弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人を懲役拾月に処する。
     但本裁判確定の日から参年間右刑の執行を猶予する。
     原審及び当審における訴訟費用は全部被告人の負担とする。
         理    由
 弁護人中田克巳知の控訴趣意は同人提出の控訴趣意書記載の通りであるから、こ
こにこれを引用する。
 弁護人の控訴趣意第一点について、
 <要旨>原判決判示罪となるべき事実中第二の(一)中「恰も飲食遊興費等支払う
ものの如く装いて清酒、銚子で十六本、ビール四本、料理三皿、通し物一
皿、フルーツ一皿合計三千二百三十円相当を出させて飲食し、Aを同衾して宿泊し
その宿泊及び遊興費千円総計四千二百三十円の債務を負担したる後云々」と判示し
ていることは所論の通りであつて、原判決挙示の証拠中Aの検察官に対する第一回
供述調書中「淫売料は一晩で千円でその中から営業主の方に三百円位を蒲団代とし
てやつて居ります私が本年六月十九日の晩にBと云う人の要求により同人に淫売し
た、同人が金をくれると思うたからで、金をくれないのであれば売るのではなかつ
たのです」との供述記載によると、原判決が「Aを同衾して宿泊しその宿泊及び遊
興費千円」というのは、売淫料の千円であることが認められるのであつて、総計金
四千二百三十円中にはこの千円が入つていることが認められる。元来売淫行為は善
良の風俗に反する行為であつて、その契約は無効のものであるからこれによつ売淫
料債務を負担することはないのである。従つて売淫者を欺罔してその支払を免れて
も財産上不法の利益を得たとはいい得ないのである。よつて右千円については詐欺
罪は構成しない。然るに原判決は、これをもつて、債務を負担したる後その支払を
免れ、財産上不法の利益を得たものとして処断したのであるから、原判決には事実
の誤認があり、との誤認は判決に影響を及ぼすものであるから破棄を免れない。弁
護人は原判決は理由にくいちがいがあるというのであるが、その内容は事実の誤認
を主張するのであるから此点において、論旨は理由がある。
 同第二点(法令の適用の誤)について、
 原判決判示罪となるべき事実第二の(三)中「同月二十五日頃C、D、D、Eと
共謀の上前同所において、FHに対しと判示し、法令の適用として、刑法第六十条
を遺脱していることは所論の通りである。しかし原判決は「C、D、E等と共謀の
上」と判示しているから、原判決は同人等と共謀したことを認定しているのであ
る。従つて刑法第六十条を適用した旨判文上明示しなくとも同条を適用しているも
のであることが自ら明かであるから、原判決には法令の適用を誤つた違法はなく、
論旨は理由がない。
 同第三点(訴訟手続に法令の違反)について、
 原審第一回公判調書中刑事訴訟法第二百九十一条により、検察官が起訴状の朗読
をしたこと、裁判官が被告人に対し、被告人の権利保護のための告知をしたことの
記載がないことは所論の通りであるが、右事項は公判期日に通常当然行われている
事項であるから昭和二十六年十二月二十日最高裁判所規則第十五号による改正の刑
事訴訟規則第四十四条は公判調書の記載事項としなかつたものである。従つてその
記載がないからといつて訴訟手続に違反の点はないのである。原審第一回公判調書
によると、被告人及び弁護人から何等異議の申立もなく且つ被告人及び弁護人の被
告事件についての陳述の内容からしても、当然所論の手続は執られたものと認めざ
るを得ないのである。弁護人は右改正の刑事訴訟規則第四十四条は、日本国憲法及
び刑事訴訟法の根本精神に反するので無効のものであると、主張するのであるが憲
法第七十七条第一項において、最高裁判所は、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所
の内部規則及び司法事務に関する事項について、規則を定める権限を有すると規定
し、又刑事訴訟法第四十八条第二項は公判調書には裁判所の規則の定めるところに
より、公判期日における審判に関する重要な事項を記載しなければならない。と規
定しているので、これに基く刑事訴訟規則第四十四条は刑事訴訟法第二百九十一条
により訴訟手続を廃止するものではなく、ただ右手続のあつたことを、公判調書の
記載事項としないまでであつて、憲法及び刑事訴訟法に違背しないのみならずその
根本精神にも反することはないのである。故に所論のような違法はない。論旨は理
由がない。
 よつて量刑不当に対する判断を省略し刑事訴訟法第三百九十七条、第三百八十二
条により原判決を破棄し、当裁判所は直ちに判決することができるものと認めるの
で同法第四百条但書により更に判決する。
 当裁判所が認めた罪となるべき事実及び証拠の標目は、原判決書中第二の(一)
事実を除き、原判決書の記載と同一であるから引用する。
 第二の(一)の罪となるべき事実
 被告人は飲食代の支払資力も意思もないのに拘らず、昭和二十七年六月十九日常
呂郡a町字b料理屋GことF方において同人及びその妻Hに対しI株式会社社長B
と印刷してある名刺を示して、これから二十日間位滞在するからちよい、ちよいた
のむ等と言つて恰も飲食費を支払うものの如く装いて、清酒銚子で十六本、ビール
四本、料理三皿、通し物一皿、フルーツ一皿合計三千二百三十円相当を出させて飲
食しその債務を負担したる後、その事実がないのに一緒に仕事をしている同僚が金
を持つて明日十時に来ることになつているから来たら支払をする、それまで待つて
くれと嘘を言つてその旨誤信させて右飲食代の支払を免れたものである。
 右事実は
 一、 Jの検察官に対する第一回供述調書
 一、 Fの検察官に対する第一、二回供述調書
 一、 Hの検察官に対する第一回供述調書
 一、 被告人の検察官に対する第一、二、三回供述調書
 一、 原審第一回公判調書中被告人の供述記載
 を綜合して認める。
 法令の適用
 被告人の判示第一の(一)(二)同第二の(一)乃至(四)の各所為は刑法第二
百四十六条第二項に(判示第二の(三)の所為は同法第六十条にも該当)判示第三
の所為は同法第二百四十六条第一項に該当し、以上は同法第四十五条前段の併合罪
であるから同法第四十七条、第十条により犯情の最も重いと認める判示第二の
(三)の罪の刑に法定の加重をなし、その所定刑期の範囲内で被告人を懲役拾月に
処するとともに情状により刑法第二十五条を適用し本裁判確定の日から三年間右刑
の執行を猶予するものとし、原審及び当審における訴訟費用は刑事訴訟法第百八十
一条第一項により全部被告人の負担とし、主文の通り判決する。
 (裁判長判事 藤田和夫 判事 成智寿郎 判事 臼居直道)

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