弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中上告人敗訴の部分を破棄する。
     本件を大阪高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告代理人の上告理由は、別紙のとおりである。
 差押債権者が債務者の占有する動産につき、債務者の所有に属するものとして強
制執行をなしたところ、当該目的物が実は第三者の所有であつたとしても、その執
行は直ちに債権者の過失によるものと推定するをえず、執行の目的物が第三者の所
有であることを債権者が知らなかつたことにつき過失があるとするためには、差押
物につき所有権を主張する者の側においてこれを証明すベきことは言をまたないと
ころである。従つて差押の執行に際して債務者又は第三者が、差押物件は債務者の
所有ではなく第三者の所有である旨告げたからと云つて、その通告が当時の状況に
照らし正当であつて、これを無視することが債権者の過失を推断せしめるような特
別の事情のない限り、債務者又は第三者においてその通告に沿う証拠資料を何等提
出しないようなときは、通常は債権者のなした執行は、不法行為を構成するもので
はないのであつて、右のような通告があつたからと云つて、それだけで直ちに債権
者がその真偽を調査すべき義務を負うに至るものではなく、又充分に調査すれば第
三者の所有であることを確認しえたかも知れなかつた場合でも債権者に調査不充分
の責を帰せしめることはできないと云わなければならない。本件において、原審は
先ず上告人は訴外Dに対する債権の強制執行として、同会社の所有に属せず、第三
者である被上告人の所有に属する本件動産を差し押えて競売したものであることを
認定し、ついで上告人は、(イ)本件物件に対する差押執行の際その現場において
債務者Dの雇人Eから、本件物件は被上告人の所有であつて、同ホテルが被上告人
から賃借している旨告げられたこと、(ロ)昭和二四年八月三一日到達の書留内容
証明郵便を以て、被上告人の代理人として弁護士川合五郎から、「本件物件は税務
署の公売処分によりFが競落し、昭和二四年八月一八日被上告人が同人から買い受
けたものであり、右事実は税務署で調査すれば容易に分明することである。差押の
実行については十分注意されたい。」旨の通告をうけたこと、(ハ)訴外ホテルの
代理人である弁護士松浦孝一からも、競売期日の前日までに本件物件が被上告人の
所有に属し同ホテルにおいて賃借中であることを告げ、競売の解除もしくは競売の
延期を懇請されたこと、をそれぞれ確定した上、更に上告人は(ロ)の通告を受け
てから所轄天王寺税務署に自ら出頭し又は雇人を派して通告の内容となつている事
実の真否を確めようとしたが、多忙の故を以て断られ、或は記録がないと云われて
その目的を達することができなかつたことを認定し、かくて(ロ)の通告が被上告
人の代理人である弁護士から取得経路を明らかにした書面を以てなされたこと、こ
の通告には、(ハ)の執行債務者の代理人たる弁護士からの同趣旨の表明という裏
付が存すること及び税務署について調査した結果は被上告人の所有であることを否
定すべき返答をえられなかつたことに基き、執行債権者たる上告人は、被上告人所
有の本件物件について競売手続を遂行したことにつき過失があつたものと判断した。
しかし被上告人及び執行債務者の代理人からの通告の内容は、偶々相符合したけれ
ども、これにつき何等かの証明資料が添付されていたことは、原審の確定しなかつ
たところであり、上告人か税務署につきなした調査は、債権者の調査義務に基くも
のとは言いえないこと前示の如くである以上、その結果は本件物件が被上告人の所
有であることを否定すべき返答をえられなかつたと見ることはできない筋合であつ
て、原判決の説明するところから、本件物件が被上告人の所有であることを知らな
かつたことにつき上告人に過失があつたことを推断するには、いまだ足らないとい
わなければならない。そうであるとすれば、本件の執行につき上告人に過失があつ
たものと認めて不法行為の責任を負わしめ被上告人の請求を一部認容した原審の判
断は、充分な理由を備えないものであつて、論旨は結局理由がある。よつて原判決
中被上告人勝訴の部分を破棄し、本件を原審に差し戻すべく、民事訴訟法第四〇七
条に則り、裁判官全員の一致で主文の如く判決をする。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    谷   村   唯 一 郎

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