弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人Dの弁護人上口利男、同山口均の上告趣意及び被告人Eの弁護人村松弘康
の上告趣意は、いずれも単なる法令違反、事実誤認の主張であつて、刑訴法四〇五
条の上告理由に当たらない。
 なお、第一審判決及び原判決の認定によれば、本件の事実関係は、以下のとおり
である。すなわち、被告人Dは、自己の経営する飲食店「F」の宣伝に供するため、
写真製版所に依頼し、まず、表面は、写真製版の方法により日本銀行発行の百円紙
幣と同寸大、同図案かつほぼ同色のデザインとしたうえ、上下二か所に小さく「サ
ービス券」と赤い文字で記載し、裏面は広告を記載したサービス券(第一審判示第
一、一のサービス券)を印刷させ、次いで、表面は、右と同じデザインとしたうえ、
上下二か所にある紙幣番号を「F」の電話番号に、中央上部にある「日本銀行券」
の表示を「F券」の表示に変え、裏面は広告を記載したサービス券(同第一、二の
サービス券)を印刷させて、それぞれ百円紙幣に紛らわしい外観を有するものを作
成した。ところで、同被告人は、右第一、一のサービス券の作成前に、製版所側か
ら片面が百円紙幣の表面とほぼ同一のサービス券を作成することはまずいのではな
いかなどと言われたため、北海道警察本部札幌方面西警察署防犯課保安係に勤務し
ている知合いの巡査を訪ね、同人及びその場にいた同課防犯係長に相談したところ、
同人らから通貨及証券模造取締法の条文を示されたうえ、紙幣と紛らわしいものを
作ることは同法に違反することを告げられ、サービス券の寸法を真券より大きくし
たり、「見本」、「サービス券」などの文字を入れたりして誰が見ても紛らわしく
ないようにすればよいのではないかなどと助言された。しかし、同被告人としては、
その際の警察官らの態度が好意的であり、右助言も必ずそうしなければいけないと
いうような断言的なものとは受け取れなかつたことや、取引銀行の支店長代理に前
記サービス券の頒布計画を打ち明け、サービス券に銀行の帯封を巻いてほしい旨を
依頼したのに対し、支店長代理が簡単にこれを承諾したということもあつてか、右
助言を重大視せず、当時百円紙幣が市中に流通することは全くないし、表面の印刷
が百円紙幣と紛らわしいものであるとしても、裏面には広告文言を印刷するのであ
るから、表裏を全体として見るならば問題にならないのではないかと考え、なお、
写真原版の製作後、製版所側からの忠告により、表面に「サービス券」の文字を入
れたこともあり、第一、一のサービス券を作成しても処罰されるようなことはある
まいと楽観し、前記警察官らの助言に従わずに第一、一のサービス券の作成に及ん
だ。次いで、同被告人は、取引銀行でこれに銀行名の入つた帯封をかけてもらつた
うえ、そのころ、右帯封をかけたサービス券一束約一〇〇枚を西警察署に持参し、
助言を受けた前記防犯係長らに差し出したところ、格別の注意も警告も受けず、か
えつて前記巡査が珍しいものがあるとして同室者らに右サービス券を配付してくれ
たりしたので、ますます安心し、更に、第一、二のサービス券の印刷を依頼してこ
れを作成した。しかし、右サービス券の警察署への持参行為は、署員の来店を促す
宣伝活動の点に主たる狙いがあり、サービス券の適否について改めて判断を仰いだ
趣旨のものではなかつた。一方、被告人Eは、被告人Dが作成した前記第一、一の
サービス券を見て、自分が営業に関与している飲食店「G」でも、同様のサービス
券を作成したいと考え、被告人Dに話を持ちかけ、その承諾を得て、前記写真製版
所に依頼し、表面は、第一の各サービス券と同じデザインとしたうえ、上下二か所
にある紙幣番号を「G」の電話番号に、中央上部にある「日本銀行券」の表示を「
G券」の表示に変え、裏面は広告を記載したサービス券(第一審判示第二のサービ
ス券)を印刷させて百円紙幣に紛らわしい外観を有するものを作成した。右作成に
当たつては、被告人Eは、被告人Dから、このサービス券は百円札に似ているが警
察では問題ないと言つており、現に警察に配付してから相当日時が経過しているが
別になんの話もない、帯封は銀行で巻いてもらつたなどと聞かされ、近時一般にほ
とんど流通していない百円紙幣に関することでもあり、格別の不安を感ずることも
なく、サービス券の作成に及んだ。しかし、被告人Eとしては、自ら作成しようと
するサービス券が問題のないものであるか否かにつき独自に調査検討をしたことは
全くなく、専ら先行する被告人Dの話を全面的に信頼したにすぎなかつた。
 このような事実関係の下においては、被告人Dが第一審判示第一の各行為の、ま
た、被告人Eが同第二の行為の各違法性の意識を欠いていたとしても、それにつき
いずれも相当の理由がある場合には当たらないとした原判決の判断は、これを是認
することができるから、この際、行為の違法性の意識を欠くにつき相当の理由があ
れば犯罪は成立しないとの見解の採否についての立ち入つた検討をまつまでもなく、
本件各行為を有罪とした原判決の結論に誤りはない。
 よつて、刑訴法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、
主文のとおり決定する。
  昭和六二年七月一八日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    角   田   禮 次 郎
            裁判官    高   島   益   郎
            裁判官    大   内   恒   夫
            裁判官    佐   藤   哲   郎
            裁判官    四   ツ   谷   巖

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