弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原略式命令を破棄する。
     被告人を罰金三万円に処する。
     右罰金を完納することができないときは、金二〇〇〇円を一日に換算し
た期間、被告人を労役場に留置する。
         理    由
 本件記録によると、春日井簡易裁判所は、昭和五八年七月二〇日被告人に対する
道路運送車両法違反被告事件(同庁昭和五八年(い)第〇三七二号)について、「
被告人は、春日井市a町b丁目c番地のdにおいて、A商会の名称で自動車部品等
の販売業を営む者であるが、陸運局長の認証を受けないで、自動車分解整備事業を
営む目的をもつて、昭和五七年一一月二九日ころから同五八年五月八日ころまでの
間、前後一三回にわたり、右A商会作業所において、被告人自ら又は従業員B外三
名に指示して、C外八名使用の普通乗用自動車九台の緩衝装置を取りはずす等の自
動車分解整備を行い、もつて自動車分解整備事業を経営したものである。」旨の事
実を認定した上、道路運送車両法七八条一項、一〇九条一項八号、罰金等臨時措置
法二条、刑法一八条を適用して、「被告人を罰金七万円に処する。右罰金を完納で
きないときは金二〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。」旨
の略式命令を発し、この略式命令は昭和五八年八月五日確定したことが認められる。
 しかしながら、道路運送車両法一〇九条一項八号の法定刑の罰金の額は昭和五七
年法律第九一号により「二〇万円以下」に改められ、右法律は同年九月二日に公布
され、同五八年七月一日施行されたものであるところ、被告人の本件所為は、右改
正法施行前の行為であるから、これに適用すべき法条は、右改正法附則一一条によ
り行為時法である右改正前の道路運送車両法一〇九条一項八号である。そして、同
法条によれば、前記罪に対する法定刑の罰金の最高額は三万円であり、加重事由の
ない本件において、これを超過して被告人を罰金七万円に処した右略式命令は、法
令に違反しており、かつ、被告人のために不利益であることが明らかである。よつ
て、刑訴法四五八条一号により、原略式命令を破棄し、被告事件について更に判決
することとする。
 原略式命令の確定した道路運送車両法違反の事実に法令を適用すると、被告人の
所為は、道路運送車両法七八条一項、昭和五七年法律第九一号附則一一条により同
法による改正前の道路運送車両法一〇九条一項八号に該当するので、その所定金額
の範囲内で被告人を罰金三万円に処し、右罰金を完納することができないときは、
刑法一八条により金二〇〇〇円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する
こととし、主文のとおり判決する。
 この判決は、裁判官全員一致の意見によるものである。
 検察官米田昭 公判出席
  昭和五八年一二月一日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    谷   口   正   孝
            裁判官    藤   崎   萬   里
            裁判官    中   村   治   朗
            裁判官    和   田   誠   一

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