弁護士法人ITJ法律事務所

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       主    文
   1 原判決を次のとおり変更する。
   2 被控訴人は,控訴人に対し,1010万円及びこれに対する平成5年12月1日か
ら支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
   3 控訴人のその余の請求を棄却する。
   4 訴訟費用は,第1,2審を通じて,これを5分し,その4を控訴人の負担とし,そ
の余を被控訴人の負担とする。
   5 この判決は,2項に限り,仮に執行することができる。
    事実及び理由
第1 当事者の求める裁判
 1 控訴人
  (1)原判決を取り消す。
 (2)被控訴人は,控訴人に対し,5222万4810円及びこれに対する平成5年12月1
日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 (3)訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。
  (4)仮執行の宣言
 2 被控訴人
  1 本件控訴を棄却する。
  2 控訴費用は控訴人の負担とする。
第2 事実関係
   次のとおり補正するほか,原判決の事実欄の第二記載のとおりであるから,これを
引用する。
 1 原判決6頁1行目と2行目の間に次のとおり付加する。
  「 そして,第一訴訟事件につき,名古屋地方裁判所は,平成3年12月24日,控訴
人の請求を全部認容する判決を言い渡し,これを不服とする被控訴人の控訴
(名古屋高等裁判所平成3年(ネ)第960号)については,平成4年6月10日控訴
棄却の判決が言い渡され,これに対する被控訴人の上告(最高裁判所平成4年
(オ)第1494号)についても,同年11月6日上告棄却の判決が言い渡されたた
め,同事件は控訴人の勝訴で確定した。」
 2 同9頁6行目の「別紙物件目録」を「本判決別紙物件目録」と訂正する。
 3 同9頁9行目の「所在地」を「所有地」と訂正する。
 4 同9頁11行目の「売買契約」の次に「(以下「本件株等売買契約」という。)」を,10
頁1行目の「手付金1億円」の次に「(以下「本件手付金」という。)」を,3行目の「金
5000万円」の次に「の債権」を各付加する。
 5 同10頁4行目の「右被告主張の売買契約」を「本件株等売買契約」と,5行目の
「手付金1億円」を「本件手付金」と各訂正する。
 6 同10頁10行目の「2億円」を「2億円及びこれに対する平成元年12月28日から
支払済みまで年5分の割合による遅延損害金」と訂正する。
 7 同11頁1行目の「ゴルフ会員権」の次に「(以下「本件会員権」という。)」を,2行目
の「売買契約」の次に「(以下「本件会員権売買契約」という。)」を各付加する。
 8 同15頁8行目から9行目にかけての「少なくとも4319万円」を「4319万円(本件
仮差押登記がなされた平成2年4月の属する控訴人の30期事業年度より前の28
期及び29期の各事業年度の税引き前当期利益を平均すると5868万6063円で
あったが,これに比べて控訴人の31期,32期及び33期の各事業年度の税引き
前当期利益がそれぞれ1440万円,2277万円,4921万円減少していて,その
減少額合計は8638万円となるので,少なくとも,同合計額の2分の1にあたる43
19万円が本件仮差押による信用毀損と相当因果関係にある損害額である。)」を
付加する。
 9 同16頁8行目の「右4の損害」の次に「合計5935万4690円」を付加する。
 10 同18頁7行目から8行目にかけての,8行目,19頁1行目,7行目,9行目及び2
0頁1行目から2行目にかけての各「本件被告」をそれぞれ「被控訴人」と,19頁2
行目及び20頁4行目の各「本件原告」をそれぞれ「控訴人」と各訂正する。
第3 当裁判所の判断
 1 請求原因1の事実は,被控訴人が控訴人の社長代理をしていた時期に控訴人の
経理を含む業務全般を統括していたとの点を除いて,当事者間に争いがない。
   証拠(甲14,38の1及び2,甲77の1及び2,甲90,111,123,124)によれ
ば,被控訴人は,Aから依頼されて,平成元年11月から同年12月下旬まで,控訴
人の平取締役のまま,控訴人の社長代理として控訴人の経営にあたり,経理を含
む業務全般を統括していたことが認められる。
 2 第一訴訟事件における被控訴人の応訴の違法性について
  (1)被控訴人による控訴人財産の持出し及び控訴人の第一訴訟事件の提起
    証拠(甲1ないし3,13,77の1,甲90,111,123,124)及び弁論の全趣旨に
よれば,被控訴人は,控訴人の取締役に在任中の平成元年12月中旬,控訴人
の経理を担当していたBに命じて,控訴人が取引先会社から工事代金等の支払
のための受け取った別紙手形目録記載の約束手形5通(額面合計3411万円。
以下,一括して「本件手形」という。)及び現金89万円(以下「本件現金」という。)
を持ち出し,本件手形については手形割引を受けてその割引金を取得したが,
これを控訴人に入金せず,また,本件現金についてもこれを控訴人に返金しな
かったこと,そのため,控訴人は,弁護士に依頼して,被控訴人に対し,被控訴
人が控訴人から持ち出した本件手形及び現金分として3500万円の返還を請求
する書面を送付したが,被控訴人がこれに応じなかったこと,そこで,控訴人は,
被控訴人が本件手形及び現金を着服横領したものであるとして,不法行為によ
る損害賠償請求権に基づき,又は,取締役としての忠実義務あるいは善管注意
義務に違反する債務不履行による損害賠償請求権に基づき,被控訴人に対し
本件手形の額面額と本件現金を合計した3500万円及びこれに対する訴状送
達の翌日である平成2年4月7日から支払済みまで民法所定の年5分の割合に
よる遅延損害金の支払を求める第一訴訟事件を名古屋地方裁判所に提起した
ことが認められる。
  (2)第一訴訟事件の経過等
   ア 第一訴訟事件の請求内容及び同訴訟の結果並びに同訴訟における被控訴人
の主張内容に関する請求原因2(二)及び(三)の事実は当事者間に争いがな
い。
   イ そして,上記アの争いのない事実及び証拠(甲1ないし3,77の1及び2,甲78
の1及び2,甲5の存在)及び弁論の全趣旨によれば,第一訴訟事件の審理
の経過等として,次の事実が認められる。
    (ア)控訴人は,第一訴訟事件において,上記(1)のとおり,被控訴人が本件手形及
び本件現金を持ち出した行為は,着服横領の不法行為にあたり,又は,取
締役としての忠実義務あるいは善管注意義務に違反する債務不履行であ
る旨主張した。
    (イ)これに対し,被控訴人は,被控訴人が平成元年12月27日頃本件手形を持ち
出して割引により現金化し,かつ,控訴人の経理担当者から本件現金を支
出させたことを認めた上,これらの金員を別紙事故目録記載の交通事故
(以下「本件事故」という。)の示談金3500万円の支払に充てたが,本件手
形及び本件現金の持出し及びこれによって同示談金を支払った行為は,次
の①ないし③の事由により,控訴人に対する不法行為及び取締役としての
忠実義務あるいは善管注意義務に違反する債務不履行にあたらない旨主
張した。
     ① 本件事故は,被控訴人が被控訴人車を控訴人の業務として運転中に起こし
た交通事故であるところ,本件手形及び本件現金は,本件事故の示談
