弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各再上告を棄却する。
         理    由
 弁護人海野普吉、同位田亮次の上告趣意第一点について。
 論旨は原判決は憲法三一条に違反すると主張するけれども、所論の内容は原判決
のした刑法乃至刑罰法規の解釈適用を誤つていると主張するか、又は原判決の前提
となつた第二審判決の事実認定乃至証拠判断を非難するかに帰し、実質においては
憲法違反の問題ではないから、これを以つて再上告の適法な理由とすることができ
ないことは、当裁判所の判例(昭和二三年(れ)第一八八号同年七月七日大法廷判
決昭和二三年(れ)第四四六号同年七月二九日大法廷判決)に徴して明らかである。
 同第二点について。
 昭和二〇年勅令第五四二号「ポツダム宣言ノ受諾ニ伴ヒ発スル命令ニ関スル件」
及び右勅令に基いて制定された勅令が、所論昭和二二年法律第七二号日本国憲法施
行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律第一条の二の規定にかか
わらず新憲法下においても有効であることは、当裁判所の判例(昭和二二年(れ)
第二七九号同二三年六月二三日大法廷判決)に示されているとおりである。従つて、
右昭和二〇年勅令第五四二号に基き制定された昭和二〇年勅令第五七七号及び昭和
二一年勅令第二七五号が昭和二三年一月以降失効したとの論旨は理由がない。
 同第三点について。
 当該裁判をした裁判所の公判廷でした被告人の自白は憲法三八条三項にいわゆる
本人の自白にあたらないことは、当裁判所の判例(昭和二三年(れ)第一六八号同
年七月二九日大法廷判決昭和二三年(れ)第一五四四号同二四年四月二〇日大法廷
判決)に示されているとおりである。論旨は理由がない。
 弁護人定塚道雄上告趣意について。
 憲法三七条二項は、裁判所の職権により又は訴訟当事者の請求により喚問した証
人につき反対訊問の機会を充分に与えなければならないというのであつて、被告人
に反対訊問の機会を与えない証人その他の者(被告人を除く)の供述を録取した書
類は絶対に証拠とすることは許されないという意味を含むものではない。従つて刑
訴応急措置法一二条において、証人その他の者(被告人を除く)の供述を録取した
書類は、被告人の請求があるときはその供述者を公判期日において訊問する機会を
与えればこれを証拠とすることができる旨規定し、検事の聴取書の如き書類は右制
限内においてこれを証拠とすることができるものとしても、憲法三七条二項の趣旨
に違反しないことは当裁判所の判例とするところである(昭和二三年(れ)第八三
三号、同二四年五月一八日大法廷判決参照)。しかも本件記録によれば原判決も説
示するように、所論検事の聴収書の供述者であるAについては、第二審第二回公判
期日に被告人Bの弁護人Cから証人として訊問を請求し裁判所之を却下したが、同
第三回公判期日に同審相被告人Dの弁護人世良田進から右Aを在廷証人として訊問
の請求をなし裁判所はこれを許容して同人を訊問して居り、その訊問の際には被告
人Bは同一公判廷に出頭していたのであるから、同被告人にも、右証人を反対訊問
する機会は十分に与えられたものである。故に論旨は全く理由がない。
 仍つて旧刑訴四四六条に従い主文のとおり判決する。
 この判決中弁護人海野普吉、同位田亮次上告趣意第一点に関する、裁判官齋藤悠
輔の意見は、同点の判示に引用の各大法廷判決に夫々記載のとおりであり
 同第三点に対する裁判官斎藤悠輔の補足意見、裁判官塚崎直義、同沢田竹治郎、
同井上登、同小谷勝重の少数意見は同点の判示に引用の昭和二三年(れ)第一六八
号同年七年二九日大法廷判決に記載のとおりであり、裁判官穂積重遠の少数意見及
裁判官真野毅の補足意見は前掲昭和二三年(れ)第一五四四号同二四年四月二〇日
大法廷判決に記載のとおりである。
 以上補足意見、少数意見を除き、この判決は裁判官の一致した意見である。
 検察官 安平政吉関与
  昭和二五年七月一九日
     最高裁判所大法廷
         裁判長裁判官    塚   崎   直   義
            裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    沢   田   竹 治 郎
            裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    井   上       登
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    島           保
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    穂   積   重   遠

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