に取り付けられてその内部と連
通し,第2の連結リング37は面板30の開口部34の回りに取り付けられている
人工肛門装置において,
B1 第2の連結リング37は,同心の外縁部42aと内縁部42bを有
する薄い弾性の熱可塑性の環状のウエブ42によって面板30に取り付けられ,
B2 前記外縁部42aは第2の連結リング37に接合され,
B3 前記内縁部42bは面板30の開口部34の周辺に接合され,
C  装着者の不快感を引き起こすことなく第1および第2の連結リング
16,37の着脱を容易にし且つ第1および第2の連結リング16,37から不快
な抵抗力を受けることなく装着者の体に面板30を取り付けることができるよう
に,ウエブ42によって第2の連結リング37が面板30に対して軸方向に限られ
た範囲内で動き得るようにした
D ことを特徴とする人工肛門装置。
(3) 被告の行為
  被告は,業として,被告製品1ないし4を製造し,販売した。
(4) 被告製品1ないし4の本件発明構成要件充足性
  被告製品1ないし4は,本件発明の構成要件A1,A2,Dをそれぞれ充
足する。
2争点及び当事者の主張
(1)被告製品の構成
(原告らの主張)
  被告製品の構成は,別紙物件目録記載のとおりである。
(被告の認否)
  被告製品の構成が別紙物件目録記載のとおりであることは,「被告製品の
構成の説明」の各ウの記載の除いて認める。
ア 被告製品1,2について
 「被告製品の構成の説明」中の各ウについては,以下のとおりとすべき
である。
  「別紙物件目録図1-4,図2-4の通り,面板(1)に溶着されてい
る成型リングの内端部を(50)とし,(4)と(50)との間を溶着部(51)
という。接合部(2)の最内周部(4)から内側に向かって環状の溶着部(51)
が延び,上記嵌合部分(6)の内側部(4’)から溶着部(51)の内端部(5
0)に向かってその厚みが次第に薄くなっている。上記接合部(2)と溶着部(5
1)が一体に形成されたものは,溶着部(51)によって,面板(1)の開口部
(3)(販売時は開口予定部(31))の周辺にとりつけられている。」
 イ 被告製品3,4について
「被告製品の構成の説明」中のの各ウについては,以下のとおりとすべ
きである。
  「別紙図3-4-A,図3-4-Bの通りコンベックス(13)に溶着
されている成型リングの内端部を(50)とし,(4)と(50)との間を溶着部
(51)という。接合部(2)の最内周部(4)から内側に向かって環状の溶着部
(51)が延びており,上記嵌合部分(6)の内側部(4’)から溶着部(51)
の内端部(50)に向かってその厚みが次第に薄くなっている。上記接合部(2)
と溶着部(51)が一体に形成されたものは,溶着部(51)によってコンベック
ス(13)に溶着され,コンベックス(13)は面板(1)の開口部(3)の周辺
に接着されている。」
(2) 被告製品1,2の構成要件充足性
 ア 構成要件B1ないし3の充足性
 (原告らの主張)
(ア) 本件明細書の特許請求の範囲欄中の構成要件B1ないし3(以下
「構成要件B1ないし3」という。以下同じ。)には,「第2の連結リング37
は,同心の外縁部42aと内縁部42bを有する薄い弾性の熱可塑性の環状のウエ
ブ42によって面板30に取り付けられ,前記外縁部42aは第2の連結リング3
7に接合され,前記内縁部42bは面板30の開口部34の周辺に接合され,」と
記載されている。
 上記構成要件中の「接合」とは,「ウエブ」と「第2の連結リン
グ」,及び「ウエブ」と「面板」との各関係を表わした文言であり,取付け手段で
ある「ウエブ」と,「第2の連結リング」や「面板」との間に接続関係が存在する
ことを示したにすぎず,「環状のウエブ42」が「第2の連結リング37」とは異
なる別の部材であることを意味するものではない。
(イ) これに対して,被告製品1,2は,「嵌合部分(6)(第2の連結
リング)は,接合部(2)の最内周部(4)と嵌合部分(6)(第2の連結リン
グ)の内側部(4’)との間に形成された薄い弾性の熱可塑性の環状のウエブ
(7)によって面板(1)に取り付けられ,前記ウエブ(7)の外縁部は嵌合部分
(6)(第2の連結リング)の内側部(4’)で嵌合部分(6)(第2の連結リン
グ)に接合され,前記ウエブ(7)の内縁部は接合部(2)の最内周部(4)で面