金3500万円を支払うために持ち出し,同示談金の支払資金に充てたこ
と(以下「被控訴人主張①」という。)
     ② 被控訴人は,本件事故の解決のために本件手形及び本件現金を持ち出す
ことについて,控訴人代表者であるAの了解を得たこと(以下「被控訴人
主張②」という。)
     ③ 被控訴人は,本件事故当時既に,控訴人の過半数を超える株式を2億円で
買い受けて,その株券の引渡しを受け,代金のうち1億円は支払済みで
あり,オーナー社長として控訴人を経営していたから,本件手形及び本
件現金を持ち出して本件事故の示談金の支払に充てることが控訴人の
財産を横領するという認識はなかったこと(以下「被控訴人主張③」とい
う。)
    (ウ)被控訴人は,第一訴訟事件において,被控訴人主張①ないし③を立証するた
めの証拠として,自動車代金として3500万円を領収した旨の平成元年12
月23日付け,C(以下「C」という。)作成名義の領収証(以下「本件事故領
収証」という。甲5)を提出し,その申請により被控訴人本人尋問が実施さ
れ,その供述は,要旨次のとおりであった(なお,被控訴人の本人調書は
証拠として提出されていないので,その供述内容は,第一訴訟事件の一審
判決(甲1),控訴審判決(甲2)及び上告審判決(甲3)の記載により認め
る。)。
     ① 被控訴人主張①について
       同主張に関する被控訴人の供述の要旨は,「被控訴人は,平成元年12月8
日か9日頃の午後4時30分頃,控訴人の仕事の関係で名古屋市中区
の福徳銀行東新町支店に向って清洲インターチェンジ入口で被控訴人
車(ベンツ300E)を運転中,逆方向からUターンして右前方に来た相手
方車(ベンツの大型リムジン車)の左側後部フェンダー部分付近に被控
訴人車の右前部バンパーを接触させる本件事故を起こした。本件事故
後,名古屋西インターチェンジ付近で相手方車に乗っていた一見して暴
力団風の数名の者たちに蹴られたり,殴られたりした。被控訴人は,控
訴人の顧問弁護士であるD(以下「D弁護士」という。)に対して事故後相
談したが,一日も早く解決した方がいいと言われた(被控訴人は,D弁護
士には,本件事故の詳しい内容や相手方の要求を伝えていないし,同弁
護士からも,概括的に早急解決の示唆があったのみであり,その後のC
らとの示談交渉について一度も同弁護士に相談しなかった。)。そして,
その後,Cなる人物から被控訴人の自宅に電話で連絡があり,被控訴人
は,近鉄益生駅前の喫茶店で,数名の者から,相手方車は5,6千万円
はする車だから新車で弁償してくれと言われ,一週間後には,名阪高速
道路の上野パーキングエリアの喫茶店で,車の弁償代として5000万円
を要求されたが,交渉して3500万円にしてもらった。そこで,被控訴人
は,控訴人の経理担当者に話をして控訴人から持ち出した本件手形の
割引金と現金89万円をもって示談金に充てることにし,同月23日,四日
市都ホテルの2階の喫茶店で,Cに対し,一切の解決金として3500万
円を支払った。なお,被控訴人は,本件事故について一切警察に通報し
たことはなく,被控訴人車について加入していた自動車保険(車両保険も
含む。)の保険会社にも連絡しなかった。本件事故の示談金3500万円
は,事故の内容に照らせば,暴力団関係者の要求に屈した不当に高額
な金額であると思う。」というものであった。
       なお,被控訴人の供述には,被控訴人が福徳銀行東新町支店に出向くこと
が控訴人の業務にあたることについての具体的な事実の供述はなく,ま
た,本件事故領収証の作成者とされるCについて,その人物を特定すべ
き具体的事実を供述しなかった。
     ② 被控訴人主張②について
       同主張に関する被控訴人の供述内容は,証拠上不明である。
     ③ 被控訴人主張③について
       同主張に関する被控訴人の供述内容は,証拠上不明である。
    (エ)第一訴訟事件の第1審及び控訴審とも,本件事故の発生及び示談金3500
万円の支払に関する被控訴人の供述の信用性を否定し,また,本件事故
領収証についてはその成立を認めず,本件事故の発生の事実及び示談金
3500万円の支払の事実を認めることができないと判断し,被控訴人主張
①ないし③を排斥し,控訴人の損害賠償請求を認容する判決をした。
  (3)ところで,民事訴訟を提起された者が敗訴の確定判決を受けた場合において,そ
の者の応訴,その後の控訴及び上告が提訴者に対する違法行為となるのは,
応訴者において,提訴者の主張する権利又は法律関係が事実的及び法律的根
拠を有するものであるため,自己の敗訴が確実であることを知りながら,又は通
常人であれば容易にそのことを知り得た場合であるのに,敢えて,提訴者の主
張する権利又は法律関係を争って,事実的もしくは法律的根拠を欠く主張(虚偽
事実を内容とする積極否認や抗弁の主張)をしたり,偽造の証拠を提出するな
ど,当該応訴が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められる
ときに限られるものというべきである(最高裁判所昭和63年1月26日民集43巻
1号1頁参照)。
   ア そこで,上記観点にたって,被控訴人主張①ないし③について検討するが,被
控訴人は,本件において,被控訴人主張①ないし③に事実的根拠があったこ
とを立証するための証拠提出をしないのみならず,第一訴訟事件においてそ
のような主張をしたことにつき相当な理由があったことについての証拠提出も
しない。
    (ア)被控訴人主張①について
     a 本件事故の発生及び示談金3500万円の支払の事実に関して,被控訴人
は上記(2)(ウ)①のとおり供述するのであるが,その裏付けとなる証拠は
本件事故領収証がほとんど唯一の証拠である(第一訴訟事件の一審判
決及び控訴審判決はそのように説示しているし,本件における証拠に
も,他に本件事故の発生及び示談金3500万円の支払の事実の裏付け
となる証拠はない。)。
       しかし,被控訴人は,第一訴訟事件において,本件事故領収証の成立の真
正を証明することはできなかったし,本件においても,本件事故領収証で
ある甲5の成立の真正を証明する証拠はないのみならず,証拠(甲6)及
び弁論の全趣旨によれば,本件事故領収証の作成者で,3500万円の
受領者とされるCの住所として本件事故領収証に記載されている「鈴鹿
市上丘町」は,実在しない町名であることが認められるから,本件事故領
収証の成立の真正には重大な疑いがある。
     b そして,第一訴訟事件の一審判決及び控訴審判決が指摘するとおり,被控
訴人の供述は,その内容において,被控訴人が本件事故の示談金とし
て支払ったと供述する3500万円が,被控訴人の供述する本件事故の
内容に照らして,明らかに不当に高額であること,本件事故後一度相談
したとされるD弁護士の助言の内容の不自然さ,被控訴人において,相
手方から暴力を振るわれ,脅された等供述しながら,同弁護士にその点
を説明して相談したり,警察に通報したこともないことなどの点で不自
然,不合理なものであって,到底信用できないものである。
     c もっとも,証拠(甲38の1及び2,77の1及び2)によれば,A及び当時の控
訴人の営業課長E(以下「E」という。)は,被控訴人から,昨日清洲インタ
ー付近で交通事故をしたとの話をされたことが認められるが,これら証拠
によれば,Aは,被控訴人からその話を聞いた日の夕方,被控訴人車を
見たが,被控訴人車に損傷を認めず,また,Eも,その頃被控訴人車を
