弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 弁護人佐藤達夫、同逸見惣作の上告趣意第一点及び第三点について。
 物価統制令にいう価格等の統制額を超過して取引することの許容されるいわゆる
法定の除外事由ある場合とは、同令第三条第一項但書及び第八条所定の場合に限る
ものと解すべきである。従つて本件取引について、所論の宮城県防犯課長及び同水
産課長から統制額超過の黙認があつたとの事由の如きは右にいわゆる法定の除外事
由ある場合にあたらないこと明らかである。次に、被告人Aが黙認価格ある場合は
法定の除外事由ある場合にあたるものと誤信していたとの所論の事実は原判決の認
定しなかつたところであるばかりでなく、物価統制令違反の犯罪行為についてはそ
の犯意の成立について違法の認識を必要としないものと解すべきであるから、たと
え同被告人について所論の事情があつたとしても、それは刑罰法規の不知に過ぎな
いものであつて、もとより同被告人等の罪責を左右するものではない。(昭和二三
年(れ)第二〇二号同年七月一四日言渡大法廷判決参照)。その余の論旨は結局原
審の事実認定を攻撃するものであり、かつ原判決認定の事実はその引用の証拠によ
つて肯認できるのであるから論旨はすべて理由がない。
 同第二点について。
 原判決が本件犯行の動機等に関する諸事情について十分審理の上被告人Aの犯行
についてその罪責を阻却すべきものでないとしたものであることは、一件記録上明
らかである。そうして原判決の右判断に違法あるものとは認められない。なお原判
決に理由不備の違法のないこと論旨第一点において説明したとおりである。論旨は
理由がない。
 同第四点について。
 物価統制令第三条違反の行為があつた後に同令に基き価格等の統制額を指定した
告示が廃止されても旧刑訴三六三条にいわゆる「犯罪後の法令に因り刑の廃止あり
たるとき」に該当せずなお処罰を免れないこと当裁判所大法廷判例のしめすところ
である。(昭和二三年(れ)第八〇〇号同二五年一〇月一一日言渡大法廷判決参照)。
されば論旨は理由がない。
 よつて旧刑訴法四四六条に従い主文のとおり判決する。
 右は、統制額指定の告示の廃止の効果の点に関する裁判官井上登の反対意見を除
く全裁判官一致の意見である。なお井上裁判官の反対意見は前記大法廷判決に少数
意見として示すとおりである。
 検察官 橋本乾三関与
  昭和二五年一二月二六日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    穂   積   重   遠

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