板(1)の開口部(3)(販売時には開口予定部(31))の周辺に接合されてい
る。」のであるから,構成要件B1ないし3を充足する。
 被告製品1,2の嵌合部分(6)とウエブ(7)は構造と機能におい
て異なる部分であり,しかも両者は相互に連続した位置関係にあるから,本件発明
の構成要件B2に記載された,ウエブの「前記外縁部42aは第2の連結リング3
7に接合され」に該当する。
(被告の反論)
(ア) 構成要件B1ないし3には,「第2の連結リング37は,同心の外
縁部42aと内縁部42bを有する薄い弾性の熱可塑性の環状のウエブ42によっ
て面板30に取り付けられ,前記外縁部42aは第2の連結リング37に接合さ
れ,前記内縁部42bは面板30の開口部34の周辺に接合され,」と記載されて
いることから明らかなように,「第2の連結リング(37)」と 「環状のウエブ
(42)」とは,別体に形成されること,及び「環状のウエブ(42)」と「第2
の連結リング」,「面板」との間には2箇所の接合部分が存在することが必須であ
る。
(イ) これに対し,被告製品1,2においては,「第2の連結リング」
は,接合部(2)と溶着部(51)が一体に成型され,また,第2の連結リングの
溶着部(51)は,面板(1)に溶着されていて,第2の連結リングと面板の間に
は1箇所の接合部分しか存在しない。
 以上のとおり,被告製品1,2は,一体に成型され面板に直接接合さ
れている第2の連結リングだけが存在し,ウエブは存在せず,また,一箇所の接合
部しか存在しないから,構成要件B1ないし3を充足しない。
 イ その他の構成要件の充足性
 (原告らの主張)
(ア) 構成要件A3について
  被告製品1,2は,互いに着脱可能な,1対の半硬の第1の連結リン
グ(10)及び嵌合部分(6)とからなっている(なお,嵌合部分(6)は本件発
明の「第2の連結リング」に相当する。)ので,構成要件A3を充足する。
(イ) 構成要件A4について
  被告製品1,2においては,第1の連結リング(10)は収集袋
(9)に取り付けられてその内部と連通し,嵌合部分(6)(第2の連結リング)
は面板(1)の開口部(3)(販売時には開口予定部(31))の回りに取り付け
られている2ピース・オストミー・システムであるから,構成要件A4を充足す
る。
(ウ) 構成要件Cについて
  被告製品1,2は,装着者の身体に圧迫を加えることなくフランジの
嵌合部分(6)(第2の連結リング)とパウチの第1の連結リング(10)を指で
挟んで結合したり,フランジ部(8)を支えながら第1の連結リング(10)及び
嵌合部分(6)(第2の連結リング)を取り外すことができ,又身体の動きが第1
の連結リング(10)及び嵌合部分(6)(第2の連結リング)から抵抗力を受け
て妨げられることなく装着者の身体に面板(1)を取り付けることができるよう
に,ウエブ(7)によって嵌合部分(6)(第2の連結リング)が面板(1)に対
し軸方向に限られた範囲内で動き得るものであるから,構成要件Cを充足する。
 (被告の反論)
(ア) 構成要件A3について
 被告製品1,2においては,互いに着脱可能な,一対の半硬の第1の
連結リング(10)及び接合部(2)と溶着部(51)が一体となった第2の連結
リングとからなり,嵌合部分(6)は,第2の連結リングの構成部分の一部である
から,構成要件A3を充足しない。
(イ) 構成要件A4について
 被告製品1,2においては,その嵌合部分(6)を含む第2の連結リ
ング自体が,その溶着部(51)で面板(1)の開口部(3)(販売時には開口予
定部(31))の回りに溶着されている2ピース・オストミー・システムであるか
ら,構成要件A4を充足しない。
(ウ) 構成要件Cの充足性
原告らの主張の「嵌合部分(6)(第2の連結リング)」とする部分
は,嵌合部分(6)が第2の連結リングの一部であるから否認する。
 被告製品1,2において,「面板(1)に対し軸方向に限られた範囲
内で動き得る」のは,ウエブによるのではなく,第2の連結リングの接合部(2)
を朝顔状に面板から浮かせるようにして,溶着部(51)を面板(1)に溶着し,
且つ第2の連結リングの硬さを低くしたことによるから,構成要件Cを充足しな
い。
(3) 被告製品3,4の構成要件充足性