見たが,被控訴人車に交通事故によるような損傷を認めなかったことも
認められるから,被控訴人がA及びEに本件事故に関連する話をしてい
たとの事実も,本件事故の発生を裏付けるとまではいえない。
     d なお,上記(2)(ウ)①によれば,第一訴訟事件において,被控訴人が,被控訴
人が福徳銀行東新町支店に出向くことが控訴人の業務にあたる事実に
ついての主張立証に努めた形跡はなく,本件においても,同事実につい
ての証拠はない。
     e 以上によれば,第一訴訟事件の一審判決及び控訴審判決が,本件事故領
収証の成立を認めず,被控訴人の供述の信用性を否定して,本件事故
の発生の事実及び示談金3500万円の支払の事実を認めることができ
ないと判断したこと(甲1,2)は当然のことであるところ,被控訴人は,本
件において,本件事故発生の事実及び本件事故領収証の成立の立証を
含む示談金3500万円支払の事実を証明するための証拠提出を一切し
ないから,このような被控訴人の訴訟活動の状況をも考慮すると,本件
事故は,真実には存在せず,被控訴人が示談金3500万円の支払をし
た事実もなかったのであり,被控訴人は,第一訴訟事件において虚偽の
供述をしたものと推認することができる。
       仮に,被控訴人主張のとおり,本件事故は真実に存在し,かつ,それが控訴
人の業務遂行中に発生したものであり,被控訴人が示談金3500万円
の支払をした事実があったとしても,被控訴人が本件事故の示談金とし
て支払ったとする3500万円は,被控訴人の供述する本件事故の内容
に照らしても明らかに不当に高額であるところ,被控訴人においても,同
示談金3500万円は,本件事故の内容に照らせば,暴力団関係者の不
当な要求に屈した不当に高額な金額であることを認識していたというの
であるから,被控訴人が,警察に通報するなどの適切な対応を怠りなが
ら,暴力団関係者の不当な要求に屈して,本件事故の内容に照らして明
らかに不当に高額な示談金を支払ったからといって,その負担を控訴人
に求めることができないことは当然のことであり,そのことは被控訴人に
も極めて容易に理解できることである。
     f そうすると,被控訴人は,被控訴人主張①が事実的もしくは法的根拠を欠くた
め,採用される見込みがないことを知っていたか,少なくとも容易にその
ことを知ることができたものと認めることができる。
    (イ)被控訴人主張②について
     a 被控訴人が,第一訴訟事件において,同主張を立証するためにどのような証
拠を提出したのか不明であり(上記(2)(ウ)②),かつ,本件の証拠中にも
同主張を認めるべき証拠はない。
     b そして,上記(ア)のとおり,本件事故は,真実には存在せず,被控訴人が示談
金3500万円の支払をした事実もなかったのであるから,被控訴人の上
記主張は事実的根拠を欠いていたこと,被控訴人はそのことを認識して
いたことを容易に推認することができる。仮に,被控訴人主張のとおり,
本件事故が真実存在し,かつ,それが控訴人の業務遂行中に発生した
ものであり,被控訴人が示談金3500万円の支払をした事実があったと
しても,被控訴人が,警察に通報するなどの適切な対応を怠りながら,暴
力団関係者の不当な要求に屈して,本件事故の内容に照らして明らか
に不当に高額な示談金を支払ったからといって,その負担を控訴人に求
めることができないことは当然のことであり,たとえ控訴人代表者である
Aが被控訴人主張②の承諾をしたとしてもその理は変らないのであって
(Aの承諾は,被控訴人の上記示談金の支払を正当化するものではな
い。),そのことは被控訴人にも容易に理解できることである。
     c そうすると,被控訴人は,被控訴人主張②が事実的もしくは法的根拠を欠く
ため,採用される見込みがないことを知っていたか,少なくとも容易にそ
のことを知ることができたものと認めることができる。
    (ウ)被控訴人主張③について
      上記(ア)のとおり,本件事故は,真実には存在せず,被控訴人が示談金3500
万円の支払をした事実もなかったのであり,仮に,被控訴人主張のとおり,
本件事故が真実存在し,かつ,それが控訴人の業務遂行中に発生したも
のであり,被控訴人が示談金3500万円の支払をした事実があったとして
も,そもそも,その負担を控訴人に求めることができないものであったから,
被控訴人主張③の事実があったとしても,被控訴人が同示談金の支払に
充てるため本件手形及び本件現金を持ち出すことを正当化する事由となる
ものではないことは,第一訴訟事件の一審判決及び控訴審判決の説示す
るとおり明らかである。そのことは,被控訴人にも極めて容易に理解できる
ことであり,被控訴人は,被控訴人主張③が事実的もしくは法的根拠を欠く
ため,採用される見込みがないことを知っていたか,少なくとも容易にその
ことを知ることができたものと認めることができる。
  イ 以上によれば,被控訴人は,被控訴人主張①ないし③について,本件事故が存
在しないため主張の事実的根拠を欠き,又は控訴人との関係において,被控訴
人が本件手形及び本件現金を持ち出すことを正当化する法的根拠とならないこ
と,したがって,第一訴訟事件における控訴人の請求が正当なものであることを
知りながら,少なくとも容易にそのことを知り得たにもかかわらず,これを争って
第一訴訟事件に応訴し,控訴人の請求を認容した一審判決に対して控訴し,さ
らには上告したものであり,このような被控訴人の応訴及び上訴は,裁判制度
の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くものとして,控訴人に対する不法行為
にあたるものである。
 3 被控訴人による仮差押え及び第二訴訟事件提訴の違法性について
  (1)本件仮差押事件及び第二訴訟事件の経過等
   ア 請求原因3(一),(三)及び(五)の事実は当事者間に争いがない。
     上記事実によれば,本件仮差押命令の被保全債権は,控訴人が本件株等売買
契約を解約したことによる被控訴人の控訴人に対する手付金倍戻しによる2
億円のうち5000万円の返還請求権であり,第二訴訟事件の訴訟物は,被控
訴人が控訴人に対し,上記2億円及びこれに対する平成元年12月28日から
支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払請求権(本件仮差押命
令の本案訴訟部分。以下,第二訴訟事件のうち,この訴訟物に関する部分を
「第二1訴訟事件」という。)及び本件会員権売買契約に基づき本件会員権の
名義変更手続請求権(以下,第二訴訟事件のうち,この訴訟物に関する部分
を「第二2訴訟事件」という。)であるが,第二訴訟事件において,被控訴人の
請求を棄却する旨の一審判決がされ,同判決は,被控訴人の控訴及び上告
を経て,被控訴人の敗訴が確定し,そのことにより本件仮差押命令の被保全
債権が存在しないことも確定したことが明らかである。
   イ そして,上記アの事実並びに証拠(甲4,78の1ないし4,甲79の1及び2,8
0,81,86,甲7ないし10の存在)及び弁論の全趣旨によれば,本件仮差押
命令申立事件及び第二訴訟事件の審理の経過等として,次の事実が認めら
れる。
    (ア)本件仮差押命令申立事件及び第二1訴訟事件につき
     a 被控訴人は,第二1訴訟事件において,控訴人代表者Aとの間で,平成元年
12月5日,被控訴人が控訴人から,控訴人の工場を除く控訴人所有地
4筆及び同土地上の建物工作物全部,控訴人の株式8万4900円,控
