弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人弁護士一條清の上告理由第一点について。
 しかし、民事訴訟法第一五二条第四項によれば「口頭弁論ニ於ケル最初ノ期日ノ
変更ハ顯著ナル事由ノ存セサルトキト雖当事者ノ合意アル場合ニ於テハ之ヲ許ス」
と規定しておるから最初の口頭弁論期日であつても当事者の合意のない場合には顯
著なる事由のない限り期日の変更申請を許容すべきではない、上告人の代理人は原
審において最初の弁論期日の変更を申請しその理由は論旨にいうところと異なり前
日に訴訟委任を受け準備ができないというのであるが右代理人は本件第一審の訴訟
代理人であるから準備ができないということは理由にならないのみならず期日の変
更について相手方の同意を得られなかつたのである。そこで原審は右申請を許さず
弁論を為さしめ事件が判決を為すに熟すると認めて結審して判決をしたのである。
ただ本件控訴状には貼付すべき印紙が不足であつたに拘らず補正命令を出すことな
く弁論を進行して結審したのであるがその為めに原審が裁判をするに熟しないのに
結審したものであると云うことはできないのである。そしてその後補正命令を出し
て印紙は増貼せられ控訴状の瑕疵は補正されているのであるから、原審の審理手続
には何等違法の点はない(民事訴訟用印紙法第一一条参照)、従つて原審には上告
人をして訴訟を為さしめなかつたというような不当の措置はなく論旨は違憲に名を
籍りて、理由なき原判決の違法を主張するに過ぎないのであつて、採用の限りでな
い。
 同第二点について。
 本件控訴状に貼付すべき印紙が不足であつたが後日その瑕疵は補正されたことは
前点に対する説明のとおりである、そして右補正された以上はそれまでの間に為さ
れた弁論期日、判決言渡期日の指定及びその告知は有効であること勿論である。
 所論は右と反対の見解に立脚しその無效たることを前提とするのであるから論旨
は理由がない。
 同第三点について。
 しかし上告人は原審においては轉貸借を主張し轉借権に基ずき本件家屋を占拠す
る正当の権限を有することを主張したのであるが原審はこれを否定し轉貸借を前提
とする上告人の主張はこれを採用することができないと判示しただけであつて別に
上告人が訴外Dの家族であつて本件家屋について獨立の占有がないということを確
定した趣旨でないことは明かである。従つて原審が被上告人と訴外Dとの間に成立
した和解契約の趣旨如何に拘らず被上告人の右和解契約上の債務不履行によつて上
告人の本件家屋の占拠を正当化するに足りないと判断したことは何等前記の判示と
矛盾するところはない。それ故論旨は理由がない。よつて民事訴訟法第四〇一条第
八九条第九五条により主文の通り判決する。この判決は全裁判官一致の意見である。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
 裁判官藤田八郎は出張中につき署名捺印することができない。
         裁判長裁判官    霜   山   精   一

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