 ア 構成要件B1ないし3の充足性
 (原告らの主張)
  (ア) 構成要件B中の「接合」とは,「ウエブ」と「第2の連結リン
グ」,及び「ウエブ」と「面板」との各関係を表わした文言であり,取付け手段で
ある「ウエブ」と,「第2の連結リング」や「面板」との間に接続関係が存在する
ことを示したにすぎず,「環状のウエブ42」が「第2の連結リング37」とは異
なる別の部材が存在することを意味するものではない。
(イ) これに対して,被告製品3,4は,「嵌合部分(6)(第2の連結
リング)は,接合部(2)の最内周部(4)と嵌合部分(6)(第2の連結リン
グ)の内側部(4’)との間に形成された薄い弾性の熱可塑性の環状のウエブ
(7)によってコンベックス(13)を介して面板(1)に取り付けられ,前記ウ
エブ(7)の外縁部は嵌合部分(6)(第2の連結リング)の内側部(4’)で嵌
合部分(6)(第2の連結リング)に接合され,前記ウエブ(7)の内縁部は接合
部(2)の最内周部(4)でコンベックス(13)を介して面板(1)の開口部
(3)の周辺に接合されている。」のであるから,構成要件B1ないし3を充足す
る。
 (被告の反論)
(ア) 構成要件B1ないし3によれば,「第2の連結リング(37)」と
「環状のウエブ(42)」は,別体に形成されること,及び「環状のウエブ(4
2)」と「第2の連結リング」,「面板」との間には2箇所の接合部分が存在する
ことが必須である。
(イ) これに対して,被告製品3,4においては,「原告がウエブ(7)
と主張する部分」及び溶着部(51)は,第2の連結リングの一部を構成する内側
フランジであって,コンベックス(13)には,第2の連結リングの一部である溶
着部(51)で溶着し,コンベックス(13)が面板(1)の開口部(3)の回り
にとりつけられ,「第2の連結リング」は接合部(2)と溶着部(51)とが一体
に成型されて第2の連結リングになっており,ウエブは存在せず,また,一箇所の
接合部しか存在しないから,構成要件B1ないし3を充足しない。
 イ その他の構成要件の充足性
 (原告らの主張)
(ア) 構成要件A3について
 被告製品3,4は,互いに着脱可能な,1対の半硬の第1の連結リン
グ(10)及び嵌合部分(6)(第2の連結リング)とからなっているから,構成
要件A3を充足する。
(イ) 構成要件A4について
 被告製品3,4は,第1の連結リング(10)は収集袋(9)に取り
付けられてその内部と連通し,嵌合部分(6)(第2の連結リング)はコンベック
ス(13)を介して面板(1)の開口部(3)の回りに取り付けられている2ピー
ス・オストミー・システムであるから,構成要件A4を充足する。
(ウ) 構成要件Cについて
 被告製品3,4は,装着者の身体に圧迫を加えることなくフランジの
嵌合部分(6)(第2の連結リング)とパウチの第1の連結リング(10)を指で
挟んで結合したり,フランジ部(8)を支えながら第1の連結リング(10)と嵌
合部分(6)(第2の連結リング)を取り外すことができ,又身体の動きが第1の
連結リング(10)及び嵌合部分(6)(第2の連結リング)から抵抗力を受けて
妨げられることなく装着者の身体に面板(1)を取り付けることができるように,
ウエブ(7)によって嵌合部分(6)(第2の連結リング)が面板(1)に対し軸
方向に限られた範囲内で動き得るから,構成要件Cを充足する。
 (被告の反論)
(ア) 構成要件A3について
 被告製品3,4は,互いに着脱可能な,一対の半硬の第1の連結リン
グ(10)及び接合部(2)と溶着部(51)が一体となった第2の連結リングと
からなり,嵌合部分(6)は,第2の連結リングの構成部分の一部であるから,構
成要件A3を充足しない。
(イ) 構成要件A4について
 被告製品3,4においては,その嵌合部分(6)を含む第2の連結リ
ング自体が,その溶着部(51)でコンベックス(13)に溶着され,コンベック
ス(13)は面板(1)の開口部(3)(販売時には開口予定部(31))の回り
にとりつけられている2ピース・オストミー・システムであるから,構成要件A4
を充足しない。
(ウ) 構成要件Cの充足性
原告らの主張の「嵌合部分(6)(第2の連結リング)」とする部分
は,嵌合部分(6)が第2の連結リングの一部であるから否認する。