訴人の関連会社である宝産業株式会社の株式700株等を一括して2億
円で買い受ける旨の本件株等売買契約を締結し,Aに対しその手付金と
して1億円を交付した旨主張し,同主張を立証するための証拠として,控
訴人名義で作成された1億円を受領した旨の同日付け領収証(以下「本
件手付金領収証」という。本件において,控訴人が偽造文書として提出
する甲7である。),賃貸人をA,賃借人を被控訴人とするAら所有の土
地建物に関する賃貸借契約書(以下「本件賃貸借契約書」という。本件
において,控訴人が偽造文書として提出する甲9である。)等を提出し
た。なお,被控訴人本人尋問が実施されているが,被控訴人の本人尋
問調書が証拠として提出されていないので,被控訴人の上記主張に関
する供述内容は,第二訴訟事件の一審判決(甲4),控訴審判決(甲80)
及び上告審判決(甲86)の記載により認める。
     b しかし,第二1訴訟事件の一審判決及び控訴審判決とも,要旨,次の(a)ない
し(f)のとおり判示して,被控訴人の主張を排斥し,被控訴人の請求を棄
却した。
      (a)本件手付金領収証等の成立について
       ① 本件手付金領収証には,「控訴人の株式8万4900株,宝産業株式会
社の株式700株,本社工場敷地1筆を除くその余の不動産一切合
計2億円の手付金として」(以下,この記載部分を「受領趣旨文言」
という。),受領した旨の記載があり,その用紙は,控訴人が用いて
いる領収証用紙であり,控訴人の会社印,記名ゴム判,控訴人名
下の代表取締役印並びにA名下の印はいずれも正規のものである
ことが認められ,また,本件賃貸借契約書は,そのA名下の印影が
Aの印鑑により顕出されたことは争いがなく,その特約事項欄に
は,「控訴人の株,会社を2億円で譲る変りに土地事務所リース料5
0万円,給料50万円,Fの分として20万円,私Aが死んだ後私の分
Fに譲る。」等の加筆(以下,この加筆部分を「特約条項加筆記載」
という。)があることが認められる。
       ② しかし,本件手付金領収証は,上記受領趣旨文言が,本件手付金領収
証の不動文字である「但」と「上記金額正に受領いたしました」との
間の狭い空欄に,「上記」の不動文字に一部重なるようにして記載
された不体裁なものであること,本件賃貸借契約書は,特約条項加
筆記載が土地建物賃貸借契約には直接関連がない本件株等売買
契約に関する事柄であるため,その特約条項として記載する必要
性の疑わしいものであること,他方,被控訴人は,平成元年11月
当時,控訴人の取締役として,Aから控訴人の業務を任されていた
ため,控訴人が用いる領収証用紙を入手すること及び本件手付金
領収証に押捺されている控訴人の会社印,記名ゴム判,控訴人名
下の代表取締役印を使用することが可能であり,また,当時A及び
Fの信頼を得ていたため,その財産会計事務処理のためにA及びF
の実印を預ったことがあったこと,本件手付金領収証の宛名欄に押
捺されている「G」のゴム印は,その製作をした業者が同ゴム印の納
品書を平成元年12月7日付けで作成している事実によれば,同ゴ
ム印が控訴人に納品されたのは本件手付金の作成日の同月5日
より後の日である同月7日である可能性があること等が認められる
から,本件手付金領収証及び本件賃貸借契約書の控訴人又はA
名下の印影が,それぞれ,控訴人又はAの印鑑によって顕出された
との事実のみにより,直ちに控訴人又はAの意思に基づくものと推
定することはできない。
      (b)本件株等売買契約の内容上の疑問
        被控訴人が本件株等売買契約締結の日とする平成元年12月5日当時に
おいて,控訴人の発行済株式総数は12万株で,その約8割(亡H名
義のものを含む。)をA及びその娘(長女I及び次女F)が保有し,その
他を20名の個人ないし会社が200株から400株ずつ保有していたた
め,控訴人は自己株式を保有していなかったから,本件株等売買契
約は,控訴人の株式の大部分を保有していたAと売買の交渉をしなが
ら,Aを売主とすることなく,自己株式を全く保有していない控訴人を売
主としている点等において,不可解である。
      (c)本件手付金の調達方法について
       ① 被控訴人は,控訴人代表者であるAに本件手付金として1億円を交付し
た旨供述するが,被控訴人の同1億円の捻出方法についての供述
は著しく変遷して一貫性がない。すなわち,被控訴人は,一審にお
いて,本件手付金1億円の捻出方法に関する供述(陳述書による
陳述記載を含む。以下同じ)を再三にわたり変更した後,日本興業
銀行でワリコー1000万円券8枚と500万円券1枚を現金化したほ
か,百五銀行の控訴人の預金から引き出した1500万円を加えて1
億円をつくったと供述していたが,控訴審においては,同供述を変
更し,ワリコーの券面額及び枚数,現金の引出し先等の重要な点で
変更したに止まらず,手付金交付の態様については,一審において
一貫していた全額現金で支払ったとの点でも,現金で7000万円を
支払い,残り3000万円は日本興業銀行発行額面1000万円の第
578号割引興業債(ワリコー。以下「本件①債券」という。)及び日
本長期信用銀行発行額面2000万円の第436回割引長期信用債
(ワリチョー。以下「本件②債券」という。)を交付することで代えた旨
供述するに至ったものであり,被控訴人は,本件手付金1億円の捻
出方法に関して,一審及び控訴審を通じて著しく変遷し,かつ,その
間に一貫性を欠く供述をしているのである。
       ② そして,被控訴人が現金で支払ったと供述する7000万円についても,
被控訴人の複数の口座から時期を異にして引き出された現金であ
るというのであるが,その引き出された金額及び引き出された時期
に照らして,被控訴人がその引き出し金を本件手付金のうち現金交
付分7000万円に充てたことの証明はない。
       ③ また,被控訴人は,Aは,自らの意思で新日本証券株式会社四日市支
店にA名義の取引口座を開設して同社と取引を行い,控訴人が本
件手付金の一部として交付した本件①債券を同取引口座に預け入
れるなど,被控訴人が控訴人に支払った本件手付金1億円及び裏
金として支払った5000万円を原資として同取引を行った旨主張す
るが,同取引口座は,Aが,被控訴人の勧めに従って,被控訴人に
依頼して開設したものの,その後の管理は一貫して被控訴人にお
いて行い,本件①債券及び本件②債券を含む預入れ証券類はす
べて被控訴人が持ち込み,持ち出したことが証拠から窺われるの
で,同口座の存在及び同口座における証券等の移動は本件手付
金支払の裏付けにならない。
      (d)なお,Aは,被控訴人から,控訴人株式の譲渡を持ち掛けられ,Fがそれに
同意していると聞かされたため,亡H死亡後間もない時期であったこと
もあって,控訴人株式の売却を考えて被控訴人へ上記株券を交付し
たことがあった旨供述し,Aが,平成元年12月頃,被控訴人に対し,
亡H,A及びF名義の控訴人の株式8万4900株の株券を交付した事
実があるから,この事実は,A(控訴人ではない。)と被控訴人との間
の同株式についての売買の存在を窺わせる。
        しかし,上記株券は,その後すぐに被控訴人がAに対して何らの対価なくし
て全部返還しているから,Aと被控訴人間において上記株式売買につ
いて確定的な合意があったとするには疑いがある。
      (e)本件領収証及び本件賃貸借契約書の真正な成立,本件株等売買契約の
成立及び本件手付金の支払をいう,被控訴人の供述は,内容に不自
然な点等があり,反対証拠と対比して,信用できない。
      (f)以上(a)ないし(e)のとおりであるから,本件株等売買契約の成立及び本件
手付金1億円の交付の事実は認められず,手付倍戻しによる2億円
の支払請求は理由がない。
     c また,被控訴人は,本件仮差押事件においても,ほぼ第二1訴訟事件と同一
の主張をし,同主張を疎明するための証拠として,本件手付金領収書及
び本件賃貸契約書等を提出したが,事情変更による本件仮差押命令取
消申立事件において,簡潔ながら,bにおけると同趣旨の判断が示され
て(なお,被控訴人は,同取消申立事件において,手付倍戻しによる2億
円の支払請求権がないとしても,本件手付金1億円を支払っているとし
て,1億円の不当利得返還請求権があるとも主張したが,同主張も採用
されなかった。),本件仮差押命令が取り消された。
    (イ)第二2訴訟事件につき
     a 被控訴人は,第二2訴訟事件において,被控訴人が,平成元年5月20日,
控訴人の当時の代表者亡Hから,本件会員権を代金1500万円で譲り
受け,同代金の支払と引き換えに,亡Hから控訴人作成名義の同日付
け1500万円の領収証(以下「本件代金領収証」という。本件において,
控訴人が偽造文書として提出する甲8である。),控訴人宛の松名カント
リークラブの入会保証金預かり証,控訴人名義松名カントリークラブ会員
証及び入会申込証(これらについては,本件において証拠として提出さ
れていない。)の交付を受けて,所持している旨主張し,これら書面を証
拠として提出した。なお,被控訴人本人尋問が実施されているが,被控
訴人の本人尋問調書が証拠として提出されていないので,被控訴人の
上記主張に関する供述内容は,第二訴訟事件の一審判決(甲4),控訴
審判決(甲80)及び上告審判決(甲86)の記載により認める。
     b しかし,第二訴訟事件の一審判決及び控訴審判決とも,要旨,次の(a)ない
し(f)のとおり判示して,被控訴人の主張を排斥し,第二2訴訟事件の被
控訴人の請求を棄却した。
      (a)本件代金領収証の成立について
        本件代金領収証は,控訴人の領収証用紙であり,押捺されている控訴人
の記名判及び代表者印はいずれも控訴人の記名判及び代表者印に
よって顕出されたものである。
        しかし,本件代金領収証は,領収証の外枠(飾り枠)に沿ってその周囲が切
り取られている不自然なものである上,控訴人が使用している領収証
用紙にはその上部に一連番号の欄が存在するが,本件代金領収証
では,同番号欄部分が不自然に切り取られて,番号が分からないよう
に細工されていること(このような細工は,本件代金領収証の真の作
成時期を隠す必要のある者によって故意に作為された事実を疑わせ
る。),また,被控訴人は,平成元年11月以降,控訴人の経営を任さ
れていたため,本件代金領収証に押捺されている控訴人の記名判及
び代表者印を使用する機会があったことが認められるから,本件代金
領収証に控訴人の記名判及び代表者印が押捺されているとの事実の
みから,その成立の真正を推定することはできない。
        なお,本件賃貸借契約書の特約条項欄には,前記(1)イ(ア)bの特約条項加
筆記載のほか,「松名ゴルフ会員券平成3年10月に書替えいたしま
す。」との記載があるが,土地建物の賃貸借契約書の記載としては異
例な記載であり,このような異例な記載が本件賃貸借契約書にされた
理由が全く明らかでない上,本件賃貸借契約書については,前記(1)イ
(ア)b(a)のとおり,その真正な成立について疑いがあるから,かえって,
本件会員権の売買契約の成立を疑わせる。
      (b)代金1500万円の原資について
        被控訴人は,控訴審になって,本件会員権の代金1500万円の原資につ
いて具体的に主張する至り,その提出の証拠によれば,被控訴人の
口座から平成元年5月10日に500万円,昭和63年4月4日に770
万円,同年5月9日に700万円が預金から引き出された事実が認めら
れるものの,同事実のみでは,これら金員が本件会員権の代金支払
の事実に充てられたことを認めることはできず,他にこれを認めるに足
りる証拠はない。
      (c)そして,被控訴人は,亡Hから,その生前に本件会員権の購入を依頼され
て,同年5月にこれを現金で購入した旨供述するのであるが,控訴人
は,本件会員権のほか,緑ヶ丘,浜松及びひるがの高原の各カントリ
ークラブの会員権を持っていて,亡Hの死後にいずれも売却されてい
るから,被控訴人の同供述は,亡Hが名義書換えのできない本件会
員権のみを事前に被控訴人に売却したというもので,不自然であり,
かえって,亡H死亡後,控訴人が持っていた本件会員権を含むゴルフ
会員権の処分を被控訴人に委ね,これに必要な書類を被控訴人に交
付したが,本件会員権のみが名義書換えができないために被控訴人
の手元に残っていた旨のAの供述の方が合理性がある。
      (d)以上(a)ないし(c)のとおりであって,本件会員権売買契約の成立は認めら
れないから,本件会員権についての名義変更手続請求は理由がな
い。
  (2)本件仮差押え及び第二訴訟事件提訴の違法性
   ア ところで,仮差押命令が,その被保全債権が存在しないために当初から不当で
あるとして異議等により取り消され,あるいは本案訴訟において債権者である
原告敗訴の判決が確定した場合には,他に特段の事情がないかぎり,被保
全権利が存在するとして仮差押命令を得てこれを執行した債権者に過失があ
ったものと推定される(最高裁判所昭和43年21月2日民集22巻13号342
8頁参照)。
     他方,民事訴訟等を提起した者が敗訴の確定判決を受けた場合において,そ
の者の訴え等の提起が相手方に対する違法行為となるのは,訴え等を提起
した者において,その主張する権利又は法律関係が事実的,法律的根拠を
有するものでないことを知りながら,又は通常人であれば容易にそのことを知
り得た場合であるのに,敢えて訴え等を提起したなど,訴え等の提起が裁判
制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに限られるも
のというべきである(最高裁判所昭和63年1月26日民集43巻1号1頁参
照)。
     そこで,上記観点に立って,本件仮差押え及び第二訴訟事件提訴の違法性に
ついて,順次検討を加える。
   イ 本件仮差押えの違法性について
    (ア)第二1訴訟が被控訴人の敗訴で確定したことは前記(1)アのとおりであるか
ら,同訴訟を本案訴訟とする本件仮差押えについては,被控訴人におい
て,本件仮差押えをしたことを相当とするだけの特段の事情がない限りは,
被控訴人の過失が推定されるものである。
    (イ)そして,本件株等売買契約の成否及び本件手付金交付の事実の有無につい
ての第二訴訟事件の一審判決及び控訴審判決の判断は,前記(1)イ(ア)の
とおりであって,その判断は,被控訴人が本件株等売買契約の成立及び本
件手付金交付の事実の証拠であるとして提出した本件手付金領収証及び
本件賃貸借契約書がいずれも真正に成立したものと認めることができず,
また,被控訴人の供述等も信用できない等により,本件株等売買契約の成
立及び本件手付金交付の事実を認めることはできないとするもので,被控
訴人の手付金倍戻しの支払請求を棄却した一審判決が確定したものであ
るところ,一審判決及び控訴審判決の判断内容及び証拠(甲14,38の1