 被告製品1,2において,「面板(1)に対し軸方向に限られた範囲
内で動き得る」のは,ウエブによるのではなく,第2の連結リングの接合部(2)
を朝顔状に面板から浮かせるようにして,溶着部(51)を面板(1)に溶着し,
且つ第2の連結リングの硬さを低くしたことによるから,構成要件Cを充足しな
い。
(4) 被告による間接侵害行為
(原告らの主張)
  被告製品は,いずれもフランジとパウチからなり,パウチはフランジなし
に使用することはできない。被告はフランジとパウチを各々別個の製品として販売
しているが,被告製品のフランジ及びパウチは相互に組み合せてストーマ装具とし
て使用されることを目的として販売されている。そして,フランジ及びパウチには
他に用途はないから,被告製品の個々のフランジ及びパウチは本件発明の間接侵害
品を構成する(特許法(以下「法」という。)101条1号)。
(被告の主張)
  争う。
(5) 損害額
(原告らの主張)
ア 原告ホリスターインクの損害(法102条3項)
  (ア) 平成10年12月22日から平成13年12月21日までの間の被
告製品の販売金額は少なくとも32億8400万円であった。
(イ) 本件発明の実施に対する法102条3項の実施料率は少なくとも販
売金額の7%である。
  したがって,原告ホリスターインクは,被告製品の販売により,上記
(ア)の被告の販売金額に7%を乗じた,
  32億8400万円×0.07=2億2988万円の損害を被った。
   イ 原告ホリスターの損害(民法709条の逸失利益)
 (ア) 日本のストーマ装具の市場において,本件発明のフローティング・
フランジ型を採用した2ピース・オストミー・システム製品を販売しているのは原
告ホリスターと被告だけであるが,そのほか本件発明の非実施品である固定型の2
ピース・オストミー・システムや1ピース・オストミー・システムを販売している
会社も存在する。
   仮に,被告製品が販売されていなかったとすれば,原告ホリスターの
販売額は,被告の販売額の少なくとも20%分は増加したといえる。
 (イ) したがって,被告のア(ア)の期間の侵害行為により失われた原告ホ
リスターの販売金額は少なくとも6億5680万円(32億8400万円×0.2)
である。
 (ウ) 原告ホリスターの利益率(実施料相当額を除く。)は少なくとも販
売額の54%であるから,原告ホリスターのア(ア)の期間の逸失利益は3億546
7万2000円(6億5680万円×0.54)である。
 (エ) ア(ア)の期間に上記(イ)の販売が原告ホリスターによってなされて
いたとすれば,2億2988万円は原告ホリスターインクに支払われるべきもので
あるから,原告ホリスターが被告に請求できる損害額は上記(ウ)の金額から2億2
988万円を控除した1億2479万2000円となる。
ウ 被告の不当利得(民法703条)
 平成3年12月22日から平成10年12月21日までの間の被告製品
の販売金額は少なくとも52億8400万円であった。
  被告は平成3年12月22日から平成10年12月21日までの期間,
本件特許権に対する通常の実施料(5%)を支払うことなく被告製品を製造,販売
したことによって
  52億8400万円×0.05=2億6420万円
    の利得を得,原告ホリスターインクは上記実施料を得ていないから,上記
同額の損失を被った。
  したがって,原告ホリスターインクは被告に対し,民法703条に基づ
き金2億6420万円の不当利得返還請求権を有する。
エ まとめ
  以上により,原告ホリスターインクは被告に対し金2億6420万円の
不当利得返還請求権(上記ウ)及び不法行為に基づく金2億2988万円の損害賠
償請求権(上記ア)の合計4億9408万円の請求権を,原告ホリスターは被告に
対し不法行為に基づく金1億2479万2000円の損害賠償請求権(上記イ)を
有する。
(被告の反論)
争う。
第3争点に対する判断
1 被告製品の構成要件B1ないし3の充足性について
(1) 構成要件B1における「第2の連結リング」と「ウエブ」とは別部材であ
ることを要するか。
 ア 結論
 本件発明の構成要件B1には,「第2の連結リング37は,同心の外縁
部42aと内縁部42bを有する薄い弾性の熱可塑性の環状のウエブ42によって
面板30に取り付けられ」と記載されているが,同構成要件における「ウエブ」と