及び2,甲40,41,48,50,54の1及び2,58ないし61,65ないし76,
甲78の1ないし4,甲79の1及び2,90,111,証人F)を総合すれば,本
件手付金領収証及び本件賃貸借契約書は,いずれも,被控訴人が,控訴
人及びAの承諾を得ることなく,無権限で作成した書面であり,控訴人が本
件手付金1億円を受領した事実がないにもかかわらず,被控訴人は当然そ
のことを知りながら,本件仮差押えをしたものと推認するほかない。
      これに反するBの陳述書(乙1,3の2,乙4)及び証明書(乙5)並びに被控訴
人の陳述書(乙6)の陳述記載は,上記証拠に照らし,また,Eの証明書(乙
2)の陳述記載は,同人の陳述書(甲51,53の1及び2,甲65)の陳述記
載及び証人尋問調書の記載(甲77の1及び2)に照らして,いずれも措信し
難く,他に上記推認を左右するに足りる証拠はない。
    (ウ)したがって,被控訴人が本件仮差押命令の被保全債権として主張した本件株
等売買契約の成立及び本件手付金交付による手付金倍戻し請求権につい
ては,その事実的根拠を欠くものであったのであり,被控訴人は,そのこと
を知っていたものである。
      そうすると,被控訴人が本件仮差押えをしたことにつき,これを相当とするだけ
の特段の事情があるということはできないから,本件仮差押えは,違法な
仮差押えであったものである。
   ウ 第二1訴訟提起の違法性について
    (ア)第二1訴訟は,前記(1)アのとおり,被控訴人が,本件仮差押えの債務者とさ
れた控訴人からの起訴命令申立てを受けて,本件仮差押命令を維持する
ために提起した,本件仮差押えの本案訴訟である。 
    (イ)そして,被控訴人の控訴人に対する本件株等売買契約の成立及び本件手付
金交付による手付金倍戻し請求権は,上記イ(イ)及び(ウ)の認定説示のとお
り,控訴人が本件手付金1億円を受領したことがないなどその事実的根拠
を欠くものであり,被控訴人は,そのことを知りながら,本件仮差押命令を
維持するために第二1訴訟を提起したものと推認するほかない。
    (ウ)そうすると,被控訴人のした第二1訴訟の提起,その一審判決に対する控訴,
さらには上告は,いずれも違法であったものである。
   エ 第二2訴訟提起の違法性について
    (ア)本件会員権売買契約の成否についての第二訴訟事件の一審判決及び控訴
審判決の判断は,前記(1)イ(イ)のとおりであって,その判断は,被控訴人が
本件会員権売買契約の成立の証拠であるとして提出した本件代金領収証
が真正に成立したものと認めることはできず,また,被控訴人の供述等も信
用できない等により,本件会員権売買契約の成立を認めることはできない
とするもので,被控訴人の本件会員権売買契約に基づく本件会員権の名
義変更手続請求を棄却した一審判決が確定したものであるところ,一審判
決及び控訴審判決の判断内容及び証拠(甲14,48,甲78の1ないし4,
甲79の1及び2,90)を総合すれば,本件代金領収証は,被控訴人が,控
訴人の代表者であるAの承諾を得ることなく,無権限で作成した書面であ
り,控訴人が本件会員権の代金1500万円を受領したことがないにもかか
わらず,被控訴人は当然そのことを知りながら,第二2訴訟を提起したもの
と推認するほかない。
      したがって,被控訴人主張の本件会員権売買契約に基づく本件会員権の名
義変更請求権については,その事実的根拠を欠くものであったのであり,
被控訴人は,そのことを知っていたものである。
    (ウ)そうすると,被控訴人のした第二2訴訟の提起,その一審判決に対する控訴,
さらには上告は,いずれも違法であったものである。
 4 被控訴人の第一訴訟事件への違法な応訴及び違法な第二訴訟事件提起による 
 損害
  (1)前記3のとおり,被控訴人が,控訴人の提起した第一訴訟事件に応訴したことは
違法であり(控訴人が,同訴訟提起に先立って,書面で,被控訴人に対し,被控
訴人が控訴人から持ち出した本件手形及び現金分として3500万円の返還を請
求したが,被控訴人がこれに応じなかったことは,前記(1)で認定したとおりであ
る。),また,控訴人に対し第二訴訟事件を提起したことは違法であったから,被
控訴人は,民法709条により,第一訴訟事件への違法な応訴及び違法な第二
訴訟事件提起によって控訴人が被った損害について賠償する責任がある。
  (2)証拠(甲1ないし4,80,86,92の1ないし4,甲93の1及び2,甲94の1及び
2,甲95の1ないし4,甲96の1及び2,甲97の1及び2,甲98,99の1及び
2,111,証人F)及び弁論の全趣旨によれば,控訴人は,第一訴訟事件の提起
及び追行並びに第二訴訟事件の応訴を弁護士に委任し,弁護士費用として次
のとおりの支払をした事実が認められる。
   ア 平成2年2月21日       122万4810円
     控訴人は,第一訴訟事件の提起を弁護士Jに委任して,平成2年2月21日に着
手金及び費用として150万円を支払ったが,第一訴訟事件提起後,同弁護
士が辞任したため,そのうち未使用費用分27万5190円の返金を受けたか
ら,同弁護士に対する実質支払額は122万4810円となる。
   イ 平成2年7月20日       206万円
     控訴人は,第一訴訟事件の追行及び第二訴訟事件の提起を弁護士K,同Lら
(以下「K弁護士ら」という。)に委任し,着手金及び費用として206万円を支払
った。
   ウ 平成4年4月1日         81万0800円
     控訴人は,K弁護士らに対し,第一訴訟事件の一審判決(控訴人勝訴)の中間
報酬及び控訴着手金として合計81万0800円を支払った。
   エ 平成4年8月25日       244万6080円
     控訴人は,K弁護士らに対し,第一訴訟事件の報酬として244万6080円を支
払った(控訴人は,同日,K弁護士らに285万8080円を支払ったが,そのう
ち41万2000円(消費税分1万2000円を含む。)は,K弁護士らに対して第
一訴訟事件の勝訴判決による執行として被控訴人所有不動産に対する競売
申立てを委任したことによる弁護士費用分であり,これを上記285万8080
円から控除した残額が244万6080円である。
   オ 平成5年7月5日        390万円
     控訴人は,K弁護士らに対し,第二訴訟事件の費用及び報酬として390万円を
支払った。
   カ 平成7年1月20日       401万7000円
     控訴人は,K弁護士らに対し,第二訴訟事件の報酬として401万7000円を支
払った。
  (3)ところで,証拠(甲1ないし3,95の1ないし4,甲96の1及び2,甲97の1及び
2,甲111,証人F)及び弁論の全趣旨によれば,控訴人は,第一訴訟事件で勝
訴しため,K弁護士らに委任して,津地方裁判所四日市支部に対し,同勝訴判
決に基づく被控訴人所有不動産に対する競売を申し立てたこと(同支部平成4
年(ヌ)第22号不動産競売事件),ところが,その後,被控訴人が,第一訴訟事件
で支払を命じられた金員を任意に控訴人に支払ったため,控訴人は,同不動産
競売申立事件を取り下げこと,控訴人は,同不動産競売申立事件をK弁護士ら
に委任した際,その費用として80万円を支払ったが,その取下により20万600
0円の返還を受けたため,差引き59万4000円を同不動産競売申立事件の申
立費用及び弁護士費用として支払ったことになるほか,上記(2)エのとおり,控訴