「第2の連結リング」とは,別の部材により構成されたものであることを要し,同
一部材により一体となって形成されたものを含まないと解すべきである。
イ 理由
 その理由は,以下のとおりである。
  (ア) 「特許請求の範囲」欄の各記載
a 本件明細書の「特許請求の範囲」には,「可撓性の面板30と」
(構成要件A2),「半硬の・・・第2の連結リング・・・37」(構成要件A
3),「第2の連結リング37は,同心の外縁部42aと内縁部42bを有する薄
い弾性の熱可塑性の環状のウエブ42」(構成要件B1),「内縁部42bは面板
30の開口部34の周辺に接合され」(構成要件B3)との記載があり,これらに
よれば,「第2の連結リング」及び「ウエブ」は,それぞれの目的・機能に応じた
硬さや熱可塑性等の性質を有することを前提としている。
b また,「特許請求の範囲」には,「前記外縁部42aは第2の連結
リング37に接合され」(構成要件B2),「前記内縁部42bは面板30の開口
部34の周辺に接合され」(構成要件B3)との記載がある。「接合」とは,「つ
ぎあわせること。」(乙4。「日本語大辞典」),「二つの部材をつなぎ,くっつ
けること。」(乙5。弁理士会,弁理士会研修所発行の「基本テキスト(特許・実
用新案)」,「明細書の用語」欄)を意味することに照らすならば,「第2の連結
リング」と「ウエブ」とは別部材であると解するのが自然である。
  (イ) 本件明細書の「発明の詳細な説明」の記載
   a 本件明細書の「発明の詳細な説明」には,以下の記載がある。すな
わち,①「第2の連結リングは,柔かく弾性を有する熱可塑性ウエブによって面板
に取付けられている。」(本件明細書2頁右欄36ないし37行目),②「可撓性
と弾性を有する環状ウエブは,比較的硬い連結リングからの不快な抵抗を受けるこ
となく,装着者の体に面板を適合させている。これによって,弾性を有するウエブ
は,柔軟で変形可能な面板と連結リングの組合せとの間に動きのある相互連結を形
成し」(本件明細書3頁左欄3ないし8行目),「この発明の別の目的は,装着者
が体を曲げたり,回転したり,動き回ったりするときでも,硬さにもかかわらず肛
門周辺部に面板が適合する1対の半硬の連結リングを有した確かで且つ分離可能な
人工肛門装置を提供することにある。」(本件明細書2頁右欄8ないし12行
目),③「第5図は,ウエブ42が面板30の動きと無関係に連結リング16,3
7の軸心方向に前後に大きく動くのができることを示している。逆に,可撓変形可
能な面板30は,半硬の連結リング37とそのフランジ部からの好ましくない抵抗
を受けないで患者に効果的にシールを行えるように,且つ体の輪郭に適合するよう
に簡単に形成されると良い。従って,面板30は,接着シールの効果を減じる恐れ
を受けることなく,且つ2つの連結リング16,37の不意の分離の原因となる変
形力を連結リング37に与えることなく,患者の体に追従できる。」(本件明細書
6頁左欄19ないし30行目),との各記載がある。
b これらの記載によれば,本件発明は,第1及び第2の連結リングを
半硬性として,両者の接着を強固にして装着者にとって不快な漏れ等を防ぐととも
に,第2の連結リングを可撓性と弾性を有するウエブによって可撓変形可能な面板
に取り付けることで,着脱を容易にし,半硬の連結リングからの不快な抵抗を受け
ることなく,装着者の体に面板を適合させており,弾性を有するウエブと,半硬性
の連結リングとは,それぞれ特性を持つ別の部材からなることを前提としているこ
とは明らかである。
 ウ 以上のとおりであり,「特許請求の範囲」及び「発明の詳細な説明」の
各記載に照らすならば,構成要件B1における「第2の連結リング」と「ウエブ」
とは,それぞれ別の部材からなり,一体的に形成された同一部材からなる場合を含
まないことが明らかである。
(2) 被告製品1,2との対比
 被告製品1,2においては,接合部(2)のうち,最内周部(4)から嵌
合部分(6)の内側部(4’)との間の部分(原告が環状のウエブ(7)であると
主張する部分)は,嵌合部分(6)と一体なって成形され,面板(1)に取り付け
られている(争いがない)。
 これによれば,被告製品1,2においては,本件発明のウエブ(7)に相
当する部分である上記原告が環状ウエブ(7)であると主張する部分及び本件発明
の第2の連結リングに相当する嵌合部分(6)とが一体となった同一部材であるこ
とが認められる。
 したがって,被告製品1,2は,本件発明の構成要件B1を充足しない
(また,ウエブの外縁部及び内縁部を構成とする構成要件B2ないし3も充足しな
い。)。
  (3) 被告製品3,4との対比
 被告製品3,4においても,接合部(2)のうち,最内周部(4)から嵌
合部分(6)の内側部(4’)との間の部分(原告が環状のウエブ(7)であると
主張する部分)は,嵌合部分(6)と一体なって,コンベックス(13)を介し
て,面板(1)の開口部(3)の周辺に取り付けられている(争いがない)。
 これによれば,被告製品3,4においても,本件発明のウエブ(7)に相
当する部分である上記原告が環状ウエブ(7)であると主張する部分及び本件発明
の第2の連結リングに相当する嵌合部分(6)が一体となった同一部材であること
が認められる。
 したがって,被告製品3,4においても,本件発明の構成要件B1を充足
しない(また,ウエブの外縁部及び内縁部を構成とする構成要件B2ないし3も充
足しない。)。
第4結論
 よって,その余の点を判断するまでもなく,原告らの請求はいずれも理由が
ない。
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官    飯  村  敏  明
裁判官今  井  弘  晃
裁判官大  寄  麻  代
               物件目録
  商品名が「プロケアー2」である,2ピース・オストミー・システムのフラン
ジ及びパウチ
1 2ピース・オストミー・システムの商品構成
  2ピース・オストミー・システムはフランジとパウチからなり,フランジ及び
パウチにはそれぞれ次の名称及び型番の商品がある。同一寸法のフランジとパウチ
を組み合わせて使用される。
  (1) フランジ
    フランジF
    フランジFA 
    フランジFC 
  (2) パウチ
    ドレナブルパウチ(D-30,D-40,D-50,D-70)
    クローズドパウチ(C-30,C-40,C-50)
    ウリナリーパウチ(U-30,U-40,U-50)
    ミニパウチ(M-40,M-50)
2 図面の説明
  図1-1-A  フランジFの外観図
  図1-2    フランジFの平面図
  図1-3    フランジFの断面図(図1-2のA-A’の断面)
  図1-4    フランジFの断面拡大図
  図2-1-A  フランジFA の外観図 
図2-2    フランジFA の平面図 
図2-3    フランジFA の断面図(図2-2のB-B’の断面) 
 図2-4    フランジFA の断面拡大図 
  図3-1    フランジFC の外観図
図3-2    フランジFC の平面図
図3-3-A  フランジFC のうち,平成10年10月まで製造・販売さ
れたプロケアー2・FC タイプである被告製品3の断面図(図3-2のC-C’
の断面)
図3-4-A  フランジFC の断面拡大図
 図3-3-B  フランジFC のうち,平成10年11月以降製造・販売さ
れたプロケアー2・FC タイプである被告製品4の断面図(図3-2のC-C’
の断面)
  図3-4-B  フランジFC の断面拡大図
  図4      ドレナブルパウチの外観図
  図5      クローズドパウチの外観図
  図6      ウリナリーパウチの外観図
  図7      ミニパウチの外観図
3 構成の説明
 (1) 被告製品1(プロケアー2・Fタイプ)
  ア 可撓性の収集袋(9)と,ストーマ周辺部の表面に接着されるようになっ
ている開口予定部(31)を有する可撓性の面板(1)と,互いに着脱可能な1対
の半硬の第1の連結リング(10)および接合部(2)とから成り,第1の連結リ
ング(10)は収集袋(9)に取り付けられてその内部と連通し,接合部(2)は
半硬のプラスチツクで成形され,接合部(2)が面板(1)の開口予定部(31)
の回りに取り付けられている2ピース・オストミー・システム。(上記開口予定部
(31)は,使用時にストーマの形状に応じて開口(3)となる。)
イ 接合部(2)は全体として同心円の形状を有している(ただし,後述する