人が平成4年8月25日にK弁護士らに対して第一訴訟事件の報酬等として支払
った285万8080円のうち41万2000円(消費税分1万2000円を含む。)は,
同不動産競売申立事件をK弁護士らに委任したことによる弁護士費用であるこ
とが認められる。
    控訴人は,上記不動産競売申立事件のために要した費用59万4000円及び弁
護士費用41万2000円も,被控訴人が控訴人の提起した第一訴訟事件に違法
に応訴したことによって控訴人が被った損害である旨主張するが,被控訴人が
控訴人の提起した第一訴訟事件に違法に応訴したことと,被控訴人が第一訴訟
事件の控訴人勝訴判決に従って金員を支払わないこととは法的場面を異にする
別の事柄である上,被控訴人が控訴人の提起した第一訴訟事件に応訴したこと
が控訴人に対する不法行為となるからといって,被控訴人が第一訴訟事件の控
訴人勝訴判決に従って金員を支払わないことが直ちに控訴人に対する不法行
為となるものでもないから(このことは,判決で金員の支払を命じられた債務者
が,当該金員の支払を任意に履行しないからといって,それが直ちに債権者に
対する不法行為となるものでないことから明らかである。),控訴人が上記不動
産競売申立事件のために要した費用及び弁護士費用は,被控訴人が控訴人の
提起した第一訴訟事件に違法に応訴したことによって控訴人に生じた損害という
ことはできない。
  (4)控訴人は,第一訴訟事件の訴訟準備及び遂行の諸費用として60万円を負担し
た旨主張する。
    証人Fの証言及び同人の陳述書(甲111)には同主張に沿う部分があるが,控訴
人が,前記(2)に認定した弁護士費用支払のほかに,上記60万円を同訴訟準備
費用等として支払った事実については,領収証等その支払を裏付けの客観的な
証拠はないから,証人Fの証言等をもって控訴人の同主張を認めるには十分で
なく,他に同主張を認めるに足りる証拠はない。
  (5)以上によれば,控訴人は,被控訴人の第一訴訟事件への違法な応訴及び違法
な第二訴訟事件提起に対処するために弁護士費用として,前記(2)アないしカの
合計1445万8690円を支払い,そのうち第一訴訟事件分が448万1690円,
第二訴訟事件分が791万7000円,第一訴訟事件及び第二訴訟事件分が20
6万円であったことが認められるところ,第一訴訟事件及び第二訴訟事件の各
事案の内容,性質,証拠の共通性,審理の経過,第一訴訟事件については受
任した弁護士の辞任があって,着手金支払の重複があること等の諸般の事情を
考慮すると,控訴人が第一訴訟事件,第二訴訟事件のために支払った上記弁
護士費用のうち,第一訴訟事件については300万円の範囲で被控訴人の第一
訴訟事件への違法な応訴により控訴人が被った損害と認め,第二訴訟事件に
ついては700万円の範囲で被控訴人の違法な第二訴訟事件提起により控訴人
が被った損害と認めるのが相当である。
 5 違法な本件仮差押えによる損害
  (1)本件仮差押えによる信用毀損による損害について
   ア 証拠(甲15,16,100ないし104,111,114ないし120,乙8の1ないし5,
証人F)及び弁論の全趣旨によれば,控訴人の事業年度は,4月1日から翌
年3月31までを1事業年度とするが,本件仮差押えにより控訴人所有の別紙
物件目録記載の不動産につき本件仮差押登記が経由されたのは平成2年4
月25日であって,控訴人の30期事業年度であったこと,控訴人の28期事業
年度から34期事業年度までの各売上高,営業利益及び税引き前当期利益
は,いずれも別紙「決算書(M興業)」記載のとおりであり,本件仮差押登記後
の控訴人の31期,32期及び33期の各事業年度の税引き前当期利益は,本
件仮差押登記があった平成2年4月の属する控訴人の30期事業年度より前
の28期及び29期の各事業年度の税引き前当期利益の平均額5868万60
63円に比べて,それぞれ1440万円,2277万円,4921万円減少してい
て,その減少額合計が8638万円となることが認められる。
   イ 控訴人は,被控訴人が控訴人所有の上記不動産に対してして本件仮差押えに
より,控訴人の取引先に対する営業上の信用が著しく毀損された結果,大口
取引先である三井物産株式会社(以下「三井物産」という。)や日鐡商事株式
会社(以下「日鐡商事」という。)から,不動産及び預金等を担保に提供するこ
とを求められ,しかも,取引額を担保の範囲内に制限されて取引額が大幅に
減少し,また,金融機関から十分な与信が得られなくなったため,控訴人の売
上げが低下して営業利益の大幅減少を来す等によって本件仮差押登記後の
3事業年度で少なくとも上記8638万円の2分の1に相当する4319万円の損
害を被った旨主張し,証人Fは同主張に沿う証言をし,同人作成の陳述書にも
同趣旨の陳述記載がある。また,証拠(甲105,106ないし108の各1及び
2,甲109,甲110の1及び2)によれば,控訴人は,昭和2年10月以降,三
井物産のために控訴人所有不動産について根抵当権を設定したり,有価証
券について譲渡担保権を設定するなどし,また,日鐡商事のために控訴人の
定期預金に質権を設定したことが認められる。
   ウ しかし,控訴人の28期事業年度(昭和63年4月1日から平成元年3月31日ま
で)以降の売上げの推移は,別紙「決算書(M興業)」記載のとおりであって,
28期事業年度及び29期事業年度(平成元年4月1日から平成2年3月31日
まで)が15億円を超える売上があったが,その後は減少を続け,それでも,3
0期事業年度(平成2年4月1日から平成3年3月31日まで)及び31期事業
年度(平成3年4月1日から平成4年3月31日まで)には10億円あるいは11
億円の売上げを計上していたが,32期事業年度(平成4年4月1日から平成
5年3月31日まで)及び33期事業年度(平成5年4月1日から平成6年3月3
1日まで)には8億円台の売上げとなって,平成4年頃以降は平成元年及び平
成2年当時の2分の1以下に激減したことが認められるから,控訴人の売上
げは,平成元年又は平成2年をピークとして減少を続けていたものであって,
本件仮差押えを契機として控訴人の売上げが特に激減したとの事実はない
上,証拠(乙7)及び弁論の全趣旨によれば,平成2年以降は,いわゆるバブ
ル経済崩壊後の経済不況にあって,建設業及び不動産業を営む企業の中に
は,年々売上げを減少させている企業があることが認められるのであって,控
訴人の売上げについての上記のような減少傾向には,一般的な経済的不況
による売上げ減少の場合との類似性が窺われるのである。
   エ 加えて,証拠(甲14,38の1及び2,甲77の1及び2,甲78の1ないし4,甲7
9の1及び2,90,111,123,124,証人F)及び弁論の全趣旨によれば,
控訴人は,亡Hが昭和29年に創業した鉄骨加工業を法人化するために昭和
36年に設立された株式会社であって,亡Hが設立以来その代表取締役として
経営し,その株式も,その大部分が亡H及びその家族の名義となっていたこ
と,そのため,控訴人の経営は,亡Hが存命中は,亡Hがワンマン的に行って
いたものであり,他の取締役は名目的な存在であったこと,亡Hは,平成元年
9月16日に死亡したため,同月27日,控訴人の代表取締役に亡Hの長女の
夫のN(以下「N」という。)及びAが就任し(なお,被控訴人が同時に控訴人の
取締役に就任した。),Nが亡Hの後継者として控訴人を経営することとなった
こと,しかし,Nは,大阪で塗装業を営んでいた者で,控訴人の営業である鉄
鋼業の経営に不慣れであった上,控訴人が契約者となっていた亡Hを被保険