フランジ部(8)は部分的に切り欠かれている。)。ほぼ同心円形状の接合部
(2)は,最内の円周を形成する最内周部(4),最外の一部が切り欠かれた円周
を形成する最外周部(5)を有し,接合部(2)の最内周部(4)を形成する同心
円と最外周部(5)を形成する同心円のほぼ中間の同心円半径位置に,嵌合部分
(6)が形成されている。また,接合部(2)の嵌合部分(6)と最外周部(5)
の間の部分はフランジ部(8)を形成している。
ウ 接合部(2)の最内周部(4)と嵌合部分(6)の内側部(4’)の間の
部分は,厚みの薄い弾性の環状ウエブ(7)を形成している。嵌合部分(6)は環
状ウエブ(7)によって最内周部(4)で面板(1)の開口部(3)(販売時は開
口予定部(31))の周辺に接合されている。
(2) 被告製品2(プロケアー2・FAタイプ)
ア 可撓性の収集袋(9)と,ストーマ周辺部の表面に接着されるようになっ
ている開口予定部(31)を有する可撓性の面板(1)と,互いに着脱可能な1対
の半硬の第1の連結リング(10)および接合部(2)とから成り,第1の連結リ
ング(10)は収集袋(9)に取り付けられてその内部と連通し,接合部(2)は
半硬のプラスチツクで成形され,接合部(2)が面板(1)の開口予定部(31)
の回りに取り付けられ,不織布粘着シート(11)が接合部(2)側の面板(1)
に貼付されている2ピース・オストミー・システム。
(上記開口予定部(31)は,使用時にストーマの形状に応じて開口(3)と
なる。)
イ 接合部(2)は全体として同心円の形状を有している(ただし,後述する
フランジ部(8)は部分的に切り欠かれている。)。ほぼ同心円形状の接合部
(2)は,最内の円周を形成する最内周部(4),最外の一部が切り欠かれた円周
を形成する最外周部(5)を有し,接合部(2)の最内周部(4)を形成する同心
円と最外周部(5)を形成する同心円のほぼ中間の同心円半径位置に,嵌合部分
(6)が形成されている。また,接合部(2)の嵌合部分(6)と最外周部(5)
の間の部分はフランジ部(8)を形成している。
ウ 接合部(2)の最内周部(4)と嵌合部分(6)の内側部(4’)の間の
部分は,厚みの薄い弾性の環状ウエブ(7)を形成している。嵌合部分(6)は環
状ウエブ(7)によって最内周部(4)で面板(1)の開口部(3)(販売時は開
口予定部(31))の周辺に接合されている。
 (3) 被告製品3,4(プロケアー2・FCタイプ)
ア 可撓性の収集袋(9)と,ストーマ周辺部の表面に接着されるようになっ
ている開口部(3)を有する可撓性の面板(1)と,互いに着脱可能な1対の半硬
の第1の連結リング(10)および接合部(2)とから成り,第1の連結リング
(10)は収集袋(9)に取り付けられてその内部と連通し,接合部(2)は半硬
のプラスチツクで成形され,接合部(2)が面板(1)の開口部(3)の回りに面
板(1)側に凸出する硬性のコンベックス(13)を介在させて取り付けられ,不
織布粘着シート(11)が接合部(2)側の面板(1)に貼付されている2ピー
ス・オストミー・システム。
イ 接合部(2)は全体として同心円の形状を有している(ただし,後述する
フランジ部(8)は部分的に切り欠かれている。)。ほぼ同心円形状の接合部
(2)は,最内の円周を形成する最内周部(4),最外の一部が切り欠かれた円周
を形成する最外周部(5)を有し,接合部(2)の最内周部(4)を形成する同心
円と最外周部(5)を形成する同心円のほぼ中間の同心円半径位置に,嵌合部分
(6)が形成されている。また,接合部(2)の嵌合部分(6)と最外周部(5)
の間の部分はフランジ部(8)を形成している。
ウ 接合部(2)の最内周部(4)と嵌合部分(6)の内側部(4’)の間の
部分は,厚みの薄い弾性の環状ウエブ(7)を形成している。嵌合部分(6)は環
状ウエブ(7)によって最内周部(4)でコンベックス(13)を介して面板
(1)の開口部(3)の周辺に接合されている。
図1-1-A図1-2図1-3図1-4図2-1-A図2-2図2-3図2-4図
3-1図3-2図3-3-A図3-4-A図3-3-B図3-4-B図4図5図6
図7

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