者とする生命保険金の処理をめぐってAと意見が対立したこともあって,同年
10月末には,大阪に戻って,事実上控訴人の経営に関与しなくなったこと,そ
のため,被控訴人が,Aから依頼されて,同年11月から,控訴人の平取締役
のまま,控訴人の社長代理として控訴人の経営にあたることとなったこと,とこ
ろが,被控訴人は,経験ない者が鉄鋼業を経営していくのは困難であるとし
て,鉄鋼業から倉庫業及びゴルフ練習場への経営方針の転換を計画し,従業
員に命じて控訴人所有地の隣接地につき賃貸借契約締結の交渉をさせる一
方,鉄鋼業についての控訴人の主要取引先である三井物産や新日本製鉄株
式会社からの新規の受注を全く取らず,また,取引銀行である福徳銀行東新
町支店に対し,Aに内密に1億円を貸してほしい旨申し入れるなどのことがあ
り,Aに対し,三井物産等からその旨の苦情や問い合せがあったこと,そのた
め,Aは,同年12月下旬,被控訴人に対し,控訴人の経営への関与を禁じ
て,取締役の辞任を求めたこと,その後,Nが,再度,代表取締役として控訴
人の経営にあたり,従前どおり鉄鋼業を継続することとなったが,平成7年3
月末をもって鉄鋼業から撤退したことが認められる。
     上記のような控訴人のワンマン経営者であった亡Hの死亡とその後の控訴人に
おける実質的な経営者の相次ぐ交代及び経営方針の動揺は,その主要な取
引先である三井物産や日鐡商事等に対し,また,取引先銀行である福徳銀行
に対し,控訴人の経営の安定度及び将来の経営の見通しについて不安を抱
かせたであろうことは容易に推認できるところ,控訴人が三井物産等にその
所有不動産等を担保として提供するようになったのは平成2年10月以降であ
って,本件仮差押登記の直後ではないことも併せ考慮すると,控訴人が三井
物産等に不動産等を担保として提供することになったのは,本件仮差押えに
より控訴人の信用が毀損されたためというには疑問が残り,むしろ,亡Hの死
亡とその後の控訴人における実質的な経営者の交代及び経営方針の動揺
が,取引先企業及び取引先銀行に対し控訴人の経営の安定度及び将来の経
営の見通しについて不安を与え,そのために取引先企業からの担保の要求
等となり,また,取引銀行の与信の制限となったものと窺われるのである。
   エ そうすると,ウ及びエの事実及び証拠を考慮すると,イの事実及び証拠から,
控訴人の売上高が減少し,営業利益,税引き前利益が減少したのが本件仮
差押えにより控訴人の信用が毀損されたためであるとの事実を認めることは
できず,他に同事実,すなわち,本件仮差押えと控訴人の信用毀損による営
業損害との間の相当因果関係の存在を認めるに足りる証拠はない。
     したがって,控訴人の上記イの主張を採用することはできない。
  (2)控訴人は,本件仮差押命令の取消申立事件の費用等として10万円を負担した
旨主張する。
    前記4(2)冒頭掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,同費用等は,控訴人が
第二訴訟事件の応訴を委任したK弁護士らに対して支払った前記弁護士費用に
含めて支払われたものと認められるところ,本件仮差押えが違法である以上,本
件仮差押命令の取消しに要した訴訟費用及び弁護士費用の相当額は本件仮差
押えによる損害として被控訴人において賠償責任を負うべきものである。
    したがって,被控訴人の違法な本件仮差押えのため,控訴人が,上記10万円の
損害を被ったことが認められる。
第4 結論
 1 以上のとおりであるから,控訴人の請求は,前記第3,4及び5の弁護士費用等10
10万円及びこれに対する不法行為の後である平成5年12月1日から支払済みま
で民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある
から,これを認容し,その余の部分は失当として棄却すべきである。
 2 よって,原判決を上記1の趣旨に変更し,訴訟費用の負担につき民事訴訟法67
条,61条,64条を,仮執行の宣言につき同法310条を各適用して,主文のとおり
判決する。
   名古屋高等裁判所民事第2部
      裁判長裁判官    大   内   捷   司
         裁判官    加   藤   美 枝 子
    裁判官長門栄吉は転補のため署名押印することができない。
      裁判長裁判官    大   内   捷   司
別 紙
            物 件 目 録
 1 愛知県小牧市大字a字bc番d
    宅地    130.88平方メートル
 2 愛知県小牧市大字a字be番f
    宅地    131.07平方メートル
 3 愛知県小牧市大字a字gh番i
    宅地    248.31平方メートル
 4 愛知県小牧市j町k番l
    宅地   2534.32平方メートル
 5 愛知県小牧市j町m番n
    宅地   6401.31平方メートル
別 紙
         約束手形目録
 1 金  額    207万円
   満  期    平成2年3月20日
   支払地    名古屋市
   支払場所    東京銀行名古屋支店
   振出日    平成元年11月30日
   振出人    兼松江商株式会社
 2 金  額    1000万円
   満  期    平成2年4月9日
   支払地    東京都千代田区
   支払場所    東海銀行東京営業部
   振出日    平成元年12月11日
   振出人    産業振興株式会社
 3 金  額    260万円
   満  期    平成2年4月9日
   支払地    東京都千代田区
   支払場所    東海銀行東京営業部
   振出日    平成元年12月11日
   振出人    産業振興株式会社
 4 金  額    1000万円
   満  期    平成2年4月10日
   支払地    長野市
   支払場所    八十二銀行本店営業部
   振出日    平成元年12月11日
   振出人    株式会社角藤
 5 金  額    944万円
   満  期    平成2年4月10日
   支払地    長野市
   支払場所    八十二銀行本店営業部
   振出日    平成元年12月11日
   振出人    株式会社角藤
別 紙
            事 故 目 録
 被控訴人は,平成元年12月,福徳銀行名古屋支店に向って被控訴人保有の自家用
乗用自動車(ベンツ。以下「被控訴人車」という。)を運転中,愛知県西春日井郡o町の
清洲インターチェンジ入口付近において,被控訴人車の右前部バンパーを暴力団関係
者の乗用車(ベンツリムジン。以下「相手方車」という。)の左側前部側面フェンダー部分
から後部フェンダー部分にかけて接触させる交通事故を起こした。

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独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

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残り応募人数(2019年5月1日現在)
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独立支援は3名

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